BAWSの逆襲 作:スカウトマニア
コーラルドラッグに酩酊したドーザー(オーバードーズに由来する)が乗り回すMTと武装したトラックからなる集団に、右肩にBAWSの社名を、左肩に竜胆の花をモチーフにしたエンブレムを飾ったACキョウカスイゲツが後方から奇襲をかけていた。
BAWS第三技術開発局の周辺で野盗行為を繰り返し、輸送スケジュールに悪影響を齎す可能性ありとして、排除が決定された集団である。
ドーザーの中心人物が乗るオンボロACを狙い、リンドウは愛機に最短距離を走らせる。
相手のACは各所の装甲が剥がれ落ち、内部パーツが露になっている有様で、ジャンク品を組み上げたのと大差はない。これならきちんと整備したMTの方がマシなのではないか。
アイビスの火以前にルビコンで流通していた、BASHOと同じ最初期のACだ。今となっては影も形もなくなった零細メーカーの品である。
ところどころ錆の浮いた敵MTが、キョウカスイゲツを迎え撃とうと手に持ったマシンガンやショットガンを向けるが、当然、無策で突っ込むリンドウではないし、突っ込ませる三局でもない。
誰も彼もキョウカスイゲツに意識を持っていかれる中で、遠方で待機していた三局の四脚MTとMT部隊がスナイパーキャノンやミサイル、クラスターガンを次々と発射して、隙だらけになったドーザー達を機体ごとまとめて吹き飛ばし始める。
あらかじめキョウカスイゲツの進行ルートを打ち合わせ、間違ってもフレンドリーファイアを行いように統制された援護射撃は、面白いくらいにドーザー達を蹴散らしていった。
「どこの回しもんだぁ!? 独立傭兵か!!」
オンボロACのスピーカーを通じて、割れた鐘のような怒声が聞こえてくるが、どうやらキョウカスイゲツの右肩に描かれたBAWSのロゴを読み取ることも出来ないらしい。
狙いが頭目だとようやく理解した部下のドーザー達が、キョウカスイゲツに再び照準を合わせようとするが、銃器を構えた矢先に正確な狙撃によって、機体に大穴を開けて内部爆発を起こす。
狙撃の主は新たに三局に配備された新人スイレンの駆るACセツゲツカ。
BASHOではなくドーザーの一派『RaD』製の探査用ACの右手には、四脚MT用のスナイパーキャノンをベースにした、実弾スナイパーライフル『TOURIN』が握られている。
左手にはMT用のグレネードキャノンを流用した、BAWS製AC用グレネード『SORA』が装備されており、突撃するキョウカスイゲツ援護の為に、容赦なく発射されている。
「目標クリア。支援任務を継続します」
集中状態を維持するスイレンはレティクルの向こうに新たな敵MTを捕捉し、適切なタイミングで狙撃を続ける。
狙撃手の存在に気付いた敵が近づいてくれば、周囲の味方MTに足止めをさせたところに、左手のSORAを撃ち込んで爆破だ。狙撃と爆破、この単調な繰り返しだが、相手の練度の低さもあって絶大な効果を発揮していた。
「ターゲットインサイト。撃破する」
「くそ、土着の死にぞこないがよ!!」
リンドウはこちらに向けて悲しいほど的外れな射撃を繰り返す敵に、怒りよりも憐れみを覚えた。
再びコーラルが湧出したルビコンへ一獲千金を求めてやってきた独立傭兵崩れかゴロツキなのだろうが、最後は死にぞこない呼びした相手に殺されるのだから。
考え無しに突っ込んできたMTを左腕のIZENで斬り飛ばし、右手のSAMPUでオンボロACを撃てば、バーストハンドガンに撃たれたとは思えないくらい敵機は大きく揺れた。
「ACが可哀そう。すぐに終わらせる」
彼我の距離130m未満の近距離まで詰めて、キョウカスイゲツの足が止まる。二脚ACではそうせざるを得ない肩の武装を使う為だ。
BAWSのロゴの上に鎮座するのは九連バズーカをベースに開発された、BAWS社製拡散バズーカ『SENNA』、竜胆の花咲く左肩の上には三連バズーカ『SYUDOU』が乗せられている。
どちらもまともなACでも直撃を食らえば、悲惨な末路しかない火力の嵐に、装甲の一部が剥がれているACが耐えられるわけもなく──
「ま、待っ!!!」
「待たない」
ドーザーへの慈悲はなく、使い潰されるACへの慈悲でもってトリガーを引き、リンドウは目の前のポンコツACのコアを跡形もなく吹き飛ばした。
肉片一つ残さない、いや、残せない頭目の死にざまと良いように撃たれ続けている状況に、コーラルの過剰摂取でガタの来ている脳でも、このままでは死ぬと理解したドーザー達は蜘蛛の子のように四方八方へと散って、逃げ出そうとする。
しかし、三局はこれを見逃すほど優しくはない。このまま放置しても、今回の恐怖をすぐに忘れて、また略奪行為や暴虐をまき散らすのは目に見ている。
たまたま通りかかった相手を誘拐し、笑いながら溶鉱炉に落とすような真似を平然とするような連中だ。目に見える範囲だけでも駆除しておくに越したことはない。
リンドウとスイレン、無人機部隊に戦闘続行の指示が下されて、彼女らは自分と機体、弾薬に問題がないのを確認し、残るドーザーを物言わぬ骸に変える作業を継続した。
広域レーダーから次々と消えて行くドーザーの反応と、望遠カメラの映像に映るキョウカスイゲツとセツゲツカの戦いぶりを見て、後方のホバートレーラー車中のサザンカが安堵したように呟く。
「スイレンは、問題なく戦えて、います、ね? 新しい装備、も、今のところ、エラーを起こさずに、ちゃんと、動いてくれ、ています」
これまでの業績を評価されて配属された新人は、色素の抜けた白い髪を肩口で切りそろえた、ひどく無口な少女だった。まだ大人になり切れていない痩躯の持ち主は、しかし、ACに乗せれば驚くほどの仕事ぶりを見せる。
スイレンの為に用意されたパイロットスーツの腰部にある神経接続端子と、その操縦能力や不自然に高い身体能力からも、彼女の素性が何なのか、三局のメンバーは察していた。
BAWS本社がどこかから調達してきた、旧世代の強化人間なのだ、と。
体に痛々しい手術痕こそあれ、栄養失調や虐待の痕はなかったのが、本社への反発や不信感を煽らなかったのは、不幸中の幸いだろう。
「ミッション前は、リンドウ君は初めての後輩を随分と気に掛けていたけれど、今となってはすっかり目の前の仕事に集中しているね。背中を任せられると理解したわけだ。
毎回、外でミッションに挑む時には、可愛い無人機君達を随伴させているとはいえ、やはり頼れる有人機の存在はメンタルにいい影響を与えるということだね」
リンドウのバイタルグラフには、これまでのミッションと比較して、よりよいコンディションであるのを示す数値が出ている。初めての共同ミッションで、スイレンが予想以上に的確な支援をしてくれているのが、良い影響を与えているのは明らかだ。
「それにしてもぉ、ドーザーが増えたわねえ。新しいコーラルドラッグがぁ、それだけ蔓延していて、しかも、需要に応えられる。それにぃ、最近は星外からの独立傭兵やぁ、密航者も多いわぁ」
「うん、キキョウ君の言うとおりだね。だが、それもそうだよ。どこかの根無し草がコーラルの情報を星外にリークしてしまったからね。かつてのゴールデンエイジを思い出した業突く張りが、再びルビコンに殺到しているわけだ。
惑星封鎖機構はそのせいで大慌てだ。思わず笑みが浮かびそうになるけれど、我々、ルビコニアンにも悪影響が出ているから、素直に笑えないよ。星外企業も今は先行調査止まりだが、そのうち、大規模な戦力を投じてくるのは目に見えている」
嘆息混じりに告げるサクラに対して、サザンカが不安の色をわずかに浮かべて尋ねた。
「騒がしく、なります、ね。RLF(ルビコン解放戦線)も殺気立ち、はじめて、いますし。本社への注文、も、ずいぶんと、増えている、と聞きます」
「エルカノさんへの資金提供も額を増やしているっていうしぃ、地元企業同士の協力関係も深めているものねえ。また、ルビコン調査技研みたいにコーラルを独占されるのは嫌だもの」
「ま、僕達は僕達の仕事を果たすまでさ。その為にもエルカノはもちろん、星外企業でも中立的な立場にある企業とは、積極的に交流して技術向上を果たし、いいものを作っていこうじゃないか」
「RaDからACを購入、したのもその、一環です、か? サクラ局長」
「そうだとも。かつてのRaDは数あるドーザーの一派でしかなかったが、今の頭目シンダー・カーラとその仲間達がやってきてからは、いっぱしの技術者集団に変わった。
特にカーラの技術力は大変興味深い。人間性も愉快なところがあるし、比較的常識の通じる相手さ。他のドーザーが話にならないのも理由だけれど、企業以外で伝手を持つのに十分な価値のある相手じゃないかね!」
「局長がぁ、そうお考えなら特に反対はしないわぁ。それに、そろそろ新規のACパーツを作る頃だしぃ、他社のACはいい刺激になるわよねぇ。エルカノさんのところのFIRMEZAちゃんはとっても素敵だけれどぉ、あの子はちょっとお高くてねぇ……」
「はっはっはっは! なにしろFIRMEZAのコアパーツだけで、BASHO一式が揃うからねえ。ルビコン解放戦線も大手を振るって導入は出来ないよね、そりゃ」
「ん、AC本体もいいです、けれど。それならブースタ、ジェネレータ、FCSも、充実、させないと」
「もちろん忘れてはいないとも。ACは僕、ブースタはサザンカ君、ジェネレータはキキョウ君、FCSはリンドウ君が得意とするところだ。
得意分野はそれぞれがリーダーシップを発揮し、武装全般は全員で意見を出し合い、実物のテストはリンドウ君とスイレン君に頑張ってもらおうじゃないか!
そして星外からやってくる悪意ある者達に、BAWSの、ひいてはルビコニアンの底力を見せてやるのさ!」
熱く語るサクラはアイビスの火以前から生きていたとは信じられないくらい、活力に満ちてそして若々しい外見の持ち主だった。
C4-621と呼ばれる強化人間がルビコンの大地に降り立つまで、後……
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BAWS社製拡散バズーカ
『SENNA』
BAWS社が同社の四脚MT用九連バズーカの技術を応用し、開発した拡散バズーカ。
低価格、量産性を求める同社の第三技術開発局の思想が反映され、ベイラム製の拡散バズーカと比べてこれまでの製品同様に低価格、軽量、低火力。
価格 175,000コーム
攻撃力 1100
衝撃力 1320
衝撃残留 770
爆発範囲 12
直撃補正 180
射撃反動 65
有効射程 530
総弾数 27
リロード時間 4.7
弾単価 710
重量 6010
EN負荷 432
BAWS社製三連バズーカ
『SYUDOU』
BAWS社がやはり四脚MT用三連バズーカのノウハウを活用して開発した背部用三連バズーカ。三角形を描く形に配置されたバズーカの一斉発射は、軽視できない火力を発揮する。メリニット社の製品を参考にしたともいわれている。
価格 141,000コーム
攻撃力 340×3
衝撃力 318×3
衝撃残留 304×3
爆発範囲 14
直撃補正 150
射撃反動 66
有効射程 603
総弾数 54
リロード時間 6.1
弾単価 360
重量 5550
EN負荷 273
BAWS社製スナイパーライフル
『TOURIN』
ルビコンでは唯一BAWS社のみが製造販売しているAC用スナイパーライフル。例によって四脚MT用スナイパーキャノンの応用である。技術的蓄積がない中で、四苦八苦しながらAC用に落とし込むことに成功した。比較対象が無い為、開発陣は需要が見込めるか不安だったという。
価格 70,000コーム
攻撃力 220
衝撃力 274
衝撃残留 101
直撃補正 201
射撃反動 24
性能保証距離 265
有効射程 417
総弾数 60
リロード時間 2.3
冷却性能 155
弾単価 76
重量 4200
EN負荷 290
BAWS社製グレネード
『SORA』
BAWS社が手掛けたAC用グレネードキャノン。
星外企業大豊核心工業集団の開発したグレネードに対抗するべく、開発が行われた。数を揃えること、扱いやすさを前提にしている為、反動制御と弾単価をいかに抑えるかが、開発において重視された。
価格 105,000コーム
攻撃力 1360
衝撃力 1106
衝撃残留 878
爆発範囲 64
直撃補正 133
射撃反動 90
有効射程 602
総弾数 50
リロード時間 5.5
弾単価 1000
重量 5090
EN負荷 344
スナイパーライフルに関してはリストラされたカテゴリーだったので、AC6内で参照できるデータがありませんでした。比較的似ていると判断したリニアライフルを参考に数値を決めています。
これはおかしいという点がありましたら、お教えください。
SORAの記述を修正しました。『手持ち式』を削除してグレネードキャノンへ変更。その他の腕部用グレネードと同じイメージのつもりでしたが、誤解を招く表現でした。