元俳優、タヌキVtuberに転生する   作:桜 寧音

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FORハーフアニバーサリー!オフコラボでお好み焼きともんじゃを食すぞ!・3

「話している間にベースが完成!なんか私、キャベツ切って終わったような気がする……」

「一番の大作業だったから。ほら、夏希。もう物撮りもしたからお好み焼きの生地混ぜていいよ」

「よーし、混ぜるよー!」

 

 水瀬さんが生地を混ぜている間にホットプレートの熱をチェックしておく。少し前から電源を入れて放置しておいたから表面はしっかりと暖かかった。

 お好み焼きを焼きつつ、質問にはまだまだ答えていくのでその準備を五反田マネージャーとしていく。

 水瀬さんの準備が終わったようで、早速生地をホットプレートに乗せていった。あまり厚くならないように、暑さにムラが出ないように伸ばしていく。ちょっとぶきっちょでも水瀬さんが初めて作るお好み焼きだからアドバイスをするだけで成形は任せた。

 マイクがホットプレートの音を拾っているようで、コメント欄では「ジュウジュウという音が聞こえる」というコメントもあった。スタジオのマイクって案件とか公式番組で使ってるだけあって良いものを使ってるんだな。

 

「タイマーセットよし!じゃあ質問コーナーに戻ろっか。なになに〜?『FORの中でゲームが一番上手いのって誰ですか?ジャンル別でも可』だって。野球ゲームだったらリリちゃんでしょ?オープンワールド系はエリー?私は……なんだろ?」

「水瀬さんは面白ネタ枠じゃなくて?」

「リリちゃん酷い!『ソラソラ』はメインストーリーもイベントも基本は全部クリアしてるんだよ!」

「じゃあRPG?『ポケクリ』シリーズもいくつかクリアしてるし」

「そうかも!私はRPGが得意ってことにしよう!」

 

 『ウルプロ』はなあ。ただの運と試行回数が多いだけで得意かっていうと。自操作での対戦とかやったらボロボロに負けるかもしれない。ストーリーモードとかのCPU戦では苦戦しないけど、対人戦はやったことがない。

 一緒にやるような友達もいなかったし、最近はオンラインでできるとはいえ正直オンラインマッチであまりマッチングしないんだよな。栄光ナインや他のモードがメインすぎて、対戦はオマケのオマケだ。

 今度のVtuber事務所対抗のオート観戦バトルなんて滅多にやることじゃないし。

 暇になった時に視聴者と戦うのもありだろうか。企画の1つとして頭に入れておこう。

 水瀬さんはオールラウンダーでゲームが上手い。俺が朝配信を始める前とかに眠気覚ましで配信を見たりしているけど、そつなくこなしている印象がある。

 水瀬さんは結構初心者枠というか、あまりゲームに慣れていない印象がある。『ポケクリ』とかは対戦も強いんだけど、その他のゲームが壊滅的というか。その初心者っぷりが好まれている側面もある。

 あと『ソラソラ』は高難易度の特定のチャレンジクエスト以外は難易度が低い。操作に慣れてしまえば負けることはないレベルだ。

 

「『ソラソラ』といえば。メインストーリー最新のやつクリアしたよ。ヴィヴィちゃんとアセムくん強すぎだよ。それにあの2人の関係性、プレイしてて普通に泣いちゃった」

「え、エリー早くない⁉︎この前紹介したばっかりな気がするんだけど⁉︎」

「今回のこの企画とか、それ以外にも配信も結構してましたよね……?ちゃんと寝てます?」

「寝てる寝てる。移動時間とか家事の合間とかにちょこちょこ進めてたら終わっちゃった。メインストーリーの消費スタミナも半減だったからポンポン進められたよ〜。いやあ、ストーリー良いねえ。確か今日から新イベントでしょ?イベントは初めてだから楽しみ〜」

 

 いやいや、早すぎる。あの一周年イベントの配信が6月の末で、今は7月の中旬。

 だというのに6章全部クリアって。文量も多いのにそれをこの3週間足らずでクリアしたってこと?

 霜月さんのこの集中力はとんでもないかもしれない。

 

「まあ、去年の水着イベントは阿鼻叫喚でしたからね。リリースして2ヶ月しか経っていない中での限定キャラが、まあ強いし既に人気のキャラだったので。ちょうど今復刻ガチャやってますね」

「今回の水着イベント、まだタイトルしか発表されてないのに今日の18時にいきなりイベントスタートでしょ?去年もそんな感じで限定キャラ実装してきたから今回もそうだろうって予告されてるね」

「誰になるんだろうね?そういうのって基本は既存キャラでしょ?」

「いえ、片方は完全新規キャラでした。水着が先に実装されて、普段着が後から実装でしたよ」

「オルフェゴール・E・トランペなんだよね、実装されたの」

「え⁉︎2章の敵キャラだよね⁉︎それがいきなり水着で実装⁉︎」

 

 今の霜月さんのように驚いたユーザーばかりだった。敵キャラが味方になるのも初めてだったのに、それが生死不明のはずだった敵の女性キャラ。それがトンチキ水着イベントで本人だけシリアスモードで水着で暴れているんだから何もかもが驚きだった。

 真面目系世界改変願望女性キャラというのがウケたのか、ガチャは回りに回ってセールスランキングで1位を連続確保。この時期ってどこのソシャゲも水着イベントをやっているのでそんなにセールスランキングを独占できないはずなのに、リリースされたばかりのゲームがそんなことをやってバズっていた。

 

「そういうことをやってくる運営だってわかって、限定キャラが来そうなイベントはかなり警戒してましたよ。1周年記念のキャラも強かったですし」

「逃しちゃったら次はいつ手に入れられるかわからな『ピピピッ!』いもんね。タイマー鳴った!ひっくり返すよ!」

 

 片面を焼き終わったので、水瀬さんが大コテを2つ持ってお好み焼きの下に潜らせる。くっついていたらどうかと思ったけど、途中で油を足しておいたのですんなり剥がれたようだ。

 ここが難しいんだよなあ。お好み焼きって。

 

「そんなに大きくしてないから大丈夫だと思うけど、いける?」

「いっくよ〜!ほあちょー!」

「カンフー?」

 

 個性的な掛け声をしたものの、お好み焼きを投げることなくひっくり返していた。焼き色もしっかりと茶色で焦げてもおらず、形もそこまで崩れなかったので俺と霜月さんは拍手をする。

 

「おお、上手い上手い」

「初めてなのに崩れなかったね、夏希。才能あるよ。下手な人は割ったりしちゃうから」

「ホント?えへへ、良かったー。あ、タイマーもう一回つけなくちゃ!」

 

『これが尊いという感情……?』

『家族感あってホントこの空気大好き』

『水瀬さんを見守る後方父親面する人たちの気持ちがわかったかも……』

『どけ!俺がお父さんだぞ!』

『親父どけ!俺はお兄ちゃんだぞ!』

『姉です。よろしくお願いします』

『自称家族のやべえ人たちがワラワラ来ちゃったじゃん……』

 

 うん。初めてにしては本当に上手だ。あとはもう片面が焼けるのを待つだけだ。

 一方スタッフさんたちの方はひっくり返すのに苦労していた。誰もやったことないらしい。ちょっと離席してそっちで俺がパパッとひっくり返す。俺たちのやつより大きいのも難しくした要因だけど、これ薄く広げすぎなんだよな。

 大きいとちょっとした亀裂で生地が裂けるから、少し厚くなっても小さめに作った方がいい。その代わり長時間焼かないと中が生焼けになる。

 形なんてどうでもいいだろうと少し成形し直して自分の席に戻る。

 

「あ、18時までもう少し?食べながら新キャラが見れるかも?」

「配信中に新キャラ見るの?」

「どうせコメント欄に書き込まれるなら見てしまっても良いのでは?」

 

『そんなことしないよリリちゃん!』

『どーせ誰かしらは鳩行為するだろ』

『自衛のために見るのは全然あり』

『あと10分くらいじゃん。それくらい見て良いんじゃね?』

 

 五反田さんに確認を取ると、以前に配信許可を取ってるから今申請を出せば配信画面にガチャ画面を映せるかもとのこと。星空さんが申請を出すと、一度許可を出しているからか自動返信で許可が降りたらしい。

 そんな簡単に許可が降りるんだ。

 

「マネちゃんが画面出しても良いって!ありがとー!」

「でも食べるのが優先だからね?熱い時に食べた方が美味しいんだから」

「はーい、ママ!でも今日ならリリちゃんがいるから限定キャラ当てられるかも?この配信が終わったら回そうと思ってもう1万円分、課金してきちゃったんだよね」

「奇遇だなあ。僕も課金してあるよ」

「え?2人とも?……カード払いで課金できるはず……」

「エリー、今メンテ中だからログインできないよ」

 

 何故か全員で水着ガチャを回すことになった。そういうのもありだろう。その前に仕掛けておいたアラームが鳴ったのでもう一度水瀬さんがひっくり返して、焼き目が十分だったのでそのままソースとマヨネーズをかけていく。

 そこまでやったらカメラさんに物撮りをしてもらって画面に映す。

 

『おお、上手いじゃん!』

『エリー、マヨネーズの掛け方がもうお店のそれなんだけど……』

『A型と見た』

『血液型って公表されてたっけ?』

『エリサはAっていつだか言ってたぞ』

『リリもAでなっちゃんがOだって』

 

 物撮りも映ったので、3等分にしていく。次にもんじゃを焼くのでホットプレートを綺麗にしてから食べる。スタッフさんの奴もひっくり返しつつ、全員が食べ始めた。

 

「あっつ!ん〜、でもおいひい!出来立てサイコ〜」

「うん、美味しいね。こういうのはシンプルで良いんだよ。……いつもシーフードは単品で食べてたから、ミックスって実は初めてかも?」

「そうなんですか?まあ、お店で食べるとミックスって高いですからね。単体で味を楽しみたいのもわかります」

「えー、このお肉とお魚のごちゃ混ぜも美味しいよ?お好み焼きだったらアリだと思う」

 

 出来立てだからか、手作りだから、冷凍食品をただ温めた物より断然美味しい。隠し味とか入ってないはずなんだけどな。というか俺が入れてない。

 ホットプレートだから?1人暮らしだとお好み焼きとか作らないから自分で作ったものと比べられないけど、これは良い出来なんじゃないだろうか。

 霜月さんと水瀬さんはもちろんのこと、スタッフさんも美味しそうに食べている。お好み焼きはシンプルなシーフードと肉増し増しだから変な味にはなっていないだろう。

 3人分とはいえ、複数枚食べられるようにそれだけでお腹いっぱいになるようなな量ではなかったのでペロリと平らげてしまった。その間に『ソラソラ』のアップデートをしていたので水瀬さんのゲーム画面が映る。

 そこには。

 

「うぇ⁉︎ヴィヴィちゃんとアセムの水着⁉︎ヴィヴィちゃんの緑色のパレオ素敵すぎるんだけど!欲しい欲しい欲しい!パパママあれ買って〜!」

「買ってあげられるようなものじゃないから!いやいや待って、アセム⁉︎ちゃんと表記が『アセム/ル/フェ』になってる!新キャラ出せるんだ⁉︎」

「イベント配布がクロウだー!3・4章組ってこと⁉︎運営さん本気だね⁉︎」

 

『アセム&ヴィヴィ⁉︎やりやがったな運営!』

『衣装違いを熱望してたのは俺たちだけども!周年記念で絞った後にこの仕打ちかよ!』

『ヤバイの?この子たち』

『ヴィヴィはまだしも、アセムは実装される予定が皆無だったから……。嫌でもこれ、希望が持てる実装では?』

 

 アセム/ル/フェは実装されることがないと思われていた。ネタバレになってしまうが、このオリジナルアセムは4章で死んでしまうからだ。

 死んだキャラが新キャラとして実装されたことはない。その生死についてはかなり厳格なゲームで、生死不明キャラでもない限りは実装されたことはなかった。

 オリジナルアセムはしっかりと死亡描写があった。とんでもなくはっきりとした死亡描写だったので生死不明なはずがない。そのアセムが実装ってどういうことだろうか。

 本編より過去の状態、とかだろうか。それならまだ生きているから出せるけど。

 これはイベントストーリーを読み進めるのが楽しみになった。

 

「こんなの回すっきゃないでしょ!行きます!」

「早いな⁉︎しかもいきなりヒロイン演出⁉︎」

「あーあ、リリくん。また?」

「またとは⁉︎当たったんだから喜んで!」

 

 水瀬さんがいきなりヴィヴィの新しい水着を獲得。レベルアップをしていくとキャラの格好が変わるんだけど、水瀬さんが当てたヴィヴィはトップ画面で見た水着の姿ではなく、真紅のローブを纏った幼い姿だった。

 雰囲気もなんだか違う。

 

【あら、あなたは……?これも星の導きなのかしら?あなたも導かれてここへ来たのですか?わたしはケルト魔術師のドルイド見習い、ヴィヴィ・クロウ・モルゴースです。わたしの兄弟子のアセムは凄いのよ!同い年なのだけど、もう師匠を追い越しそうで!まだ10歳なのに……。わたしも負けていられないわ!だからあなたもアドバイスを頂戴?何が伸びるきっかけになるかわからないもの。わたし、彼には置いていかれたくないんだ】

 

「幼い!10歳⁉︎超プリチーなんだけど⁉︎若返ったヴィヴィちゃんとか新境地出してきたー!」

「7年前の姿?7年前かあ……」

「これ凄いね。頭身が違うから実質別キャラみたいなものなのにこれを1キャラとして実装するなんて。リソースの掛けられ方が半端じゃないよ。それこそ2キャラ分以上の労力が掛かってると思う」

 

 まさかまさかの幼い姿での実装。3Dキャラなのでモデリングも違うのに、わざわざ1キャラとして実装している。そのことに元ゲーム会社勤務の霜月さんが感心していた。

 元々のヴィヴィのモデリングがあるとはいえ、マイナーチェンジでどうにもならないことだろう。そこまでして過去のヴィヴィを実装したかったなんて。

 7年前って、ある意味彼女たちの全盛期というか。一番輝かしい青春時代だったって明言されてるもんなあ。その時期のヴィヴィの実装、このイベントストーリー、かなり凝ったものなんじゃないだろうか。

 水瀬さんはそのままガチャを続けて、40連目。

 もう1人のピックアップキャラを当てた。

 

【初めまして!師匠からル・フェを引き継ぎました、当代ドルイドのアセム・クロウ・ル・フェです!あなたとの出会いは星も教えてはくれませんでしたが……。きっと星の導きでしょう。子供だからって見縊らないでくださいね?これでも近接から魔術まで何でもできるんですから!

 ……あれ?ヴィヴィ、どうかしたのかい?ぅえ、泣いてる⁉︎誰が君を泣かせたんだ!……久しぶり?いやいや昨日も会ったじゃないか。変なヴィヴィ……】

 

「アセム君キチャー!こっちも幼い!しかもヴィヴィちゃんへの専用セリフあり⁉︎」

「うーん、意味深だねえ。しかもフルネームで名乗ってる。まあ、2人の関係性を考えたらそうもなるかも?」

「…………ぇ?」

「ん?リリくん、どうかした?」

「あ、いえ……。ちょっとCVが気になって。多分これ、アセムの間宮君が少年声で演じてるような……?」

「別の声優さんじゃないの⁉︎」

 

 こっちもヴィヴィ同様に幼いアセム。年齢も合わせてきたんだろう。設定的というか、過去話は確かにあったけど、その頃の輝かしい時代の2人なんだろう。

 本編時点ではアセム/ル/フェを名乗っていたのでこのフルネームを名乗っているのは珍しい。そのフルネームを名乗ることは、当の本人はせずに別キャラがフルネームを使っていた。クロウというミドルネームを他のキャラに与えていたために、彼はアセム/ル/フェを名乗っていた。

 それよりも俺が気になったのは声優について。アセムという3キャラは全員間宮光希という高校生声優が演じている。男の子なのでもちろん声変わりしているはずなのだが、聞いた限りは本当に声変わり前の少年の声をしていた。

 その声は間宮沙希君が本当に子供の頃に演じていた声が聞こえてきたために驚いてしまった。おそらく同一人物なのだが、声変わり後に声変わり前の声が出せるものなのかと、両方の声を知っているからこそ、男の生態というものからして驚愕してしまった。

 目当てのキャラを手に入れたので水瀬さんがキャラ性能とかを見られる詳細ページに飛ぶ。

 そこにははっきりとイラストレーターの名前の下にCVとして間宮光希と書いてあった。

 

「ほ、ホントにみーくんだ⁉︎え、みーくんこんな声も出せるの⁉︎」

「男の人、なんだよね?」

「というか、高校生ですよ。今日の2人のキャラはまだどっちも高校生のはずです」

「七色の声を持つって言われてるけど、七色すぎない⁉︎アセム3キャラやってるのに、こんな少年声まで⁉︎アセムでも儚げな少年だったのに、こんなショタ声まで出せるなんて聞いてないよー!」

「夏希、ショタ声って……」

 

 彼の声帯はどうなってるんだ?高校生の弟役やそれこそズァークの主役の青少年役をやったり、少年漫画の青年ボスキャラも演じていた。それを知っていても、この落差は驚きを隠せない。

 普通男は声変わりをしてしまったら昔の声なんて出せない。出せるわけがない。それくらい子供の声は高く、女子の声ともまた違う。声優さんが演じるなら女性が演じるのが一番近いために基本は女性が演じる。

 たまに男性声優も少年の声を演じることもあるが、本当に滅多にないケースだ。

 だいたい無理しているような声なのだが、この間宮君の演じるアセムの少年声は昔の自分の声だからかとても自然に聞こえた。

 彼、俳優にしても声優にしても才能がありすぎるんじゃないだろうか。

 ついでに性能を確かめていく。アセムは自己紹介ボイス通り、通常キャラとは違って遠距離魔術だけではなく近接戦闘もできるオールラウンダータイプだった。これは多分クロウという彼のクローンの中でも最高傑作の性能をしているとされているキャラの強化版のようだ。

 実際に使ってみないとわからないが、スキルで書いてあることが強すぎる。攻撃アップバフが2種類に全体攻撃魔法と防御バフが一緒になったスキル。必殺技は特大ダメージという最高攻撃力に全員の状態異常回復と頑強というどんな攻撃を受けてもHPが1残る状態を解除不能状態で付与って書いてある。

 

「これ、本当にサポートもできる万能型アタッカーでは……?」

「つよーい!しかもこのアセム、普通のアセムと一緒に編成できるの⁉︎」

「あ、そっか。水着は別キャラ扱いで同時編成できるんだよね。まさかのアセムくん2人にヴィヴィさん2人なんていう夢のパーティーが組めるってこと?」

「それは本当に夢ですね」

 

『限定キャラに恥じない性能!ヴィヴィちゃんはどんどん夢を見ていけ〜』

『幼い時の方が強いって……。いや、設定通りか』

『そうなんだよなあ。設定的にもこの姿の方がアセムって強いんだろうし。本編では超弱体状態のせいでまともに歩けなかったんだから』

『あの時でも強かったのに、万全になったらどうなるんです……?』

『目の前の超凛々しいショタになります』

 

 続いてヴィヴィも見ていく。こっちも声優さんは変わらず夢城さんでイラストレーターも変わらなかった。

 こっちもこっちでいつものヴィヴィとは真逆で後方支援特化型のようだ。回復魔法はもちろん、妨害系や攻撃魔法が満載だった。むしろ近接戦闘はできそうになかった。いつもは万能型のオールラウンダーで何でもできたのに、今回の水着はむしろ後方での戦闘しかできないようだ。

 

「うーん、関係性シャッフル?でもこれはこれでエモい!」

「これはイベントストーリーが楽しみだね。次あたしの番ね」

「どうぞ」

 

 続いて霜月さんがガチャを回す。その前にクレジットカードで課金をしてガチャ石を貯めてからガチャ画面へ。

 そして霜月さんが初めの10連を回した時、それまでに見たことのない演出があった。本来であれば天空船が見えて光るか、ヒロインが表示されるのかのどちらかがレア演出だ。

 だというのに現れたのは、ドアップにされた水着姿のヴィヴィの姿が虹色の光と共に出てくるものだった。

 

「何これ⁉︎あたしも見たことがないんだけど!」

「僕も見たことないなぁ。ヴィヴィの理由は今回のピックアップだから?」

「レア演出なのかな?」

 

『リリぃ?』

『なぁにこれ?』

『初めて見る演出だわ。今回からの追加か?』

『水着ヴィヴィのイラストと同じだから、多分今回からの特殊演出』

 

 そして表示された10個の球の中で、何だか虹色に光る球が3つもあった。虹色は最高レアの星5が確定で、しかも今回はキャラピックアップのガチャだ。つまり星5キャラが3体確定ということ。

 霜月さんが1つずつ開けていく。そして1つ目の虹色の球を開けると、水着のアセムが出てきた。2球目3球目もなんとアセム。全部ピックアップキャラというビックリな結果だった。

 

「アセムだけ?ヒロインが出た時もピックアップキャラ確定だったから、今回もそういうことだったのかな?」

「2凸?ヴィヴィも1人は出てほしかったなあ」

「霜月さん、まだ回しますか?」

「ヴィヴィがまだだからね。もう少し回すよ」

 

 30連目。またヴィヴィがドアップになる演出が出た。多分今までのヒロインが出てくる演出と同じならピックアップキャラが確定。

 また虹色の球が2つ。これでヴィヴィが出なかったら配信としては面白いんだけど。

 俺のその予想は裏切られ、最初の虹色で水着ヴィヴィが、2球目でまた水着アセムが当たった。これで3凸、最高凸なので有力キャラはこれだけ重ねたいところはある。

 これ、たった30連でやるのは凄いよなあ。

 そして次は俺の番。20連目で特に演出はなかったものの、何故か2つ虹色出て、水着ヴィヴィと水着アセムが出た。今日は当たりの日だ。

 

「よし、撤退!」

「全員サラッと当てられたのは良かったね。ひとまずガチャはおしまいにする?」

「おしまいにしましょう。本件は食事ですし。もんじゃ焼き作りましょう」

 

 改めてホットプレートに熱を入れ始める。俺たちがガチャをしている間にスタッフさん達の分のもんじゃ焼きは始まっていたようで、中々に強烈な匂いがスタジオに充満し始める。

 ホットプレートが熱を帯びたところで、汁を残してもんじゃ焼きの土台を作り始める。それの中に汁を3分の1ほど入れて温める。

 良い感じに汁が温まり始めたところで土台を崩して味を絡めさせて、また土手を作って真ん中に汁を入れていく。これを汁がなくなるまで繰り返す。

 餅は別に温めておいて、明太子はとにかく崩して汁に混ぜていく。

 もんじゃ焼きを作る様子を見るのも初めてだったのか、水瀬さんは興味深そうに俺が作るもんじゃ焼きを見ている。

 3度繰り返して最後に混ぜておしまい。あとはお好きにどうぞで渡す。

 

「これがもんじゃ焼き……!えー、チーズが伸びてる!おもしろーい!」

「すごい熱いから気を付けてね、夏希」

「えー、じゃあエリー、ふーふーしてよ」

「ええっ⁉︎」

 

『ふーふー見たいっ‼︎』

『そんなものまでやってもらって良いんですか⁉︎』

『ASMRは⁉︎そういうものはないんですか⁉︎是非耳元で囁く感じで!』

 

 コメント欄が一気に盛り上がった。これは俺は少しの間黙っていた方が良いな。俺が黙ったことと水瀬さんの期待したキラキラした目に負けたのか、水瀬さんの箸を使ってもんじゃ焼きを掴む。

 そして口の近くに持っていった。

 

「ふー、ふー。……アーン」

「あむっ!……おいしーっ!明太子とチーズってどうしてこんなに合うんだろう!」

「和と洋でも合うものは合うよね。……恥ずかしかったぁ」

 

 女の子同士でもやっぱりあーんって恥ずかしいんだな。ここ最近霜月さんがしょっちゅう顔を赤くしている気がする。でも水瀬さんが凄く満足している様子に何も言えないみたいだ。

 男同士でやるのはもうネタみたいなものだから恥ずかしいというより何やってんだろって思うだけだ。いつかやりそうだな、男同士のあーん。視聴者が望むならやりそうなのが俺たち配信者というかエンターテイナーだ。

 黙々と食べるけど、やっぱり明太子餅チーズが最強なんじゃないかと思う。このしょっぱさと日本人の好む餅の柔らかさが濃いタレに絡んで美味しい。

 濃い味だから飲み物も進むものの、ペロッと食べれてしまった。レシピの3人前とかってそこまで量が多くない。それを3人で分けたらすぐになくなってしまうのは想定通りではある。この後もやることはあるので満腹にならなくて良かったと思おう。

 

「ふー、ご馳走様でした!お好み焼きももんじゃも美味しかった!質問も結構答えたけど、ここまでは前半戦!ここから後半戦だよ!」

「7割は終わったんじゃないかな?途中にガチャ配信も挟まったし」

「まあ、お楽しみはまだあるってこと!ちょっと準備をするので蓋絵でーす」

 

 一旦配信画面をサムネにしてスタジオを移動する。というか事務所に戻る。歩いて戻れる場所なのでそっちへ行き、ゲームをやれる環境に移動した。

 今日の最後は罰ゲームみたいなものアリのゲーム対決で締める。

 

「はいっ、というわけで戻りました!今日の最後はね、一瞬でゲームが決まるただの運ゲー、『戦争ゲーム』をやって行きます!ルールは簡単で、トランプで大きい数字を出した人が勝ちってだけのゲームだよ。ただA(エース)K(キング)に勝てるけど2には負けて、ジョーカーはAに勝てるけど3には負けるってルールもあるよ」

「で、負けた人はASMRで恥ずかしいセリフを読みます。これはエクリプスの皆さんにセリフを募集しました。男女で分けているので、あたしたちが負けたら女性用の箱からお題を引いて、リリくんが負けたら男性用の箱からお題を引きます」

「……え?お題って2人が考えたんじゃないの?先輩方に聞いたってこと?」

「後輩ちゃんからも貰ったよ!私たちじゃ偏っちゃったから、色んな人の奴を入れておいた!ガンガンぶん回していこうね!」

「聞いてないんだけど⁉︎」

 

 それ俺チェックしてないよね⁉︎準備期間で俺がFPSとかドロッセル先輩向けの『ウルプロ』資料とかで忙しかったから基本は2人に任せて、内容も1回チェックしたはずなのにそれとは違うもの入れられてるとか!

 謀られた!

 

『リリ、マジで知らなかったっぽい』

『そっかあ、全員から募ったのか。……ヤバイのありそう』

『正気か?運勝負でリリに挑むなんて』

『さっきもその幸運にあやかっただろうに』

『いや、むしろ今日分は使い切ってるんじゃないか?それにリリは自分の運があまり良くないし』

『幾つ聞けるか楽しみだぜ』

 

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