BAWSの逆襲 作:スカウトマニア
あらすじの通りBAWSの社員をメインに据えた、こんな商品が開発されるんじゃないか的な妄想です。
追記
下方修正しました。
BAWS──BELIUS APPLIED WEAPON SYSTEMSは開発惑星ルビコン3に存在する企業である。マッスルトレーサー(MT)、アーマードコア(AC)と呼ばれる機動兵器に限らず、移設型砲台をはじめ多くの兵器を手掛けてきた。
ルビコンで発見された新資源コーラルを求めて、数えきれない人々と企業が集い、人類の生活圏内でも特に栄えた星系となったころには、地元有力企業としてBAWSもまた繁栄の極みにあった。
ただし、それもコーラルを原因とする『アイビスの火』によってルビコンのみならず星系が焼かれるまでの話。
グリッドと呼ばれる
それでも細々と再興の火を灯して、少しずつ生活基盤を立て直して星内に限られるとはいえ、人や情報、物流網が再構築されるなど、ルビコニアンは、人間はしぶとかった。
もとよりコーラルを食べるミールワームを主食としていたとはいえ、地表を焼かれたルビコンの大地で作物を育てるのは容易ではなく、寒冷化と砂漠化など極端な気候が広がる星での暮らしは極めて厳しいが、それでも彼らは生きている。
当然、その中にはBAWSも含まれている。星外との交流が断絶され、復興に人員、物資、時間を取られる中で、ようやく新商品の開発を行えるだけの余裕を取り戻したのだ。
ベリウス地方某所に、BAWSが新規に設立した第三技術開発局の研究所があった。アイビスの火以前に建設中だった地下施設を元にしており、再びアイビスの火が起きたとしても被災を免れる立地となる。
「さあ、楽しいお仕事の時間だ。まずは手持ちの札から確認しようか」
音頭を取ったのは局長に任命されたサクラ。BAWSの開発した初期AC『BASHO』の開発に関わった古参技術者である。
会議室に集まっているのはサクラを含めてサザンカ、キキョウ、リンドウの四名。サクラに比べれば一回り以上年の離れた若い世代で、アイビスの火以降に生まれた者も含まれている。
「このままでは星外企業との技術格差が広がるのは明白。それを少しでも埋めるのが、僕達三局の目的……」
淡々と口にするサクラに、隣に腰かけたサザンカが小さく首を縦に振る。AC関係に関しては、ほとんど新規開発を行えずにいたBAWSとしては、特に力を入れたい部門だろう。
「やはり……BASHOから、ですか。今も、ルビコンで、ACといえばBASHO一択」
ぶつ切りにするように言葉を紡ぐサザンカに、ねっとりとした口調のキキョウが続く。
「エルカノも新規開発の話はあるけどぉ、まだしばらくは掛かりそうだからねぇ」
BAWSと同じ星内企業エルカノの名前を上げながら、リンドウは手元のコンソールを操作して、BASHOのデータを表示する。
この場にいる全員は自社の主力製品のスペックを全て暗記しているが、様式美のようなものだ。
「アイビスの火以前にルビコンに入ってきたACと比較して目立つのは、やはり突出して高い近接武器適性かと」
キビキビとした口調で話すリンドウは、BAWS所属のテストパイロットだ。三局にとっては替えの利かない貴重な人材となる。
「リンドウ君、僕が居るからといって遠慮はしなくていいって。その分、反動制御と射撃武器適性については、大きく劣ってしまっている。
コア理論に基づく近接戦闘を重視した結果とはいえ、他社のACと比較してひどくアンバランスなのは否定できない」
「……はい。申し訳ありません」
リンドウが反論もなく頷くのに対して、サクラは素直な生徒を前にした教師のように満足げに頷く。会議を進めたのはサザンカだった。
「では、近接武器に偏った、反省として、腕部パーツの新規開発、から進めますか?」
本社から寄こされた予算と時間は有限だ。あれもこれもと手を広げて、中途半端なものを作るよりも、まずは一つ確かな成果を上げて次に繋げるべきだろう。
「そうねぇ。でも、今もルビコンで使われているACと言えばぁ、やっぱり、BASHOになるでしょう? まあ、星外企業の製品が、入ってこないからだけどぉ。
今から腕部だけ新規に購入してもらうよりぃ、既に広まっているパーツを活かせるようにするのが合理的でないかしらぁ」
「うん。キキョウ君の言うとおりだと僕も思うよ。それにBASHOの特性を改めて認識できた以上、これまで僕達が作らずにいたものを作ろう」
「と言いますと……近接武器ですか」
リンドウは合点が行ったとばかりに頷く。サクラの言うとおりBAWSの製品の中にはAC用の近接武器が存在していない。既に大量に存在しているBASHOを活かすのなら、今更だが特性と合致した武器作りから始めるのは、筋の通った話だ。
「幸い、四脚MT用に開発されたレーザーブレード、があります。MT用とはいえ、これを流用すれば、開発期間の短縮に、なると思います」
「よし、まず当面の目標が決まったね。僕達の最初の目標はBASHO用の近接武器、レーザーブレードの開発だ。
早速資料と資材を集めて、スケジュールを立てよう。アイビスの火に焼かれたからといって、僕達がへこたれたわけではないのをいつか星外の人々に示す為の第一歩さ」
そうと決まると彼女らの行動は早かった。取りまとめた開発計画資料を本社に提出し、根回しと同時にレーザーブレードの開発データを取り寄せて、BASHOに装備できるよう細部の調整にとりかかった。
既存のBASHOや今後生産される機体にも需要が見込まれる装備に対し、本社は理解を示して三局の開発は邪魔な横槍を受けることなく進む。
そうして短い期間で完成したのがBAWS社製レーザーブレード『MA-I-301 IZEN』。
星外企業アーキバスのレーザーダガーとレーザーブレードを足して割ったような性能の仕上がりだが、最初の開発としてはまずまずだろう。
開発までに幾度かの失敗を重ねながら、製造にこぎつけた後はシミュレーターと実機でのテストを入念に重ねる。時に弾幕の中に突っ込むACの武器が、いざという時にエラーを吐いては話にもならない。
星外企業に技術で置いて行かれる可能性があるのなら、せめて信頼性は負けないように仕上げなければ、という使命感が三局のメンバーの胸にはあった。
三局用に手配されたBASHO、機体名『キョウカスイゲツ』の左腕にIZENが装備され、他の武器の有無と合わせて実際に使用し、不具合を確かめるテストが何度も繰り返し行われる。
三局の地上敷地内にあるテスト場で、AIの制御するMTを相手にリンドウの操縦するキョウカスイゲツが、ブースト移動と細かなジャンプで動き回りながら、様々な状況からのIZEN使用を試している。
BAWS製二足歩行MTの構える実体シールドはペイント弾で塗り潰され、破壊判定を受けたことで放棄する。
同時にACSの負荷限界により、フリーズ状態を再現するMTに、IZENを起動したキョウカスイゲツがアサルトブーストを併用して斬りかかる。
大きく左上段から斜めに振り下ろし、返す刃がMTの左わき腹から横一文字に斬り裂く。
元々廃棄予定のジャンクから組み上げたMTである為、IZENは実際にピンクのブレードを展開しており、損耗していたMTの装甲を易々と斬り裂いた。
「よ~し、状況終了。これでIZENのテストは終了だよ、リンドウ君。どうだい、これまで随分とIZENを振るってもらったけれど、使い心地は?」
地上施設の管制タワーから問いかけるサクラに、リンドウはコックピットの中でそろそろと息を吐きながら答える。
ACの高速機動に耐える為、鍛え上げた肉体に専用のパイロットスーツを着込んでいるが、それでも負荷は馬鹿にならない。
「他社製品と比較してのものとなりますが、悪くはないかと。この程度の負荷であれば、アセンブル次第ではありますが、BASHOでも許容範囲の内でしょう。使い勝手の良さが広まれば、十分に需要は見込めるのではないでしょうか」
「そうか、そうか、そうか。君にそう言ってもらえるなら安心だよ。では機体の冷却を待って、次のテストに行ってみようか。サザンカ君、キキョウ君」
「はい。ターゲットMT、追加を、出します」
「承りましたわぁ。キョウカスイゲツをこちらへ回してくださるぅ?」
格納庫からぞろぞろとおかわりのMTが姿を見せ、キキョウが遠隔操作する輸送トラックの待つ指定地点へキョウカスイゲツが進む。ルビコンでは失われて久しい青い空の色をしたBASHOの目の前で、トラックの荷台が起き上がって簡易ガレージとなる。
差し出したキョウカスイゲツの左腕から、簡易ガレージから伸びる作業アームによってIZENが取り外されて、それを待ってから代わりの近接武器を直接、手に取る。
それはBASHOの腕ほどもある巨大で、武骨で、分かりやすい暴力の塊だった。
レーザーブレードやパルスブレードなどと異なり、至って単純に大質量をもって敵を打倒することを目的とした武器。棍棒──クラブである。
「MA-I-302 SHICOUの接続を確認」
EN兵器の心得に乏しい自覚のあるBAWS社員としては、複雑な機構を持たず整備も簡単で大量生産可能な近接武器が新商品候補に挙げられるのは、当然の流れだった。
円柱形のそれは腕部に取り付ける必要もなく、ただ握るだけで装備が可能という、極めて原始的な代物。多少、削れようが凸凹になろうが、機能が損なわれないのもセールスポイントの一つだろう。
「よし、ではテストを始めようか」
サクラの開始の合図を聞いてサザンカがコンソールを操作し、停止していたMTの一機が動き始める。MT初心者がするような、低速丁寧な動きで試験場の中を動き始める。
ジャンプ一つしない二次元のみの動きは、多少、心得のあるAC乗りにとっては鴨でしかない。リンドウはコックピット内部の正面モニター中央に標的を捉え続け、重々しい音を立てながら愛機を走らせる。
ブーストも使わない走行だが、相手の進路を的確に読んで先回りして、追い詰めるように動けばあっという間に距離は詰まる。
SHICOUの基本モーションは武器と同じで至ってシンプル。大きく振り上げてまっすぐに振り下ろす。たったこれだけ。これだけだが、シンプルな暴力はシンプルな使い方でこそ威力を発揮する。
哀れ、MTは頭上から叩きつけられた金属の塊によって、ペシャンコに潰されてしまう。もしパイロットが乗っていたら、ひしゃげた装甲に挟まれて無残な死にざまを晒していただろう。
機体越しに感じた地響きにも似た衝撃に、ふっと息を吐いたリンドウは、気のせいか後に控えているMT達が、自分達の運命を悟って哀愁を帯びているように見えた。
使えるパーツを抜き取って、溶鉱炉で溶かされるのとここで叩き潰されるのと、どちらが彼らにとって幸福であったろうか。
「前から思っていたけどぉ、レーザーブレードよりもぉ、使いやすそう。クラブ以外にもぉ、斧とか剣とか槍とか、作ってくれ~ってオーダーが来そうねぇ」
間延びしたキキョウの感想は、実のところ、試験場に居る全員が以前から思っていたことだ。サクラは困ったように笑いながら、キキョウに答えた。
「そうなったらエルカノに協力を求めようか。剣や槍ならあそこで鍛造してもらう方が、いいものが出来るだろうからね」
「オーダーメイド、の、高級品、になります、ね?」
製鉄技術や金属の加工技術においてBAWSの上を行くエルカノなら、ACサイズの刀剣でも見事な品を作り上げるだろう。その分、価格が高くなるのは目に見えていたが。
「安価なウチの商品と住み分けが出来て、いいじゃないか」
鷹揚に笑うサクラにつられて、他のメンバーも差異はあっても笑顔を浮かべるのだった。
*****************
BAWS製レーザーブレード
『MA-I-301 IZEN』
BAWS社が初めて手掛けた近接武器。元々は四脚MT用武装をAC向けに再設計したレーザーブレード。手探りの中で開発が進められたが、BASHO腕部パーツの適性を活かすことのできる装備にオールドファンはようやくか、と喜ぶか、今更か、と嘆いたという。
価格 175,000コーム
攻撃力 1,191
衝撃力 710
衝撃残留 225
連続攻撃回数 2
チャージ攻撃力 1,082×2
チャージ衝撃力 925
チャージ衝撃残留 240×2
直撃補正 185
PA干渉 122
冷却性能 960 → 460
重量 1860
EN負荷 200
BAWS製クラブ
『MA-I-302 SHICOU』
BAWS社が開発した実体型近接武器。金属の塊そのもの。時代に逆行したかのような代物だが単純極まりない構造の為、乱雑に扱っても問題ない扱いやすさ、MTとACの装甲にも十分通用する破壊力、他に類を見ない低価格は馬鹿に出来ない。
価格 20,000コーム
攻撃力 971
衝撃力 840
衝撃残留 610
連続攻撃回数 1
チャージ攻撃力 1830
チャージ衝撃力 1600
チャージ衝撃残留 830
直撃補正 210
PA干渉 127
冷却性能 1406 → 780
重量 1960
EN負荷 91
時間軸は原作前です。
レイヴンによる情報のリークやベイラム、アーキバスの密航時期が不明なので、ふわっとした時系列にしています。
パーツは使えるかどうか、微妙なラインを目指していますが、適切でしょうか? それとも不適切でしたでしょうか?
IZENはレーザーブレードとレーザーダガーを足して二で割った数字をいじり、SHICOUはパイルバンカーとチェーンソーを足して二で割った数字をいじっています。
次に開発・改修するべきはBASHO腕部、バーストアサルトライフルあたりでしょうか。