BAWSの逆襲   作:スカウトマニア

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今回はスペック表ありの新製品はなしです。
箸休め回ですね。


アームズフォートを作ろう → 作ってた

 ウォッチポイント・デルタ襲撃に伴うコーラルの局所爆発。それによって拡散したコーラルがより大きな群れ、あるいは集積地を目指して移動し始めたのは、ルビコンの主な勢力の全てが観測している。

 コーラルはアーレア海の向こうに広がる中央氷原に向かっており、ルビコン解放戦線は中央氷原に支部を編成し、ミドル・フラットウェルが司令に就くなど力を入れている。

 

 ベイラムとアーキバスら企業勢力もまた、惑星封鎖機構の妨害を潜り抜けて、海を渡る為のルートと継続的な兵站確保、並びに中央氷原の調査データを欲していた。独立傭兵や私兵戦力の運用も視野に入れて、様々な計画を練っている。

 ではBAWS第三技術開発局は、というと彼女ら自身はあくまで地元企業の一部局に過ぎず、企業と正面から戦えるだけの戦力はない。

 

 相変わらず新規商品の開発と解放戦線への肩入れを続ける他はなかったが、第2工廠への襲撃以来、一層、軍事要塞化の進む三局の中、ブリーフィングルームの一つにいつものメンバーが集まっていた。

 口火を切ったのはサクラである。三局のトップとして、最も大きな権限と多くの知識量を持つ彼女が三局の方針を大きく決めるのは、いつものことだった。

 一方で納得が行かなければ、殴り合ってでも抗議する、というアグレッシブさが彼女らの特徴である。

 

「え~それでは、コーラルを巡る争いが新たな局面に至り、各勢力が新たな動きを見せる中、我々はどうするべきか? 皆とビジョンを共有しておきたいと思う」

 

 企業勢力とルビコン解放戦線の動きは先に述べたとおりだ。そこにサザンカが追加の情報を肉付けする。

 

「ベイラムとアーキバス、が中央氷原に向けて戦力、を集中させる一方で、RLFはベリウス本部と支部とで連携し、両面作戦を遂行するようです。中央氷原への輸送船団を狙っての攻撃や、ベリウスに残る部隊や工廠、基地への攻撃がメインですね」

 

「ヴェスパーの隊長格にぃ、レッドガンのコールナンバー持ちは、だいたい中央氷原に行くからぁ、かなり手薄になるものね。コーラルの確保は別として、とりあえず企業を叩く絶好の機会だわぁ」

 

 キキョウが顎に人差し指を当てて、ん~と艶めいた声を出しながら考えを巡らせる。ベリウス地方において、企業の戦力が手薄になるのは確かだが、ベリウス地方にかまけて企業にルビコンに残るコーラルの大部分を奪われては元も子もない。

 リンドウも手元のコンソールに表示される各種のデータを見ながら、私見を口にする。

 

「ルビコン解放戦線は中央氷原に支部を作っていますし、ベリウスに比べれば小規模ですが、元々中央氷原に居住者が居たのが功を奏しましたね。

 拠点づくりという意味では、企業に先んじています。戦力が乏しいのに変わりはありませんが。レイヴンのような独立傭兵にとっては、稼ぎ時かもしれません」

 

 リンドウの言う通りでベリウスに本拠を置くBAWSから中央氷原へ商品や援助物資を送るのは、勝手が違ってくる。

 コーラルの情報がリークされる以前から航路を使っていたの、でシーレーンの構築や情報については大きく先んじているし、独自の補給路を作れるが戦力の展開は難しそうだ。

 しかし、彼女らはあくまでBAWSの社員だ。ルビコン解放戦線の戦士ではない。それを口にしたのはスイレンである。それなりの時間を三局で過ごして、社員としての自覚が芽生えたらしい。

 

「でも私達、ルビコンの戦士じゃない、よ? BAWSの社員だもの。解放戦線の戦略に口を出すの、おかしいよ? 求められたら新製品を開発したりするし、アドバイスもするけど、でも戦略を決めるのは、解放戦線の人達だよ?」

 

「うむ、そこはスイレン君の言うとおりだ。我々はあくまで地元企業としての範に則って、肩入れするに留めるべきだろう。それこそ企業の社員として以前に、ルビコニアンとして戦うべき時が来るまではね」

 

 うむうむとサクラが頷いているのを見て、サザンカがそれならと意識を切り替えて別のデータを全員のコンソールに表示させる。アイビスの火以前に使わられていた巨大な輸送船を武装化したものだ。

 ストライダーと同じ経緯で開発されたそれは、この時代らしい全長数百メートルに達する、水中翼船の形状をしている。企業勢力の侵略により、海路の確保と自衛能力を持たせるために武装が施されたそれはスティグロと呼ばれ、運用されている。

 

 艦首に巨大なレーザーブレードを備え、遠距離戦闘に備えた各種ミサイルを搭載し、ガトリングやレーザーの砲台も備え、巨体に相応しい莫大な輸送量を誇る。

 今回の中央氷原侵攻に合わせて、これからのルビコンでの戦いにおいて大きな役割を果たしてくれるだろう。

 

 更に巨大な弁当箱を二つ並べて、艦橋で繋げたような巨大な船舶が映し出される。

 スティグロがあくまで水上艦艇であるのに対して、水陸両用の輸送船として開発された経緯を持つ全長数百メートル級の水陸両用艦艇ギガベースだ。

 大型実体弾砲×2、連射野砲×8、多連装ミサイルランチャー×12、近距離防御用砲×12、近距離防御用マシンガン×12の他、水上での推進機を兼ねるレールガン一基を持つ。

 こちらも巨体に見合った大きな収納スペースがあり、ベリウス地方から中央氷原への物資輸送に期待が持てる。

 

「スティグロに、ギガベース。どちらもアイビスの火、以前にルビコンで運用されていた、巨大船舶を流用した為、純粋な軍事兵器では、ありませんが、満足に兵站を構築できない企業にとって、はストライダーと同じくらいに手強いはずです」

 

「どちらも今のBAWSの工業力では、追加生産が難しいという事情が無ければ、もっと運用したいところですね。

 巨大兵器の類は地元企業だからこそ、用意できるアドバンテージです。ベイラムやアーキバスがこんな代物を持ち込もうとしても、惑星封鎖機構が見逃さないでしょうから」

 

 リンドウがしみじみと呟く。ACがその性能を引き出す為には、凄腕のパイロットが必要となるが、スティグロやギガベースなどは訓練を受けた複数の人間が居れば、運用できる兵器だ。サイズはともかく、個人の才覚に依存しない従来の兵器の枠に収まる。

 コンソールのデータを眺めながら、スイレンが小首を傾げながらサクラに問いかけた。スティグロにせよ、ギガベースにせよ、同じカテゴリーに分けられていた。

 

「局長、このアームズフォート? っていうのがこの子達の種類?」

 

「そうだよ。MTはこっちもあっちも同じものを使っているから、それ以外の部分でなんとか有利に戦えないものかと、昔の馬鹿でかい船舶とか輸送車両を兵器に転用したんだよ。ストライダーなんかもそうだね。

 半世紀以上昔の遺産を食いつぶして作っているようなものだから、今、運用しているものぐらいしかなくって、在庫が心許ないんだ。

 その関係で運用には随分と慎重になっていたけれど、解放戦線もそろそろ前面に押し出すんじゃないかな。ランドクラブならなんとか量産も出来るし」

 

 そう言ってサクラが新たにコンソールに映し出したのは、もっとも数の多い量産型AFランドクラブだ。ストライダーと艦隊を組んで運用する計画を立てられていた機体で、局面が至れば大地を掛けて企業勢力に襲い掛かる予定となっている。

 見た目は巨大な戦車で、ソレに相応しいバカみたいなサイズの無限軌道と、名前の通りに合計十二本の蟹のような脚部を持ち、陸地での運用においては場所を選ばない走破性を誇る。

 

 若干の輸送能力の他、三連装砲塔四基、迎撃用機銃ならびに垂直ミサイル複数を搭載しており、なかなかの火力を持った移動拠点として運用できる。

 問題は他のAFもそうだが、621のような凄腕のACならば単機で撃破可能な可能性がある事か。

 アーキバスの誇るフロイトやラスティ、かつてのレイヴンと今のレイヴンならば、スティグロやギガベース、ランドクラブ、更に他のAFも撃破可能だとサクラはほぼ確信し、フラットウェルにもその可能性を伝えている。

 

「中央氷原には、大陸間横断鉄道に使われていた巨大車両を改造したグレートウォールがある。複数の車両を連結して運用する移動要塞みたいなものだね。

 車両を全部繋げれば、最大で全長十四キロメートルに達する。昔のルビコンでは、コイツがお金持ち御用達の豪華列車でねえ。コーラルの利権にむしゃぶりつく金持ち達をもてなす為の設備をこれでもかと搭載した結果、これだけ巨大化したのさ

 それが今や企業に対抗する戦力に転用されているのだから、皮肉以外の何物でもないね。多分、解放戦線の中央氷原支部の司令部になるんじゃないかな。アイビスの火が起きた時、ちょうど整備工場に入っていたから、難を逃れたのさ」

 

 ストライダーが可愛く見える巨大な列車に、流石のスイレンが目を丸くする中で、次に表示されたのは三対の飛行甲板と歩行用の六脚を備えた、これまた馬鹿でかい移動要塞だ。全高は六百メートル、全長は二千四百メートル。

 その巨体を無数のミサイルランチャーと大量火器でドレスアップし、不用意に近づく者は搭載したMTと合わせて無礼討ちにする。

 現在はベリウス地方北部に潜伏し、出撃の機会を待つ、母なるルビコンの魂を具現化した要塞だ。

 

「最初にAFとして軍事転用したのがこの子。スピリット・オブ・マザールビコン。元々はあらゆる場所で離着陸ができる移動空港として使われていたものだよ。

 この子のお陰で巨大な建造物や輸送機を武装化するノウハウを手に入れたんだ。この子は最初、砲台やミサイルランチャーが破壊されると、そのダメージが構造体に浸透して、内部に大きなダメージを受けるという欠陥があってねえ。

 今ではもちろんそんな欠陥は見直しているけれど、民間機を無理に兵器化することの難しさを教えてくれたよ。ストライダーのアイボールを作る時も、データが役に立ったものさ。懐かしいなあ」

 

「ん~~~~私一人だと、たぶん、ううん、とっても撃墜は難しい子達。ランドクラブならリンドウやキキョウ達が一緒なら、いけるかも? 私達で出来るなら、ヴェスパーの隊長達やレッドガンのコールサイン持ちも、出来ると思う」

 

「ACはそれが出来るから怖いんだよ~。流石にこの子達を破壊されると、補充がものすっごく難しいんだから。ランドクラブにしても、この子一機で、MTが何機作れると思う?」

 

「……二十機くらい?」

 

「もっとさ! 昔のルビコンにはグリッド建設の為に、膨大な資材と建築用の重機、輸送の為の超巨大船舶や車両、航空機が次から次へと作られたからね。今となっては、同じ真似はちょっと出来ないのが悔しい所だよ。

 作っておいてなんだけれど、正直、これらを作るリソースを食糧事情の改善に回したいけどね。難儀な話さ。こんなに巨大な機械を作れても、食料一つろくに作れないんだから」

 

「サクラ局長のお気持ちは分かりましたし、とぉっても共感しますけれどぉ、すみません、私達はこれからどうしますぅ? そこのところを共有するブリーフィングでしょ?」

 

 ずれた話の矛先を戻したのはキキョウだった。彼女の言葉に、サクラは首を振って頭に上った熱を冷ました。

 

「すまない、キキョウ君、スイレン君。僕らしくもなく頭に血が上ってしまったよ。話を戻して、AFと共に解放戦線の戦力も企業と同じく中央氷原に移るだろう。

 情勢の変化を鑑みれば、時間のかかるAFの新規開発や製造はこれ以上、望めない。既存の機体でやりくりをしていくことになる。

 解放戦線はそう動くとして、ならば僕らはACやMTを中心に星外企業に勝る商品を作り、ルビコンの解放へとつなげて行くまでだよ。作ってもジャガーノートあたりの範疇までかな」

 

「つまり、いつも通り、ですね?」

 

 とサザンカが確認するとサクラは笑いながら頷き返す。

 

「はっはっは、そうだね! これまで通りにやってゆくという方針を確認できた。十分な収穫さ! ベイラムとアーキバスもまだ数の少ない新規パーツや武装を送ってくるだろう。

 我々BAWSも負けちゃいないってことを、これからもどんどん声高に主張していこうじゃないか!」

 

 そうしてサクラは皆のコンソールに、ヘリアンサスのくりぬいた真ん中に人型のMTが乗り込んだ、奇妙な物体を表示させるのだった。




 本作のAFは作中のACで単独撃破可能な性能です。ストライダーとおおむね同格の兵器群とお考え下さい。
 コーラルの発見で栄えていたころの車両や船舶を軍事転用した安上がり品なので、仕方ないのです。一から作ったわけではないので、お安く済んだという設定です。

 私見ですが作中の設定を鑑みるに、技量は621を別枠として最強格がフロイト、真レイヴン、ラスティ、次にミシガンやキング、シャトルーズ、ドルマヤンあたりでしょうか。
 621、フロイト、ラスティ、真レイヴンなら単機で本作のAFを単独撃破可能くらいに考えています。

 解放戦線ルートに行くとAFは味方です。

感想、分析、商品レビュー、いつでもお待ちしています!!
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