元俳優、タヌキVtuberに転生する   作:桜 寧音

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7章 2024/8~
ウィザーズ &モンスターズカジュアル対戦会(概要欄要確認)


 8月になった。東京オリンピックは無事に始まり、開会式を録画して見ておいた。萩風さんが映っているところは何枚もスクリーンショットを撮ったよね。日本代表として活躍してくれることを祈るだけだ。問題は世界で戦う人たちだからこそ萩風さんに出番があるか微妙なところだ。

 メジャーリーガーも何人も参加しているために、野手投手共に層が厚すぎる。トリプルスリーを達成して今年も調子が良い萩風さんでさえもレギュラーが安泰じゃないというのが恐ろしいことだ。

 野球の初戦は今日から。その試合は同時視聴をする予定だ。そのため朝の配信を終わらせた後は急いでお昼ご飯を食べて試合に備えるつもりだ。

 その他に月末あったことはドロッセル先輩のV事甲の二年生の新入生ガチャがあったくらいだろうか。一年目から秋の全国大会と春甲子園に出場したドロッセル先輩は他の方よりも進行が遅く、月末ギリギリにようやく新入生を迎えるところになった。

 春の甲子園に出たために学校の評判が強豪まで上がっており、その結果新入生を9人も迎えることができた。そのおかげでエクリプスのライバーは全員選手化することが確定。1期後期組の5人と2期前半組の4人を選手にして、残りは5人となったので来年の新入生は6人以上が確定しているので問題なしとなったわけだ。

 その新入生ガチャには当然のように俺が呼ばれた。俺の運を使って良い選手が来るならいくらでも協力する。2年目の新入生ガチャからは初年度とは異なり転生選手が確定せず、でもチームの中核になってほしい選手が欲しいためにターニングポイントになりやすいガチャだ。

 強い投手は何人居てもいいし、足りない野手もたくさんいるのでステータスが高い野手が入ってきてくれれば即戦力。そうまで言わなくても新チームになった秋から戦いやすくなるのでステータスが高いか良い特殊能力を持っていることが望ましい。

 

 9人もいれば良い選手が来るだろうと、俺の経験則が言っていたのでそこまで心配はしていなかった。学校の評判が良ければ新入生のステータスに補正がかかり、結構見られるステータスであることが多い。

 現状投手2捕手1内野2外野1なので内野に強い選手が欲しいところだった。

 新入生スカウトという中学生に唾をつけられるシステムでステータスの高い選手に何人か声をかけておいたようなのでそちらにも期待とのこと。スカウトの選手はステータスが野良の新入生よりは高いので戦力としては実際期待できる。

 ここで転生選手を見付けられる可能性もあるのだが、3年縛りでやっているとスカウトに必要なアイテムが圧倒的に足りないのでまあ無理だ。

 そんなこんなで臨んだ新入生ガチャ。スカウトした選手は3人。期待値的にもそんなところだ。これはリスナーと相談して強めの野手をスカウトしたらしい。

 俺はそっと、新入生にいる投手のみ適性の白石(しらいし)という名前から目を逸らした。ありふれた名前だから、ただの野良の可能性が高かったからだ。

 スカウト組は予想通り、ステータスが優秀だった。特殊能力はパッとしなかったが、ステータスが高いだけでありがたい。特殊能力なんて合宿とか特訓マスとか試合結果とか本屋で荒稼ぎするものなんだから。

 コンバートは必要になるものの、守備能力が全員高めだったので後は打撃能力を伸ばしていけば秋大会には全然間に合う。そんなスカウト組の今後の方針も軽く決めつつ、問題の白石という名前の投手を見ていった。ドロッセル先輩は詳しくないからこそ気にせずすぐにカーソルを動かしてしまった。

 そこに見えた星274という数字に、俺は予想通りだったために天を見上げる。このチーム、最強かもしれない。

 

「え、ええっ!リリ君、この方どなた⁉︎凄い強いのですが!球速144km/hでコントロールとスタミナDDは即戦力ですよ⁉︎」

 

「その方、現在東武ライオンズのエースを任されている白石さんです。茨城県出身で、メジャーリーガーの宮下さんや羽村さんと同い年。ドラフト6位ながら球界を代表する投手に成り上がった素晴らしい投手ですよ。霜月さんの元となっているショートの太田原さんと同い年、同じ学校で甲子園にも出場している凄い方です」

 

「プロのエース⁉︎だからこんな強いんだ!カットボール1、カーブ3、ドロップカーブ2だから総変化6?特殊能力は……『打たれ強さ○』と『キレ○』に『対左打者◎』!え、強い強い!」

 

「オーソドックスに強い投手ですよ。リリーフ陣も盤石って恐ろしいな……」

 

 野手も投手も大満足な結果だったようで、その日はキャラ当てとコンバートをどうするかを決めたところで終了。白石さんのアバターはネムリア先輩になった。途中から出てきて凄い結果だけ出して帰っていくのがぽい、とのこと。

 ドロッセル先輩にはできるだけ強いチームを作ってもらって大会でも優勝して欲しいけど、この月末に1期前半組による3Dライブが結構大きな会場であるんだよな。6000人収容できる場所でチケットは速攻完売。その練習もあって1期生は毎日忙しそうにしている。

 応援の気持ちもありつつ、俺は俺で過ごそうと思っていつも通り、とはまた違うかもしれないが珍しい形での朝活をしようとしていた。

 

「はい、皆さんおはようございます。今日は告知通り、『ウィザーズ&モンスターズ バトルクロス』のカジュアルマッチを開催しまーす。リスナー参加型のカジュアルデッキのみでの対戦会です。カジュアルですからね、ランクマッチで使うようなガチデッキはなしですよ」

 

『キターーーー!俺の古のデッキが火を噴くぜ!』

『リリちゃんおはよー』

『デッキが火を噴いたら物理的に燃えない?』

『あの、言葉の綾……』

『バトルクロスのカードはデジタルなんだから燃えるわけないだろ何言ってんだおめえ』

 

 朝配信だというのにコメント欄のテンションが高い。まあ、夏休みということで学生さんが体力を余らせて元気溌溂なのだろう。

 長期休みは配信者にとっても集客のチャンスらしい。見る視聴者層が結構変わるので新規の人が多く、そういう人たちが興味を引くような配信をしたら登録者数がアップ、なんて簡単にいくわけないがチャンスではあるらしい。

 その代わりに変な人が出やすい季節というか時期らしく、コメントや配信を荒らすような人も出やすいようだ。最低限のマナーがわからない人や、幼い子供までも配信に現れて目立とうとした結果とんでもない行動をするみたいだ。

 子供だろうとなんだろうと、今回のテーマはカジュアルだ。お金がなくてデッキが組めないとか言われてもルールに適していないデッキを持ってくることはアウト。ルームの管理者権限で参加者をキックすることもできる。

 参加者は最大50人入れるルームを作り、観戦者は200人入れる部屋だ。これで対戦には参加できなかったとしても好きに見たい試合を見に行けるだろう。

 口酸っぱくカジュアルデッキを使うことを明言して、配信画面の左下にも「カジュアル大会。ガチデッキ禁止!」と書いたポップアップを表示させて、参加する前に概要欄でルールを見てくれと伝えてからカジュアル大会を始める。

 

 ルームナンバーを公開したらすぐに対戦者の50人は埋まってしまった。昨日告知したばかりなのにそれだけ戦いたい人が多かったのか。

 俺が使うデッキはエクリプスでの大会でも使ったFORと神デッキ。ガチデッキと呼ばれるようなTia表に載ることもない、ランク外のデッキだ。そもそも攻略サイトにもテーマとして載っているか怪しいデッキ。これで大会に挑むとか正気じゃないんじゃないか?

 大会で使ったデッキは後日コンマイさんからデッキごとデータとしてプレゼントされた。そのおかげで集める必要もなく使える。霜月さんたちももし参加したくなっても即参戦できるようにした。

 初心者に禁止カードが与えられたように、今回のレギュレーションは禁止カードを1枚だけ使用可能にしている。全員のデッキを確認なんてできないのでその辺りは参加してくれるリスナーの良心に任せるしかないのだが、ウチのリスナーは治安が良いから大丈夫だろう。

 着席して1戦目を始める。コイントスに負けて先攻を奪われたのは痛いなあと思っていながら相手の動きを見ていたら、なんか恐ろしいカードを発動していた。

 

「え、『アフターアポカリプス』⁉︎それ、デッキに戻したそのカードをこのターン中に引き直さないと負ける超ギャンブルカードでは⁉︎」

 

『いきなりギャンブルデッキとか胸熱!』

『いや、アポデッキはカジュアル大会のお供。ただのギャンブルデッキと同じにするな』

『ドローソースをふんだんに注ぎ込めばいけるっちゃいけるけど、それってデッキを全部捲り切れば勝ちっていうのと同じだから……』

『リリがこの大会を禁止制限解いちゃったせいでこんなネタデッキ使いが出てきちゃったよ』

『最近のテーマだとデッキほぼ全部墓地送りにできちゃうからこれ引くの結構楽になったんだよな。そのせいで見事に禁止行き』

『引いたら特殊勝利。引けなかったら負けなんてただソリティア見るだけやん』

 

 今回はどんなネタデッキが見られるかと思って普通のルールだったら禁止にされているカードの制限も取っ払ったけどさあ!いきなり禁止カードになったギャンブルカードを見るとは思わないじゃん!

 しかも俺の手札にはドローを止められるようなカードもない。これ、詰んだか?

 相手がとにかくデッキのカードを減らしていく。最近は特定のカードを墓地に落とす効果を持つカードが増えた。墓地が第2の手札なんて言われるくらいだ。墓地から使える効果も豊富なので如何に必要なカードをデッキからどこかに送るかが大事になっている昨今。

 どんどんと相手のデッキが削れて、モンスターも特殊召喚されていく。リスキーながらもカードをドローするカードを使っていって。

 1分ほど動きを見ていたら、その動きは止まった。

 

「あれ?止まった?」

 

『万策尽きたか?』

『40枚使い切るって中々厳しいし』

『『アフターアポカリプス』が墓地に落ちた様子は、ないな』

『あ』

 

 相手がターンエンドを宣言し、その瞬間『アフターアポカリプス』のイラストが出ると相手のカードが全部割れていって俺の方にWinの文字がデカデカと出た。

 ドローし切れなかったかあ。

 

「『アフターアポカリプス』って特殊演出あるんですね。知りませんでした。対戦ありがとうございました」

 

『リリ何もやってねえ……』

『特殊勝利系は基本特殊演出がある』

『禁止カードなのがもったいねえなあ。少し前まではOKだったからこそコンマイも演出つけたんだろうけど』

『こいつの命が短いのは知ってたから皆割と使ってたよな、一時期』

『勝利の方がかっこいいんだよなあ。一回見てほしい』

 

 俺の勝負が早すぎたのか、他のテーブルはどこも試合を続けていた。なので一回テーブルから離れて他の試合を見に行く。「見せてやろう、神を!」と「ふふ、時代は神」の2人の対戦だ。これ、どちらかが相手のプレイヤーネームを見て戦おうと思ったんじゃないだろうか。

 というわけで現在のところから見てみる。神は立っているんだろうか。

 見に行ったらむしろ、盤面はほぼすっからかんで裏守備のモンスターと伏せカードが1枚あるだけ。寂しい状況だ。ライフもほとんど削れてないし。

 どういう状況だ、これ。無駄に8ターンとか進んでいるけど。

 

「えーっと、お見合い状態?」

 

『これこれ。原始時代はこういうスロースタートだったものよ』

『というか膠着状態では?』

『墓地見る感じ、お互い出そうとして防がれたか普通にやられたか?』

 

 本当だ。神がどちらの墓地にもいる。これ、エースがお互いやられてジリ貧になっているのか?

 そうっぽいな。ログを追うと相手のモンスターを破壊する罠カードがあったり、相手を道連れにするモンスターがいた。神って名の付く古いカードって破壊耐性とかないから案外古のカードで突破されるんだよなあ。

 最近の神と名の付くカードはむしろ強力な効果がてんこ盛りだ。原作で強すぎた神をそのままカードにするとゲームバランスが崩れると思って当時のコンマイがナーフしたんだろう。そのせいで神(笑)とか「紙のカード」みたいなことを言われるカードに成り果ててしまったんだけど。

 サポートカードがたくさん出て原作の能力を再現するようなこともできるようになったんだけど、必要枚数が多すぎて正直運用がしづらい。だからこそ楽しいと思うようなプレイヤーが今日はたくさんいるんだろう。

 試合を見続けていたけど、「ふふ、時代は神」の方が別の神をどうにか召喚して勝利。お互いデッキコンセプトが似ていて、神を守るための妨害札が多すぎたためにどっちも盤面をぐちゃぐちゃにされてジリ貧になっていた。

 これこそカジュアル大会の極み。

 

『なあ、リリ。23テーブルについてる『僕は最強なんだ!』って奴ルール違反してるんだけど。ゴライアスは今の環境デッキだろ?』

 

「ゴライアスデッキ?ちょっと確かめますね」

 

 コメントで多くなっていた指摘を見てテーブル23に行く。そこではゴライアスという今の環境でTia1に入る先月実装されたばかりのデッキを使っている方と、昔ながらのメタビートデッキと呼ばれるロックをしまくってじわじわと削っていくデッキが試合をしていた。

 環境デッキ相手には厳しいかと思われたが、結構メタビートの方も頑張っている。プレイヤーネームが『お前に闇を見せてやろう』という完全ヒール系なのにコメント欄では『闇ニキ負けないで!』みたいなコメントでかなり応援されている。

 墓地とか確認して明らかに環境デッキであることを確認し、部屋の管理者権限でこれの前の試合も見た。『僕は最強なんだ!』は2試合目だったようで、その時もゴライアスデッキを使って瞬殺している。これは意図的に環境デッキを握っているのでアウトだ。

 

「はい。確認が取れたのでこの方はアウトです。『僕は最強なんだ!』さん、もし配信を聞いているのならルール違反なのでデッキを変更するか退室をお願いします。この試合をサレンダーする必要はありませんが、カジュアル大会だということを理解してください」

 

『カジュアルで最強デッキ持ってきて何が楽しいんだか……』

『ただ蹂躙したいならランクマ行けって。こっちは古のカードでキャッキャウフフしに来てんだよ』

『ランクマでボコされるからこういうレギュレーションで可愛いカードを使ってるっていうのに』

『1戦目の虫ニキ、ドンマイ。ゴライアスに10年前のカードプールじゃ勝てねえよ……』

『慰めてくれてありがと。あんなん無理ゲーや。でも闇ニキめちゃくちゃ善戦してるのis何……?』

 

「メタビートって刺さるデッキには本当に刺さりますからね。というか今回禁止カード1枚だけOKにしたせいで『お前に闇を見せてやろう』さんが友達を失くす『鍾乳洞の災い』を使ってるのがロックがかかっている理由ですね」

 

 『鍾乳洞の災い』はなんというか、何でこんなカードを刷ってしまったんだと言われるぶっ壊れカードの1枚だ。カードテキストを簡単に説明すると『相手よりモンスターの数が多いプレイヤーはモンスターの効果と攻撃宣言が無効になり、モンスターの数が同数ならこのカードを破壊する』というものだ。

 つまりこれ、ガチガチにロックするメタビートデッキとめちゃくちゃ相性が良い。これでモンスターの数を制限して、相手にモンスターを生贄にしたりすることを封じてしまえば相手は何もできないという戦法だ。

 嫌われる、友達を失くすというのは本当で、コンマイによる禁止カードへの送還が過去1で速かったと言われればその凄さがわかるだろうか。このカードが生存していた頃の店舗大会の優勝デッキがほぼ全部メタビートやガチロック系になり、おもんないと散々ネットでお気持ち表明をされたカード。

 実際ここでプレイヤーの人々は結構な数が引退したらしい。

 俺はコレクターだったのでヤバいなと思いつついつも通りにカードを集めるだけだったからあまり影響はなかった。まあ、引退した人もその後の昔のカードのリメイクカードが出るとかで復帰した人が多かったようだけど。

 刷ったことは反省すべきだけど、その後の巻き返しは大企業として流石だと思った。そんなとある時代を象徴するカードが『鍾乳洞の災い』だったりする。

 

「うーん、禁止カードが猛威を振いまくってますね。次やる時は禁止カードなしのレギュレーションにしましょうか」

 

『だな。これは酷い』

『ドローカードを仕込む連中は可愛いもんだったな……』

『さっき『デスエンド・タートル』で神を射出するプレイヤーいたぞ』

『あの初代主人公も使って、ヒロインカードを射出したからって当時のキッズが泣いたことで有名な『デスエンド・タートル』さん⁉︎』

『神を射出って、豪華な生贄だなあ。諸行無常』

 

 見ていた試合は結局ロックをどうすることもできずに『お前に闇を見せてやろう』さんの勝利。ガチガチロックのデッキロストをさせるのは本当に酷い。これは禁止カードにされる。

 ルール違反側に勝ったのでコメント欄では賞賛されているものの、戦法が本当に友達を失くすようなものだったので最低同士の醜い争いだったのではないかという話で収束されていく。

 で、問題のプレイヤーはこのまま居座ろうとしたのでルーム管理者権限でキックした。あと俺のルームに参加できないようにブロック。忠告を聞いていないにしろ、強いデッキでカジュアル大会に居座ろうとする人は大会の趣旨に合わない。

 他にはいないかと試合ログをざっと見て、割とおかしいデッキを使いつつも強いデッキを使っている人位はいなかったのでこのまま続行。

 次の試合をしようとテーブルに着いたところで、コメント欄でさっきキックした人がSNSで暴れていると報告される。まあ、好きに言わせておけば良いんじゃないかな。動画の概要欄にルールは記載されているし、俺の配信でちゃんと口で注意もしたんだから。

 ルール違反者が何をやったって主張は受け入れられないだろう。

 

 そこから何戦かして、ルームを建て直して結局4時間ほど配信をしてしまった。面白いデッキや昔懐かしいデッキを使う人も多かった。アニメキャラのデッキを再現した人が何人もいて、アニメのシーズンが違うながらも夢の共演のような試合もあった。

 結構笑えたのが、初代主人公のデッキを用意してくる人がたくさんいて、その人たちも自分の解釈やアニメの時期、もしくは原作に合わせてデッキを組んできたので結構違うデッキで戦っていたのが印象的だった。

 とあるモンスターカードを5枚集める本当の初期のデッキ、神3枚を入れたごちゃ混ぜの超高コストハイランダーデッキ、後々に出た劇場アニメ版の現代のカードが盛り込まれた現状最強のデッキなどなど、それらがぶつかって名試合が多かった。

 爆笑を隠せなかったのが、主人公のフリをしながら原作でたった一回だけやったデッキロスト戦術を主にするデッキを作ってきて主人公デッキだとプレイヤーネームで主張していたプレイヤーだ。主人公のカードは数枚しかなく、それ以外は完全にデッキ破壊しか考えていないデッキでなぜ主人公デッキでいけると思ってしまったのか。

 きっちりと相手のデッキを破壊し尽くして、試合の終わりに主人公の決め台詞を一言コメントで残してルームを退室していった律儀さに笑いが止まらなかった。そこまでロールプレイをするならきちんと主人公のデッキに寄せたら良いのに。

 

 朝配信を終えて、スタッフさんに朝配信でルール違反をしたプレイヤーがSNSでリリの名前を出して暴れているということを教えてもらい、一応見に行ったがめちゃくちゃな論法で強いデッキを使って何が悪いと主張して、それを俺のリスナーや一般ウィザーズプレイヤーが正論で「カジュアル大会の意味を辞書で引いてこい」と伝えていた。

 俺が出張ると余計な面倒になると思ったので完全に無視。参加する前に概要欄を見てくれって伝えてるんだからそのルールを守らなかったのが悪い。

 なんか概要欄に強いデッキテーマを羅列して名指しで禁止にしなかったリリが悪い、みたいな主張を始めたようだが、最新デッキを使うカジュアル大会とはなんぞやと問いかけたら返信がなくなったようだ。

 まあ、最新デッキなんてランクマッチやフリー対戦で使って良いんだから、わざわざVtuberの配信用の大会で使う必要はないんだよな。動きを知りたいから強いデッキと練習させてくださいって配信者もいるけど、今回の趣旨とはまるで違うんだし。

 春休みとかもいたけど、こういう変な人増えるよなあ。スパムとかなら問答無用でブロックすれば良いんだけど、新規のこういう粘着質な人とかは見ただけじゃわからないからどうしようもない。

 ちょっとだけ気分は悪くなったものの、全体的には面白い試合も多かったので概ねプラスだ。次の配信ネタもいくつか出てきたから、それをメモに残しつつオリンピックの試合を見る用の配信枠を用意していたところでコウスケ先輩から電話が来る。

 

「もしもし?どうかしましたか?」

 

「俺今配信中なんだけどさ。『ウルプロ』のガチャやるから来てくんね?ドロッセルだけに加護を与えてたら不平等だろ?」

 

「えー……。僕は自力でアンダーソンさんを引いたんですけど?しかも3回以内で」

 

「そこをなんとか!」

 

 ドロッセル先輩との並走企画でコウスケ先輩が栄光ナインの3年縛りをやっていくというものの、初回配信のようだ。こんな真っ昼間にやってるのは珍しいと思ったけど、休みの学生向けにお昼に配信枠を取ってるのか。

 許可を出して俺の立ち絵を載せる。そのまま電話を繋げたまま配信画面を見ていることにした。

 並走企画だからか、全員茨城県で回している。ガチャの3回目、ラストでコウスケ先輩は珍しくほぼ確定の転生選手ではなく、天才選手を引いていた。できれば投手の方が良かったが、野手のようだ。

 

「お、おう?低い確率は引き抜いたか?ピッチャーの方が良かったなー」

 

「おめでとうございます。でもステータス的には強いですし、『スラッガー』と『チャンス○』持ちなのは打撃面ではかなり良いですよ。最初のポジションがショートなのもコンバートの必要ないですし」

 

「天才はやっぱショートだよな。まあ、周りの選手も強いしなんとかするか?」

 

 そんな珍しい確率で始めたコウスケ先輩の栄光ナイン。

 先輩方のステータスを確認したらなんと、1学年に1人ずつ天才がいるという超低確率をぶち抜いていた。

 

「全員野手!こんなことなら天才投手か、新入生で天才2人ぶち抜いてくれよ〜!」

 

「あ、ガチャ終わりですね。じゃあ僕は退散します」

 

「見てろよ、リリ!これで初年度から甲子園に行きまくってやる!」

 

 そんな捨て台詞を聞きつつ、俺は退散。

 天才選手ってステータスは伸びやすいけど、試合中に使えるウルトが微妙だし、特殊能力は転生選手の方がたくさん持ってるからぶっちゃけハズレ、ということは口に出さなかった。天才投手ならステータスお化けにできて無双できるんだけど、野手だと突出した最強にできるだけでそこまで旨みがないというか。

 ステータスよりも特殊能力の方が大事なので、優秀な転生選手の方がありがたかったりする。コウスケ先輩の野手は持っている特殊能力も良いので化けるだろうけど、栄光ナインで勝つためには強い投手が必須なので野良投手しかいないのは本当にキツイ。

 俺も同条件だけど、俺の手に入れた野良投手、普通に星120あったから初期値としてはかなり良いんだよな。それに初年度の夏は敗退したけど1年目の春甲子園は確定させたし。

 本当に強い特殊能力がめちゃくちゃあるメジャーリーガーやプロ野球選手を引いて育てる方が最終的には強くなるというのが、野手天才の微妙なところ。これ、本当に勝ちまくらないとコウスケ先輩は一番微妙なチームになるかもしれない。

 




『ましょうどう』で禁止カードを調べると悲しい気持ちになると思います。
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