ウマ娘 ~英雄は東北より来たれり~   作:コングK

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アンジェラザントとモーニングピコのモデルは、メイセイオペラとデビューレースを走った馬です。


第7R「再起」

 

「この間のレースで分かりました。どうもあなたにはルームメイトが必要なようです」

 休日、突然部屋にやってきたミチノクシャーリーはそう言うと、いきなり荷物を運び入れ出した。

「え⁉ シャ、シャー先輩?」

 戸惑うメイセイオペラをよそにどんどんと段ボールが積み上げられていく。

「口を開く余裕があるのなら、貴方も手伝ってください。三〇二号室に後三箱ありますから。顔馴染みの子ではありますが、親しき仲にも礼儀ありです。こうしたことをまめにやっておくと、コミュニケーションが円滑に運びますよ」

 気になるキーワードを口走りながらもきびきびと動くミチノクシャーリーには質問する隙さえ見出せない。それならばと言われた通りに三〇二号室へと向かい、そこに書かれた名前を見てメイセイオペラは危うく叫び声を上げそうになった。

「なっ……」

 アンジェラザント。

 トレセン学園入学以来何かと突っかかって来る相手がまさかの新ルームメイトだとは。誰が考えても相性は最悪だ。

「私が考えたのではありません。モーニングピコからのたっての願いです」

 暗澹たる今後の学園生活への不安が顔に出てしまっていたのだろう。ミチノクシャーリーは自らの潔白を示すように、事情を語った。

「オペの野郎は甘えん坊だから、誰かつけてやんないと駄目だ、シャー先輩」

「成程。クロイワクラブにいたと聞いていたので、その辺りは大丈夫かと思っていましたが、先日の走りを見るとどうもそのようですね。私と走った時とまるで別人でした」

 盛岡で共に走ったMIT杯。一着のミチノクシャーリーに対し、七着に沈んだメイセイオペラはデビュー戦を飾った場所とは思えぬ凡走で、大いに周囲を心配させた。

「佐々原トレーナーの方針もあるだろうと放っておきましたが、確かにお節介というのは焼いておいても別に問題はありません。誰か適当な子はいますかと聞いたところ、彼女の名前が挙がったのです」

「いや、でも……」

 これはあまりにもお互いにとってストレスになりはしないか。

 そう口走ろうとしたメイセイオペラは入って来たアンジェラザントに反射的に背筋を伸ばした。

「あんだ。わがルームメイトだったら不満が」

「い、いや。そういう訳じゃ」

「わははっきりいって嫌だね。ピコの頼みだすけ渋々来だだげさ」

 明け透けなく語るアンジェラザントにメイセイオペラは開いた口が塞がらない。

 一体何を考えてモーニングピコはアンジェラザントを推薦したのだろう。

「とりあえず、荷物を運びこみましょう。後一つです」

「それならもう持っで来だ」

 抱えていた大きな熊のぬいぐるみをベッドに座らせると、呆然とするメイセイオペラをよそにアンジェラザントは荷解きを始めた。

 

 新たな同居人を迎え、メイセイオペラの新しい日々が始まった。元々生真面目で口数が多い方とは言えない彼女だったが、気難しいアンジェラザントと何とか仲良くなろうとあれこれしゃべりかけてはその度につれない態度をとられ、凹むことが多かった。

 

 トレーニング終了後ストレッチを行うメイセイオペラを見た佐々原は、今更ながらに彼女たちウマ娘を扱うことの難しさを感じていた。

 失意の底にいるメイセイオペラに対し、佐々原がとったのは敢えて彼女の自由に任せ、言葉をかけないという選択だった。

 これまでに多くのウマ娘を担当してきた経験から、この年頃のウマ娘達の心の中は自分のような中年男性に推し量ることはできないということが分かっていた。分かったつもりで気軽に接することが一番危険で、馴れ馴れしく話し掛けた結果、あっという間に溝ができてしまったこともあった。

 それならば、しばらく様子を見るに留め、普段通りに接しよう。

 寮長であるミチノクシャーリーにそれとなく様子を聞き、気を配ってきたつもりだったが、どうやらそれは間違いだったようだ。

(友達だの友情だの、そんなの上辺だけだと思っていたんだが)

トレセン学園に入学し、同じ釜の飯を食べていようとも、レースになればライバルだ。ましてや中央に比べて同じ顔触れで当たることが多い地方では、その勝敗で互いの関係が悪くなることも多い。友人の不調を悲しみながらも、心の中では快哉を叫ぶ者はざらにいる。

退寮し、学園を去って行ったモーニングピコからすれば、メイセイオペラの不調など関係ない。夢を諦めた自分のようになって欲しいと暗い気持ちでその転落を見つめることもできた筈だ。

(それなのに、あいつはお節介を焼きやがった)

佐々原からすれば、理解不能な押しつけがましいばかりの圧力でメイセイオペラに関わり、モーニングピコは見事彼女を立ち直らせることに成功した。

ただ心配だったからと、それだけの理由で大人顔負けの行動力を発揮し、失意に沈んだ友人の心を引き上げてしまった。

(あいつ、構って欲しかったんだな)

今にして思い直してみれば、納得だった。幼少期より忙しい両親に代わり、メイセイオペラの相談相手になっていたのは祖父母だった。それは親元を離れてクロイワクラブに所属している間も続いていたという。彼女がこの水沢を選んだのは第一に祖父母がいるからで、そこには肉親の情を欲するごく自然な少女としての感情が見え隠れしていた。

クロイワクラブにいたんだから大丈夫。

親元を離れ、トレセン学園に来るウマ娘の中には寮生活に慣れずホームシックになる者もいる。メイセイオペラは幼少の頃よりクロイワクラブで同じような生活を送って来たゆえに、大丈夫だろうと判断した自らの軽率さを佐々原は悔いた。

(本当に分からねえな。あれぐらいの子の心ってやつは)

踏み込み過ぎですと言われたこともある。放っておいてくださいと拒絶されたこともある。だからこそ距離を置いた訳だが、今度はそれが逆効果だったとは。

トレセン学園のトレーナーとしてウマ娘に何十年と接してきても、未だに掴めない。同僚の高橋からすれば、あのぐらいの年の子の心の中なんかおっさんには永遠に分かる訳がないということになるのだが。

整理体操を終えたメイセイオペラが佐々原の言葉を待っていた。

その目に以前のような迷いがないのを見、改めて少女たちの繋がりの深さに驚く。

「とにかく、踏ん切りがついたのはいい事だ。お前が沈んでいる間に屈辱の南部杯も終わっちまったしな」

「……」

 メイセイオペラは悔しそうに下を向いた。その拳が心なしか震えている。

 十月十日体育の日に行われたマイルチャンピオンシップ南部杯。

 昨年度あのホクトベガにいいようにされ、今回は地元のウマ娘が意地を見せるかと思われたが、蓋を開けてみれば、一位のタイキシャーロックから三位までを中央からの遠征組が独占。クロイワクラブ出身で地方の雄と言われ三番人気だった船橋のアマゾンオペラも十着に沈み、中央と地方の差を如実に見せつけられたレースだった。

「勝ち時計は一分三十六秒二。あの砂の女王様の記録を二秒近く上回るコースレコードだ。信じられんよ」

「そんな……」

 あの日のホクトベガの悠然とした走りが思い出される。年明けの川崎記念で勝利した彼女は遠く異国の地のドバイで有終の美を飾ろうとするも、負傷。引退を余儀なくされ、叶うなら彼女と一度戦ってみたいと思っていたメイセイオペラ陣営を落胆させた。

 あれ程強いと思っていたホクトベガの記録を悠々と塗り替えたタイキシャーロック。そして、地方ウマ娘に入る隙さえ見せず、強さを見せる中央ウマ娘たち。地方と中央の交流が盛んだと言われながらも、中央のウマ娘達に為す術なく一方的に地方が荒らされているのが現実だった。

 

「とにかくだ。来年度の南部杯を目指すなら、まず目標とするのは東北ダービーだ」

 東北ダービー。岩手、山形、新潟の三地区に所属するウマ娘達による交流競走で、毎年持ち回りで行われ、今年度は山形の上山レース場で開催された重賞レースである。

「この岩手、東北を主戦場として勝ちを重ねる。その後に目指すのは大井や川崎だ」

 大井や川崎には南関東のウマ娘がこぞって参戦してくる。南関東は地方の中でも群を抜いてレベルが高いと言われており、中央のダート巧者も腕試しに参戦してくることが多い。

この二つでいい成績を上げることができれば、この岩手のファンやウマ娘にとっての希望となることができる筈だ。

「責任重大ですね!」

 軽く屈伸をしたかと思うと、メイセイオペラは勢いよく走り出した。

「おいっ! インターバルは大事にしろ。さっき走ったばかりだろうが!」

「大丈夫ですよ! 私こう見えても結構丈夫なんで」

「そう言う事を言っているんじゃない」

 佐々原の制止も振り切って、メイセイオペラは元気よくコースを駆けていく。

 心の中のわだかまりが全て無くなったとは思わない。

 何かの折にそれがまた出て来る可能性はある。

 だが、少なくとも、一月前よりはずっとやる気になっているのは確かだ。

「だったら、それをサポートするのが俺の役目か」

 口をついて出た独り言は秋風にかき消され、メイセイオペラの耳には届かなかった。

 

 秋が深まり、冬への装いを始める頃になっても、東北のウマ娘達にとって休む暇はない。少々の雪程度ではレースは中止にならず、ゴーグルをつけて走る姿は冬の風物詩とも言えた。

 そんな師走が近づく地元岩手で、一時期の不振を払拭するかのようにメイセイオペラは勝ち星を積み上げた。

 

『メイセイオペラ復活! メイセイオペラ復活! MIT杯の凡走が嘘のようだ! 早くも二連勝!』

『だめだ、止められない! 上がって来たメイセイオペラを捉えられない! 水沢は自分の庭だとばかりに年末この白菊賞でも快走! 新しい年への期待を抱かせます!』

 盛岡、水沢での千四百・千六百とコースや距離が変わってもその走りが鈍ることはない。

 

 冬休み。皆が帰省する中でも寮に残ったメイセイオペラは買ってきた卓上コンロをほくほく顔で取り出した。

年の瀬に入り、寮母も休みをとっている。これから年明け一月四日までの間は自分で食事等賄わなければならない。

 どうしようかと相談した佐々原は開口一番鍋だと答えた。

「鍋なら市販の出汁を使い、適当に切った野菜や肉をぶち込むだけでそこそこ食べられる。好みでキムチなんか入れると最高だぞ。余った汁で雑煮もできる」

「それは美味しそうですね!」

 キムチ鍋を想像し、よだれを垂らしたメイセイオペラはその案でいこうと決め、卓上コンロに好みの具材を買い込んで大晦日を迎えた。

「よし、やるか」

 キッチン番組のように鼻歌を歌いながら、上機嫌に野菜を切り、ざるに上げていく。

「豚肉は薄めに切っておいて……。あっと、キムチ、キムチ」

 袋に入ったそのままの長いキムチを食べやすい長さに切り、プラスチックのトレーに並べていく。

 鍋に出汁を張り、準備万端。期待に胸が高鳴る中、メイセイオペラはふと目の前のコンロに目を落とした。

「あれ⁉ ガスボンベは?」

 卓上コンロの右側から常に存在感を主張しているボンベが見当たらない。そう言えばと思い返し、メイセイオペラは己の過ちに気づく。

「行ったスーパーのボンベが高かったんだっけ。これならトレセンの近くの方が安いからって買い直そうと思って……。ああ~、そのまんま忘れたのかあ~」

 思わず天を仰ぐ。まさか、初めて一人鍋ができることに浮かれて、大切なボンベを買い忘れるとは思わなかった。

「ぬかったなあ~。これ、どうしよう……」

 ざるに満杯に盛られた野菜たちを恨めし気にメイセイオペラは見た。こんもりと積まれたもやしが今の自分の物悲しさを代弁しているかのようだ。野菜炒めを作ろうにも油も何もありはしない。

 

 どんよりとした気持ちのまま、野菜を片付けようとすると、ふいに部屋の扉が開いた。

「あんだ、これ」

 くんくんと鼻を鳴らしながら勉強机に近づいたアンジェラザントは、こんもりと盛られた野菜と卓上コンロを見て動きを止めた。

「ああ、ごめん。鍋をやろうと思ってたんだ。今片づける」

 そう言えば自分ばかりでなく、アンジェラザントも残っていたことを今さらながらに思い出し、メイセイオペラは皿を持った。共用の冷蔵庫にラップをして入れておけばある程度までは持つだろう。もし腐ってしまったのならばもったいないが捨てるしかない。

「別に気にせず食べればいいさ」

 部屋から出て行こうとするメイセイオペラを、アンジェラザントが呼び止めた。

「あ、いや。ボンベを買い忘れちゃって……」

 恥ずかしそうにメイセイオペラは目をそらした。

(また世間知らずと思われるかな)

 名門クロイワクラブに通っていたことから、級友たちから何かとお嬢様扱いをされることが多かった。それは祖父の愛情故だと話をしても、やっかみも手伝ってかその噂は消えず、ふとした拍子に冗談めかして言われていた。仲が良かったモーニングピコなどは、あれは世間知らずなのではなく、天然ボケなだけだと笑い飛ばしていたが、彼女がいなくなってからは誰一人かばう者はなく、言われるに任せていたのである。

「何やってんだ、おめ」

 馬鹿にされると思っていたメイセイオペラが見たのは、予想に反し、くすりと微笑むアンジェラザントの姿だった。

「鍋の用意して、どうしてボンベ忘れるんだ。抜けているにも程があるぞ」

 その一言でメイセイオペラも釣られて笑みを零す。

「し、仕方ないじゃん。どんな鍋にしようかなと思っていたらつい忘れたんだもの」

「ピコの言ってた通りの天然ものだな、こりゃ」

 そう言うと、アンジェラザントはごそごそとロッカーから何かを取り出して机の上に置いた。

「ほらよ」

 見れば、それは真新しい携帯用ボンベだ。

「年越しそば作って食おうと思ってよ。用意してたんだ。使え」

「え⁉」

 意外な申し出にメイセイオペラは目を瞬かせる。

 自分と彼女はそんなに親しい関係では無かった筈だ。

 一体いつ、こんな風に距離を詰めるような間柄になったというのか。

「なんだ? 私の好意がいらねえってのか?」

 ぎろりと睨むアンジェラザントに、メイセイオペラは勢いよく首を振ると、

「じゃ、じゃあアンジェも一緒に食べようよ。結構買っちゃったからさ」

 机の上にある食材の山を指差した。

「ふ~ん」

 腕組みをしながら、メイセイオペラと食材の山の間で視線を行き来させていたアンジェラザントだったが、ちらりと時計を見ると、

「もう五時か。そしたらご馳走になるか」

 そう言って、慣れた手つきでボンベを装着すると、鍋を火にかけた。

 

 ぐつぐつと煮える鍋から出汁の香ばしい臭いが漂った。

「なんか、ほっとするよね」

 鍋を碗に取り分けて渡すと、鼻を近づけたアンジェラザントが眉を寄せた。

「ど、どうしたの?」

「おめ、キムチを全部入れたろ。キムチ鍋する時は最初入れるのと、後から入れるのに分けると煮えたのとしゃきしゃきしたのと二つのキムチが味わえるんだぞ」

「へえ。知らなかった」

「私んちは兄弟が多くてな。昔から鍋ばっかりよって、どした?」

 己をじっと見るメイセイオペラの視線に、アンジェラザントは口を眉を顰める。

「い、いや、その、私ってのがさ。しゃべり方、直したんだと思って」

 これまでアンジェラザントは頑なに南部弁に拘り、教師に何か言われても、

「わのすきにさせ」

 とそれを一笑に付し、一向に改善する素振りを見せなかった。

 中央で活躍しながらも、訛りを直さず東北出身として素の自分を保っているユキノビジンに対し強い憧れを抱いている彼女からすれば、それは当然のことだっただろう。

 そんなアンジェラザントが、なぜ、話し方を変えたのか。

 メイセイオペラの指摘に、アンジェラザントはバツが悪そうに頬を掻いた。

「中央を目指すんなら、訛りをどうにかした方がいいと改めて言われたんだ。自分変えるようで嫌だとトレーナーとやり合ったんだけどよ。あんたを見てたら、一辺言われた通りに試してみるのもありかと思ってさ」

同部屋になり、二か月。ようやく話し掛けて来たアンジェラザントの口から出た一言に、メイセイオペラは目を丸くした。

「え……」

「なんだい、鳩が豆鉄砲喰らったみたい顔してよ。私はこれでも褒めてらんだが」

「いや、アンジェから褒められるなんて思ってもなかったから。嫌われていると思っていたし」

「ふん。お前のことなんか今でも好きでねえよ。でも、ピコの奴がしつこくってよ。オペのこと頼む、オペのことよろしくって。耳にタコができちまう。おめえどんだけ心配かけてんだ」

「ピコったら……」

 思わず涙腺が緩みそうになるのをメイセイオペラは必死にこらえた。僅かな間しか生活を共にしていなかったというのに、あの元ルームメイトはどこまでお人好しなのだろう。

「それに、私は年明けからここには帰ってこねえからな」

 アンジェラザントの突然の告白に、メイセイオペラは持っていたお椀を静かに置いた。

「中央に行くの?」

「いや。私の実力じゃ中央は無理さ。行くのは南関東。大井だよ」

 日本にある地方レース場の中で最もレベルが高いと言われる激戦区南関東。その中でも、大井は都心部に近く、最も観客が集まり、注目度が高い。

「船橋に浦和に川崎。どこに行くか悩んだけどね」

「へえすごいなあ。色々考えているんだね」

 感嘆の声を上げるメイセイオペラに、アンジェラザントは怪訝な顔をした。

「おめだって、色々と考えているじゃないか。ここに残って東北ダービー目指すってトレーナーから聞いたぞ」

「別にあれは私が決めた訳じゃないもの。佐々原さんがその方がいいって言ってくれたから」

「佐々原さんはここではベテランのトレーナーだ。分からなくもね。でもな、自分で決めないと後悔することもあるがらな」

「アンジェにはあったの?」

「あれよ」

 アンジェラザントはベッドの上に鎮座する熊の人形を顎でしゃくって見せた。

「弟達から誕生日プレゼント聞がれてよ。何でも良いって言ったらあのザマよ。もらったもん捨てるのも悪いとずっと持っでだら愛着沸いちまってさ」

 照れくさそうに口をへの字に結ぶアンジェラザントの様子にメイセイオペラは微笑む。

「優しいんだね」

 考えてみれば、あのモーニングピコと仲が良いのだから、悪いウマ娘である筈がない。

とっつきにくさばかりが目に入り、相手に合わせず、自分のペースでばかり話をしていた。

「何にやにやしてんだ。おめだって寝相が酷くて柵の隙間から顔突き出して寝るくそ恥ずかしい癖があるのによお」

「はあっ⁉ な、なんで知っているの?」

 以前モーニングピコに笑われたことを思い出し、メイセイオペラは顔を赤くした。

 これまで布団派だったためか、ベッドが寝づらく感じる時があり、そんな時はごろごろ寝っ転がったかと思うと揚げ句にベッドの柵の隙間から顔を出していることが多かった。てっきり寝ていて気付いてないと思っていたのだが。

「何でって。トイレ行く度に柵から顔が突き出てりゃ、そりゃ気づくだろが」

「どうも、あの柵の間に顔を埋めたくなるみたいなんだよねえ」

「頭ぶつけで、ヒキガエルみてえな声を出してるってのに懲りねえ奴だな」

「き、聞こえていたんだ……。てか、ヒキガエルって酷くない?」

 くすりと笑うアンジェラザントに釣られ、メイセイオペラも笑い声を上げる。

 締めのうどんを食べ、年越し蕎麦を食べても。

 これまでの不仲が嘘のように二人のとりとめのない話は明け方まで続いた。

 

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