BAWSの逆襲 作:スカウトマニア
久しぶりにミッション形式ではなくなりました。
チャプター1終了のタイミングとなります。
ベリウス北部にあるコーラルの潮流を観測、制御するウォッチポイント・デルタ。
今は惑星封鎖機構のサブジェクト・ガードが防備を固めるそこは、手中に収めればコーラルの調査と入手に大きく前進する場所で、星外企業が虎視眈々と狙っている場所でもある。
しかし、耳を疑うような報せが、唐突にサクラに齎された。突如としてコーラルの局所爆発が観測され、その結果、ベリウス地方北西のベイエリアが消失というとてつもない被害が発生したと言うではないか。
惑星封鎖機構が抑える要衝に対して、星外企業やルビコン解放戦線はもちろんBAWSも遠巻きに監視を続けていた為、すぐに行動に移った。現地調査の為に自衛能力を持つ三局のメンバーの派遣を決定したのである。
同じように現地調査に派遣されるだろう他勢力に先んじる為に派遣されたリンドウとスイレンは、かろうじて原型を留めているACの残骸と巨大なリングとブースタを背負ったMTの残骸の発見に成功する。
しかし、ほとんど間を置かずにBAWS第2工廠で621が遭遇したステルスMTによる襲撃を受けていた。
「スナイパーと鞭の組み合わせ! レイヴンはあっさりと対処してみせたけれど、私達はそう簡単には行かないかっ」
リンドウはBASHOで統一したキョウカスイゲツを必死に操り、振り下ろされるプラズマの鞭とレーザーによる狙撃をなんとか避けていた。
敵機の連携の合間を縫って右腕の強化バーストマシンガン『S-ETSUJIN』で反撃を加えて、少しずつ敵機に損耗を強いている。
プラズマの鞭を振り下ろした姿勢のステルスMTと、もう一機、こちらに向けて跳躍してくるステルスMTを睨み据え、両肩の箱状の武装を開放!
「全弾持って行きなさい!!」
箱の前面装甲が外に向けて開き、中から無数のベアリング弾のシャワーが撃ちだされて、二機のステルスMTを無慈悲に叩きまくる。
元よりMOD式のステルス機能を活かす為、隠密性を強化する為に軽量化を進めたMTだ。冗談のような特注のベアリング弾に乱舞されてはひとたまりもない。
大豊核心工業集団の炸裂弾投射機『太陽守』を参考にして、背部武装へと応用したのがこのベアリング弾投射機『SHOUFUU(蕉風)』だ。
ステルスMTが足元の施設ごと穴だらけになり、火を噴くのを無視して、リンドウはブースタ『SHOUHAKU』に火を入れる。
こちらに向けて銃口を向けるステルスMTへ、近接戦闘用に調整されたブースタは素晴らしい加速を見せて、見る間に距離をゼロへ。
「ど真ん中を貫く!」
左腕に装備したベイラム製パイルバンカー『ASHMEAD』は、炸薬の威力を乗せた鉄杭をステルスMTのど真ん中に叩きつけ、一気にその背中まで貫き通す。肩のSHOUFUUにせよ、ASHMEADにせよ、MTが耐えられる代物ではない。
「スイレン、そちらは……」
「NACHTREIHERより速~い!」
「ええ……」
リンドウの心配をよそに、とある伝手から三局に運び込まれたシュナイダー社の試作AC『LAMMERGEIER』を駆るスイレンは、色々と正気を疑う仕様の機体を気に入った様子であるらしい。
実戦に耐えうる最低限の装甲や耐久性、パイロットの安全性には目もくれず、航空力学に則り、飛行速度に焦点を絞って開発されたLAMMERGEIERは、例えば頭部はカメラに整流版を乗せただけで設計要件に耐久性を含んでいない。
コアパーツはコアブロックがむき出しで、頭部同様に配線も丸見え。軽量化というにはあまりに人命を軽んじた仕様で、技術検証を最優先にした設計だ。
腕部パーツはどうも四脚パーツの前肢用に開発したものを流用したらしい。元々は前腕部分には翼を生やすはずが、アーキバスからの制止により渋々腕を取り付けたのだとか。手の部分はまるで猛禽の爪のよう。
結果的に、変形によって空力特性を得る為に複雑な機構を持つだけの四脚パーツは、比較的まともだ。
今回、スイレンはこれを愛機のアセンブルに採用して、LAMMERGEIERのフルフレームというACから半歩はみ出た機体構成で戦闘をこなしていた。
両腕の武装はシュナイダー社の開発したパルスハンドミサイル『PFAU/66D』、右肩のウェポンハンガーにはBAWS製長射程ショットガン『CHICK FES』、左肩にはおなじみファーロン・ダイナミクスの四連装ミサイルを装備している。
耐久性など微塵も考慮していない機体の為、被弾によるダメージが他の軽量機体よりも大事故につながりかねない。リンドウからするとハラハラしてしまい、僚機として出撃するのは非常に心臓に悪かった。
同僚の心配など知らず、キキョウはセツゲツカを航空機のようなホバリング形態に変形させ、上空からミサイルの雨を降らせて行く。
跳躍性能や上昇推力において、ACに及ばないステルスMT達はセツゲツカがスキャンで常に位置を把握していた為、上空へ効果的な反撃を行うのは難しかった。
三方向から囲い込むように迫るパルスハンドミサイルに対し回避は難しく、そこに四連装ミサイルが食らいつき、急降下と急接近からのショットガンが合わさり、ステルスMTをズタボロにして、施設の上に残骸と変わって転がる。
「撃破される前に暗号通信を送っている? 第2工廠の時と同じか。誰がこれを? 目的は私達と同じ?」
キョウカスイゲツのカメラに映る、惑星封鎖機構の特務無人機体バルテウスの残骸を見ながら、リンドウはステルスMTの背景に考えを巡らせる。前回との共通事項はコーラルの井戸、そして惑星封鎖機構の二つ。
このルビコンに居る勢力は例外なくコーラルを求めている。星外企業すら上回る技術を有する惑星封鎖機構の機体を手に入れようと、どこが暗躍してもおかしくない。
「サクラ局長の言うとおり、私達が把握していない新たな勢力の仕業か……」
リンドウがシリアスに思考を巡らせている間も、キキョウはセツゲツカをホバリングさせて、周囲を時速四百キロメートル近い飛行速度で飛び回っていた。
LAMMERGEIERの実働データはエルカノに提出する契約を交わしていて、期せずして得られた戦闘データはエルカノで重宝されるだろう。そしてエルカノを経由し、星外企業へと送られる運びだ。
「スイレン、PCAや企業が来る前に残骸を回収して撤退しますよ。輸送機を呼びますから、周囲の警戒を厳になさい」
「了解。警戒範囲を設定し直す」
ほどなくしてジャガーノートの輸送にも使われる大型輸送機が到着し、無事にバルテウス、ACエンタングル、ステルスMTの残骸が運び込まれて、三局の手に渡るのだった。
ウォッチポイント・デルタの現地調査が思いのほか、実入りの多いものとなったという報告を受けて、三局に残っていたサクラは物憂げな表情を浮かべながら、局長室のチェアに体重を預けた。
「『壁越え』を共に失敗したベイラムとアーキバスは戦力の補充に忙しく、ルビコン解放戦線は企業を退けて士気を高めているけれど、一部が勢いに駆られて無謀な攻勢に出ようとしているのがなあ。
ルビコン解放戦線は正規の軍隊じゃなくて、あくまで民間の武装ゲリラ、レジスタンス組織だから、規模が大きくなるほど上層部と末端の連携が上手くいかなくなっているのが、まずいねえ。
ドルマヤンはすっかりやる気をなくしているし。というか、元々彼はドーザーだったわけで、リーダーをやるタイプでもない。フラットウェルは大したものだが、なんにしろ人手が足りないな」
星外企業にも商品を販売しているとはいえ、やはりルビコニアンたるサクラとしては、解放戦線に肩入れをするし星外企業を追っ払ってしまいたい。
コーラルを巡る争いで中立の立場にあるメリニット、タキガワ・ハーモニクスを、どうにか自陣営に引き込めれば盤面は大きく動くが、簡単な話ではない。
いっそのこと、コーラルが再び枯れてしまえば、企業はルビコンから手を引いて、惑星封鎖機構も緩やかに封鎖を解いてゆくだろう。
「コーラルによって富と繁栄、毎日の糧を得て、代わりに争いと銃火、そして破滅が齎されたか。コーラルに意思があるのなら、なにをしたいんだい? と聞いてみたいもんだね」
かつてルビコン調査技研の資料の中に、コーラルに知性が萌芽する可能性についての研究があったのを思い出しながら、サクラは次に開発するべき製品のプランをまとめるべく、デスクの上のCOMを操作する。
「最近はRaDに触発されて、あっちの製品に手を加えたものと再設計品が多いか。ん~ACはBASHOK KaiとKAKEI、それにCATALINAがあれば当面は事足りるとして、MTや他の兵器の更新も考えた方がいいのか?」
EPHEMERAの解析と改修は順調に進んでおり、コーラル抜きかつ有人操縦に再設計した機体として復活する日は遠くない。いつか企業勢力と雌雄を決するその時までに、なんとか完成にこぎつけなければ。
BAWSが解放戦線に肩入れしていることなど、企業勢力も承知の上だろう。星外との補給路が確立すれば、BAWS製MTを買う必要はなくなるから、そうなれば容赦しなくなるのは目に見えている。
「企業には売らずに新型のMTを開発して、数を揃える。ジャガーノートとリトルジャガーも数を増やして……。んん~C兵器とバルテウスをどうにか、ものにするしかないか」
サクラの操作するPCの画面には、AC用のジェネレータと内装に変更されたウィーヴィルとヘリアンサス、四脚の先にヘリアンサスを接続した四脚タイプ巨大兵器や、ヘリアンサスを一輪バイクとして改造し、中にACや人型MTが入って操縦するオプション兵器案……。
キワモノと言いたくなるようなプランが、子供のおもちゃ箱のように目いっぱい詰まっていた。この内、いったいどれだけのプランが陽の目を見られるものか。
「軽量機体はエルカノに全部任せて……超重量級タンクとTOUSEIの上位互換となる近接戦闘特化機体は開発したい。
バスターソードを上回るグレートソードも確定として、後はEPHMERAと一緒に回収したプラズマライフルと光波ブレードも、どうにかウチの技術で再現したいんだけど、タキガワさんところに助力を乞うか」
既にメリニットに対しては、自社開発した拡散バズーカや三連バズーカ、グレネードキャノンの実戦データを提出し、協力を仰いでいる。
先方からは耳に痛い指摘の数々と共に、チャレンジ精神への賞賛の言葉を貰っており、現在はジャガーノートをメリニットの好きに改造させた機体を戦場に投入し、そこから得られる数々のデータを提供していた。
「HA-T10-MC 重装機動砲台メリニット・ジャガーノート、か。活躍できる場所は限られるけれど、これの相手をしなければならない敵が哀れだ」
モニターには、広大な砂漠で、アーキバスの駐屯基地の一つを襲うメリニット・ジャガーノートの活躍が映し出されていた。
3連グレネードキャノンは同社のAC用大型グレネードキャノン『EARSHOT』をさらに大型化した上で三連装化したものに交換。2連装副砲は腕部用大型グレネード『DIZZY』をベースに機動砲台搭載用とあって、重量を気にせず大型・連装化したものへ。
6連ミサイルは撤去された代わりに、中型バズーカ『MAJESTIC』ベースの4連バズーカに置き換えられ、地雷投射機は不要と外されている。
基本構造はそのままに武装をメリニットのグレネードとバズーカで埋め尽くし、たっぷりの火薬を詰め込んだ怪物火力の前に、アーキバスのMT部隊も一般隊員が乗るACもまとめて吹き飛ばされて、真っ赤な炎の中に飲まれている。
弾薬費はメリニット持ちとはいえ、一度の出撃でどれだけの費用がかかったかを考えると、サクラをして頭が痛くなるレベルだ。
「まあ、結果は出ているか。バルテウスは……修復してコピーした機体をメリニットとタキガワの双方に提供してみるのも面白そうだ」
グレネードとバズーカで埋め尽くされたメリニット・バルテウスと、より強固なパルスアーマーを装備してパルス兵器で埋め尽くされたタキガワ・バルテウスを思い描き、サクラはにやりと笑みを浮かべる。
「BAWSバルテウスなら……ライフルとマシンガンベースに、近接武器を増やすかな? ふふ、妄想とは実に楽しく、実に味わい深い美酒だ。企業が本気の反撃をしてくる前に、出来るだけ勢力を削りたいが、鍵は君なのだろうね。なりすましのレイヴン君?」
ここ数日、傭兵活動を控えて休息に当てているらしいレイヴンが、今後のルビコンの運命を握る鍵になると、サクラは大きく注目していた。
「ブランチと本物のレイヴン達も、いつかはレイヴン君を見過ごせなくなるだろう。もしあいつらが再び表舞台に立つ時が来たなら、レイヴン君かルビコニアンの手で地獄に叩き落としてやりたいもんだ」
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BAWS製強化バーストマシンガン
『S-ETSUJIN』
既製品の再設計プロジェクトによって再設計されたバーストマシンガン。
軽量機体のサブウェポンとして良好な性能を発揮していたETSUJINを、命中精度と取り回しの良さを残しつつ、可能な限り火力の向上を目指して見直したもの。
他の再設計品と同じく弾薬やマガジン、給弾機構は元となったETSUJINと共有しており、生産ラインをそのまま活かせる構造となっている。
スイレン「S-ETSUJINのSは素敵のS」
価格 80,000
攻撃力 50×4
衝撃力 52×4
衝撃残留 25×4
直撃補正 193
射撃反動 3
性能保証射程 116
有効射程 230
連射性能 8.1
マガジン弾数 24
総弾数 600
リロード時間 1.6
弾単価 30
重量 2900
EN負荷 100
BAWS製ベアリング弾投射機
『SHOUFUU』
BAWSが大豊核心工業集団の開発した炸裂弾投射機『太陽守』を参考に、背部武装として設計し、開発した武装。無数のベアリング弾を発射して複数の敵機や施設破壊に向いている。
通常時は上下に向けてベアリング弾をバラまいて、前方範囲を破壊する。チャージでは左右に広がる散布軌道に変化する。
価格 196,000
攻撃力 1055
衝撃力 1022
衝撃残留 908
チャージ攻撃力 1055
チャージ衝撃力 1022
チャージ衝撃残留 908
直撃補正 202
有効射程 120
総弾数 54
リロード時間 2.7
弾単価 580
重量 3660
EN負荷 155
BAWS製長射程ショットガン『CHICK FES』
RaD製のショットガン『SWEET SIXTEEN』に刺激を受けて、開発されたショットガン。複数の銃口から弾体を同時発射して範囲攻撃を行う設計を踏襲しており、厳密にはショットガンではない。
真似るだけではつまらないと、SWEET SIXTEENと異なり、長銃身を束ねたロングショットガンとも言える代物が出来上がった。ショットガンとは?
名前は『ひな祭り』を意味する。
価格 88,000
攻撃力 110×9(990)
衝撃力 84×9(756)
衝撃残留 55×9(495)
直撃補正 190
射撃反動 100
有効射程 197
マガジン弾数 9
総弾数 450
リロード時間 2.6
弾単価 30×9
重量 4260
EN負荷 277
チャプター3以降は主な場所がベリウスから移動するので、三局と621が戦場で顔を合わせる機会が減ってしまいそうです。何かミッションなりを考えなければ。