雑魚モンスターに転生したっぽくて無理ゲー感がハンパない   作:闇谷 紅

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二話「それで、ここはどこ?」

「誰も来ないな」

 

 木のうろにすっぽりハマったまま、俺はポツリと呟いた。ならば、うろから出て来ればいいかと言うと、どうにもその気になれない。隠れ場所と言う存在が俺を後ろ向きな意味で慎重にしたらしい。暗い闇の中で風に木々の枝がザワザワ騒ぎ、それでいて生き物の出すような音はしない。

 

『まぁ、これで狼の遠吠えとかそう言った類のモノを聞きでもしたなら猶のこと出たくなくなっただろうけど……』

 

 虫の鳴き声ぐらいしてもいいんじゃないかとも思いはするも。

 

『ちょっとビビりすぎてるかな? いや、そもそも今の俺は脆弱なんだから、用心にこしたことはない筈なんだ』

 

 平穏上等。唐突に通りすがりの冒険者とかが現れて、隠れてたのを見抜かれた上で襲いかかってこられたら目も当てられない。

 

『って、今のフラグじゃ――』

 

 割と見通しの暗い現状において、何故俺はあんなことを言ってしまったのだろうか。もし近くに鏡があったら、俺の顔は、木のうろにスポッとハマったシャドウダストの表情は引きつっていたに違いない。

 

「遅くなってしまった、このまま急ぐぞ」

「はい」

 

 嫌な予感程、現実になるものだ。何故か不思議と聞き覚えのある声の掛け合いに一瞬身を固くした俺は細心の注意を払いつつ声の方を窺い見る。

 

『あ゛』

 

 思わず変な声が漏れた。松明の炎が近づいてきていた。一直線にという訳ではない。進行方向からすると、松明の炎とその持ち手たちはいくらかは慣れた場所を通り過ぎると言った形だろう。ただ、松明に照らされる人物の姿を俺は知っていた。旅装の丈夫な服の上から要所だけを必要最低限守る革防具を身に着けた壮年の男性は、四作目の主人公の師匠を実写化したらこうなるなと言ったいで立ちで、これまた俺の記憶にあるまだ幼い方の原作主人公が付き従っていた。

 

『この世界線だと主人公は男なんだな……じゃねぇよ!』

 

 なんて後半叫びかけるのを我慢するのにどれだけ精神力を消費したことか。松明に照らされたことで彼らの周囲の光景が幾らか見えると俺はピンと来た。ああ、これはそろそろチュートリアルの戦闘に差し掛かるなと。うん、なんというかヤバかったとしか言いようがない。もし俺がこの木のうろに潜むという選択肢を取らず、あっちに移動していたなら、原作ゲームよろしく主人公の経験の為にぶち殺されていたことだろう。

 

『四作目か。とりあえず、得たモノも大きいな』

 

 非アンデッドモンスターは確定したし、ビックリ能力まで持ってることも確定した。原作知識で大まかな地理とこれから起きる出来事も判った。ただ、主人公がチュートリアル戦闘を一つ経験し損ねたことが後でどう響くかが気がかりではあって。

 

「むっ、シャドウダストか」

 

 見つかる訳にはいかないと師弟に意識を向けていた俺は、師匠の方に自分の種族名を口に出されたことで凍り付くが、それも一瞬のこと。

 

『あ』

 

 声が漏れたのは俺の隠れた木の幾らか横を通り過ぎた先で足を止め、師弟が黒色の闇の固まりと対峙しているのが見えたからだ。

 

 

『何らかの補正が働いたのか、それとも俺がチュートリアル敵担当じゃなくてあいつがチュートリアル担当だっただけか――』

 

 いずれにしても、俺が原作主人公の糧というか経験値になることはどうやらないらしい。

 

『結果、ある意味同族を見殺しにすることになるんだけど』

 

 そもそもダスト系のモンスターは核を持たない高まりすぎた属性力が物質化した存在。この世界だと自然現象のようなモノで俺のような例外を除けば知性も自我もなく、例えるなら落雷で発生した野火とかに近い。

 

「周囲に燃焼すると拙いしな、消しておこう」

 

 と、見かけた人が消化しても野火がかわいそうなどと思う人間がまず居ないように、同族とは言えこれから倒されるのに俺に思うところもない。

 

『ただ、この認識はこっちの世界の人間も同じだろうからなぁ』

 

 俺も発見されたらまず間違いなく駆除される、このままでは。

 

『原作チュートリアルの場所がここなら、あの二人についてゆけば最初の街につけるはずだけど』

 

 このままの格好でついてゆけば見つかって駆除されるのは時間の問題。ただし、あの二人の後をついてゆくなら危険なモンスターはあの二人がいくらかは間引いてくれるとも思う。

 

『ついてゆくか、このまま見送るか、か』

 

 原作主人公のチュートリアル戦闘が始まるのを眺めつつ俺は呟いた。

 




 という訳でお久しぶりです。

 二話目でもう某メラゴとはかなり展開ズレて来てますが、一応プロット通りではあります。

 ここからは完全にメラゴの文章流用できなくなりそうな予感。
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