雑魚モンスターに転生したっぽくて無理ゲー感がハンパない 作:闇谷 紅
「はぁ」
見上げれば宝石を散りばめたような星空が広がり木々の梢を夜風が揺らす。俺の月並みすぎる比喩表現はさておき、こんなに綺麗な星空を見たのはいつぶりだろうか。
「家族で旅行して高原に行った時かな?」
確かシーズンオフのスキー場に横たわって星を見るイベントに参加した時仰いだ空がこんなだった気がする。
「まぁ、状況は全然違うけどな」
そう呟いたつもりでも、知覚できるのは呻きのような嘆きのようなもののみ。真夜中の暗闇に俺は溶け込むように存在していた。というか、揺蕩う闇の一部が俺自身だったと言っていいかもしれない。
『と言うか、どこまで俺なんだろうか、これ?』
気が付いたら黒色の闇の固まりみたいなモンスターになっていた。きっと転生と言うやつだとおもふ。
「これを転生って言っていいのかは微妙だけどな」
俺の知る限り、このモンスターが登場するゲームでは、ナンバリングによって能力どころか種族も違ったりしていたので、アンデッドと断定するのは早計かもしれないけれど。
「シャドウダスト」
それが今の俺のモンスターとしての名称だ。ゲーム内ではモンスター屈指の物理攻撃力の低さを誇り、闇の礫を飛ばす最弱攻撃魔法を一度だけ放てる程度の精神力を持つだけの一発屋。一応物理や一部の属性には優秀な耐性も有しちゃいるが、ゲームのチュートリアルとして耐性をやらモンスターの特殊能力を学ぶために持たされたと推測できるところがあるのがちょっと切ない。
『そういう意味で厄介っちゃあ、厄介なんだけどな』
ともあれ、群れに囲まれれば、駆け出しの冒険者なら命を落とすこともあるかもしれないが、俺は一人ぼっち。
『とりあえず、シャドウダストってことはこの世界はあのゲームの世界のどれかなんだろうけれどさ』
詰んでね、と問うた筈の独言もただ、うめき声のような音に変わるだけだった。
◇◆◇
『と言う訳で、そのヒントを得るためにもまず検証していこう』
シャドウダストと言うモンスターは登場するゲームによって能力が異なる。まずはその設定だが、以上に高まった属性力の内、闇の亜種に当たる影の属性力が高まりすぎて物質化したものがこのシャドウダストと言われている。
『そんな設定なんだ大半の世界だと精霊系モンスターって立ち位置なんだよな』
実際、高まった属性力が核を得て生まれてくるのが精霊で、核を有しない属性力だけの存在が「~ダスト」という名称で呼ばれるモンスターとなるのだ。
『ダスト系のモンスターは核を持たないからか知性がほぼなく、属性力を持て余して本来なら暴走するモンスター』
放っておいてもこの為に自分の存在を維持できず勝手に自壊したりする何とも残念なモンスターでもある。俺の場合は前世のおかげで知性を有しているので暴走もしなければ自分の存在が維持できずに滅んだりはしない訳だが、こんな設定のせいでアンデッドモンスターに分類されたこともあるのだ。
『同一種ではなくて、自分を維持できずに滅んだダスト系モンスターの属性力が再集結したアンデッドって設定だったけど』
見た目も行動パターンもほぼ同じなので、ぶっちゃけ俺自身もこのアンデッドモンスターの方なのか、見分けがつかない部分はあるのだ。
『大きな違いと言うと、やっぱり優遇されたナンバリングで持ってた分裂能力だよなぁ』
生命値が半分以上残っていた場合、自分の身体を二つに訳で各々別の個体となる。これがダスト系の有する一番のビックリ能力だと思う。
『これで経験値もたっぷり持ってたらレベル上げに狩られたかもだけど』
悲しいことに雑魚モンスターだ。そんなことはなかった。
『ともあれ、これが出来たなら非アンデッドモンスターは確定だし、どのゲームの世界も判明して、ビックリ能力まで持ってることが判明する』
いいこと尽くしのように聞こえるが、問題が一つ。
『その場合、チュートリアルで主人公に狩られる可能性があるんだよなぁ』
主人公はこの時、チートな強さの師匠と二人旅。実力的にもこっちは逃げられないし、チュートリアルのお題にされてしまったら、まず確実に死ぬ。
『が、その変を考えないとしても、俺と言うモンスターが存在する時点で、この辺には他にもモンスターが居る可能性がある訳で』
それが俺に対して友好的かどうかもわからない。
『ただ、モンスターも指標ではあるんだよ』
ゲームのナンバリングによって出てくるモンスターと出てこないモンスターが居る。だから他の魔物と遭遇するだけでも判断基準になるのだ。
『後は人間の旅人とか見かけて盗み聞きするとかだけど』
夜ならいい、闇の固まりみたいなこの身体だ、だが。
『この身体、明るい場所には出られないんだよ!』
レベルが上がったりモンスターとしての格がランクアップすれば可能性はあるが、現状では日向に出ようものなら炎にくべられた薪のように燃え上がって燃え尽きてしまう。
『まあ、ここなら隠れる場所もあるからいいけど』
身を隠す場所のない平地で夜明けを迎えたら、俺は詰む。
『かといって、身を隠す場所の多そうな森ってのもモンスターが潜んでそうだからなぁ』
他のモンスターが俺に敵対的であるなら、ここにとどまるのも危険で。
『ちょっといろいろ考えただけで暗雲が垂れこんで来たんですが、夜だけども! 真っ暗だけども!』
うまいこと言ったとかふざけてられるような状況じゃない。
『どうするよ?! こう、身を隠して移動できそうなモノとかも周囲にないし! いや、こんな人っ気のない場所に木箱とか段ボール箱とかあってもそれはそれで怪しすぎるけれど!』
隠れるものと呪文のように栗化しながら目に留まったのは、木のうろ。
『木のうろ、木のうろかぁ……』
移動できない上に虫とか野生動物とか先住者さんが居てもおかしくないので、隠れるとすれば最後の手段だ。
『いや、最後の手段なればこそ、今の内に中に何もいないか確認しておくか』
藪をつついて蛇を出しませんようにと祈りつつ俺は木に近づいてうろの中を覗き込み。
『ほっ……何かが使ってるわけじゃないみたいだ』
安堵すると、そのうろに潜り込む。
『隠れ心地も確認しとかないといざって時に困りそうだもんな』
夜の闇の中に独りぼっちと言うのがコワくなったからとかではない。ないったらないのだ。
お久しぶりの方はお久しぶりです。
読んでお分かりの通り、今作は「ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね」をベースに原作要素抜いてオリジナルストーリーにしたらどうなるかって実験的なモノを随分昔に書き始めて一話未完のままの段階で放置してたのに手を加えたモノです。
当然ですが某勇者の家庭教師に弟子入りするはずもなく、展開も変わってきます。
ぼんやりと考えたプロットの通りなら原作知識と転生後のモンスターの特性を生かして生きていこうと思うあたりは同じ感じになりそうですけどね。