シロコとシロッコ   作:メイショウミテイ

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大変お待たせしてしまい申し訳ないです。

卒論の口頭試問の準備やら資格勉強やらで、色々立て込んでいました。自分で建てた一週間に1~2本の投稿をするという目標も守れず、情けない限りです。

今週はこれで投稿は無いかもしれません。次週はなんとか一本書き上げたいと思っています。

今後ともお付き合い頂けましたら、私としても有難い限りであります。


アビドス編 3

 パプテマス・シロッコという男はその生前に自分を慕う女性を指導者として担ぎ上げ、自分は裏でその女性たちを導く存在──彼は自らを『歴史の立会人』と規定し、導いた後の政治や統治に関しては然程興味がなかった。

 彼はグリプス戦役後に恒星間旅行にでも行くと喋っていた。その言葉は恐らく本心から出た言葉であり、やはり権力という俗的なモノには興味がなかったのだと思える。ただただ、木星圏にて研ぎ澄まされて来たニュータイプとしての能力を試したかっただけの人間であったと、後世の評価で語られている。

 

 支配者として君臨する事は自分は望まなかった。しかし、彼は世界を導いてきたのは一握りの天才だと主張し、自らもその能力を持った天才の内の一人であると自負していた。これもまたある意味では的を射ている発言であり、間違いなく彼の能力は俗人とは大きくかけ離れたモノであった事は間違いがない。

 ここキヴォトスにおいても、少し前までは連邦生徒会長という、間違いなく天才の能力を持った人間一人によって治安が守られてきたと言っても過言では無いのだ。

 

 その天才が居なくなった途にキヴォトス全体で未曽有の犯罪ブームが巻き起こり、まるで世紀末の様相を呈していた。だが、これを鎮圧したのが『先生』という存在であった。

 

 

『先生、なるほど。彼女の秘められた力の行先も気になるが、それに負けず劣らず、なかなか興味深い存在だな』

 

「先生の事、知ってるの?」

 

『知っている訳ではない。先日の一連の騒動を見させてもらって、その上で思った事だよ。あの大人が今後、どのような選択を選び取っていくのか』

 

「うーん……、見てたなら助けてほしかったんだけど……」

 

君たち(アビドス)と先生が組んでいる以上、苦戦する事も無いと思っていたよ』

 

 

 先日のヘルメット団の前線基地を奇襲した作戦を、シロッコはただただ空から見つめていただけだった。確かにアビドスの生徒たちは、他の学園の生徒達と比べても明らかに動きが良い。それは普段からヘルメット団からの度重なる襲撃を凌ぎ切り、護衛や危険な物資調達を始めとした様々な依頼を熟していた事が大きく関係している。キヴォトスの学生は大なり小なり事件や騒動に巻き込まれたりで普段から荒事には慣れているのだが、アビドスの生徒たちはいくつもの修羅場を潜り抜けている事もあり練度の違いは明らかなモノだった。

 

 そういった要素を、他の学園を視察して確認しているシロッコは確りと補給の行き届いている今であれば、万に一つもそこらのチンピラ集団(ヘルメット団)には負けないだろうと思っていた。しかし、そうした事情を知らないシロコは、シロッコが見ていたのにも関わらず助けてくれなかった事に少しモヤっとした様子。しかし、その後にシロッコがアビドスを高く評価していると取れる発言をすると、まぁそれもそうかと納得した。

 

 シロコ自身考えてみれば、余程の体調不良を抱えた状態であったり補給状況がピンチな時くらいでなければ、対策委員会のみんなが遅れを取るとも思っていないし実際そうである。先日交戦したヘルメット団の練度もお世辞にも良いとは言えず、下手に避けた方が当たるのではないかと思う程には狙いも悪く、また武器の集弾性も悪かった。武器の信頼度も低い、練度も高くないのでは勝てる物も勝てない。

 

 ヘルメット団にも学校を捨ててしまった、捨てなければならなかった理由はあろうがしかし、シロコは慈悲の心を持ちつつも彼女たちを退けなければならない理由がある。

 

 

『シロコ。君は先生の事、実際に会話なり接触なりしてみてどのように感じた?』

 

「……色々抜けてるしだらしない人だけど、信頼は出来る大人だと思う。今回の戦闘も先生の指揮に助けられたし」

 

『フム……、あの大人の本質には一本の太い筋が通っていると見た。きっと君たちを裏切る事は決して無いと私も思っている』

 

「シロッコが言うと、何というかこう……説得力が凄いね」

 

『私の見立てが間違っていなければ、だがね』

 

 

 シロッコはあくまで見立てと言っているが、彼は自分の見立てが間違っているとは微塵も思っていない。確かに先生の人間性や指揮が優れている点もあるが、その評価の半分程は先生の所有する『シッテムの箱』に内蔵されたAIとオーバーテクノロジーに因るモノであるが、今のシロッコには知る由もない。

 

 アビドスの抱えている途方もない借金問題を聞いて力を貸そうとする大人は、キヴォトスにおいて先生以外には居ないだろう。解決に時間が掛かる事が明らかな上に解決しても大きな利益には繋がらない事に、大人たちは見向きもしない。それが企業というモノだ。

 利益を出し続ける事が何よりも至上であると考えられているのが企業であり、利益を出す為ならば基本的になんでも行う。アビドスに課せられている借金に関しても、確かに利子は暴利だがきちんとした契約に基づいて行われている。そもそもの話、普通の銀行の融資であればあり得ない金利である為に、連邦生徒会にその点を突かれれば痛い話ではあるだろうが。

 

 

『今日も学校に行くのか?』

 

「うん。今日は依頼も無かったからサイクリングの下見にでも行こうかなと思ったけど、飲み物のストックが切れてるから学校ついでに調達しようかなって」

 

『そうか。気のせいではないと思うが、妙な感覚がする』

 

「どういう事?」

 

 

 シロッコは何かを匂わせる発言を溢した。シロッコの直感は信じられると、これまでの経験上分かっているシロコはそれについて問い詰める。

 

 

『詳しくは不明だが、何か悪意を感じる。邪悪な気配、ザラザラとした不快な感覚だ。分からないか?』

 

「うーん……、分からない。どういう感じだろう」

 

『いや、分からないなら良い。こういった悪意に晒される事に慣れていないだけだろう。しかし、悪意を向けられるという感覚は覚えておいて損はない』

 

「そうなの?」

 

『実用的な話をすれば、そういう悪意はアビドスを守る事にも繋がる。敵意、害意、怨念、憎悪、邪気、これらの感情は危険だ。そういった感情を抱く者が一番怖い』

 

「シロッコでも怖いの?」

 

『手玉に取る事は簡単だが、こういった手合は何をするか分からないモノだ。最悪命を捨てに来る可能性も考えられる、常に気を張っていれば感じる事もあるだろう』

 

 

 シロコは自分の頭の中で『捨て身の人間は怖い』という捉え方をしたが、強ち間違いではない。それ以外の半分以上は理解の及ばない話であったが、彼の真剣な雰囲気を感じたシロコは真面目に聞いていた。それは彼の話には、基本的に無駄になるような知識がないと分かっているからだ。

 

 あの世界へと迷い込み、帰って来てから。色々な事に気が付くようになったのは、シロコも分かっている。前までなら見逃してしまうような事でも、今ならば簡単に発見する事が出来るようになった。それこそ、様々な依頼を熟している時にもそれを実感している。

 地域住民の依頼でペットの猫探し*1を受けた時も、直感に従って何となく探してみた空き家で迷い猫を発見したり、戦闘面でも直感に従って遮蔽物にグレネードを投げ込んでみれば命中したり、色々と実感できる程には前までの自分から変化している。

 

 それは正しくシロッコと出会った事に起因しており、直感の使い方を教えたのも、その直感に従う事を教えたのもやはりシロッコであった。

 

 

「分かった。注意しておくね」

 

『──君の感性は前にも増して研ぎ澄まされている様に感じる。その調子だ』

 

「あまり感覚とかの話はよく分からないけど……」

 

『いつか実感できる時が来るさ』

 

 

 シロコのニュータイプのレベルは日々上昇している事を、シロッコは実感していた。それは度々シロコが知らずのうちにニュータイプ的センスを披露しているからというのもあるが、シロッコ自身もいきなりニュータイプとして覚醒した訳ではない。

 

 彼は最後にそう言い放ち、強い日差しと砂が舞う空へと飛び去って行った。

 

 

「……よし、行こう」

 

 

 シロコの方もいつも通りの学校に行く準備を整え、いつものロードバイクに跨りアビドス高校へと走り始めた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 先生の朝は早……いという訳ではない。

 

 アビドスで辛うじて営業していたホテルを長期間間借りさせてもらっている先生は、寝ぼけ眼のまま緩慢な動作で朝支度を済ませていく。顔を洗ってからいつもの一張羅に身を包み、眠気覚ましのコーヒーを流し込んだ。

 

 そうしてからアビドス高校へと歩き始めた先生は、その道中で昨日喧嘩別れのような形になってしまったセリカと出会った。

 

 

「げ」

 

“おはよう、黒見さん”

 

「何がおはようよ! 馴れ馴れしくしないで! 私、先生の事まだ認めてないんだから!」

 

 

 セリカは昨日の事もあってか、つっけんどんな対応だが先生に気にした様子はない。こういった馴れ馴れしさは良い様にも悪い様にも働くが、先生の性格的特徴とも言える。

 

 

“今日はアビドスには行かないの? そっちは通学路じゃないよね”

 

「先生には関係ないでしょ! じゃあね!」

 

 

 取り付く島もないとはまさにこの事だろう。セリカは先生との会話を楽しむ時間すらも惜しいようで、その場から足早に立ち去っていってしまう。通学路からは離れた道へと進んでしまったセリカの目的地が気になるのもそうだが、危ない事をしていないか心配になった先生は彼女を追いかける事にしたらしい。

 

 

 

 その後も偶然を装って先生はセリカに接触するが、バイトに行くから学校には行かないと吐き捨てた彼女は全力で走り去ってしまい、これ以上はその行先を辿る事は出来ないと先生は諦め──

 

 

「へぇ、そっかぁ。セリカちゃんがね~」

 

「あ、モモトーク*2にも連絡が来てますね。こういう連絡は心配するので早めに欲しいんだけどな……」

 

 

 今朝の様子を、教室に屯していた対策委員会のメンバーに話していた。先生への当たりの強い対応から特段元気がないとかそういった心配はしていないが、それでも心配なものは心配なのだ。そうした様子を隠さないのは同級生のアヤネだ。たった二人しかいないアビドス一年生という事もあり、二人の距離は普通の友達よりも若干近い様にも感じられる。

 

 

「セリカならそこらのチンピラぐらい余裕で撃退できる。それに……」

 

 

 シロコは逆に全く心配していない様子だった。それはどうでも良いからとかそういった理由から来る発言ではなく、セリカの実力を正しく理解した上での発言であった。確かにセリカは一人でも複数人の無法者程度であれば、軽く捻って帰って来るだろう。

 

 

「そんなに心配しなくてもー、おじさんはセリカちゃんのバイト先なら何となく分かるよ」

 

「きっとあのお店ですよね、ホシノ先輩!」

 

 

 シロコの言葉を引き継ぐように、ホシノとノノミはセリカのバイト先に心当たりがあると話した。それはアビドスに住むことを心に決めた人間であれば全員が知っている程の店であり、対策委員会の面々も何かと足繁く通っている老舗であった。

 

 

「先生を待っていたらいい時間になっちゃったしー……、ここいらでお昼ご飯でも食べに行こうか~」

 

「ん、行こう」

 

「先生も行きましょう!」

 

“わ、私も?”

 

 

そういう訳で。

 

 

「いらっしゃいませ! 紫関ラーメンで……、ウソっ!? なんで!」

 

「いや~、頑張ってるみたいだねーセリカちゃん」

 

「ん、お疲れ」

 

「先輩たちの言った通り……」

 

「バイトの制服、とってもカワイイですよ☆」

 

 

 言われるがままに先生が連れてこられたのは、年季の入った様子のラーメン屋だった。看板には『紫関ラーメン』*3と記されており、店内は多くの客で賑わっていた。アビドスは確かに滅びに瀕していると言ってもいい自治区であるが、それでもこのラーメン店のように活気のある場所は探せばいくらでも見つかるだろう。住んでいる住民のバイタリティは他学区のそれと比べても極めて高い、こんな砂漠に呑まれつつある土地に住んでいるのだから当然でもある。

 

 ホシノとノノミの予想通り、やはりセリカはそこに居た。いつものアビドス学生服ではなく、『紫関』と印字された特注のサロンエプロンを腰に巻き頭には手拭いを付けた、バイトのユニフォームを着こなしている。注文を取っていたのか、注文用紙が挟まれたバインダーを片手にしていた。

 

 

“えっと、さっきぶり……だね?”

 

「っ! 先生!? やっぱり付けられてたって事!?」

 

「うへ、先生は関係ないよ~。私とノノミちゃんが、セリカちゃんがバイトするとしたらここだよねーって」

 

「セリカちゃん、ここのラーメンが人一倍大好きですからね♪」

 

「ううっ……、先輩たちかぁ……」

 

 

 先生に食って掛かったセリカに対してホシノとノノミが訳を説明すると、セリカの顔が急激に赤くなっていった。学校の先輩に、それも同じ委員会の仲間に自分がバイトしている姿など極力見られたいモノではないだろう。

 そんなセリカの姿を見て、背後から近づいてくる人影が……、人影? 

 

 

「おう、アビドスの子達じゃないか。ほらセリカちゃん、席に案内したげな!」

 

「うぅ……はい、大将。では、こちらの広い席にどうぞ……」

 

 

 慣れたと思っていた先生だが、奥のカウンターからシバイヌの姿の大将がやって来たのを見て驚いてしまう。先生が元居た世界ではシバイヌは直立二足歩行などしないのは勿論、パイプ式のタバコを咥えているハズもないのである。しかし、現に目の前でセリカに案内するように指示を飛ばしている大将は、間違いなくシバイヌの姿に酷似していたし、がっつり喫煙者であった。キヴォトスではこういった動物の姿の大人がいる事は当然知っているし、何度も目にしているのだがやはり慣れないものらしい。

 セリカと同じように頭に手拭いを巻いている紫関の大将はアビドスのみんなに一言挨拶してから、また奥へと戻っていった。

 

 

“いい人そうだね、大将”

 

「時間があったら偶に食べに行くんですけど、いつも大将は何かしらサービスでトッピングを追加してくれたりするんです」

 

 

 アヤネはそう言って安心したように笑っていた。アビドスのみんなに信頼されているのであれば自分が心配する事もないかと、先生もそう思う事だろう。

 

 その後先生は、ホシノの隣に座るかノノミの隣に座るかという究極の二択を迫られる事になるが、それはまた別の話である。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「はぁ……、今日は疲れたわ……色々と」

 

 

 紫関ラーメンでのアルバイトが終わってセリカは一人、暗い夜道を歩いていた。一定間隔で立ち並ぶ街灯は整備が行き届いていない事もあり所々に消えている物も多い。月の光もない日であれば、文字通り一寸先は闇といった状況になる事は想像に難くないが、そんな道をセリカは何も気にする事がない様に歩いていく。

 

 そんなセリカはちょっとだけ、先生に対して後悔を残していた。

 

 先生が見せてくれた指揮の力が常人離れしている事は、セリカも分かっていた。先生が手伝ってくれればアビドスの借金問題も何とかなるかもしれない、そう思える程に先生という存在は一種の希望のようにも捉えられた。

 

 しかし、セリカは知っている。

 今の今まで、セリカが通っているアビドスを守ってきたのは、アビドス対策委員会の誇れる三人の先輩たちだ。

 

 本来頼るべき大人たちはアビドスをなんとも思っていないどころか、苦しめている原因になっている。先生がそんな大人達と同じだとは思っていないが、それでもセリカの中では未だに整理が付いていない事柄なのだ。

 

 

 自分の我が儘で対策委員会のみんなに迷惑を掛けるのは嫌だ、そう思っていても先生を目の前にするといつもツンとした態度で話してしまう。心の底では先生の事など、とうに認めているというのに。

 

 

「明日こそは、ちゃんと……!」

 

 先生に謝ろう、それでこの変な空気を全部無かった事にしよう。そのように思う気持ちは立派な事だが、残念なことに現実はセリカに優しくはなかった。

 

 

「──あっ!?」

 

 

 物思いに耽るセリカの目の前に突如としてカランコロンと、金属のような物が落ちる音が響く。常日頃からヘルメット団やら依頼で武装勢力と度々交戦している事もあり、セリカは異音の正体にはすぐに気が付いた。

 

 閃光手榴弾

 

 ピンを抜いてから一定時間後に起爆し、周囲に脳にまで響くような甲高い音と目を開けていられない程の閃光を撒き散らす非殺傷兵器である。ヘルメット団が使う事は余りないが、それでもこれがどういった効果を持っていて、それに対する対処法も当然知っている。本来のセリカであれば投げられたと分かった瞬間、耳と目を塞いで手榴弾に対して背中を向ける事で攻撃を回避しただろう。

 

 しかし、街灯の消えた通りではあるが通い慣れた道だからと油断していたセリカは、その物音にすぐに反応できなかった。何の音だろうと、ちょうど閃光手榴弾の方を向いてしまった事も、非常に良くなかった。

 

 一瞬の後に、パァンと破裂音。そして眩い光がセリカを襲う。暗い道を通っていた事もあって、暗闇に慣れていた目では直視できない程の一瞬の光を浴びたセリカは目を開けていられない。

 眼は潰された、耳も強烈な破裂音によって正常に機能しない、視界不良で足元も覚束ない。

 

 その隙を逃さず、下手人はセリカを迅速に無力化する為にその得物を首筋へと近づけ──

 

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ!?」

 

 

 眼も、耳も、足元も。

 何もかもが不安定な状態でスタンガンの電撃を諸に浴びてしまったセリカの意識は、急速に闇へ落ちていく。

 

 

「……誰か、みんな──ッ」

 

 

 気を失う前に何とか捻りだした言葉は、それだけでは意味を為さず、誰にも伝わる事は無い。

 

 ハズだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 いつものようにシャワーを済ませてベッドへと向かっていたシロコは、この時初めて言葉が走る感覚を明確に味わった。

 

 

「──ッ! な、なに……っ、この感覚は……!」

 

『良く気付いた、シロコ』

 

「えっ、シロッコも分かったの?」

 

 

 自分が感じた未知の領域に続く、ようやく見つけた新たな扉。

 

 既にシロッコはその向こう側へと到達している事もあり、シロコが感じた思念を彼女よりも明瞭に感じ取っていた。

 

 

『何を感じ取った。たった一瞬、その時間で君は何を理解した?』

 

「……上手くは表現できない、けど。誰かに呼ばれた事だけは、確かに分かった」

 

『フッ……そこまで分かれば、今の段階であれば上出来だ』

 

「何があったの、分かるように教えて」

 

 

 ふよふよ浮かんでいるシロッコに、言いようもない焦燥感──自分でも何故焦っているのか分からないが──に駆られたシロコは説明を求める。自分でも分からないが、嫌な感覚が頭をグラグラと揺れ動かしている感覚に、シロコは段々と冷静さを失いつつあった。その事を理解しているシロッコは、今回ばかりは勿体ぶることなく素直に答える。

 

 

 

 

 

『君たち、対策委員会の一年生である黒見セリカが、先日交戦していたヘルメット団と思しき連中に拉致された』

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
犬人間とかアンドロイドとかが居るこの世界でも、普通に四足歩行のイヌネコが居ても良いと思います

*2
キヴォトスで主に使われているSMS。モモフレンズという見る人が見れば可愛いと思うくらいのマスコットキャラクターがアプリの各所に配置されているのが特徴。それ以外は全部LI〇Eみたいなもん。仮にモモフレンズを知らなくても連絡ツールとして優秀過ぎる為、キヴォトスにおけるシェアはぶっちぎりで一位。

*3
紫関ラーメンの柴大将さんは神的に良い人。ラーメンを食べに来ているのは当然だが、大将と話すために店にやって来る住民も少なくない。間違いなく、今のアビドスを支えている精神的支柱の一つ。ちなみに、廃校寸前で踏ん張っているアビドス高校も地域住民からしてみれば、アビドスがまだ死んでいない事を証明する要因の一つと考えている。アビドスは文字通り、薄氷の上に建っているのだ。




今回は特に話したい事は無いです。

卒論の口頭試問にて老害教授に散々扱き下ろされた鬱憤とかありますが、それは置いておく事にします。

読者の皆様に置かれましては、最近またコロナやらインフルやらの流行り病が広まりつつあるようなので、手洗いうがい等予防は確りとしましょう。

では、また次週の何処かのタイミングでお会いしましょう。
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