シロコとシロッコ   作:メイショウミテイ

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お待たせしました。

ストーリー全部書きたくないので、相当端折って便利屋との戦闘描写もまとめて一話にしたかったのに、気づけば二話構成。

文才の低さ故にコンパクトにまとめる事が出来ない、お恥ずかしい限りです。


次の話はなるべく早く書きたいと思っていますが、現在進捗1%なので気長に待っていてほしいですはい。



アビドス編 7

 セリカを救出してからしばらくの時が流れた。

 

 あの後、アビドスの面々には異常無し。先生もいつも通り。

 

 ただ1人、シロコだけを除いて。

 

 

 別に調子が悪くなったとかではない……とも言い切れないが、異常の本質はそこではない。

 

 

「……」

 

 

 

「なんというか、シロコちゃん、少し変わったんじゃないかなぁ?」

 

「そうですね、私もそんな気がします……」

 

「そうでしょうか? 私はにはちょっとわかりませんが……」

 

「右に同じく。いつも通りっぽく見えるけど?」

 

 

 ホシノとノノミは微小な変化に目敏く気付くが、今年入学したばかりのアヤネとセリカには分からなかった。逆にその程度の違いでしかないのだ。

 

 ちょっとばかり何もない所を見る事が多くなったとか、ボーッとする事が多くなったとか、その程度の些細な違い。

 

 でも、見る者が見れば分かる、明らかな違いだった。

 

 

 さて、当のシロコはと言えば。

 

 

「……明日はどのコースを走ろうかな……」

 

 

 部屋の隅っこにブルーシートを敷いて、先日の戦闘で散々こき使った愛銃の分解清掃していた。既に何度か掃除はしているのだが、いかんせん砂粒は微細な為に一度の掃除では排除しきれない上に、日々の持ち運びだけでも砂は際限なく付着していく。こんな場所に住んでいる以上は、武器のこまめなクリーニングと動作チェックはマストになっているのだ。大事な時に動かない、では悔やみきれない。

 

 そんな彼女は自分自身、何かが変わったとか微塵も思っていなさそうな感じ。いつも通りに休日の過ごし方を考えていた。自分の事で話をしているとも知らずに、呑気なものだ。

 

 

『どうせなら、学園の域を超えてみてはどうだ。どの道、しばらくは対策委員会で行う予定もないのだろう?』

 

「(ん、それも良いかも。ゲヘナとかトリニティなら、何日か掛けての長い日程にすれば面白そう)」

 

『ゲヘナもトリニティも、観光目的で行くのであれば良い学園だよ。しかし、ゲヘナのあの校風はあまり気に入らん、まるでティターンズのようだ。それにトリニティも内部抗争ばかりが水面下で起こっている以上、中々に下らない学園であると言い切れるが』

 

「(うーん……? ティターンズっていうのはよく分からないけど……)」

 

 

 そのティターンズという沈みかけの泥舟をコントロールしようとした結果、命を散らしたシロッコが言っても余りにも説得力がないが。

 

 しかし、自由な校風を謳いながらもその実は暴力が全てと言い切れるゲヘナや、学園の成り立ちからして仕方は無いが、それでも3つの派閥に分かれ水面下でバチバチに牽制し合っているトリニティも、学園として見ればどっちもどっちだろう。ゲヘナでは言葉を用いる者は極小数だが、トリニティでは逆に言葉こそが正義である。そんな2校がなぜ今更になって平和条約など締結する運びになっているのか、シロッコは何かきな臭さを感じていた。

 自分の学校すら満足に統制できていない状態で、どうして学校間での条約など結べるものか。条約締結をよく思っていない人間など山ほど居るだろうしメリットに釣り合うものではないと、シロッコは断定している。彼の想定は真相に近い所まで迫っており、トリニティの詳しい成り立ちやゲヘナとの確執の深さを正確に捉えきれていれば、さらに深い結論を導き出せただろうが。

 

 そんなピリピリしている2校にシロコを誘い込もうとしているシロッコは、果たして何を考えているのか。間違いなくありがた迷惑な案件だろうが。

 

 

 

 パプテマス・シロッコ。

 

 木星帰りの天才であり、全てを失った男。肉体すらも失った彼は、奇妙な因果から次元を超えてキヴォトスに迷い込んでいた。

 

 彼は、彼と親和性が高かった砂狼シロコのサポートがてら、この世界を満喫していた。

 

 

 

 そんな彼が、どのような目的でこんなところ(キヴォトス)に招かれたのかは不明だが、少なくともシロコと行動を共にしている事で彼女の行動や思考に変化が見られるようになったのかも知れない。

 そういった要因によって引き起こされた変化が、物語にどのような影響を及ぼすのか。

 

 

 今はまだ、不明である。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 また別のある日。

 

 アビドス廃校対策委員会の面々は話の流れで、行きつけのラーメン屋で昼食を取っていた。

 

 崩壊一歩手前のアビドスに残った数少ない飲食店、柴関ラーメン。過酷な環境であるアビドスで根気よく生活を続けて行く住民達にとってのオアシスでもあった。

 

 もちろん先生も一緒、久しぶりに食べたラーメンの味に舌鼓を打っている。なんならこちらの世界にやって来てからというもの、書類仕事やら連邦生徒会から回されてくる仕事やらで忙殺されていた事で最近は碌な食事を取れていなかったと気付いた先生。久し振りに食べた不健康まっしぐらの濃厚な衝撃に涙を流しながら麺を啜っていく先生の姿に、対策委員会メンバーは自分の事のように喜んでいた*1

 

 

 それはそれとして。

 

 

 ラーメンを食べて暫しの談笑タイムと洒落込んでいた対策委員会メンバーと先生達。ランチタイムは過ぎていたこともあり、客の入りは疎だった。そもそもの話、アビドスに人の気配など余りしないのが現実だが、そこは置いておこう。

 

 そんな柴関ラーメンの入り口の戸が、唐突にガラリと開かれた。

 

 入って来たのは4人組の集団。それぞれがキヴォトスでは常識の銃火器を携行しており、1人は大事そうにショットガンを胸に抱えて、1人は手提げ鞄と機関銃を何事も無く肩に掛け、また1人はホルスターにサプレッサー付きのハンドガンを携行、最後の1人は気品さを感じ古風なライフルを両手に持っていた。

 彼女達の内2人には特有の角が見られ、校章付きの制服を着用している生徒も居た事で学園の所属も自然と分かる事だろう。

 

 どういった理由があってなのかは不明だが、他の学園自治区の生徒がここまでやってくるとは中々に異常な光景であった。

 

 

 

 まぁ、とは言え、だ。

 飯屋に来たならば飯を食うのが自然の摂理なのは間違いない。ゲヘナ学園所属と思われる生徒が4人、テーブルに着席してメニューを独特の雰囲気を放ちながら見つめていた。なんというのだろう、近寄り難いオーラのような……なんとなく強者感のある雰囲気。アビドス対策委員会の面々は会話を続けつつもその様子を窺っていた。

 

 そんな彼女達の元に、現在は店員として働いているセリカが注文を取りに行く。そんな彼女の様子を、少し心配そうな表情で見詰める先生達。

 

 

「す、すみません……。ここで一番お安いメニューって、おいくらでしょうか……?」

 

「一番お安いメニューは……580円の紫関ラーメンになります! ウチの看板メニューですよ!」

 

「あ、ありがとうございます! 流石は社長です!」

 

 

 ゲヘナの制服を着込んだ紫髪の生徒はセリカに丁寧にお礼を返すと、隣の席の『社長』を褒め称える。ますますよくわからない集団だ。

 

 

「聞いた話通りみたいね……」

 

「はぁ、まったく……」

 

「どうせ一杯しか頼まないんだし、持ち帰りで良かったんじゃないのー?」

 

「良いじゃないの、折角久し振りに屋根のある場所でご飯食べれるんだから」

 

「それにしたって、せめて4人分のご飯代くらいは確保しておこうよ」

 

「わ、私は屋根がないところでも大丈夫です……!」

 

 

 前言撤回。

 

 普通にひもじい生活してただけの浮浪者だった。

 

 ゲヘナ学園という大手の学園所属なのにどうしてそこまでお金がないのかと先生は少し心配になったが、自分も無駄遣いが原因で頻繁にやってくるミレニアムの算術使いさん(笑)に散々言われているし、まぁあの子達も同じようなものかなと思考を放棄した。そんな事よりラーメンが美味しいのだ。一心不乱にラーメンを啜っていく先生なのだ。

 

 

「あの人達も苦労してそうですね……」

 

「ここはドドーンと御馳走しちゃいましょうか〜!」

 

「いやいやノノミちゃん、ウチだってお金ないんだからさぁ〜」

 

「ん、無駄遣いはよくない。無駄かどうかはよくわからないけど……」

 

 

 そんな様子を見て、お金がないのはこっちも同じなのに施しを与えようとしている対策委員会のみんなは心が広過ぎる、マジで赤の他人なのに。一昔前のアニメーションを彷彿とさせる心の広さだった。*2

 

 そんな事は店側のセリカと大将も同じように考えていたらしい。ラーメン一杯だけのオーダーなのに、ラーメン三杯分の盛りを遥かに超えるチョモランマが店の奥から運ばれて来ていた。

 

 

「ちょ、ちょっと!? 私達ラーメン一杯分のお金しか払えないわよ!?」

 

「応とも! ラーメン一杯お待ちどう! ちょっとばかし手元が狂って量が増えちまったが、許してくれや!」

 

「大将もあぁ言ってるし! さ、遠慮せずに食べて食べて!」

 

「そ、そうは言っても……」

 

「……社長、厚意は素直に受け取っておこう。ほら、麺が伸びる前に」

 

「早く食べよ食べよ!」

 

 

 店の奥から大将も顔を出してラーメン一杯だと言い張って、セリカも咄嗟に適当なことを言って押し付ける。それでも反応に困ってそうな4人組のリーダーだったが、角付きのめっちゃ良い声*3した生徒に諭されて、ようやく食べ始める事にしたらしい。

 リーダー格の生徒がラーメンを啜って──

 

 

「美味しいっ! 美味しいわよっ!」

 

 

 周りを憚る事なく大きな声で感想を述べる。それを聞いて他のメンバーもラーメンを口に運んでいき。

 

 

「!」

 

「っ! 美味しい……!」

 

「中々イケるじゃん!」

 

 

 思い思いに感想を口に出す彼女達。

 

 

「そうでしょうそうでしょう! 美味しんですよ!」

 

「ちょーいちょーい、ノノミちゃ〜ん」

 

 

 そんな様子を見てノノミは居ても立っても居られず飛び出して行って、自分の事のように柴関ラーメンの事を褒め始めた。そんな初対面の人に対して急接近していくノノミをどうどうと、少しばかり抑えるべくアヤネとホシノは席を立って4人組の席まで向かって行った。

 

 しかし、シロコは何か思うところがあるのか、席を離れずに離れた場所で様子を窺うことにしたらしい。

 

 

「(シロッコ)」

 

『分かっている、只者ではないな、奴ら』

 

「(シロッコもそう思うんだ)」

 

『特に角付きの2人は相当な手練れに見える。そうでなくとも、全員場慣れしている様にも思える』

 

「(そんな人達が、どうしてこんなところまで?)」

 

『そこまでは分からんとも。しかし、今正に注がれている鋭い視線は、何かの判断材料になるのではないかな?』

 

「──ッ!」

 

 

 そう改めて言われてシロコは、自身を射抜く視線に意識を向ける。白髪の角付きの生徒、彼女も同じような感想を抱いているのかも知れない。

 

 確かに。砂に塗れて滅びかけ……というより最早滅んだ状態のアビドス自治区に、如何にわざわざこの店に足を運ぶ価値があったとしても、ただご飯を食べに来ただけであれば、ここまで不躾な視線を頂戴する事にはどうしてもつながらないだろう。今繋がりが生まれたとはいえ、それにしても半ば睨みつけるような視線を浴びせかけるのは随分なご挨拶だろう。

 

 何かしら、アビドスで後ろ暗い事をやっているのは想定しておいた方がいいかも知れない。シロコはそう判断し、彼女たちから注がれる視線を無視して再びラーメンを啜り始めた。

 

 ──少しだけ、麺が伸びてしまっていた事にシロコはちょっぴり残念そうだったが。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 対面の状況も正しく、シロコの思った通りだった。

 

 

ムツキ、あの制服……

 

うん、アビドスだね。あの感じじゃ、アルちゃん気付いてないよ

 

 

 2人の視線の先ではラーメンの感想を言い合っているアルとハルカ、それにアビドスの連中が映る。アルの楽しそうな表情を見れば、間違いなく今話している連中がアビドスだとは気付いていないだろう。これから戦うことになる彼女たちと親交を深めては、この後の作戦にも支障が出るかも知れない。しかもあのアルの事だ、変に情なんてかけてしまいそうな気もする。

 

 

伝えた方がいい? 

 

……いや、それよりも。見て、あの子

 

? どの子……、へぇ……

 

 

 別に伝えるのは後でもいいと判断したカヨコだったが、それ以上に無視できない存在を見つける。アビドスが元々座っていた席に残ってラーメンを啜っている銀髪の生徒。アレは、明らかに強い。

 同じく彼女を発見したムツキは、心底楽しそうに口を妖しく歪めた。

 

 相当に出来る相手が、連中の中に少なくとも1人いる事が分かっただけ、ここでご飯を食べて正解だったかも知れないとカヨコは考える。ここでご飯を食べる事になった、その事実自体はまったくの偶然であるが、結果的に事前偵察のようになってしまった。それでも、しっかりと収穫は持ち帰れそうだと思っていた2人を、突如として強烈な悪寒が襲う。

 

 

「……」

 

 

 さっきまでラーメンを啜っていた彼女が、いつの間にかこちらに視線を返していた。

 

 視線を向けられただけでこの感覚に当てられるとは、予想などしていなかったカヨコとムツキ。

 

 

「(何……この感覚、ラーメンを食べたばかりなのに、寒い?)」

 

「(あの子、メッッチャ強いじゃん……!)」

 

 

 本能的に分かる強さ、威圧感というものとはまた違った感覚。ザラザラ、ぬめぬめ、ドロドロ、そういう感触的な不快感もあるが、何か見透かされているという不思議な感覚。

 

 意味の分からない感覚、知らないからこそ不快に思う。そういった人間特有の防衛本能もあるだろうが、なんにせよ不快な事に変わりはない。

 

 その感覚からなんとか逃れようと思い、視線を逸らそうと──するよりも先に彼女の方が、ラーメンを再び食べ始めた事でカヨコとムツキは重圧から解放された。

 

 

 

 

 その後、チョモランマ盛りラーメンを食べ切った便利屋68は仲良くなったアビドスのみんなと別れを告げて*4、仕事場であるアビドス高等学校の敷地へと向かう……前に、バイトとして雇った傭兵団への最終打ち合わせを行わなければならなかった。

 カヨコが言うには、すでに準備は完了しており指示を待っているだけの状態らしい。

 

 傭兵団との集合地点に向かっている最中に、アルは仲良くなったラーメン屋の常連集団がアビドス高等学校の生徒──詰まるところ、今回のクライアントから依頼された排除ターゲットだった事をカヨコとムツキから聞かされる事になり。

 

 

なななな、なんですってぇーーー!!! 

 

 

 と、お馴染みの顔とお馴染みのボイスと、親の顔より見たBGMで驚いていた。

 

 アルちゃん社長はアビドスの中に油断ならないヤツが1人いると社員から報告を受けたが、そんな事が気にならないくらいこの後どんな顔して襲撃任務を遂行すればいいのかと、そんな事ばかりを考えていたのだった。仕事だからと恩を仇で返す感じは、アルが目指すハードボイルドらしい行いだが、当のアル本人はそういった行いに対して大きな抵抗があった。

 それでも自分を慕ってついてきてくれた社員と生活、そして自分自身で作った会社のモットーにも従わなければならない。

 

 アルは苦渋の決断だが、アビドスの襲撃任務へと向かうのだった。たとえ恩知らずと謗りを受けようとも、その決意は固い……と、思われる。

 

 

 

 

 

 アビドスと便利屋68。

 

 彼女たちが再び顔を合わせるのは、そのすぐ後の事だ。

 

 

 

 

 

 

 

 なお、話は戻るのだが。

 

 絶賛金欠まっしぐらだった先生は、今回の食事代を奢る羽目になって夜ご飯を抜く事になった。ミレニアムの会計士に怒られたばかりなのに、懲りない人だった。

 

 

*1
鋼の連勤術師をしていた先生は10秒ゼリーとか片手で摂れる食物ばかりを取っていた事で、感動のハードルが地面を突破して潜航していた事が理由としては大きい。勿論大将の作ったラーメンもちゃんと美味しいのだが。

*2
金のないヤツは俺んとこに来い、俺も無いから心配すんな

*3
ASMRとかやったらめっちゃ股間にキそうな感じの

*4
もっとも、別れを告げていたのはアルだけだったが。




ジェンティルドンナの育成がまっったく上手くいかないまま、エリ女LoHが始まってしまってどうしようかなといった感じ。

どうして私に気持ちよくウマ娘をさせないんですか。


ありがとうございました、次回をお待ちください。
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