すばらしきせかい【黒バス宝石パロ】   作:mizuhara_0-0

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赤司編・3

 

意志持つ宝玉、『宝珠』。

世界に数えるほどしかないというそれについて詳しい人間というのは、いったいどんな人柄なのだろうか。

『宝珠』に知悉しているのだから、相当金持ちか、凝り性なのだろう……という降旗の期待は見事に裏切られた。

「紹介する。こいつが赤司の法律上の持ち主の降旗」

黛の言葉に、降旗は畳の上に座って会釈した。

「かげや」の店の畳の上で、降旗に相対しているのは黛だ。二人の間で湯気の立つ湯のみを持った少年は、黛の言葉に頷いた。

 

「そんで、こいつが『宝珠』に詳しいヤツ。黒子テツヤ、スモーキークォーツの『宝珠』だ」

 

実年齢は赤司と同じくらいだろうから、俺らからしたら相当のジジイだぞ、と黛は言った。

ジジイとは何ですか、年上は敬いなさい、と黒子は言った。

降旗は宝珠自身が宝珠に詳しいとは思わなかった。降旗は、背中がピンと伸びるのを感じた。震える声で、「お願いします」と言うと、黒子はまた、表情を緩めた。

 

黒子が黛に、客に茶を出さないとは何事ですか、と呟いたため、黛は給水部屋に向かった。降旗は涙目になる。が。

赤司が一つ、瞬きをすると、ふうっと彼の力が抜けた。目を開けると、夕焼けの様な赤い目が現れる。

「久しぶり、黒子」

黒子は少し目を見張ったが、そのまま表情を緩め、柔らかい声を出した。

「ああ、君は……征十郎くんの方ですか。お久しぶりです。君ですか? 千尋君を主にしたのは。意外ですね」

「ふふ、総理大臣だのを主にするとでも思ったかい?」

微笑みながらそんなことを言う赤司に、黒子は真顔で頷いた。

「ええ。君は権力主義者ですからね。流石にここ何年か総理大臣は頻繁に交代していますから、そんな浮き沈みの激しい業界にいるとは思いませんが、古くからの政治家の家系に家宝として祀られていても驚きませんよ」

「それは緑間だろう。どこぞの宗教国家に、聖遺物として祀られているらしいじゃないか」

「ところが、最近のテロに巻き込まれて行方知れずという話もありますよ。彼は美しかったですからね、どこぞの好事家の手に渡っているのかもしれません。君みたいに」

「何を言うんだ、黒子。俺の先代の主――義仁さんは満州に行く時あらゆることを言い残してきちんと僕らを置いていった、常識のあるお方だぞ」

ほのぼのと会話をしているが、その内容はとんでもない。聖遺物って。満州って。何このグローバルな昔話。

「それは君の前の主の話でしょう。そもそも山野といい降旗といい、旧財閥の家系ではありませんか」

「そうなのか?」

茶盆を片手に戻ってきた黛の問いに、降旗は苦笑した。

「昔の話です」

「まだほんの五、六十年のことですよ。旧財閥は戦後に解体されましたが、影響は残っているでしょう。赤司君の様に」

黒子が詳しい解説を付け加えるが、降旗は困ったように笑うばかりだ。

「や、本当に。蔵に残っているものは、殆ど処分してしまいましたし。土地も建物も必要な人に管理してもらっているから、うちの家で自由になるのは本当少ないんで。普通です」

「普通の家には蔵はありませんし、土地も建物も自分で管理できる範囲内でしか持たないものですよ」

黒子が呆れるが、黛も全面的に同意だ。普通の基準が普通じゃない。

「まぁ、降旗の家系はそういうものだろう。何しろ『僕』が相当執着していたからな、絶対に没落はさせないさ」

「そうなの?」

征十郎に向かい首を傾げると、彼は力強く頷いた。

「ああ。あいつは――というのも俺自身だからおかしな話だけど、相当降旗家が気に入ってたから」

ところで、と征十郎は黒子に視線を戻す。

「どうして黒子はこんなところにいるんだ」

「そこの彼に、宝珠に詳しい人ということで呼び出されたのですよ。それで、降旗君は宝珠の話を聞きたいのでしたよね?」

ガラス玉のような目が降旗を覗く。

「何の話が訊きたいのでしょう。大抵の話は赤司君や征十郎君から聞けると思いますが」

「えっと、幾つかあって」

「茶、煎れたぞ」

「あ、ありがとうございます。あの、宝珠の主は一人だけなんですか?」

「俺の場合は二人いるけど」

「そうじゃなくて……あの、人間って死ぬじゃないですか。そしたらきっと宝珠は別の主を見つけるんですよね?」

じいさんと赤司みたいに、と例を挙げると、黒子は頷いた。

「ええ。少し語弊があるかもしれませんが……宝珠の主は代替わりします。その主について、どんな主にするかは宝珠の一存ですが、宝珠は主がいる間しか人の形を取れません」

「それと、宝珠と主の間に、何か契約とか制限とかってあるんですか?」

その質問には、黒子は訝しむように首を傾げた。

「赤司君に何か理不尽なことを……」

「あ、えと、何も。だけど、ゲームとかでこう、あるじゃないですか。契約するとマジックポイントが増えるとか、回復力が上がるとか……」

「ああ、召喚魔術で言うところの『呼び出した者の命を奪う』とか『三つの願いを叶える』とかですか。うーん、強いて言うなら降旗君の場合、赤司君に学校の勉強を教えてもらえるんじゃないでしょうか」

可愛らしいことを言いだす黒子に、降旗は苦笑した。

「や、大学生にもなって勉強を教えてもらうって……」

「赤司君は賢いですよ。きっと頼めば君を主席にまでしてしまうでしょう」

黒子は真顔で言った。

「宝珠の主になるとはそういうことです。そうですね、勉強では判りにくかったら、株と言えば判りますか」

「株? 株式会社、とかの……?」

降旗は首を傾げた。黒子は頷いた。

「ええ。資本金を渡せば、半年で千倍にして返してくれるでしょうね」

「そんな、まさか」

笑い飛ばそうとしたが、征十郎はあっさりと頷いた。

「千倍でいいのか? 現在の金相場を元に考えると、もっと利益率を上げることは可能だが」

降旗は絶句した。ふふ、と征十郎は笑った。

 

 

「降旗君。世界で一番価値のあるものは何だと思う?」

 

黒子は、懐かしいですね、と微笑んだ。

言葉遊びのように、宝珠たちは口ぐちに言う。

「賢さならば書物で良い」

「強さならば武具で十分」

「美しさなら宝玉だ」

「本当に価値のあるものは」

「本当に価値のあるものは?」

「美しく、賢く、強いもの」

 

「そう、我らが宝珠のように」

 

征十郎は唇をほころばせた。

「降旗君。俺達は、世界で一番価値のあるものなんだ」

 

 




赤司編ここまで。
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