「あー、終わったぁ!こんな量のキャベツを切ることなんて飲食店で働かないとやらないんじゃない?」
「お疲れ、夏希。リリくん、そっちはどんな感じ?」
「お好み焼きの素は全部できましたよ。あとはキャベツと肉とかのトッピングを入れるだけですね。水瀬さん、お好み焼きはミックスでいいんだっけ?」
「うん!イカとエビとお肉たっぷりで!」
俺向けの質問に答えていると水瀬さんが大量のキャベツの荒切りが終わったらしい。あの量を全部手でやったのは称賛されることだ。結局フードプロセッサーは使わなかったし。
切る前の量のキャベツを物撮りして写真を配信画面に載せていたけど、今回は水瀬さんが切った物を配信画面に載せた。荒切りの長さや荒さなども問題なかったのか、彼女を褒めるコメントが多い。
続いてチャチャっと霜月さんが必要分のお肉を切ってしまい、その鮮やかな包丁さばきに俺と水瀬さんは思わず拍手をしてしまった。
「「おお〜〜〜」」
「こ、これくらい普通だから拍手なんてしないで⁉︎リリくんだってやろうと思えばできるでしょ⁉︎飲食店でバイトしてたって言ってたんだし!」
「いやいや、ほとんどホールでキッチンを手伝ったとしても包丁なんて握らなかったですよ。それに切れることと手際が良いことは別ですから」
「そうそう。さすが手料理女子!かっくい〜!」
ものの数分で20人前のお肉を食べやすいサイズに細切れにしてしまったんだから、拍手が自然と出たっておかしくないだろう。霜月さんは飲食店で働いてたとかも聞かないし、ただ自分のためにスキルを磨いていたことになる。
俺たちでできないことをやってくれたんだから褒めたって良いだろう。
俺たち分のお好み焼きの具材をチョイスしている間にスタッフさんたちも食べたい具を選んでいく。時間がかかりそうだったので静観だ。
『スタッフたちが和気藹々としてるの、好き』
『いや、具材でめちゃくちゃ揉めてね……?そんなにほんわかした空気じゃないだろ』
『エリーとなっちゃんの手料理食えるの羨ましい!』
『生地作ってるのほとんどリリじゃね?』
『スタッフファンの私には供給多くて助かりますー!SNSで教えてくれたリスナーありがとう!』
『ライバーじゃなくてスタッフのファンなの?変わった人もいるんだなあ……』
スタッフの話が纏まったのか、お好み焼きはシーフードを1つと豚増し増しが1つになったらしい。
ついでにもんじゃ焼きの味も決めてくれと言ったらまた喧嘩になっていた。分けて食べるという考えがこの大人たちにはないんだろうか。
ちなみに俺たちの分はもち明太子チーズという割と王道なものなんだけど、スタッフがおふざけをして変なものを大量に買ってきたのか、担々麺の素とか、激辛キムチとか締めうどんの素とかミドリムシの素とか、どこでそんなものを買ってきたんだという結構博打な味変用のトッピングを買ってきていた。
お好み焼きともんじゃ焼きにわさびは要らないだろう。マグロとかも結構入れないようなものの気がする。今回の企画とは関係なく食べたい物をカゴに入れたんじゃないだろうか。
「リリちゃん的には料理ができる女の子ってポイント高い?」
「高い高い。奇を衒う必要なんてないんだから、普通にレシピ通り作れて丁寧ならそれが一番良いんだよ。料理が下手な人のご飯を食べたけどね、味見もしてないから本当に酷いものだったよ。そう考えるとコンビニとかファミレスって味がある程度は保証されてるから凄いよね」
「確かに!でも外食ってお金が嵩むからなあ。エリー、エリーのご飯美味しかったからたまにご飯食べに行っていい?」
「……割と土日はご飯を作ってあげてると思ったけど、あたしの記憶違いかな?」
「いつもご馳走様です!」
「そうなんだ?てっきりポケクリの時に食べた感想かと思ったけどそんなに食べてるの?」
『夏希ちゃん、エリーの手料理頻繁に食ってるんかい!』
『てぇてぇ』
『この2人は本当に仲が良くて推せる』
『リリは知らなかったっぽいからやっぱりこの2人って……!夏エリはあったんだ!』
『そこで混ざらないのがリリが弁えてるところだよなあ』
土日って割と俺も一緒になってご飯を食べに行ってるのに、それ以外でも手料理を食べていたなんて。霜月さんの負担は大丈夫だろうか。
まあ、問題だったら本人か社長辺りから連絡が来るだろう。社長かマネージャーさんが週1で一人暮らしの確認をしているのは継続中らしいから、これで生活に問題があったらまず同期の俺たちに連絡が来るはず。
ということは土日にこんな感じで霜月さんが水瀬さんに料理を教えているのだろうか。基礎がないっぽいからな、水瀬さん。冷蔵庫に食材があって、自分で作る、なんて環境じゃなかったっぽいし。
スタッフ分のお好み焼きを作りつつ残っているスタッフさんが番組を回そうとしてくれる。ちなみに俺たちの分が3人分で、あとの2つが3.5人分の分量で作っている。生地を入れておくボウルがあまりない関係上こうなった。
だからこそ味についてはかなり紛争が起きているんだけど。
「スタッフさんのほとんどが論争しているのでまた質問コーナーに移りましょうか。これは水瀬さん宛ですね。『なっちゃん、FORの2人の初対面の印象を教えてください!』だって。やっぱりこんな内容ばっかりみたいだ」
「2人の第一印象?エリーは大人っぽい人だと思ったよ。スーツ着てたし。これがOLかあっていうのが本当の第一印象。年齢聞いて意外に近くてびっくりしちゃったけど。スーツの魔力ってあるよね」
「ど、どうせ服の印象しかない女だよ……」
「大人っぽいって加点ポイントだけどなあ。今ではこんなに可愛い系の人だけど、パッと見の第一印象は凄いお姉さんだね。声聞いたらめちゃくちゃ可愛くて声優オタクの私は一発でファンになったね!私がファン第1号だって声高らかに言ったらその場に同席してたエリーのマネージャーさんに『彼女のファン第1号は私ですぅ!』って勢いに負けて。というわけでエリーのファン第2号です」
「そうですよ!私がお2人の最古のファンですからね!」
『なっちゃんがよく話題に出す2人のマネージャーさんか』
『女の人でめちゃくちゃ2人を溺愛してるっぽいんだよな。FOファン第1号は彼女のものだったとか。マネージャーさんなんだから0号じゃダメだったんか?』
『本人おるやんけ……w』
『まあ、FORの記念配信なら居てもおかしくない』
『リリだけ別の男のマネージャーなんだよな』
『そこは業界的に男には男の、女には女のマネージャーを付けるようにしているらしい』
『複数人担当で大変だからって、今でもエクリプスのスタッフ募集で女性マネージャーを急募ってしてるな。他のは募集中なのに女性マネージャーだけ急募なの笑っちゃうんだよね』
FORの記念配信でオフコラボなので当然のように俺たちのマネージャーがいる。霜月さんと水瀬さんのマネージャーは同じ人なので、マネージャーは2人だ。
彼女も霜月さんと水瀬さんの手作りお好み焼きを食べたかったようだが、もんじゃ焼きだけで我慢したようだ。それ我慢って言うんだろうか。俺のマネージャーの五反田さんはどっちも食べずにこうして進行をずっとやってくれているのに。
そういう仕事はマネージャーの仕事じゃなくてADさんとかの仕事のはずなのに、スタッフさんのほとんどがもんじゃ焼きの論争をしているのでダメだ。
2人のマネージャーさん、星空さんはもんじゃ焼き論争をしながらこっちの会話を拾って発言するという聖徳太子のようなことをしている。このおもしろ事務所はマネージャーまでおもしろ枠じゃないといけないのか。
「マネちゃんはもんじゃ論争に勝ち上がってね〜。で、リリちゃんの第一印象はイケ狸が来た!だったね。私とエリーが事務所で話しているところに社長に連れられて来たんだけど、割と遠くから見ても社長がイケメン連れてる!って話題になって。で、声を聞いた瞬間低音イケボでこれが声優の転生ってやつ⁉︎って燃えたんだけど、全然違ったっていうね。まあ、演劇経験者だから当たらずとも遠からず、ってやつ?」
「イケメン、イケボねえ。僕としては全くそう思わないんだけど。そんなこと人生の中で言われたことなかったし。ねえ、霜月さん」
「ぇ、あ、う、うん?いや、綺麗な低音だと思うよ?言われたことないのは、面と向かって言う人がいなかっただけじゃないかなー?」
俺レベルの顔なら俳優業界にいくらでもいるだろうし、モデルやアイドルには敵わない。それにイケボとかは観覧者アンケートでたまに書かれていた気もするけど、ただ低音ってだけだろう。本職の声優さんの、きちんと作った低音と比べたらただ地声が低いってだけだ。
Vtuberさんにもイケボと言われる男性ライバーさんがいる。そういう人と比べて俺の声がイケボかと言われるとうーんと首を傾げてしまう。
好みの声って人によって結構違うらしいし、俺が耳で聞いてる声と、録音された声を聞くと結構違う。これは他の人も経験していると思うが、この変化に割と慣れていないのが俺だ。
こういう音域で話そうと俳優の頃から試してきて、演出さんや監督さんからは良いねと言われていたものの、録音したものを聞いたらイメージしていたものと結構違ったこともある。
それで一時期調子を崩したこともあったので俺は自分の映像を音付きで見ることを辞めていた。動きのチェックだけにして、声は自分の聞いているものを信じることにして演技の調子を戻したが、それも俳優時代のこと。
今は配信者で、この声で売っているところがあるので自分の声も聞き直している。だからこそ初配信の歌ってみたは酷かったし、ボイス録音で出来たものも録音担当の方は褒めてくれたけど、俺としては出来は正直不安だ。
霜月さんと水瀬さんも絶賛してくれたらしい。それはコラボカフェのもので、他のボイスも録ったけどゲームコラボのボイスなどもああすれば良かったとか結構思うところがある。2人に演技指導をしてすぐに上手くなったのを見たからこそ、俺って才能ないなあと思ったりもした。
話は変わって霜月さんはイケボかどうか確認しただけで顔を真っ赤にしないで欲しい。水瀬さんが面白がってニヨニヨしているじゃないか。他の見ていたスタッフさんもだけど。
「社長にも面接の時そんなこと言われませんでしたよ?だからてっきり普通の声なのかと思ってましたけど」
「社長はダメダメだねー。後で私が説教します!イケボライバー積極採用します!」
「それ夏希のただの願望だから。ライバーは、公式HPで募集をしているようなので興味があれば是非」
「次の質問ですが、似た系統は一気に消費してしまおうって感じですね。『エリサ様、同期の第一印象をどうか、どうか是非に!』とのことで。……霜月さんのリスナーって霜月さんのことを女王様だと思ってるんですか?」
「一部!一部がふざけて様付けしてくるだけだから!どうしてこうなったのか経緯はあたしが知りたいくらいだし!」
『なんだっけかな?始まり』
『さあ?悪ふざけ?』
『Sっぽい振る舞いからだっけ?』
『割と初期からいる層ではある』
霜月さんでも理由はわからないのか。俺もたまに様付けされるけど、あれはガチャの時限定って理由がわかりきってるから気にならない。招き猫扱いで様付けされているだけだ。
霜月さんは本当に何で様付けされてるんだろう。他にライバーで様付けされてる人なんてドロッセル先輩くらいじゃないだろうか。あの人は聖女っていうロールで様付けされていることが一目瞭然だから、理由がわかっていれば怖くはない。
コメントの数が多くてよくわからないな。本当に何で様って呼ばれてるんだ。
「えーっと、2人の第一印象でしょ?夏希はもう、元気一杯女子高生って感じで眩しかったよね。青春してる子だなあって感じ。リスナーの皆は知ってるけど、あたしは結構陰陽だったら陰の方だから、それはもう眩しくて。社長からも言っても良いって許可を貰ってるから言っちゃうけど、この子と2人でコンビデビューって大丈夫かなあって割と不安だったんだよね」
「あ、それ言って良かったんだっけ?そうそう、最初ってあたしとエリーとコンビデビュー予定だったんだよね。ただリリちゃんのデビューが間に合いそうで、2人と1人を分けてデビューさせるなんて今までやってなかったし、ずっと男女混合でデビューしてたんだから今回も一緒で大丈夫だろうってリリちゃん連れてきて。世間の風潮に逆行する!とかって豪語してたよ」
「言ってたねえ。あの頃って先輩方全員男女でコラボしてるだけで叩かれてたりしましたから。ここで男女別にデビューさせたら会社として逃げることになる。彼らは悪くないんだから俺は負けない!って言ってた社長はカッコ良かったですよ。だから水瀬さん、ダメダメなんて言わないであげて」
「しょうがないなあ。社長が居なかったらFORにはなってないんだから、おまけで許しちゃう」
最近は落ち着いたからと、俺たちのデビューの結構ギリギリな感じというのは話して良いことになった。俺たちのデビュー前一ヶ月くらいからずっとどこの業界でも男女一緒にいるというだけで叩かれた。本当に最悪の不倫事件だった。
そこから俺って一ヶ月半でデビューしてるのか?ヴィクトーリア先生が速筆すぎるし、社長の手腕が凄すぎる。そこから配信画面の背景とBGMと設定を決めてデビューなんて、スタッフさんにもかなり無理をさせている。
BGMは俺の作った曲だから良いとして、かなりのブラックスケジュールでデビューしてるな、俺。2人は3ヶ月くらい準備期間があったというのに、俺はその半分でデビューしてるんだから。
「で、社長が連れてきたリリちゃんの印象は?」
「……イケ狸だなって。いや、これわたしと夏希だけの意見じゃないからね⁉︎他の女の先輩たちも言ってたから!デビュー前にすれ違った先輩たちが誰だ誰だって噂してたって言ってたし!」
「初耳ですね。男の先輩にはそんなこと言われませんでしたから」
「あれ?宗馬先輩が次の男はイケメンだって言いふらさないと!って事務所で言ってたよ?そこから真崎先輩たちに噂が流れたって言ってたし。ネムリア先生にも『そんなにイケ狸なら模写用に資料として欲しいので写真お願いします』って頼まれたよ?ほら、デビュー前に写真撮らせてって言って個人の写真撮らせて貰ったでしょ?アレネムリア先生に送信したの私」
「だから初対面のはずのネムリア先輩が僕の顔を見て一発でリリ君だって言い当ててたのか!あの人東京の事務所に滅多に来ないのに僕のこと知ってたからおかしいなとは思ったんだよ!」
水瀬さんが写真送ってたのか!そこから俺の俳優時代の写真に行き着いて俳優だってバレたのと作曲者だって芋づる式で俺の前の職業のことがバレていったのか!
まさかこんなところで犯人が見付かるなんて。
「ちなみにそれ、個人に送ったの?」
「ううん?女子ライバー専用チャット」
「……今度から辞めるように」
「はーい」
『2人もそうだし、他の女子ライバーもそう言ってるってことは、リリってマジのイケ狸なのか?』
『狸が事務所歩いてれば誰だってなるに決まってるだろ』
『宗馬君がリリ君のことをイケメンだと褒めていた……?それってつまり、宗×絹ってこと⁉︎新しいカップリングの誕生だー!』
『FORの記念配信で何で男のカップリングが産まれるんだよ。カオスすぎんか……?』
『その書き方だと宗方が有り得ちゃうのが。やっぱり表記変えるべきだって』
『宗方とのカップリングは既にあるから新規じゃないんだよなあ……』
『ああ、そっか。3Dお披露目で濃厚な絡みがあったもんなあ』
『意味深に見えるコメントはわざとか⁉︎』
新人がデビューするからって、ライバーとしての立ち絵ならともかく中の人の写真を共有する意味もないだろう。しかも理由を隠して本人に許可を取らずに載せるのはダメだ。
ネットに流していないから全然マシなんだけど。
「これで全員の第一印象は言い合いましたかね。質問に答えている間にお好み焼きと僕たち分のもんじゃ焼きの準備はできたんですが……。スタッフさん、もんじゃ焼きのトッピング決まりました?」
「キムチ増し増し濃口豚骨ダレと、バター&チーズ&魚介ラーメンスープの素を入れたシーフードオンリーもんじゃ!後ろの奴は豚肉要らないから他の奴に均等に割り振っちゃって!」
「うおおおおおおおんんんん!ごベーん、エリサちゃん、なっちゃーーーん‼︎お姉さん普通の手作りもんじゃが良かったのにジャンケン負けちゃったよおおおお!」
「あ、マネちゃんが汚い叫びをしてる。ドンマイ、マネちゃん!」
「あ、今使用する素材の物撮りが映ってますね。見事にイロモノだあ。スタッフさんたちはちゃんと食べ切ってくださいね。僕たちは僕たちで美味しいものを食べますので」
スタッフさんに確認を取ると、激辛キムチを大量に入れる奴と、明らかに味噌スープの方が合いそうな噛み合わせのシーフードもんじゃをオーダーされた。
しかも分量とかはこっちに丸投げだし。タレになる元タレは全部使ってくれって言ってて、その他の分量は全部おまかせって、美味しくなくてもこっちのせいにしないで欲しいんだけど。
しょうがない。作っていくか。
「キムチ、これ全部?多分風味も味も全部このキムチにやられちゃうから豚骨タレを全部使うのも良いんですが……。リリくん、他の具材は結構スタンダードにしようか。揚げ玉と豚肉とコーン、餅もあった方が良いかも。で、キャベツ多めね。絶対辛いから」
「了解です」
「夏希、こっちは無理だからチーズは残り全部投入。バターは丸ごとはダメだから半分にして入れて。シーフードも余り全部で、キャベツもリリくんから残り全部貰って入れちゃって。キャベツの量的に2袋は多いから、1.5かな。残りのスープを捨てるのも勿体無いし、マネージャーさん。冷凍餃子買ってきてもらえます?羽根付きじゃないやつ」
「すぐ買ってくるぅううう!」
霜月さんの指示でスタッフ用のもんじゃ焼きの土台を作りつつ、星空マネージャーに冷凍餃子を頼んでいた。餃子をタレで煮て水餃子風の魚介味にするんだろうか。
ちょっと変わった味の餃子になって美味しいんじゃないだろうか。
手を動かしつつ、「半年過ぎたけど実感ある?」という質問に答える。
「半年かあ。あっという間だったよね。『ウィザーズ&モンスターズ』の箱内大会に一緒に出たり、『ポケクリ』やったり。なんだかんだ一緒にやること多かったから時間が過ぎるのって早いなって」
「確かに。案件とかもありがたいことにいっぱい頂いてるからスケジュール表が結構ビッシリで。やることやってたらいつの間にか半年が近くなってて企画の準備をしてって感じだったから、あたしも早かったなあって印象。リリくんは?」
「僕も早かったですね。先輩におんぶに抱っこだったらいつの間にか後輩ができてたり。この半年記念に向けての準備も色々しましたからね。僕的には怒涛の案件が終わったので肩の荷が下りたところで、ここからはゆっくりに感じるのかな?」
「ああ……。FPS大会はお疲れ様」
全員これは一致のようだ。とにかく時間が経つのが早かった印象しかない。
ありがたいことにSNSで話題になることも多く、チャンネル登録者数も中堅事務所と呼べるくらいにはいる。案件もこまめにいただけているし、他の事務所の方と関わることも多くなってきた。
様々な外向けコラボも増えてきて、地上波などにドロッセル先輩とコウスケ先輩以外も出始めた。かなり順調な動きと言えるだろう。
やることがなくて日々が変わらなくて暇ということではなく、忙しくて時間が経つのが早かったということはそれだけ充実していたということ。それは嬉しいことだろう。
「でもこれからリリくんはドロッセル先輩への補助で大変なんじゃない?ほら、『ウルプロ』」
「『ウルプロ』は栄光ナインの進め方をレクチャーした後は僕がやることはあんまり。僕以外にも『ウルプロ』をやっている人がいるから、全員でバックアップ体制を組んでるし」
「どんなことやってるの?」
「隠しイベントって呼ばれる、特定の日付に止まったら起きるイベントの列挙でしょ。後は最初に選ぶべき都道府県のオススメ理由と、新入生スカウトで重視すべきことを纏めた表の作成。後は試合で選ぶべきコマンドと、取った方がいい優秀な特殊能力一覧の纏めとか、そんなところかな?」
「え、リリくんそれ全部やってるの⁉︎」
「まさかぁ。僕がやってるのは都道府県のオススメと新入生スカウトの部分だけですよ。というかそれももう作り終わってるので僕の仕事ってほぼ残ってないんですよ。明日Vtuber事務所代表『ウルプロ』甲子園の開会式があるようなのでそちらを要チェックです」
霜月さんに驚かれるものの、この前の初心者講座といい作るものはほとんど完成させているので作業量は全然ない。
ただ栄光ナインの仕様がわかっていないと意味がないので、夏大会後の合宿くらいまでは試走で助言をしようと思ってる。実際に操作して覚えた方が良いので、俺が画面を見ながらアドバイスをしてドロッセル先輩が進めていく形だ。
新入生ガチャの度に呼ぶとも言われているけど、そんなことで良い新入生が来るだろうか。オカルトのはずなのに何故か他人だと良い結果が出るからなあ。
俺が新入生ガチャを回したら目当ての選手なんてほぼ出てこないのに。自分が極端で他人だと良い結果だからこそ、運のお裾分けと難波君たちに保障されてもオカルトだとしか思えない。
ドロッセル先輩が参加する大型企画の宣伝もできたところで、イロモノのもんじゃ焼きの土台もできた。お好み焼きから順に焼いていこう。