元俳優、タヌキVtuberに転生する   作:桜 寧音

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劇場版『ズァークHE 第2部-重力と無重力の狭間で-』

 今日は朝配信だけして、夜の配信は休みを貰った。収録があるとかではなく、純粋にプライベートでの出来事。

 のはずだったんだけど。

 

「これ、悪目立ちしません?」

 

「しないしない。男1、女3だとしてもただの仲の良い大学のサークル友達としか思われないよ」

 

「本当です?」

 

 昨日『ズァークHE』の第2部が公開されたので俺は1人で観に行くつもりだった。ライバーの誰かと行く予定はなかったのに、なんか大所帯になっている。

 というか、真紀さんと陽菜ちゃんがいるのは想定外なんだけど?ハピハピ先輩と行くのもどうかと思っていたら追加で2人連れてくと言われて現地で2人の詳細を知るという。

 ハピハピ先輩はあっけからんと問題ないと言い退けるけど、注目されてるよ。さっきから男性の視線が痛い。美少女3人を侍らして映画を観に来るアイツ何様だよって感じだ。

 ハピハピ先輩も女性陣の中では背が一番高いが、それでも女性としては平均くらいだろう。それでボーイッシュというか涼やかな半袖短パンに帽子という髪の毛の長さを見なかったら普通に少年っぽく見えるものの顔立ちは完全に女性なので、どうしたってWデートという言い訳もできない。

 

「おめかしも抑えてきたんだから、ガチデート服で来られても困るでしょ?」

 

「えー、ハピ先輩のオシャレ私服見たかったー」

 

「水瀬ちゃん、それはまた今度ね。2人は……ほら、リリ君。褒める」

 

「毎度褒めているので先輩の前でやるような拷問は勘弁してください」

 

 ハピハピ先輩と打って変わって、真紀さんは白色のワンピースにショルダーバッグと薄底の夏用オシャレサンダルというところ。陽菜ちゃんは黄色いTシャツに『ポケクリ』のクリーチャーが描かれたアニメTシャツに緑色のスカートとローファーだ。

 真紀さんと陽菜ちゃん、どっちも自己肯定感が低いからなるべく褒められることは褒めている。配信でもそうしているからか同期に激甘と言われるが、それは甘んじて受け入れる。

 だけど先輩の前でも言うのは、何というか恥ずかしい。今日も褒めるような可愛らしさだと含ませて言ったので許してほしい。

 

「2人とも『ズァーク』興味あったっけ?」

 

「声優のみっちゃん目当て」

 

「わたしはロボットアニメあまり触れてこなかったから、これを機に、みたいな?」

 

「同士が増えたってことで早速Go!」

 

 チケットは予約していたのでスムーズに購入。ハピハピ先輩に物販でパンフレットを2つ買ってもらい、俺たちはドリンクを人数分とポップコーンを大きなもので1つ買うことに。

 俺はあまり映画で食べ物を食べないのでドリンクがあればいい。陽菜ちゃんはポップコーンを食べたことがないということで目を輝かせながらタブレットで注文カゴに入れていた。というか、映画も来た覚えがないらしい。

 今回は第2部だから話がわかるのか心配になったが、2人とも配信サービスで1部を予習してきたらしい。それ以外の知識はハピハピ先輩に教わったのだとか。

 『ズァーク』シリーズの知識も必要になるものの、それは公式が出している『10分でわかる、ズァーク講座』という動画を見て概要は把握してきたようだ。今回主人公の声優を務める間宮光希君がナレーションで説明してくれるというものだ。

 陽菜ちゃんは大喜びで動画を見たらしい。

 

 前回の第1部でヒロインのマリーナが地球へ向かうための傭兵として主人公のフレンを雇い、コロニーを襲ってきた統一連合を倒した後に統一連合に雇われた宇宙海賊に襲われたもののそれも撃滅したところで終わっている。

 コロニーの1代表の代役でしかないマリーナが襲われる理由が簡単に語られ、地球で開催される会議の前に到達できない議員が多ければガウル側の信頼が失墜し、統一連合の発言力を高められるから。そして暗殺でもされようものならこれを錦の御旗として宇宙への締め付けを強くできるという理由からだ。

 何ともまあ、腐った理由だ。その腐敗を防ぐためにフレンは傭兵として影から様々なテロを防いでいるという。

 結構長い映画予告と、いつもの映画観劇に関する注意事項の映像が流れる、映画泥棒は絶対に許さないという、カメラの頭をした悪い人を捉えようとする動画だ。

 実は今のバージョンって俺がエキストラで出ている。まだ俳優だった時に安いながらも仕事だったためにマネージャーさんが獲ってきた映像の残っているもの。

 俺が映画泥棒を見付けてスマホで通報している姿がアップで映れば、知り合いには目線を向けられる。小声で後でね、と伝えてひとまずは切り抜ける。通報している声が音として録音されていなくて良かった。そこから身バレするかもしれなかった。

 

 この映像といい、戦隊モノのレッドといい、事務所も現場サイドも俺のことを起用しようと頑張ってくれてたんだよなあ。今や全て水の泡だけど。信用が落ちた事務所というのは本当に辛いものだ。

 本編が始まる。

 マリーナがいたコロニーが割と辺境だったということもあり、地球へ降りる前に一度近場のコロニーで補給を受けることにした。そもそもフレンたち傭兵団が持っているのは宇宙戦艦で、地球へ降りて使えるものではないために地球での足にはできないのだ。

 地球には別の移動用の乗り物を用意しているということで、地球へ降りる用のシャトルを借りることになる。宇宙議員の権利でガウルの資金でシャトルを借りられるのだが、ここでマリーナとフレンで意見が分かれた。

 

《危険だ。アンタは既に狙われている。余裕を持った行程で進んでいるが、ここで議員として名前を出してシャトルを借りては狙われるだけだ。それはアンタを危険に晒さないという依頼に反する》

 

《危険だとしても、私はガウルの一員として、顔として地球に降りなければなりません。ここで姿を隠して参加すれば、私の発言に誰も耳を傾けてくれないでしょう》

 

《ほとんどのガウルの議員は隠れて降下している。命を優先するのは当たり前の行動だろう。誰も彼もがやるから結局狙われるが、時間は稼げる。シャトルに細工されたり、そもそもシャトルに辿り着けないという事態にはならないんだ。どちらを取るかなんてわかりきっているだろう》

 

 議員としての意地を取るか、安全を取るか。お互いの信念が違うために対立する。『エウロパ』の実質的なリーダーはフレンのようで、他の傭兵団の人間は何も口を出さない。

 年若いパイロットが代表も務めているのは歪な構造だが、老兵たちはそちらの事情には口を出さないと決めているようで降下準備を進めていた。

 

《言いたくないが、あなたの父親も同じように殺されている。二の轍を踏む理由がわからない。ここであなたが殺されたら俺たちの今後の活動にも関わるんだ。今回の航行については口を挟まないでいただきたい》

 

《たとえ父と同じ末路を迎えるとしても。私は逃げるわけにはいかないのです。父は逃げなかった。私は父を尊敬しています。そして父のように、ガウルの民のために働きたい。それが私の、命を賭ける理由です》

 

《──あなたはどうやら、底なしのバカのようだ。いいだろう。説得ができないのなら折れてやる。ブレッド、シャトルの港までの護衛で小隊を預ける。俺以外の駆動兵器は予定通り降下カプセルに搬入。お嬢様との降下タイミングはズラせよ。いつもの運び屋としての顔を使え。俺だけ別便だ》

 

《ヘイ。ということはボス、フライングシューターの出番ということで?》

 

《残念ながらな。大気圏突入を本当にやるとは思わなかった》

 

 フレンが折れて、部下のブレッドに指示を出す。表情と声から本当に嫌々のようで、フレンの指示で傭兵団は地球降下に向けて準備を更に進めた。

 マリーナが降下するタイミングで護衛としてフレンだけで駆動兵器の対処をするというのだ。

 降下シャトルの予約の際に特に問題はなかった。屈強な男たちに囲まれているマリーナに手出しはできず、シャトルの手配のためにこのコロニー1で数日過ごすことになる。

 彼女はこのコロニーに来たことがなかったために、コロニーの視察に向かう。地球との玄関口ということもあり流通で発展している様が見てとれたが、それは表面だけ。

 少し足を外したエリアには、スラムが広がっていた。コロニー11はまともな運営をしているためにスラムなどなく、貧困児には孤児院へ入れるように手配をしているが、コロニー1ではかなり大きなエリアでスラムが広がっていた。

 その悪質な環境と貧困っぷりから、マリーナはハンカチで口を抑える。

 

《……酷い。ここのコロニーの議員たちは一体何をしているのですか?こんな目に見える貧困を放置するなんて……》

 

《何もしていないんだよ。コロニー1は『ガウルの反乱』で統一連合側に着いた。月と同じくコロニー側を裏切り、戦争で甘い汁を吸い続けていた。統一連合が勝たなかったらここは滅ぼされていたと考える人も多い。結果としてコロニー1は潤い、ガウルを下に見ているのさ。スラムに行き着くのはコロニー生まれの人間だ》

 

《わざと、放置していると?利益でもあるというのですか?こんな、人を苦しめるための場を……!》

 

《利用価値があるのさ。──ホラ》

 

 フレンは話している最中に懐からレーザー銃を取り出し、そこから3発撃ち抜く。その先にいたのは銃を手にしていた浮浪人。全員頭を撃ち抜かれて即死していた。

 初めて見る生身の人の死体に、マリーナは顔を青くしながらフレンに尋ねる。

 

《この、人たちは……》

 

《端金でアンタを殺すように雇われたここの住人だ。外から来たガウルの、真面目で正義感の強い議員はスラムなんてあったら見届けようとする。観光案内所で言葉を濁されたと思うが、あれはスラムを教えるためのいつものパターンだ。それで興味を惹かせて、裏でああいう暗殺者に依頼を出す。スラムで死んだら暴漢に襲われたとかで対処が楽だからな》

 

《何度も起きていることなのですか……?》

 

《ここ15年でありきたりになった。そういうコロニーなんだよ。受け入れろ。本物の暗殺者が来る前に帰るぞ》

 

《そこまで徹底しているのですか?だって、戦争は終わって、政治で話し合うための航行で……》

 

《統一連合とこのコロニーはそう思ってないのさ。ガウルの名前を名乗ったテロリストも多い。相手からすれば俺たちコロニーにいる人類は揃ってテロリスト予備軍だ。だから不安の種を先制して排除する。それが相手の主張だぞ》

 

 マリーナが狙われる理由、そして戦争の根本についての解答がされる。この根幹があるからこそズァークの世界では基本的にいつでも戦争が起きており、統一連合とガウルの溝は埋まらない。

 統一連合ともガウルとも理念が合わずに第三勢力が出てきたりもするが、今回のHEに関してはその辺りは気にしなくていい。あくまで統一連合とガウルの、政治的軋轢を発端とした小規模な紛争に過ぎないのだから。

 

《戦争に勝ったからこそ弾圧する。歴史は勝者が作るのと同じだ。彼らにとっての良い状態を維持するために悪辣な手段も行使する。それが政治だ。外交なんて外交相手がいなくなってしまえば弁舌も何も必要ない。あくまで怪しまれないように、怪しまれたとしても関与していませんよと言い逃れできる状態にすることが統一連合側の政治だ。モノが違うんだろうさ。……話過ぎたな。帰るぞ》

 

《……》

 

 フレンが手を引き、スラムから脱出する。それからもマリーナはできるだけコロニー1を視察し、このコロニーが抱える問題や労働者と雇用者、富裕層と貧困層の差。統一連合側とガウル側、どちらのシンパか。そんな対立構造がズァークという作品をありありと示していた。

 初代の作品から、どっちが正義かわからないというような描写が多かった作品だ。それにこのコロニー1は何度も話題になるような混沌の坩堝。設定的にもこの世界観を伝えるために便利なのだろう。

 シャトルが用意されるまで襲撃などもなく、マリーナは気を緩め始めた。そこを護衛を務めていたブレッドが諌める。

 

《お嬢様。コロニー11に帰るまで気を緩めない方が良い。ガウルの議員というのは思っている以上に敵が多いぞ。それにここはコロニー1だ。暗殺が1回で終わりだと思わない方が良い》

 

《……気を緩めたところを襲われると?》

 

《襲撃者側からすれば油断していてくれた方が楽ですから。あなたは今、ゴロツキに襲われた程度にしか襲撃を受けていない。ああ、駆動兵器を除きますよ?つまりあなた個人を狙った対人・超至近距離戦闘というものを経験していない。我々がいなければ3度は殺されていましたな》

 

 ブレッドの言葉にマリーナは顔を青くする。いくら議員になったとはいえ誰かに恨まれるような行動をしていないのに、いきなり殺害の方向性で動いているのだ。

 初手のコロニー襲撃はコロニー全体を狙ったもので彼女自身が殺意を受けたわけではない。スラムでも素人が相手であり、殺気を感じる前にフレンが全て対処をしてしまった。

 彼女は新米政治家であるために、人の悪意というものに鈍感だった。それが小説だとありありと地の文で記載されている。

 護衛チームに、降下用のシャトルへのハッキングの終了と問題なしが報告される。シャトルの整備不良による爆殺や大気圏での燃え尽きによる焼死は妨げたということだ。その可能性があったこともブレッドが彼女に伝える。

 小細工がないということは、シャトルへ乗り込む前までに襲われるか、宇宙に飛び出した後に襲撃を仕掛けてくるか。今回は後者だとわかっていた。

 『エウロパ』がいかに強い傭兵団だとしても、数が多ければ倒せると踏んだのだろう。地球へ護衛のために駆動兵器を積み込んでいることは港の情報網からバレており、宇宙戦艦でシャトルを護衛するものの主力が全員降下カプセルに入り込んでいると思っている敵はいつものように丸裸の戦艦とシャトルを落とすだけだと思い込んでいた。

 

 シャトルと宇宙戦艦が宇宙ドックから出て数十分。コロニー1からも離れて地球に近付いてきたところにデブリの間から旧式の駆動兵器が出現した。ナビィ・リッター。10年ほど前の機体だが、その整備性と互換性、そしてスペックの高水準さから当分の量産機のシェアはこれで覇権を取れるとまで言わしめた傑作量産機。

 そのカスタム機やカラーリング違いが10機以上現れる。今の時代でも戦えるようにチューニングをしているその機体たちは、歴戦の傭兵団が乗りこなすことで統一連合の影の部隊とまで呼ばれるほど有名になっていた。

 そんなコロニー1と専属契約を結んでいる『オリヴィア』傭兵団。彼らは警告もなくシャトルへバズーカによる弾幕を張る。あくまでデブリに当たって事故死、というように偽装するためにレーザーで倒すのではなく、実弾で破壊するつもりだった。

 それらが実弾だったために、全てフレンが操るグングニールによって撃墜されていた。細い槍のような物から乱射されるレーザーの嵐はCGを使っているにしても美術作品として出来が良過ぎた。

 

《チィッ!『エウロパ』のエースがズァーク使いとは聞いてたが、グングニールは聞いてねえぞ!》

 

新人類(ネオ)様はこうやって数の差を埋めてくるからヨォ!パターンデルタ!》

 

 『オリヴィア』傭兵団の優秀なところは、奇襲が全て防がれたにも関わらず即座に追撃行動が取れることだろう。その上で直感に優れ、グングニールという遠隔操作の専用武装まで使う新人類(ネオ)用のフォーメーションに移行できるのは優秀過ぎる。

 理由はもちろん、あるのだが。

 

《ああ、噂が事実の傭兵団もどき。正規軍人が暗殺ばかりなんて、特殊部隊の皆様方はまこと、軍人の鑑だな。こちらの動きを阻害する手本染みた連携を傭兵団ができるわけがない。統一連合の教本通りだな。時間差攻撃に、視認阻害のチャフやフラッシュ兵器。小細工で確実性を高めつつ、本命はあくまで本人たちの技量。軍人でなければ賛美を贈りたいくらいだ》

 

《他人を褒めながら撃墜していくんじゃねえ!》

 

 攻撃の際には必ず複数人で本人に攻撃し、相手の右腕の動きを確認して射線から確実に離れるようにしているはずなのに縦横無尽に動くグングニールが1機ずつ確実に擦り潰していく。

 フレンが新人類(ネオ)であることもそうだが、彼の操縦技術に新人類(ネオ)としての能力、そしてグングニールの性能によって彼はズァークの性能を十二分に発揮し、歴戦の猛者たちを撃破していった。

 1対12という、これも初代のオマージュだろうシーンで主人公が無双するという、これだよこれという映像を見せてくれた製作陣には感謝だ。

 

《『青い流星』なんて、『紅い恒星』のパチモンだと思っていたが、存外嘘でもなかったらしい……》

 

《パチモノだろう。彼はズァークなんて乗らなかった。傭兵をやるような器の男でもなかっただろう》

 

《俺は会ったことねえからなあ……。ああ、勝負に負けたのは久しぶりだ》

 

 最後はレーザーソードでコックピットを焼き切り、リーダーを撃破。

 これで脅威が去ったかと思われたが、マリーナの乗ったシャトルで乗り込んでいた残りの『オリヴィア』傭兵団の歩兵部隊がマリーナを暗殺しようとする。あくまで乗務員を装っていたので軽装だっったこともあり、ブレッドたちに対処される。

 また目の前で死体を見たマリーナは何度見ても慣れない光景に口元を抑えようとしたが、宇宙服を着ているためにバイザーが邪魔をして口に触れることはできなかった。

 バイザーを開けてでも口元を抑えたかったが、それはフレッドに止められる。

 

《よしたほうがいい。血とかは存外細菌などを持っているんです。そのままの方が安全ですよ。暗殺者は体内に何を仕込んでいるかわかりません》

 

《そんな、ことまで……?いえ、そもそもこの人たちは味方の攻撃に巻き込まれて死ぬ可能性だって高かった。そこまでして手にするものは小娘の命だけなんて、そんなのって……!》

 

《彼らは使い捨ての駒であり、優秀な兵器だったのでしょう。軍人というのは着任した瞬間に組織の道具です。そこに意志も主張も必要ない。与えられた任務を成功させることだけに全てを注ぐ存在なんです。軍人になった人間は、軍服を着ている間は人間ではなくなるのです》

 

《それは、あなたも過去そうだったから……?》

 

《ええ。傭兵なんてほぼ全員、軍人崩れですよ。掃除要員と、予定通りに操縦士たちも呼びます。外もリーダーが撃滅させたようですし》

 

《……そこまで欲しいものですか。議会の空席は》

 

《1票もチリが積もればなんとやら、ですよ。奴らの感覚的には害虫駆除ですから》

 

《一応乙女に対して害虫はやめてください……》

 

《こりゃ失敬。傭兵団に男女の性差なんてほぼないもので》

 

 シャトルの乗務員全員がグルだったために予定航路を変更したり、自力で運転できる人員を追加で傭兵団から送り込み、マリーナの護衛の人数が統一連合に報告していた人数よりも増える。

 もう地球が近いことと、ここでまごついていたらまた襲われるということでさっさと降下してしまう。フレンのズァークだけは格納が間に合わなかったために、シャトルを真っ二つにしたようなデザインの降下用補助マシーンに乗ってシャトルと一緒に降りていった。

 これから引き返す『エウロパ』は駆動兵器を全部地球に降ろしたと思い込んでいる同業他社の襲撃を返り討ちにするためにゆっくりと安全な航路でわざと帰り。

 地球に降下するマリーナはこんな世界は間違っていると、議会へ臨む気持ちを改めて強く持ち。

 大気圏突破を果たしたフレンは宇宙服のバイザーを解放して、夕方だったのか地平線に沈む地球の姿を見下ろしていた。

 

()()()()()

 

 フレンとマリーナが同時に呟いたことで、エンディングになり黒い画面にキャストやスタッフロールが流れる。エンディング曲は劇場版1回ずつで違うようで、有名な男性音楽グループの楽曲だった。

 その映像を見終わった後、第3部が冬公開予定と表示されて映画が終わり、劇場の照明が明るくなる。

 劇場と隣接するちゃんぽん屋に全員で行って、夜ご飯ついでに全員で感想を言い合った。映像も音響も全てクオリティが高かったこと。声優の演技が良かったこと。話がわかりやすかったこと。そして最初にいた俺のこと。

 全部洗いざらい話しつつ、冬の次の奴も観に行きたいと陽菜ちゃんが言ったことでまた冬に予定を合わせて観に行くことになった。同士が増えたとハピハピ先輩も喜び、ズァークのシリーズの話をしたらあまりにも多いシリーズの数に頭がこんがらがっていた。

 

「えっと……?今回と全く一緒の世界線の話じゃないシリーズもたくさんあるの……?」

 

「そう、面倒だよね。でも水瀬ちゃん。全部は見なくていいわ。私も漫画作品を合わせたら全部なんて把握してないし」

 

「膨大ですからね。俺も映像作品くらいしか追えていないですよ。アナザーシリーズだったら映像でも見てない奴がちらほらありますし」

 

「息が長すぎる、ロボットアニメの金字塔だからね。長く続けば続くだけシリーズものって派生作品が増えるものだから。ちなみに見るとしたらやっぱり初代とかの時間軸を追う形式がいいんですか?」

 

「まあ、そうだね。映画版でもいいよ。4クール全部をいくつか、なんてほぼ無理だし。いっそメンバーシップ配信とかで同時視聴してみたら?そういうことやってる人もいるよ?」

 

「俺たち、まだ誰もメンバーシップ開設していないんですよ」

 

「あら。まあ同時視聴なら普通の配信でやってもいいんじゃない?」

 

 そんなアドバイスも貰いつつ、それぞれ帰路に。

 明日はV事甲の本戦がお昼から始まるので、その応援配信に行くつもりだ。

 

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