BAWSの逆襲   作:スカウトマニア

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鉄は熱い内に打てと申しますに、妄想が捗っているうちに更新です。


腕部パーツと射撃武器を作ろう!

 BAWS第三技術開発局にある休憩室にサクラとリンドウが居た。新商品として開発したレーザーブレードIZENとクラブSHICOUが販売されてから、それなりに日にちが経過したある日のことだ。

 汚染物質を除去した精製水で淹れられたコーヒーを、ドリンクサーバーから取り出しながら、リンドウは先客のサクラに話しかける。社内で重役と言えるポジションだが、サクラは親しみやすい性格で、局内の気風もそれに倣ったものだ。

 

「IZENとSHICOUの評判は上々ですね、局長」

 

 テーブル席に腰かけたまま、サクラは手の中のカップに口をつけてから答える。

 

「BASHOの長所を活かせる装備を、ようやっとお披露目できたわけだからね。現場から評価されて、ほっと一安心さ。本社としては、単価の高いIZENがSHICOU並みに売れて欲しい所だろうけれどね」

 

 サクラの物言いに、リンドウは苦笑しながらコーヒーに口をつける。合成した苦みと風味も、本物を知らなければ十分に楽しめる。上を知らなければ低い生活水準でも満足していられるものだ。

 

「待機状態から起動して、発振したブレードで切りつけなければならないレーザーブレードと殴りつければそれでいい棍棒とでは、扱いやすさが段違いでありますから。それに値段の方も……」

 

「懐事情の豊かな連中は、今のルビコンではまず居ないからね。

 各地のグリッドを根城にしている無法者に、アイビスの火を生き残ったはいいけれど、星外へ戻れなくなった独立傭兵や軍人崩れの野盗集団、BAWSのような企業の抱える私兵戦力にしても、切り詰められるところは切り詰めたいよね」

 

「自治政府の再建の見通しも立っていませんし、今となってはルビコン解放戦線が政府代わりといっていいかもしれません」

 

 現在のルビコンにおいて政府機構の代わりとなっているのが、元々は惑星封鎖機構への反発などから誕生した、ルビコン解放戦線と呼ばれる武装ゲリラだ。

 この手の組織にしては意外なことに内部の統制は行き届き、民間人の誘拐や搾取、虐殺行為に手を染めたという話は聞かない。むしろ積極的に民間人の支援や救助を行うなど、確かに政府の代わりと言ってもいいかもしれない。

 

「『コーラルよ ルビコンと共にあれ コーラルよ ルビコンの内にあれ その賽は投げるべからず』。サム・ドルマヤンの警句だったか。

 コーラルで育つミールワームを主食にしている僕達にとって、コーラルは欠かせないものだけれど、アイビスの火の原因になるような物質だ。そりゃあ、ルビコンの外には持ちだせないよ」

 

「コーラルのルビコン外への流出を防ぐ、という意味では惑星封鎖機構の目的と共通するところもありますが、かといってルビコンにコーラル以外にめぼしい資源はないのも事実です」

 

「せめてアイビスの火で焼かれてなかったら、最低限、ミールワームに頼らない自給自足体制を整えられたかもしれないけど……。惑星封鎖機構のもっと上の方、政府が力を入れてルビコン復興の支援か、他の惑星への移住を支援してくれるなら違う今があったろう。

 いくら言葉を重ねたところで、仮初のもしも、たらればさ。さあさあ、リンドウ君、次の商品開発に向けて、熱いミーティングの時間だ。皆を待たせる前に行こうじゃないか!」

 

 これ以上、続けても明るくはならない話題を切り上げてサクラは席を立ちあがり、リンドウもまだ温かいコーヒーを急いで飲み干し、彼女に続いて部屋を出る。

 行き詰まったこの星で、新たな兵器を開発し続けたところでなんの意味があるのか、そう考えたことがない者はいないだろう。

 だからこそ目の前に新商品の開発という難題をぶら下げて、未来への不安を押し隠しているのかもしれなかった。

 

「やあ、皆。SHICOUとIZENの評判は上々さ。お陰で追加予算も降りて、次の商品開発に向けて、準備は万全整ったよ」

 

 いつもの会議室にいつものメンバーが集い、顔を突き合わせる。前回は既存の商品のポテンシャルを活かす為の商品開発をテーマとしたが、今回は? サクラに続いて話を繋げたのはリンドウだった。パイロット目線からの意見が出るのだろう、と他の三人が耳を傾ける。

 

「僭越ながら私から意見を述べさせていただきたく存じます。前回は近接武器の開発に取り組みましたが、今回はBASHOの腕部パーツ、その改修を提案いたします」

 

「新規開発ではなく、改修か。その心は? リンドウ君」

 

「はい。BASHO腕部の真価を発揮するには近接武器の使用が必須ですが、同時に近接武器を適切に扱えるパイロットが、どれだけいるのか、という問題があります。

 MTならともかく高機動戦になるAC相手では、間合いやタイミングを見誤って空振りを繰り返すパイロットの方が多いのです。

 現在のルビコンでACの各種機能を使いこなし、フルパフォーマンスを発揮できるパイロットは、数えられるほどしかいません。正直に言えば、近接武器を使う事は出来ても、使いこなせるパイロットは、ほとんどいないのです」

 

「つまり、技量を求められる、近接戦ではなく、射撃戦に適した、腕部パーツを作るべきという提案?」

 

「ん~でもぉ、戦場で見かけるのはほとんどがMTでしょう? MT相手に通用するのなら、現状のBASHOでもいいのではないかしらぁ。需要と供給も、高い水準で釣り合っているしねぇ」

 

「キキョウさんの言われることはもっともです。ですが、今後、ルビコン解放戦線が惑星封鎖機構との戦いを本格化させる可能性を考慮すれば、彼らの保有する兵器と戦うのにはMTよりもACの方が向いています。

 それにACへの適性が低いパイロットは、射撃戦や後方からの火力支援を行うのが定石です。その戦力を少しでも底上げする為にも、射撃戦に適した腕部の開発を今からでも行うべきです」

 

「リンドウ君の主張は分かったよ。それで新規開発ではなくBASHOの改修を提案した理由は?」

 

 BASHOの開発にも携わったというサクラからの質問に、リンドウは新たな緊張に喉の乾く思いで答える。

 

「BASHOは意図せずして近接武器の適正に特化した仕様となりました。まずはこの理由を解明し、同じ轍を踏むのを防ぐ為のデータを収集します。

 またBASHOからの改修ならば、既存の生産ラインをある程度、流用できるでしょう。改修の度合いにもよるでしょうが、その他のコア、頭部、脚部パーツとの親和性をそれほど損なうことなく使用できる見込みもあります」

 

 今のところは絵に描いた餅だが、こればっかりは実際にBASHOの腕部を一から洗い直し、射撃戦用にリファインしてみないと分からない部分もある。なにより、失敗を恐れていては、なにも新しい成果を得られはしないのだ。

 リンドウの提案にいくらかの説得力と合理性を認め、サクラは最終的に提出されたBASHO腕部パーツの改修案にゴーサインを出した。

 

「重量、バランスを、大きく変えるわけには、行かないから、デザインは出来るだけ、いじらない形に」

 

「そうなるとぉ、電装関係をメインにぃ、内部の配置とコアとの接続のぉ、見直しからかしらねえ」

 

 立体モニターに浮かび上がる腕内部の構造を眺めながら、これをこっちに、あれをあっちに、それをそっちにとサザンカとキキョウが弄繰り回し、その影響によるデータの変化を克明に記録してゆく。

 その一方でサクラとリンドウは現在のBASHOを改めて検分し、どうしてここまで反動制御と射撃適性が落ち込み、近接適性のみが突出しているのかを調査する。

 

「一点特化型にもそれはそれで使い道はあるけれど、これから先、ルビコンの為に戦ってもらう機体なら、それだけってのは不味いよねえ」

 

 一点特化型はその長所を潰されてしまえば、もろいものだ。MTと組み合わせて戦うにしろ、近接戦に活路を見出すしかないACなど、企業の枠を超えた共通規格に従った部位交換による、汎用性が強みのACの概念に喧嘩を売るような代物だ。

 まあ、腕部や脚部一つ変わっただけでも、操縦感覚の変化に追いつけず、習熟し直さなければならないパイロットが多く、真の意味でACの多様なアセンブルを使いこなし、性能を引き出せるパイロットは極めて希少なのが事実。

 だからこそリンドウも既に普及しているBASHO腕部と、操縦性に極力違いが出ないように改修案を提出したのだから。

 

 ACは昨今ではMTでも数で囲めば倒せる、四脚MTならば大抵のAC乗りと倒せる、というのが共通認識だ。おおむね高級なMT止まりだろう。

 汎用性に特化した一方で人間の方がそこまで汎用性がなく、せっかくアセンブリを組んでもその真価を引き出せるケースは滅多にない。

 アセンブリとパイロットが噛み合った時の爆発力は、他の機動兵器の追従を許さない一方で、ACがイマイチ評価されないのはそういった事情による。

 

 心情的にはルビコン解放戦線に肩入れするところのある三局のメンバーは、自分達の開発する武器やACの真価を引き出す稀有なるパイロットが現れるのを、祈るばかり。

 三局の主要メンバー四名とその他、名も無い局員達の奔走の甲斐あって、改修型BASHO腕部の開発はスムーズに行われた。

 

 そうして開発された新たな腕部パーツ『AH-J-124-K BASHO Kai』は、目論見通りに近接武器適性を引き換えにして、反動制御と射撃武器適性の引き上げに成功する。

 BASHOの長所を引っ込めたことで、他企業のパーツと変わらないつまらないパーツになった、と言う声もある一方で、星外企業に頼らず地元で調達できるパーツのバリエーションが増えたこと、汎用性のある性能であることを評価する声もあった。

 

 試験場でのテストを終えた後、護衛の無人MT部隊を引き連れたキョウカスイゲツは、実戦テストを行う為、近隣で略奪行為を働いている無法者の討伐に出た。

 BAWSの私兵戦力か独立傭兵を雇い、殲滅するところを今回は完成した腕部パーツのテストを兼ねて、三局で引き受けた形となる。

 

 無人MTに守られたAC輸送用の大型ホバートレーラーから、サクラが無法者集団の汎用兵器や整備不良のMTを相手に戦ったリンドウに通信を繋げる。

 隅々まで整備の行き届いたキョウカスイゲツとMT部隊の奇襲を受けた無法者集団は、浮足立った状態から立て直せず、リーダー格をアサルトブーストからの強襲で真っ先に始末したこともあり、壊乱して逃げる者、反撃を試みる者、状況を理解できずにいる者とに分かれた。

 

 三局の有人機はキョウカスイゲツ単機とはいえ、レーザーブレードにグレネードランチャー、マシンガンで武装した四脚MTの他、各種武装を施したMTの一斉攻撃を受けて、無法者達は全員がルビコンの大地に骸を晒している。

 後は彼らが蓄えていた略奪物資を接収し、拠点を焼き払って汚物の消毒を終えれば今回の実地テストは終了となる。

 

「リンドウ、調子はどうだい? レティクルはきちんと機能しているかな? FCSは替えずにいるから、純粋な腕の性能差が出ているはずだよ」

 

『こちらリンドウ。BASHO Kaiの調子は良好です。以前と比べて照準が相手に吸い付くように追ってくれています。FCSをより優れたものにすれば、例え新兵が乗ったとしても、悪くない弾幕を張れるかと』

 

「ふむ。まず一つ目の課題はクリアか。では銃弾の収束率は? 反動制御はどうだろう。腕の改修に合わせて、新規開発したガトリングガンの調子はどうだい。

 四脚MT用のガトリングガンをベースに、中量機体用に調節した代物だが、これまでAC用には作らなかったカテゴリーの武器だ。RANSETSUやETSUJINとは勝手が違うだろう」

 

 現在、キョウカスイゲツの両腕にはBASHO Kaiに合わせて開発された、BAWS社ガトリングガン『MA-G-211 KYOKUSUI』二挺が握られていた。

 星外企業大豊核心工業集団の開発したガトリングガンに比べると、小型・軽量で総弾数も少ないがその分、反動が小さく比較的取り回しが良いのが特徴である。軽量ガトリングガン、あるいはスマートガトリングガンとでも言うべきか。

 劣悪な状況で稼働している敵機を相手に、容赦なく銃弾の雨を降らせて一方的にスクラップに変えたガトリングガン達は、今は役目を終えて沈黙している。

 

『相手の装甲が劣悪な状況だったのもありますが、中距離からでも十分な威力を発揮していました。対AC戦でも十分な威力を発揮することを期待できます』

 

「それはなによりだ。改修自体は簡単に終わったが、なんだかね、右を向いていたものを左向きに変えたくらいで随分と変わるものだ」

 

 かつて開発に携わった自分に呆れるように口にするサクラに、リンドウは何を言えばいいか分からなかったが、その代わりにキキョウがふんわりと笑って言う。

 

「いいじゃないですかぁ~。こうして、今に繋がったんですからぁ。昔のBASHOも~新しいBASHOも~、必要としてくれる方は居ますよぉ」

 

「そうかな。そうだねえ。そうなら嬉しいね。本当はACが必要とされない世界になった方が良いんだけど、自分の作ったものが認められるのは、やっぱり嬉しいものね」

 

*************

 

BAWS社製AC用腕部パーツ

AH-J-124-K BASHO Kai

 

BAWS社がかつて開発したBASHOの腕部パーツを再設計して販売した腕部パーツ。外見のみならず内装にも最低限手を加えただけだが、偏っていた適性と反動制御のバランスが大きく変化している。均質化したことで強みを失ったと言えるが、近接戦闘をこなせないパイロットが多く、既に普及しているBASHOとの互換性を重視したことを踏まえれば妥当か。

 

価格81,500コーム

AP      2430

耐弾防御   208

耐EN防御   196

耐爆防御   225

腕部積載上限 10900

反動制御   99

射撃武器適性 99

近接武器適性 78

重量     10450

EN負荷    211

 

BAWS社製ガトリングガン

MA-G-211 KYOKUSUI

 

BAWS社が初めて手掛けたガトリングガン。星外企業大豊核心工業集団の製品を参考に小型軽量化、取り回しの良さとコストダウンを目指して開発された。主な顧客層にルビコン解放戦線や後ろ盾を持たない独立傭兵を想定していた為。

小型軽量化、コストダウンの成功と引き換えにそれ相応の性能に落ち着いている。

 

 

価格     120,000コーム

攻撃力    22

衝撃力    22

衝撃残留   10

攻撃時発熱  7

直撃補正   209

射撃反動   3

性能保証射程 145

有効射程   242

連射性能   20.0

総弾数    1200

冷却性能   230

弾単価    26

重量     5000

EN負荷     400




最初はバーストアサルトライフル、いや、マシンガンか、と思っているうちに行き着いたのがガトリングガンでした。もう一種類くらいあってもいいだろう、と思いまして。
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