トップページにパワナンバーがあります。
予約投稿失敗してました。
V事甲が終わった。2日に分けて行われた熱戦はオリンピック期間だというのにSNSで何個もトレンドに入るような話題になったのなら大成功だと言えるだろう。2連続失投ホームランとか、トリプルプレーとか、滅多にないことで沸かせたのはエンタメ力の高い人たちの配信だったなと感心してしまったほどだ。
エクリプス学院は残念ながら準優勝で、優勝を逃してしまった。能力値から優勝候補だったが、惜しい試合で最後に負けてしまった。まさかあの能力の唄上先輩が打たれるなんてなあ。ドロッセル先輩に采配の瑕疵はなく、正直運で決まった試合だと思う。
優勝はレインボードロップスのレインボー高校。こちらもステータス的にはかなり強かったので優勝候補として扱われていてその通りに優勝していた。というか皆さん、本当に配信が上手い。栄光ナインの3年縛りであそこまでステータスを上げられるのは持っている人たちだからだろう。
最後の年なんて全員甲子園には出ている。転生選手保証が始まったから難易度は上がったはずなのに、それでも皆して地区大会優勝できるのは育成能力がずば抜けているからだろう。
2日間、宗馬先輩がバイトをしているという設定のスポーツバーで応援配信をするという体でエクリプスのライバーが勢揃いしてドロッセル先輩の試合を見守っていた。自分のキャラが活躍した時は大声を出していたし、手に汗握る熱戦だったことは間違いない。
エクリプスは色々な大会で準優勝が多いから、次こそは優勝を目指すぞと意気込む先輩たち。他の事務所の方が主催する合同大会とかにも出ているからそういう奴のことを言っているんだろう。ハピハピ先輩が7月末のFPS大会で優勝していたり、別に全部負けているわけではないんだけど。
オリンピックも、大分試合が進んでいた。ほとんどの個人競技は終わりを見せていて、スタートが遅かった競技や団体競技が残っている程度だ。野球はしっかりと勝っていて、このままなら決勝戦で日本の試合が見れそうだった。
ライバーとはいえ夏休みを貰ったり、お盆に帰省したりもしている人がちらほら。俺もお盆は先祖に取り憑かれないようにしっかりと帰省してお墓参りをしてきた。こういうのを欠かすと悪いことが起きそうなので2日だけお休みを貰って実家に顔を出してきた。
その時活動のことを両親にしつこく聞かれたけど、まあそれはいい。
東京に戻ってきて最初の朝活は作業配信だった。今日1日はずっと作業配信をするつもりだ。雑談をしながら配信をする人もいれば、マイクをONにしてBGMを流してほとんど動かない人もいる。俺は後者で、区切りごとに話すくらいでそこまで話すつもりはなかった。
そのためスパチャもOFFにしている。これでお金を貰ったらダメだろう。この設定は事務所に好きにしていいと言われているので作業配信の時は切っていた。
俺の作業配信の時にやることは楽曲作成だ。ゴートン先輩からの依頼で、何曲か作ることになっている。作曲をしていることはリスナーも知っているので、あまり邪魔になるようなコメントは残してこない。
何やら2周年に向けた大きな企画が動いているようで、それのための楽曲のようだ。3Dでまた劇をやるようで、台本は既に貰っている。台本を書いたのはゴートン先輩で、前はドロッセル先輩とコウスケ先輩の物語だったけど、今回はゴートン先輩と唄上先輩の話になるようだ。
全部に目を通したけど、これ結構なラブロマンスだよなあと思う。ドロッセル先輩たちのものは王道の魔王討伐劇だったのに、こっちは唄上先輩の秘められた力と、それをどうにかこうにかするという、まさかのコウスケ先輩の出番がほぼない前日譚。
さっくりと異世界3人組が仲良くなったエピソードは前の劇でも示唆されていたが、今回はそこを膨らませた内容になるだろう。これを演じるのか。頑張るなあ。
「うーん……。もっと明るく、でもテンポは下げるべきか……?他に参考になる曲あったっけ……?」
『なんか行き詰まってる?』
『久しぶりに反応があったな』
『息遣いとかは聞こえるからいるのはわかってるんだけど。反応はほぼない』
『これはこれで乙なものよ。宿題が捗る』
『長期休みだからか学生っぽいのも多いな』
今までに作った曲で参考になりそうな曲がないかを調べる。BGMは雰囲気作りで、メインは役者の演技だ。だから邪魔にならないような曲を今まで作ってきた。だから何かしらありそうだと思ったけど、恋愛系はあまり手掛けてないな。
演劇で恋愛一本で行くような劇は少ない。恋愛がメインではなく、恋愛をトリガーに艱難辛苦を乗り越えるドラマに注目されて役者としてもそちらに力を注ぐ。
恋愛なんて英雄譚の最後にお姫様と結婚しました、くらいの最後に締めるために使われることが多い。恋愛は舞台映えしない。動きが少なく、恋の駆け引きなんてやろうものなら学校のセットを作ったりと割と大変だ。
学生劇でもないんだから恋愛を主軸にしても、観客がノれない。ラブロマンスをやるならドラマとしてTVなどの映像系でやるべきで、舞台では映えるような動きのある劇をやるのが普通だ。推理ものやミステリー系をやったりもするが、広い舞台で動きの少ない劇をやると観客が劇に没入できない。
よっぽど上手い役者ならそういうなんて事のないテーマでも引き込めるんだろうけど、それは一握りだ。シェイクスピアのように劇という形式では派手で衝撃的な内容の方が観客を取り込める。舞台の真ん中でただ愛を囁くだけの劇を30分見せられたら俺はつまらないと言うと思う。
舞台に求めているものはそう言うのじゃないと言い切ってしまうだろう。
だから舞台では恋愛を主軸に置くならミュージカルにしたりする。それなら踊ったり歌があったりでお客を楽しませることがdけいるからだ。今回の台本もラブロマンスではあるものの、メインはやはり苦難の試練であり、恋愛だけを扱っているわけではない。
でもなあ。ゴートン先輩がこんな、あからさまなカップリング系の脚本を仕上げるとは思わなかった。勇者と聖女という、事務所的にも顔として売り出しているコウスケ先輩とドロッセル先輩だってそんなラブロマンスの欠片もなかったのに、ゴートン先輩と唄上先輩はがっつりそういう描写がある。
ふーん、としか思えないが。まあそういうこともあるのかなと思ってみたり。なんか飲み会の時も距離が近かったし。
あの2人をイメージして楽曲を作る。BGMは基本2分弱くらいの音声を作って、それがループしても違和感のないような作りにすればいい。だから最初が上手くいけば、割とすぐに終わってしまう。
曲を作って時間を確認するともうお昼だった。作業配信をしていると時間があっという間に過ぎるんだよな。
「もうお昼ですね。一旦この枠は閉じて、また14時くらいから再開予定です。暑いのでしっかりと冷房を付けたり、こまめに水分補給をしてくださいね。ここまでお付き合いくださりありがとうございます。また次の枠で会いましょう」
『お疲れー』
『14時了解!』
『俺も飯食いに行こー』
配信を閉じてお昼を作る。とは言っても素麺を茹でるだけの簡単な作業だ。薬味だけ用意してチャチャっと食べる。SNSとかマネージャーさんからの連絡事項とかないかを確認しつつ、どこまで完成したのかを確認。
お昼の作業配信もあって、夜には全楽曲が完成。コウスケ先輩に音声データを共有して、どこがどのBGMを使うかについて記載を増やした台本も一緒にアップロードして確認をしてもらった。
ちょっと前までに作っていた最後のエンディング曲についても、歌詞は渡されていたので作成済みだ。仮歌としてボーカロイドで音声を入れている。楽曲作りで種類が欲しいと事務所に頼んだらソフトの貸し出し権利を受けられたのでそれでいくつか使っている。これも経費で落ちるのか。
4人分のパート分けもして、気に入らなかったら変更してもらう。あくまで仮ですということを伝えつつゴートン先輩に確認をとってもらったら、通話をしながら確認したいということで通話を繋げた。
チャットだと文字を打ったり、意図が通じないこともあるのできちんと会話をすることが大事だ。今日はゴートン先輩はお昼に配信をしていたようで夜は配信がなかったので都合が良かったらしい。
全部説明した後、楽曲は全員で聴いてみるということで保留された以外は仕事は完了で良いだろう。
「仕事早くないか……?オレは9月中にくれればいいと思ってたのに」
「9月は俺の方が忙しくなりそうだったので、早めに終わらせたかったんです。それに修正を考えたらこのくらいで提出しないと間に合わないと思いますよ?」
「歌ってみたとかも出すまでに時間がかかるからな。BGMはオレのイメージから外れていないから大丈夫だと思う。……ちなみにこの訂正台本って、手書きでメモ書きした奴が手元にあったりしないか?」
「え、ありますけど。エスパーですか?」
今はパソコンやスマートフォンが発達したのでメモなどをスマホに残すことが多いらしい。仕事でもそうなっているようで、手書きのメモはあまり使われないようだ。
でも俺からすると、作業をパソコンでやっている都合上誤操作をしないためにもメモは手元に置いておいてペンで書いた方が効率が良い。見返しやすいことと、細かいメモならテキストに書き出す方が面倒だったりする。
特に今回の場合はどこでどんなイメージが必要なのかを書き出すために直接台本の冊子に書き込んでいる。どこのページの場面で再利用できるかなど、簡単なメモ書きなら直接の方が楽だ。
これがクリエイターあるあるなのかわからないけど、俺はそうしている。それを悟ったゴートン先輩はエスパーかと思ったが、ただ単にクリエイターあるあるだったことと、スタッフさんから俺が紙ベースの台本を持って帰ったことを聞いていたらしい。
「その台本、年末のポップアップショップに展示しないか?」
「ああ……。池袋のアニメショップに特別展としてエクリプスの物を展示するんでしたっけ。俺も案件で作った宗方先輩の木版アートを提出しましたよ」
「それで今回のリリのメモ書きを展示しよう。自分の字を見られたくないなら断ってくれていい」
プライベートとサインで書いている字が丁寧かどうかで人に見せられる代物かどうかを気にしてくれているんだろう。正直恥ずかしいと思うことはないので許可を出す。今作っているこの3D劇の関連物を展示するようで、俺のメモ書きも置きたいらしい。
ライバーが使った物や作った物などを展示するようで、ファンはそういうものが見たいらしい。ライバーを身近で感じるのだとか。文字なんて配信でも見せているので今更だ。
「いや、本当に助かったよ。提出が早ければ編集とかもしやすいだろうから。劇の方も頼むぞ」
「はい。その時はお願いします」
その後、楽曲やBGMはすぐに共有されたようで、全員から「良いね!」と返事を貰っていた。深夜だったので即返事はできなかったものの、修正依頼などもなさそうで安心した。
次の日の朝配信は雑談配信を。『ソラソラ』をプレイすることなく、今日はまったりと通常の雑談配信だ。
「今週のスケジュールですね。明日は収録があるので夜配信はお休みです。そして3日後はとうとうオリンピックの野球の決勝なのでこの日も夜配信はお休みですね。それ以外では休みの予定はないので、よろしくお願いします」
『リリも割と色々な企画にお呼ばれしてるよな』
『困ったら入れとけ枠に入ってる。KP7も。リアクションとかツッコミとか重宝されてる感がある』
『後輩男子は雑に扱ってもいいみたいな風潮がありそう』
『オリンピックもそろそろ終わりかー。いやーお祭り騒ぎだった』
『運営的には問題なく終わりそうで良いじゃん。インバウンド需要で経済的にも良い感じらしいし。トラブルも散見されるけどね』
『日本勝ってるよな。決勝も日本戦なら言うことなし』
事務所としても様々な接点を生み出したいのか、企画で一緒になる人は結構バラバラだったりする。同じ人とだけ絡んでいるというのは事務所的にも成長が見られないと思って色々なパターンを考えているんだろう。
一問一答だったり、クイズ番組だったり、箱内の企画にかなり呼ばれている。ライバーの人となりを理解できるし、ファンにも喜ばれるので俺は基本断らない。
あと雑談で話すことではないが、個人勢の方とのコラボは見送られた。明らかにエクリプスの数字目当てだったり、俺のガチャ運目当ての配信企画を提出されてもどうしろって言うんだ。
楽曲提供とかもあったけど、俺が作るのなら面倒だと断った。ゴートン先輩からの依頼が先にあったのでそっちを優先しただけのこと。歌を主軸にしている人からすれば俺の歌を歌ってみたいとか、一緒に歌ってみたを出したいと思うのかもしれないが、ありがたいことだと思ってもその人となりを知らないのに曲を作れというのは難しいことだ。
曲を作る労力を考えたら、コラボのたびに楽曲を求められるのも辛い。あとはその人の配信などもスタッフさんが見て判断してくれたようだ。個人勢の方が企業勢とコラボをするなんてよっぽどの強みか登録者数が圧倒的でもない限り許可が降りない。こっちにも得られるものがない限り、企業として許可は出せないんだろう。
クリエイター雑談とかなら良いんだけど、あくまで俺が曲を提供することが前提、みたいな依頼内容なのでそういうのは排除させてもらった。俺が歌ってみたを好んでいないから向こうからすれば提供するのは違うという考えなのだろうが、じゃあ相手に提供する理由があるかと言われたら全くない。
というわけで断らせてもらった。断ったことで個人勢の人が断られたことを恨み辛みで散々に貶していたようだけど、そういうことをするから断られるんだってわかってほしい。その人のファンだとか、誰かと繋がりがあるとか、お互いに利益のある相手でもない限りは個人勢の方よりは身内を優先する。
もしくは他の箱の企業勢の方とコラボをするだろう。コラボって基本は自分に益があるからするもので、明らかにこちらの数字目当ての人とコラボをしても俺が楽しくないだろう。
『そういえば公式番組にリリ出てたじゃん。リリをおもてなしってやつ』
『あー、あれまじビックリしたんだけど。勝った人に曲提供とか言っててその30分後に曲アップされるか、普通?』
『comming soonの意味、スタッフ知ってる?』
「ああ、公開されたんですね。それはチェックしてなかったなあ。朝もSNSを見てないから情報を握れてなかったです。『MASK』も公開されたんですね」
『なんとなくおすすめに出てきたから見てみたら作曲編曲リリだったし』
『即日出すなよ。こっちにもっと心の準備させろ』
『リリって動画とか歌ってみたの投稿がいつか把握してないの?』
コウスケ先輩、宗馬先輩、ジョン先輩、KP7先輩と一緒に公式番組に出させてもらった奴のことだ。4人が俺のことをもてなし、その中で一番琴線に引っかかった人にオリジナル曲を提供するという企画だった。
最初の動画はおすすめの物語を紹介しようというもので、小説・漫画・アニメ・映画・ドラマなんでもありだった。
それに勝ったのがジョン先輩だ。
「動画を見てないですけど、カットされてない想定で話しますね。コウスケ先輩は安直すぎです。僕がズァークを見ているからってズァークの漫画を紹介してきましたから。案の定見たことのある作品でしたし」
『ボロクソに貶してて草生えた』
『一応リリのことをリサーチした結果ではあるんだがなあ』
『あれは、うん。有名な奴だからファンなら読んでるだろ。初代と同じ時間軸だし』
『作者も漫画的な意味で有名な人だったからな』
説明自体は丁寧だったけど、未知を知りに来た身からすれば知っている作品を説明されても知ってるんだよなあ、としか思えなかった。ネタバレギリギリの説明もあったから速攻脱落。
その次の宗馬先輩は俺も見ていないアニメの紹介だった。宇宙人が襲来してくる系のもので、知らなかったから純粋に興味を持てた。そういうのでいいんだよと撮影時にかなり頷いていた覚えがある。
「ジョン先輩の『ミッドナイト・サーキュラー』は存じなくて、紹介とPVを見てかなり気に入って。あれ見ましたけど面白かったです。洋画ってあれくらいシュールギャグとかっこよさがあると見やすいですよね」
『あんまり有名じゃないんだよな、『ミッドナイト・サーキュラー』』
『別に賞を獲っているわけでもないから。アメリカの作品が映画界では強すぎる』
『ガンアクションとか派手な爆発とかこれぞB級映画って感じで逆に好き』
『おもてなしって意味では知らないような作品を知る方がポイント高いのはわかる』
KP7先輩はまさかの変化球で日常アニメを紹介してきた。俺が触れていないような作品をチョイスしたということだが、そのチョイスが逆に意外すぎて刺さらなかったというか。曲がりすぎてストライクゾーンから外れてしまった感じ。
4人の中では誰かってなったらジョン先輩の作品に一番興味が出たという結果だ。
「いやでも、投稿早いですね?MV付きじゃないですか。作詞してもらって、イラスト描いていただいて、動画編集して?この速度で出るんだ」
『エクリプスの歌ってみた投稿はめちゃくちゃ早いとは聞く』
『ん?ってことはこれ曲が先か』
『動画が投稿されるまで時間がかかるとはいえ、かなり早いってことだよな』
『リリもめっちゃ早く曲仕上げてないか?』
ジョン先輩のチャンネルを見に行って、音なしで歌ってみた動画を再生する。うん、早いな。これは公式動画でcomming soonを入れたスタッフさんは悪くないと思う。
俺も曲しか確認してないからMVの感じまでは確認していない。そっちはジョン先輩が確認して終わりだろう。
作詞した結果ジョン先輩が録音して、それを俺が確認して修正したんだから、その出来上がりから逆算するとこんなもので上がるのか?他の曲でも頑張ってもらったけど、エクリプスのスタッフはかなり優秀なのかもしれない。
「僕はこの曲、2日で仕上げました。ジョン先輩っぽいものということで作って、ジョン先輩に確認してもらってちょっと修正して、なので。あとは作詞の方に頑張ってもらって、収録後にちょっと修正したくらいなので手間ではなかったですよ」
『はやっ!』
『これってやっぱめちゃくちゃ早いよな?』
『爆速だろ』
『この速度で曲が出てくんなら他のも早くなるわ……』
「皆さん、早いとは言いますけど僕が一番時間がかかるのは作詞ですからね?それさえなければこんなものですよ」
曲だけなら割とすぐだ。ゴートン先輩からの依頼のものも何日かで全部終わらせたし。イメージさえついてしまえば後は音に落とすだけ。特に短いBGMならすぐできる。
本当に作詞は難しい。ゴートン先輩のシナリオ作成能力には脱帽しっぱなしだ。
公式番組はどんな出来になったのか後で確認しておこう。
『公式番組とか関わってる歌ってみたの投稿とか、リリに一言ないの?』
「基本ないですよ。人によっては何日に歌ってみたをアップするとか言われますけど、公式番組はスタッフさんから言われることはないですね。告知系ならちゃんと連絡が来ますけど、公式番組は何も無しです。定期番組でもないので時期を見計らっているんじゃないですか?」
『そんなもんなんだ』
『仕事的には収録し終わった、音源の収録が終わった。そこでリリの役割は終わりなんだろ』
『納品は終わったので、完成品の確認は個人でやってねってことか』
他の事務所はどうだか知らないけど、エクリプスはそういう方針だ。ここはまずいんでカットしてくださいと言った場所さえ動画になっていなければなんでもいい。
「最後に夜配信についてですね。夜は宗方先輩とチェリーさんと3人協力プレイのゲームでコラボしますのでお楽しみに。ではまた夜に」
『りょ!』
『お疲れさん』
『仕事行く準備するかあ』
その夜。
謎解きアドベンチャーゲームをやったのだが、宗方先輩が独断専行で進みすぎて一番の後輩である温厚なチェリーさんが怒るという珍しい場面があったが、概ね好評なコラボになった。
宗方先輩はアクションゲーム要素があれば無双するけど謎解き系はてんでダメで、協力系は本当に向いていないのは周知の事実だった。よくチェリーさんは宗方先輩を誘ったよな。謎解きは俺とチェリーさんでどうにかした。
「宗方さんって一番歳下ですからね〜……。もうちょっと協力して欲しかったです」
「すまぬ。誰かと協力するなどVtuberになってから故」
「え〜。学校とかの班分けとかどうされてたんですか〜?」
「藩?何故そこで藩が?そもそも拙者、過去に学校など通ったことがなく。寺小屋も塾もなかった故に」
「寺子屋?塾???」
コラボ後のチェリーさんと宗方先輩の会話で、完全に噛み合っていないように聞こえた。
宗方先輩、本当にどういう環境で生きてきたんだ。時代錯誤な価値観でこんな感じに会話が噛み合わないことが多々ある。視聴者はこれを個性とか、ロールプレイが完璧と思っているようだけど、本人を知っているからかこれが素だと俺たちライバーは知っている。
本当に不思議な人だよな。これでもネムリア先輩と宗馬先輩曰く、マシになった方らしいんだけど。これでマシなのか。