BAWSの逆襲   作:スカウトマニア

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ミッション:多重ダム防衛
依頼者   ルビコン解放戦線
報酬    160,000コーム
特別加減算 変電施設の破壊 一基につき -40,000コーム
作戦領域  ベリウス南部 - ガリア多重ダム
僚機    汎用兵器、軽MT、砲台、四脚重MT
      AC:バーンピカクス(インデックス・ダナム)
敵戦力   キャノンヘッド(G4 ヴォルタ)、ヘッドブリンガー(G5 イグアス)
作戦目標  ルビコン解放戦線の変電施設の防衛、レッドガンACの撃破


ミッション:多重ダム防衛

「レイヴン君はさっそく、RLFに名前を覚えられたようだね」

 

 BAWS第三技術開発局内部にある資料室の一角で、サクラはレイヴン=621が新たにルビコン解放戦線から依頼を受けた事実を口にした。

 ルビコニアンのサクラとしてはレイヴンほど強力な傭兵が、依頼の間だけでもルビコン解放戦線の側につくのはありがたい。依頼を受けている間は、少なくとも敵ではないのだから。

 

「ベイラムに報酬の倍額でも出されて、旗を変えられないように祈りたいが、ま、ベイラムが独立傭兵を相手にそんな真似はしないか」

 

 今回、621が相手をするのはベイラムのレッドガン、そのうちの二名だ。先日のミッションで戦ったG7より上位のコールサイン持ち。プライドも相応に高いに決まっている。

 紙媒体の資料からなにから、古今東西のありとあらゆる情報媒体がぎっしり詰め込まれた資料室の中央テーブルには、サクラ以外にもサザンカの姿があった。

 

「ガリアの多重ダム……。ここが、壊されると、非戦闘員の生活、基盤に大きな被害、が出てしまい、ます」

 

「その通りだ。ライフラインにダメージを与えて、RLFばかりかルビコニアンそのものを疲弊させる意図だ。ベイラムもいやらしい事を考えるものさ。派遣されたのがAC二機というのも、占拠が目的ではなく施設の破壊だからだね。

 ACの機動力と火力で迅速に変電施設を破壊して回り、それが終わればスタコラサッサというわけだ。占拠するとなれば破壊した施設をまた修復しなければならないし、人員と戦力の配置、補給線の伸長とやることが増える。

 ルビコニアンにとって変電施設は重要なライフラインだが、ベイラムにとってはそうではない。ウチも一枚噛んでいるとはいえ、ベイラムを叩きすぎた反動かな?」

 

 言い終えるや、サクラは手の中の湯のみを一息に呷った。局内にある農業プラントで栽培した茶葉から淹れたほうじ茶だ。農業プラント以外にも小規模な工廠、核融合発電施設もあり、三局はそれなりの規模の軍事基地としての側面もある。

 

「それが分かって、いるから独立傭兵、に依頼を出したんですね。インデックス・ダナム、さん。志の高い、清冽な方と聞き及んで、います。

 ACバーンピカクスは、確か、先日開発したパーツを組み込んで、大きく様変わりしていた、とか?」

 

 清冽な人物というのは、よく言えばであり、悪く言えば特定の思想に傾倒し、先鋭化した民間人でもある。ルビコニアンにとってコーラルが無ければ飢えて死ぬ、という生死に直結する一大事とはいえ、ダナム個人がいささか視野狭窄であるのは間違いない。

 

「うん。フレームのパーツ一つでも交換すると、乗り心地がうんと変わるものだが、ダナム氏はパイロット適性が低い分、その辺の繊細さも鈍い。加えて彼はパイロット適性よりも戦車乗りの適性の方が高かったからね」

 

 そう告げて、サクラは壁一面を埋め尽くすモニターへと視線を向ける。今まさに、ガリアにある多重ダムでは変電施設を巡るベイラムとルビコン解放戦線、そして独立傭兵レイヴンの戦いが起きている最中だった。

 

 

『621、接近する熱源を探知した。前情報通りレッドガンのACが二機、すでに変電施設に近付きつつある。迎え撃て。ただし、慎重にな』

 

 レッドガンが相手とあってか、いつもより慎重なハンドラーの言葉を反芻しながら、621は機体を加速させた。BAWSからの依頼をこなしてきた成果か、今回、ルビコン解放戦線から名指しで受けた依頼は、間違いなくこれまでで最も難度の高いものだ。

 ランク圏外の独立傭兵やドーザーが乗るACではなく、軍隊じみた規律と練度を誇るレッドガンのAC二機を同時に相手取るのだから。

 

 621が配置されたのはメインの変電施設から数えて一番目と二番目のダムの間にある、谷の入り口だ。そこからアサルトブーストで機体を加速させ、最短、最速を意識して襲来したレッドガンを目指す。

 今回のミッションにあたり、テスターACの撃破や移設型砲台の防衛、グリッド135の掃討、輸送ヘリ防衛以外にも、報酬が少額の木っ端依頼も多くこなし、ため込んだコームで機体の一部パーツを更新している。

 

 頭部をアーキバスのVP-44S、ブースターをファーロン・ダイナミクスのBST-G2/P04に変え、更に奮発してジェネレーターはBAWSのMASAHIDEに更新している。

 武装はというと右手にオールマインドから貰ったベイラムのリニアライフルLR-036 CURTIS以外、左手と両肩はそのままだ。

 FCSもFCS-G2/P10SLTに変更してミサイルの運用以外もマシになっている。

 

 そうしてアサルトブーストによる加速に耐えながら突き進み、二基目の変電施設を破壊するべく、砲台や護衛のMTを蹴散らす二機のACを捕捉する。

 重装備のタンクACキャノンヘッドに、バランスのよい武装の二脚中量ACヘッドブリンガー。ヘッドブリンガーのアセンと両者の動きは、ペアでの戦闘を前提にした部分がある、と621はコンマ数秒で察した。

 

『アーキバス頭に、他は探査用フレーム? ルビコニアンのACじゃなさそうだな』

 

 侮りを含みつつ、分析を怠らない声はキャノンヘッドを操るG4ヴォルタ。

 

『け、虫食いの土着に雇われた独立傭兵風情だろう。素人と変わりゃしねえ』

 

 いかにも気の荒い声色と言葉を口にするのは、ヘッドブリンガーのG5イグアス。

 ルビコン解放戦線が厳重に守りを敷く多重ダムを破壊する為、選抜されたレッドガンの凄腕達だ。武装トラックや固定砲台、MTの残骸が火を噴く中、二基目の変電施設をまさに破壊しようとしていた両者へ、621は両肩のミサイルを挨拶代わりに発射した。

 

『おもしれえ。退屈すぎて欠伸が出そうだったんだ。少しは抵抗して見せろよ』

 

『ふん、壁越え前の慣らしにもなりゃしねえ』

 

 降り注ぐミサイルを回避した二機から、歓迎の花火が無数にLOADER 4へと殺到する。

 キャノンヘッドからは大豊製のバズーカにベイラムの長射程ショットガン、二連六分裂ミサイルの小型連装グレネードの大火力。

 ヘッドブリンガーからはリニアライフルにマシンガン、四連ミサイルと621と似たり寄ったりだが、キャノンヘッドの攻撃と合わさることで回避の隙間を埋める厄介な連携が出来上がっている。

 開幕のミサイルを避けたヘッドブリンガーにリニアライフルが立て続けに三発発射され、左肩から展開されたパルスシールドに阻まれるが、イグアスの口を突いて出たのは苛立ち交じりの罵声だった。

 

『ちっ、かすり傷とはいえ苛つかせやがる』

 

 パルスシールドの展開よりも早く、一発の弾丸が機体に傷を付けていたのだ。

 お返しとばかりにヘッドブリンガーもまたリニアライフルとマシンガンを連射するが、新しいブースターとジェネレーターの恩恵を受ける621は、いくら強化人間でもとそう思わせる急加速、急減速、急旋回、これらを交えた動きで直撃を避け続ける。

 流石にキャノンヘッドの放つグレネードやバズーカの爆風までも完全に回避とはいかないが、それでも瞬間瞬間の選択肢において、もっともダメージを抑え、もっともダメージを与える正解を選び続ける嗅覚は常人離れしていた。

 

 キャノンヘッドのショットガンをかいくぐり、左脇を駆け抜けざまにパルスブレードで切りつけ、凍れる湖面を削りながら制動を掛けて方向を転換し、ヘッドブリンガーの放ったミサイルをやり過ごす。

 そのまま放った四連装ミサイル二基分のミサイルがヘッドブリンガーに集中し、パルスシールドの展開前に数発が命中する。

 

『この野郎、野良犬の分際でぇ!』

 

『こいつ、ハークラーを落とした傭兵か。どうりでやりやがる』

 

『だからどうした、俺はG5だ!』

 

 ハークラーを落とした相手だろうが、席次が上の俺が負けるか、と吠えるイグアスに対し、621はどこまでも冷静だ。あるいは波立つほどの感情がないからか。

 堅牢で一撃の火力があるキャノンヘッドから叩くか、それともキャノンヘッドよりも耐久性も火力も劣るヘッドブリンガーから落とすか。621がこちら、と決めようとした瞬間、友軍の識別タグを持つACが戦場に到着する。

 この多重ダム防衛の指揮官インデックス・ダナムだ。彼の駆るACバーンピカクスが、遅まきながら621の援軍として駆けつけたのである。

 

『聞こえるか、略奪者共! 企業に首輪で繋がれた飼い犬め、ライフラインを破壊することで、どれだけの女子供が凍えて飢えるか、考えたことはあるか!!』

 

 サザンカとサクラが言及した通り、彼のバーンピカクスは以前とはアセンが変わっていた。頭部とコアは変わらずBASHOのまま、腕はBASHO Kai、脚部はBASHOからBAWSの開発した中量タンク脚『BONTYOU』に変えられている。

 武装面に目をやれば左腕のメリニット社製の小型バズーカ『LITTLE GEM』は変わらないが、右腕にBAWSのガトリングガンKYOKUSUIが握られ、両肩に積んでいるのが621と同じ四連装ミサイル二基となっていた。

 内装に関してもジェネレーターがJOSOからYABAへ、FCSがファーロンのFCS-G1/P01からFCS-G2/P05と変わり、アセンの更新によっていっぱしのACに生まれ変わっていた。

 

 ACの持つ本来の性能を百パーセント発揮できるのが最高のパイロットであるなら、ダナムは五十パーセントも引き出せれば御の字という適性の低さだ。

 だがサクラが口にした通り、その低さの恩恵で、パーツ交換に伴うACの操縦感覚の変化の影響を受けにくい。要するに元から性能を引き出せていないのだから、パーツが変わっても発揮できるパフォーマンスに大差がないという身もふたもない理由による。

 

 ここでポイントとなるのが、元々のバーンピカクスのアセンが機体特性を活かせていないモノであったこと、ACを戦車化するタンクに変えたこと、そしてダナムは戦車乗りとしての適性の方が高かったことの三つ。

 この三点によって彼とバーンピカクスは以前よりも、格段に戦力を増していた。

 ダナムはマルチロックが完了すると同時に両肩の四連装ミサイルを発射し、自機と同じタンクタイプのキャノンヘッドに目を付ける。発揮しうる火力はこちらよりキャノンヘッドの方が上だが、戦いに挑む士気は負けず劣らず。

 

『黙ってコーラルを差し出せば、本社のボケ共も欠片ぐらいの慈悲は寄こしただろうよ、ルビコニアン!』

 

 MTよりはマシだが、それでも自分達の敵ではないと冷静に分析したヴォルタは、ブースト移動で横滑りするバーンピカクスへ両腕の火器を放つ。

 こちらに殺到する火力に晒されながら、ダナムに怯む様子はない。少なくとも彼が怯懦の徒でないのは確かだ。

 視野が狭いにしても、変電施設が破壊されれば彼の言う通り、多くの民間人の生命が危機に晒される。そうはさせまいと闘志を燃やすのが、ダナムという人間だ。

 

『所詮は、我らからコーラルを搾取することの意味を弁えない飼い犬風情か!』

 

 リロードが終わるのを待つのももどかしく、ダナムは目の前の略奪者の尖兵を打ち倒すことに意識を集中させる。彼の熱意に感化されてか、まだ生き残っていたMTや固定砲台も再び火線を展開し始め、奮闘するダナムと冷静に立ち回る621の援護を再開する。

 ヴォルタとイグアスにとって災難だったのは、機体が変わっても力量は相変わらずのダナムを、621がフォローすることで機体の耐久性と火力を上手く活かしていたことに合った。

 

 ダナムに合わせて621もミサイルの発射を同時、ないしは時差を持たせて発射することで、必ず命中弾が出るように調節し、バズーカかパルスブレードないしはチャージしたリニアライフルの弾丸のどれかをもらう選択肢をイグアス達に強制し続ける。

 そこにMTや砲台、そして四脚MTまで加われば、さしものレッドガンの精鋭であろうと任務を達成するのは不可能だった。

 

『くそが、機体がいかれやがった。脱出するしかねえか! この俺がこんなところで』

 

 降り注ぐミサイルにスタッガーに追い込まれたキャノンヘッドが、621の振るうパルスブレードの餌食となり、爆破する寸前、ヴォルタは脱出レバーをなんとか引くことに成功した。

 キャノンヘッドの脱落はその分の火力がヘッドブリンガーに集中することを意味し、パルスシールドで機体を守り、回避に専念するにも限度がある。ましてや、この戦場にはレイヴンの名を持つ猟犬がいた。

 

 パルスシールドが冷却に入った瞬間にチャージを終えたリニアライフルを直撃させ、ぐらつくヘッドブリンガーにロックを終えたミサイルを八発、遠慮なくプレゼント。

 回避しようとするイグアスだが、反対側から放たれていたバーンピカクスのバズーカ弾頭が右肩に直撃し、機体を大きく弾き飛ばす

 

 こうなれば姿勢制御もない死に体だ。機体がオートで何とかバランスを保とうとする刹那に、高周波の刃がヘッドブリンガーを容赦なく斬り捨てる。

 戦場を自在に飛ぶ姿は翼持つ鳥の如く、獰猛な牙をもって敵の喉笛に食らいつく姿は猟犬のように。

 空飛ぶ翼と大地を掛ける足を併せ持つイレギュラーを前に、レッドガンの精鋭は微塵も考えていなかった敗北の泥濘に突き落とされた。

 

『クソッ、避けそこなったのか!? 野良犬なんぞに。これで勝ったと、思……!!』

 

 それ以上、イグアスの言葉が通信に乗って聞こえてくることはなかった。ヘッドブリンガーの脱出装置が稼働し、先のヴォルタ共々命を拾ったのは確かなようだ。ルビコニアン解放戦線の捜索から逃れられれば、どうにかレッドガンへと帰還する道もあるだろう。

 敵機の機能停止を確認し、機体の足を止める621にバーンピカクスからの通信が繋げられる。

 

『独立傭兵レイヴン、今回の協力に感謝する。お前にとっては依頼を受けただけかもしれないが、このダムが守られたことで多くの子供達が飢えや寒さに苦しまずに済んだ。

 ただ企業に飼いならされるだけの飼い犬にはならず、誇りをもって戦う戦士であってくれ。俺の勝手な押し付けで、済まんがな。

 とにかくお前はただ敵を撃退しただけではない。多くの命を守ったと今日の勝利にはそういう意味があったと、憶えていてくれ』

 

 621はダナムに言葉を返すことはしなかったが、礼の言葉を言われるのは悪い気分ではないと、ぼんやりとそう感じていた。ヴォルタとイグアスにぶつけられた罵詈雑言よりは、よほど印象深く621に記憶されたのは、確かだった。

 

*****

 

 

BAWS社製タンクパーツ

『BONTYOU』

 

BAWSの開発した中量タンクパーツ。

エルカノの軽量タンクパーツ開発を受けて、よりシンプルで扱いやすいタンクパーツをコンセプトに開発された。初心者向けと言えるだろう。

 

価格 210,000コーム

AP  7,770 

耐弾防御 415

耐EN防御 322

耐爆防御 366

姿勢安定性能 1298

積載上限   88,770

走行性能   171

高速走行性能 406

推力    5044

上昇推力  4079

上昇消費EN 680

QB推力   23300

QB噴射時間 0.30

QB消費EN  740

QBリロード時間   0.65

QBリロード保証重量 88,770

AB推力  8460

AB消費EN 368

重量   30600

EN負荷  500




追記
621のFCSを修正しました。
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