シロコとシロッコ   作:メイショウミテイ

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最近またまた忙しくなって来てしまい、なかなか時間を取れなくて更新遅れてしまった。

申し訳ないです。





アビドス編 9

 アビドス襲撃から数日が過ぎたある日。

 

 アヤネが襲撃犯の1人であるムツキと遭遇して言い争いになったりしたらしいが、それ以外は普通の登校日だった。

 

 先日の出来事が無かったかのように誰一人欠ける事なく揃った対策委員会と、珍しく集合時間に遅刻して来た先生がやってきた。その容貌は如何にも急いで来ましたと言わんばかりの寝癖頭と、それに見合わないかっちりとしたスーツがなんともアンバランスな感じだ。

 

 

「では、先生も揃った事なのでこれから『諸々の事柄の報告会兼今後の行動指針を決める会議』を執り行いたいと思います」

 

「アヤネちゃん長いよ〜。長過ぎておじさんの右耳から全部通り過ぎちゃったよ〜」

 

「そんなに長かったでしょうか……?」

 

「気にしなくて良いんじゃない? いつものヤツでしょ」

 

 

 茶々を入れるホシノの発言をいつもの事と流すセリカのやり取りを挟みつつも、アビドス対策委員会の定例会議が始まった。

 

 

「それではまず最初に、ここ最近の襲撃に関する報告ですね」

 

 

 そう言ってアヤネは昨夜夜鍋して作っておいた資料を全員に向けて配り、行き渡ったところで話し始める。

 

 アヤネが見るように促したページにはヘルメット団の慢性的な襲撃に関する報告とそれに付随する疑問点、他には便利屋68と名乗っていた連中の素性調査の結果が記されていた。

 

 

「そもそもヘルメット団は何らかの理由で学園に籍を置けなくなった生徒の流れ着く組織で、各々で持ち寄って来た武装で私達を襲って来ていました」

 

「ん、その度に返り討ちにした」

 

「はい。しかし、最近ではヘルメット団も不思議な事に、使用する武装を統一している傾向があるんです。何から何までバラバラだった彼女達が、武器を揃えている事が私には信じられません」

 

「……確かに、奴らが帰って行く時に置いて行った武器を見てると、色とかデコレーションはともかく武器の型番は同じような物だったような……?」

 

「そこは私もアヤネちゃんを手伝って確認してみたのですが、確かに武器が一致する事が多かったですね」

 

 

 先生には文化として根付いていないが、キヴォトス人は銃火器を持つ事が一種のステータスになっている。それこそ、銃を持っていない人間の方が素っ裸の人間*1よりも珍しいという世界なのだ。常に携帯する事が常識として根付いているキヴォトスにおいて、銃火器はペットと置き換えても不思議ではない程の愛着を持って扱われ、人によっては服やアクセサリー類と並んでファッションの一部と捉えている者も多いのだ。

 キヴォトス人はタイミングによってまちまちだが、大体は入学の際に自分自身の感性で銃火器を選んで、余程の理由がない限りはその銃と一生を共にすると言われている。それがキヴォトスという大地に結び付けられた運命とも、因縁とも言える。

 

 そんな、命の次に大事とされる銃火器を使ってヘルメット団はアビドスに襲い掛かっていた、というのが過去。

 

 

 今では全員がそうではないにしても、ある程度装備が統一されていたヘルメット団。大事な銃を持ってくるのではなく、“どこからか”調達した武器を使い始めたという。

 

 先生にはやはりイマイチピンと来ていない様子だが、アビドスの面々は大なり小なり違和感を覚えていた。

 

 

「私には、これ以外を使う事は考えられない」

 

「シロコちゃんはその銃を大切にしてるもんねぇ。ま、おじさんも同じくではあるんだけど」

 

 “それほどまでに大事な物なんだ、みんなにとって銃という存在は”

 

「キヴォトスの外からやって来られた先生には、少し理解しにくい話かも知れませんね」

 

 

 とは言え、みんなの反応を見ればそういう物なんだろうと自然に理解が出来た。心底大事そうに銃を見つめるシロコと、展開式シールドと銃を並べているホシノ。会議中も膝の上でミニガンを抱き締めているノノミに、机上で意味もなく銃を弄んでいるセリカ。そして、資料を持っていない方の手でホルスターを撫ぜるアヤネ。

 

 彼女達のそれぞれの様子を見て、銃火器に注がれている愛情が分からない程先生は鈍感ではないつもりだった。

 

 

 “何というか、最近のヘルメット団は、『軍隊』みたいな感じだった? ”

 

 

 しかし、それを理解した先生は、ふと思ったことをポロッと溢す。それは当たらずとも遠からずといった話で、アヤネがすかさず同調していく。

 

 

「そうなんです! まるで軍隊と戦っているような感じ……」

 

「ヘルメット団は組織としては結束力が強くない。だから統一の装備なんてする筈がない、という事ですか?」

 

「そうです。同じ規格・型番の装備を複数揃える事は、彼女達の組織力ではあり得ないんです。それは金銭的にも、彼女達の心情を考えてもです」

 

 

 組織としては一枚岩、個々はバラバラ。それがヘルメット団。数多く闘ってきたアビドスの皆はその事を深いレベルで知っている。

 各個人のパーソナルを放棄している生徒達、まるで軍隊の様。キヴォトスの生徒としては考えられない事実だった。

 

 

「それともう一つ、お伝えしておきたい事があってですね……」

 

 

 そう言ってアヤネがホワイトボードに貼り付けた数枚の写真。

 

 

「戦車……?」

 

「あの時のヤツかな?」

 

 

 セリカ誘拐事件の際に立ちはだかったあの戦車の事だ。撤退の際に大きな苦労を強いられた事で記憶に新しいが、その戦車が今更なんだというのか。

 

 

「調べてみた所、ヘルメット団の運用していた戦車は既に生産されていない機種でした。既に後継モデルも開発・生産されているので、通常の流通ルートでは手に入れる事の出来ない物なんです」

 

 “何らかの裏ルートを使って手に入れたって事だね”

 

「それならブラックマーケットを当たってみるのが手っ取り早そうだねぇ」

 

「とっても危ない場所じゃないですか」

 

「連邦生徒会でも把握しきれていない非公認の部活も多く活動しているという、キヴォトス1の無法地帯です。市場に出回っていない戦車を手に入れるには、そこしか考えられません」

 

 “もしかしたら、大量の銃火器の出処もそこかも知れないね”

 

「私はその可能性が高いと思っています。……なので、ブラックマーケットを調査する必要があります」

 

 

 ブラックマーケットに赴いて廃番になった戦車と大量の銃火器の出所を探る、それが当面のアビドス対策委員会の行動指針になったようだ。

 

 と、まだアヤネの話は終わっていないようで間髪入れずに話し始めた。

 

 

「それと、学園の借金返済に関する話ですね……。先生には事後報告になりますが、今月の分も何とか返済できました」

 

「790万円も利子で取られるって本当何よ! 全然元金が減っていかないわ!」

 

「このままのペースだと、完済まであと300年程かかる見込みらしいです……」

 

「あーあー聞こえない! 冷静に現実を叩き付けないで!」

 

「まぁまぁ、取り敢えず今月は乗り切れてよかったねー、って事でいいんじゃない?」

 

 “うーん、ホントにとんでもない桁数だなぁ……”

 

 

 既に借金の総額は聞かされているとは言え、改めて聞けば先生も思わず唖然としてしまうような大金だ。しかもそれだけの額が利子として持っていかれてしまって、元金の返済は僅かしか出来ていない事も涙が止まらなくなるポイントだろう。

 

 

「しっかし、今時銀行振り込みとか電子決済とかそういった便利な方法があるのに、なんで現金輸送車を使ってまで現金での返済に拘るんだろう?」

 

 “現金のみ? それはおかしいね。確認の手間も輸送の手間も掛かるのに……”

 

 

 現金での返済しか受け付けない、しかも銀行側の都合で、だ。不審な点が目立つのは先生も感じる所だが、その正体を掴めない先生はモヤモヤとした気持ちを抱いたまま考えを巡らせていく。

 

 

『カイザーとか言う組織、十中八九真っ当な組織ではない。少なくとも返済を現金でしか受け付けないというのは、通常の銀行ではあり得ない事だ』

 

 

 カイザーローン、延いてはカイザーグループについて、粗方良くない企業だという事には既に察しがついているシロッコ。ドローンに寄生して好き勝手動いていた時にキヴォトス観光を悠々行っていた彼は、流れでカイザーについて知る機会もあった。

 

 

 カイザーグループ。

 

 キヴォトスに住む人間ならほぼ誰でも知っている程の大企業で、食品や繊維業から建築、果ては軍事産業まで手広く事業を行っている。シロッコの脳内には『スプーンから宇宙戦艦まで』*2がキャッチコピーの大企業が思い起こされたが、そう大差はない程に色々手掛けている会社だ。

 

 文字通りキヴォトスの経済の一翼を担っている企業なのだが、事アビドスに関して言えばあまり良い受け取られ方をしていない。アビドスには多額の金を貸し付け、キヴォトスでも一二を争うレベルに広大だった自治区の敷地を徐々に切り取っていっては謎に土地を掘削していると専らの噂であった。砂漠化を何とか食い止めようとするアビドスに対して優しい顔で近寄り、金を貸し付けては自治区をむしり取る。それでも砂漠化は止まずに借金だけが膨れ上がって、今というわけだった。

 

 ヤリ口は汚い、がしかしそれが企業と言うものだと、カイザーに対して評価を下す。

 

 会社は儲けを求めない慈善の心では運営出来ない、利益が無ければいつの日か滅ぶのは自分達だと言う事を分かっているからだ。だからこそ事業拡大や新事業の開拓などあの手この手で生き残りを賭ける。

 

 

 しかし、だ。それにしては不合理な点も多い。今回の現金でしか受け付けない借金返済もその一つだ。

 

 

「(うん)」

 

『振込の方が手間やリスクの面で言えば明らかに手早く安全だ。それをしないというには、それ相応の理由がある』

 

「(シロッコはどう思う?)」

 

『自分で考えてみろ、と言いたい所だが。生憎と私も手に入れている情報が少な過ぎる。見解を話すにしろ、何か真相に迫った確度の高い情報が必要だ』

 

「(……シロッコなら何でも分かってるモノだと思ってた)」

 

『私も一を聞いて十を知る事は出来んよ。とはいえ、今の時点でも考えられる事はある』

 

「(それは?)」

 

 

 シロコは脳内でシロッコと意見を交換……否、知恵を借りていた。シロコは大体の事はシロッコに聞けば明るい返事が返ってくると思っている節があるらしい。シロッコ自身あえて突き放したり手助けしなかったりで、そこまで甘やかした覚えが無いのにやたらと頼りにされている状況に少し変な感じを抱きつつも、シロッコも自己顕示欲が高い男なので考えてしまう。

 

 彼自身勿体ぶったつもりは無いが、シロコへの返答を少し遅らせた。きっと彼の持っている性格のようなモノなのだろう。

 

 

『……銀行の記録に残さないようにしたかったのかも知れない、と考える事は出来る』

 

「記録に、残さない……」

 

『或いはそうするだけの理由があるのかも知れないが。いずれにせよ、その問いに今答えを出す事は出来ない』

 

「うーん……そっか」

 

 

 期待外れとは言うまい、シロコには思い付かなかった一つの可能性だけでも、シロッコは導き出しているのだから。いつしか誰かが言っていたように、ニュータイプはエスパーではないのだから、分からない事は分からない事として存在しているのだ。

 

 しかし、こうなってはやはり件のブラックマーケットなる危険な場所に足を踏み入れなければならないだろう、シロッコはまたしても波乱の展開を予期する。とはいえ、キヴォトス一危険で無法な場所という触れ込みなのだから、何も起こらない筈がないのだが。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 一先ず、当分の行動指針として大まかに二つの事が取り決められた。

 

 一つ、ブラックマーケットにてヘルメット団が運用していた戦車と大量の武器についての調査。

 二つ、カイザーに返済している金の行方の調査

 

 これと並行して、いつも通り返済金の工面を行う事で来月までのプランは組み上がった。

 

 とは言え、しかし次の返済期限までは1ヶ月待たねばならない以上、しばらくはブラックマーケットに乗り込む為の準備を進めながら情報を集める事になるだろう。

 

 

 そういった結論に至った会議はお開きとなり、その日の夜。

 

 

 

 

「試してみたのは今回が初めてだが、やってみるモノだな」

 

 

 シロッコは一人でアビドスの夜を歩く。

 

 目的も無くほっつき歩いているに過ぎないが、そうする事も彼にとっては久しぶりの事だった。

 

 以前はドローンに憑依して自由に空を飛行できていたが、現在は残念ながら徒歩移動を強いられている。とはいえ元々の実体を持たない亡霊の状態を考えれば、これ以上を求めるのは贅沢というものだろう。

 

 

「しかし、この感覚は若いな」

 

 

 肌に感じる砂と風の感覚だけにしても、研ぎ澄まされた肉体が鋭敏に感じられる。まるで砂粒の一つひとつも、昼のそれとは真逆の冷え切った風も、その全てを余す事なく感じ取れた実感がある。

 

 シューズを通してでも地面を覆い尽くすサラサラとした砂の感覚も自然と分かってしまう程に、彼は全盛期とも思える程の全能感に包まれていた。

 

 

 アビドスの旧市街に足を踏み入れたシロッコは、辺りを散策していく。彼は以前のドローン生活のお陰で地理が頭に入っている訳で、お目当ての場所へは迷う事なく辿り着く事ができた。

 

 道中巫山戯た格好のチンピラやヘルメットを被った愚連隊を返り討ちにしながら、悠々とその場所へと向かっていく。いやそもそも君はこの世界の住人じゃないのに土地の権利書なんて持ってないでしょ、と思われるかも知れないが考えてみればここは滅びかけのアビドス。まともな人間なら滅ぶかも知れないと予想が付けば新たな新天地を探す選択肢を取る。残っている人間は経済的に離れる事が出来ない人間か、もしくは愛着のある土地を捨てられなかった人間だ。

 旧市街というくらいだ、この地域は早々に砂嵐に巻き込まれて放棄された地域なのだろう。そういう事もあり、基本的にここ辺りで定住している市民は存在しないと踏んでいる。

 

 さて。

 

 

「やはり徒歩では色々と面倒だな……、──フ、ここか」

 

 

 彼が目指していた場所、それ自体は何の変哲もないただのジャンク置き場であり、ここに彼のお眼鏡に適う掘り出し物が埋まっているとは到底思えない。故障してそのまま放棄された家電製品や開発途中なのか作り掛けの状態の精密機械、半壊して打ち捨てられたロボットの素体など使い用はありそうなガラクタがゴロゴロと転がっていた。

 こういったガラクタ置き場、言葉を選ばずに言えばゴミ捨て場はアビドスには珍しくない。人の生活が徐々に失われていく内にゴミが集まっていき、そして自然と形成されていたのがこのようなゴミ捨て場だ。人が減っていくに連れてこのような場所は多く、そして大きくなっていき街一つが丸々ジャンクまみれになってしまう土地もあった。それこそ、何を隠そうブラックマーケットの生まれはそういった経緯があり*3、そこから生活に困った人間や学園を追い出された様々な生徒たちが集まって生活を始めて、なんだかんだで安定して規模が大きくなって行ったのがブラックマーケットの始まりだった。

 

 そういった事もあり、ゴミ捨て場にも種類と規模感の違いがあるという事実はまぁあるが、今回はそこは関係ない。

 

 今回シロッコがこの場所を選んだ理由、それは極めて単純な理由だった。

 

 

「フフフ……、思った通りだ。奴等め、何処までも杜撰と見える」

 

 

 そこは、在りし日に一企業として稼働していたカイザーの兵器開発部門の製造所であった。放棄されて少なくない年月が経っているが、設備は錆びつきつつも原型を留めており整備次第では使えるかも知れない。電源をどのように調達するかとか、設備の整備も行わなければならなかったりとか、色々解決しなければならない問題は多いがそれでも開発の為の素材が多く転がっている事実は、シロッコの気分を上げる結果に作用した。

 

 シロッコは磨けば光るだろう設備とほぼ無尽蔵の開発素材。これが彼の望んだ通りの好条件という訳だった。

 

 

「設備は後々使えれば良い、ム? フフフ……、つくづくカイザーには感謝しなければならないな」

 

 

 シロッコは気付いた、電力が生きている。カイザーも余程慌てて撤退の判断を下したのかも知れないなと、推測を立てて見るが答え合わせをする機会が訪れる事はないだろう。

 何はともあれ、今電力が生きているのであれば設計図さえあれば直ぐにでも開発に移る事も可能だろう。そして、シロッコはその設計図を最初から手にしていた。

 

 生きているパソコンに触れ、データの入ったチップを差し込んで読み込む。彼自身このデータが活きる事になるとは微塵も思わなかっただろうが、それでも備えあればなんとやらという言葉の通りなのだろう。

 

 これまでの知識の全てはこの中に。それを現実に出来る人間も、刻を越えて此処に。

 

 

 パソコンの画面には、『"0"ver.ON』という文字が妖しく光っていた。

 

 

 

 

 

 

 

「誰が、これを……?」

 

 

 小鳥遊ホシノは疑問符を頭に浮かべていた。それもそのはず、いつもの日課として夜のアビドス市街地を見回っていれば、どういう訳か既に伸びているチンピラやヘルメット団が転がっていた。ホシノが恒常的に治安維持を行なっているお陰でなんとか最悪の状態には陥っていないのがアビドスの治安状況であり、一週間ホシノが治安維持活動を休んでしまえば直ぐにでも悪党が跳梁跋扈し始める始末だ。

 流石のホシノも毎日夜の見回りをやっているわけではないが、それでもそこそこの頻度で行なっているので少しずつでも治安は良くなっているのだ。

 

 しかし、それはそれとして、だ。

 

 今日のような事案は初めての事だった。時たまチンピラ集団の内輪揉めみたいな感じで、二つの団体が揃って伸びている事はあった。その時は連邦生徒会並びにヴァルキューレに照会を行ない賞金首の生徒が居ないかどうかの確認をして、諸々の手続きを行なって後始末をしてその場を収めた彼女だったが、今回はどうやら事情が違うらしい。

 

 

 複数の勢力のぶつかり合いではなく、何か強力な力を持った誰かが蹴散らして行ったようなものだとホシノは思った。実際にホシノが治安維持を行なった時と状況がほとんど同じだったから分かる事だが、とにかくホシノと肩を並べられる程の実力を持った誰かがならず者団体を始末して行っている事実は、ホシノの警戒心を急速に引き上げていく。

 

 

「(強い……、一体誰なんだ?)」

 

 

 見回り用の装備は登校する際のそれと同じだが、その事を少し後悔する事になったホシノ。フル装備であれば憂いはないが、この装備では少々心許ないと言わざるを得ない。何より手数が足りない可能性がある。

 

 こんな芸当が出来るヤツを野放しにしておいては、アビドスも対策委員会のみんなも、そして先生も。みんなが苦しむ事になるかも知れない。それだけはホシノが許容出来ない事だった。

 

 

「フー……」

 

 

 深く深呼吸をして、細心の注意を払って、進み始める。

 

 

 

 しかし、結果としてそのような不審人物を見つける事は出来なかった。銃火器の空薬莢を回収しある程度の武器種は絞り込めたしキックなどの物理攻撃も行って戦う事は分かったのだが、手掛かりとしては薄いと言わざるを得ない。これだけではどのような人物なのか、全く想像が付かない。せめて目撃情報でもなければ……と思っていた所で、素早く動く人影を発見したホシノ。ターゲットを見付けたと、一気にギアを上げて追跡に掛かった。

 

 

 ……のだが。

 

 

「シロコ、ちゃん……?」

 

 

 彼我の距離が遠く離れていた事もあり空見した可能性も大いに残されているが、それでも自分の後輩である砂狼シロコその人のように見えてしまった。

 

 その事実に驚き無意識のうちに足を止めてしまった彼女は、とうとう彼女の姿を見失ってしまった。

 

 

 頭頂部の獣の耳や短く整えられた髪型とその色は正にといった感じだが。しかし、解せない事が一つ。

 

 

「マフラーをしてなかった、シロコちゃんが?」

 

 

 初めて出会った時に彼女にあげてから彼女のアイデンティティの一つになった、青と黒のマフラー。どんなに暑くても、どのような環境でも彼女はそのマフラーを着用しており、文字通り肌身離さずといった具合だ。流石に水着だったりライディングをしている時は着用していないが、それでも彼女のカバンの中を覗いてみれば、きっと直ぐに見つけられるだろう。彼女の中でも大きな意味を持ち、どのような状況でもほぼ必ず持っているマフラーをしていない。

 

 その事実が、彼女が断定に踏み切れなかった唯一にして大きな理由だった。

 

 

「帰ろう……。明日改めて確認すれば良いんだから」

 

 

 考えても仕方のない事と割り切って、早々に切り上げる事を決めた彼女。幸いにしてなのか、シロコ(仮)のおかげで今日の治安維持活動はほとんど無かったし、疲労感も全く感じていないので今日ばかりはゆっくり眠れそうな気がしている。

 

 

 しかし、彼女がしっかり寝付くまではその事についてばかり考えてしまい、結局寝不足になってしまったのはまぁご愛嬌だろうか。

 

 

 

 

*1
浦和さん、下がっていなさい。

*2
アナハイム・エレクトロニクスの事。カイザーの事をわざわざ調べた時、「え、これマジでアナハイムみてぇなクソ企業じゃん」と感じた。利益最優先っていう方針のせいでカイザーのやってる事がメタクソに評判が悪いけど、エゥーゴとティターンズ両方に支援して超稼いでるアナハイムも同じぐらいクソなんだよね。だからシロッコもそういう感想が出るわけで。

*3
例によって独自設定、でもそういった経緯はちょっと考えられるよなぁといった呟き。




次はなるべく早めに投稿したい。


無理かも。
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