次回くらい山場にしたい。
こんなエースではマジでモチベが続かん、さらっと時間が飛んだりするかもしれないけど、書きたいところまでもう少しかかりそうだし。
でも、丁寧に物語作りたい気持ちもある。
とりあえず今は一文字一文字しっかりと積み重ねるしかないですね。
ブラックマーケット。
キヴォトス一治安が悪いと知られている場所であり、正規ルートではなかなか手に入れる事の出来ない品物の闇取引が日夜行われている。基本的にキヴォトスに存在する全ての土地は各学園自治区か連邦生徒会によって管理されており、必ずどちらかの組織の権限が及んでいる地域とされている。企業は学園もしくは連邦生徒会の自治区域で経済活動を行う事になっている為、学園や生徒会のが制定しているルール・規則に則った形で運営を行う必要がある。つまりは、学園か生徒会以外が土地を保有しているという事例は存在しないという事だ。*1
しかしながら、このブラックマーケットに限ってはその括りには入らない。
ここは連邦生徒会の権力が届いていない為に、様々な理由で学園を追われたならず者や連邦生徒会による指名手配を受けた犯罪者が潜伏。そう言った連中が持ち込んだ違法な物品を、これまた違法な企業が買い上げて転売、そこで得た汚れたお金で更なる違法取引へ……といった具合に悪循環を重ねた結果、もはや学園自治区並みの規模にまで成長してしまった。そのような金のなる木を放って置かなかったキヴォトスでも名の通った大企業が、連邦生徒会にバレないよう細心の注意を払いつつも秘密裏に支社を設置していたりもする。さらにブラックマーケットには独自に金融機関や治安維持組織も作られており、実態は限りなく学園自治区に近いものになっている。犯罪によって得られた金と汚い商売によって形成されている世紀末もびっくりな無法都市、それがブラックマーケットである。
「ここが、ブラックマーケット……」
“思っていたよりも、普通の街って感じだね? ”
普段はアビドス自治区から出る事は無い対策委員会の面々は、調査目的とはいえ初めて踏み込んだブラックマーケットの景色に多少なりともワクワクしているらしい。先生は生徒たちの様子を見てしっかり気を配らなければと思う反面、彼女たちの初めて修学旅行で訪れた街に来たような反応を少し嬉しく感じていた。普段から借金という、年端も行かない少女達が考えるにはヘビー過ぎる問題に掛かり切りになっていて、普通の学園の生徒達が味わっている体験をなかなか出来ていなかったのではと、密かに心配していた先生。仕事とはいえ、調査とはいえ、こういった機会があって良かった。
しかし、次は借金の問題や学園の柵をとっぱらった上で、他の学園自治区へと観光に行かせてあげたいものだ。先生は心中に彼女達に対する思いを秘めつつも、その成り行きを見守る事にした。
「それにしても、ヒフミちゃんも災難だったねぇ〜」
「い、いえ…………危険な場所なのは分かってて入り込んだので……」
“好きな物の為とは言え、ブラックマーケットに単身乗り込むなんて……。結構アクティブなんだね? ”
「ペロロ様の為ですから!」
クリーム色の髪をツインテールにした少女──阿慈谷ヒフミはブラックマーケットに訪れた目的をそのように釈明する。
ブラックマーケット入りを果たした対策委員会を待ち受けていたのは、チンピラ集団に追いかけられる彼女の姿だった。必死の形相で逃げ回る生徒を先生が見逃すはずがなくその指揮の下、対策委員会総出で追っ手を片付けたのだが、今度は騒ぎを聞き付けたマーケットガードの追跡を躱す羽目になってしまった。
当初想定していた調査プランとは全く違う始まり方になってしまったし、出発前のアヤネの忠告*2を丸っ切り無視してしまう形になってしまった。
「それにしても、助かりました〜! ヒフミさん、随分とブラックマーケットについてお詳しいんですね!」
「い、いえ! そんな事は……」
「いやいや〜、抜け道とか裏路地とか細かい道を使って上手く追跡を捌くなんて、簡単に出来る事じゃないよー?」
「ん、謙遜は良くない」
「適当に走って居ただけなんですが……」
なんとかヒフミの先導を受けてマーケットガードを撒いた対策委員会と先生は、メインストリートから何個か隣のそれなりの広さの通りを歩いていた。結構な全力疾走を繰り広げた事で先生は息も絶え絶えでとても喋れる状態では無くなったが、まぁこれで調査に専念できると考えればコラテラルダメージというヤツだろう。
「この通りも比較的平和ですし、余程の騒動でも無ければマーケットガードも飛んで来ないとは思います」
「マーケットガード……、さっき追いかけて来てた人達の事ですか?」
「そうです! マーケットガードを始めとした治安維持機関にだけは目をつけられちゃダメなんです……!」
ヒフミは心底恐ろしそうな表情でそう語った。確かに警察組織に捕まって時間を取られるとか、面倒ごとに巻き込まれるとかは対策委員会としても避けたい筈だ。
そのほかにもヒフミは、ブラックマーケットのアレコレを簡単にではあるが教え込んでいく。独自の金融機関があるとか、企業の利権争いがあるとか、大まかな地理とか、それはもう色々だった。
「ヒフミちゃん、聞いてる感じ、結構詳しいみたいだねー?」
「そうでしょうか? 事前に調べたりはしていましたが……」
「それじゃあさ。助けてあげたお礼って事で、私たちの探し物が見つかるまで付き合ってもらうねー」
「ええっ!?」
驚きの声を上げるヒフミ、話の流れではここまでは当然だろう。ここの事情を知っていそうな彼女の協力を上手く取り付けられれば、調査も案外簡単に進むかも知れない。アイコンタクトで意思を確認した対策委員会は、ここぞとばかりにヒフミに対してアプローチを仕掛けに行った。
「わぁ⭐︎いいアイデアですねっ」
「ん、誘拐って訳だね」
「誘拐じゃなくて案内を頼むんでしょ! 勿論、ヒフミさんが良ければだけど……」
“恥ずかしい話だけど、私達もここは初めて来たから何分土地勘が無くてね……。私からもお願いしたいな”
「あうぅ……。私なんかがお役に立てるとは思いませんが……。それでもお世話になったのは事実ですから、喜んで引き受けます……!」
空気を読んで先生も流れに乗ってみた所、ヒフミは自信なさげな様子だが、それでも対策委員会に力を貸してくれる事になった。
一方、その頃。
「今月もありがとうございましたー!」
「ふぅ……」
カイザーローンの集金車に隙を見て発信機を取り付ける事に成功したアヤネ。
発信機の信号が手元のタブレットでしっかり受信出来ている事を確認したアヤネは、直様委員会室へと戻りドローンの準備を開始する。と言っても、粗方準備は終わっており、あとはカメラの微調整や充電状態の再確認くらいしかやる事はないが。
「せっかく100万円も使ったんです! なんとしても突き止めて見せます!」
やる気に満ち溢れた様子のアヤネはドローンの操作デバイスとして説明を受けた特殊な形のヘッドギアを装着、脳波を感知して細かな操作も受け付けてくれるというミレニアムらしい意欲作だという。本当は映像も脳内に直接送信したかったらしいが、人間の脳はそこまでの情報量に耐え切れるのかが不明だった為に今回は断念したらしい。
「よし……、行きます!」
アヤネの操作するドローンが、ついに行動を開始する……!
それから、数時間が経った頃。
アヤネから追跡を開始した報告を受け、こちらも本腰を入れて調査を続けていた……のだが、これと言って有力な手掛かりは見つかっていない。既にアヤネの最後の報告からも二時間は経っているし、彼女の方もなかなか行き詰まっているのだろう。もしくは何らかの要因で追跡できなくなってしまったとか。
「あぁ〜〜、しんどい……」
「数時間歩き回って手掛かりなしだと、流石に堪えますね……」
「おじさんは足が棒になっちゃったよー……」
「ん、先輩はまだまだ歩けるハズ」
“とはいえ、流石に疲れたね……”
「運動不足の先生には丁度いい」
“否定できない……”
先生の運動不足は今に始まった事ではないが、デスクワークばかりではそうなるのもまぁ仕方がない事ではある。仕事の量が尋常ではなく、運動にかまけている隙間が無いというのも理解は出来る。しかし、先生がなかなか運動したがらない事もまた正しいし、仕事を理由にして運動を避けている節すらある。
そんな運動不足気味の先生の鼻が、甘い甘い匂いを捉えた。
「みなさ〜ん! たい焼き買って来ましたよ〜⭐︎」
「ノノミ先輩!? カードを使ったんですか!?」
“言ってくれれば私が出したのに、良かったの?”
「良いんです! 私が食べたかったので、皆さんにもお裾分けですっ」
ノノミが疲れ切ったみんなの為にたい焼きを買って来てくれたらしい、疲れた肉体に甘味が広がり至高の一時を演出する。一応は部外者であるヒフミの分までたい焼きが用意されていたらしく、遠慮しつつもたい焼きを頬張った彼女は一息吐いて、落ち着いた様子で分析する。甘味が脳にまで達したからなのか、頭の中がスッキリしたような感覚がしていたヒフミはスラスラと考えた事を共有していく。
「ここまで情報が掴めないのは、いくら何でもおかしいです」
「ブラックマーケットで戦車なんて、そう珍しい取引ではありません。なので、必ず何処かで尻尾が掴めると思っていたのですが……」
「ノノミさんに見せてもらった武器のリストを見せて貰いましたが、あっちの方が顕著です。意図的に隠されているとしか思えないんです」
「ブラックマーケットは複数の企業が中枢に入って運営されているので、ここまで統制して情報を隠し切るのは不可能な筈なんです」
「……でも、事実として情報が何も掴めないままですし……」
意図的に隠されている、ヒフミが語ったその内容は筋が通っているように思える。とは言え、尻尾すら掴めない現状は不思議としか言えない。ノノミも思わず声を挙げるが、ヒフミは続けて──
「ここに集まっている企業は、ある意味開き直っているんです。なので、今更自分たちの悪行を隠したりはしないんです。だから今回みたいに行動の全てが掴めないと言うのは、はっきり言って異常です」
そう言ってヒフミが指を指した方向には、周りのビルに比べても一際大きなビルが建っていた。彼女はあのビルもブラックマーケットにおいて悪名を轟かせているという超悪徳高利貸し銀行だという。全面ガラス張りの如何にも大企業の本社といった具合の高層ビルを構えている事からも、相当ヤンチャな事をやって事業拡大でもしたのだろう。アレもここに巣食う、癌の一つに過ぎないという事か。
『君になら、分かるだろう』
「何が?」
『この街を覆っている邪気を』
「……」
『この街の環境は悪意に満ちている。それだけでは無いが、凡そは悪感情だ。しかし、そのような感情を呑み下し、制御出来なければこの街では生き残れないのだろう。他者より前へ、他者より先へ、他者より上へ、それはこの世界でも変わらない真理だが、この街では特に顕著だ』
「……他を下げないと、生きられなかった?」
『そうだ、普通ではあり得ない選択もここでは普通、どころか最善手になってしまう。己が力の使い方は、よく肝に銘じておく事だ』
「……うん」
シロッコの話は相変わらず回りくどくて分かりづらい、と言えども本心から心配して言っている発言なのは聞いていればよく分かる。それこそ、こんな街にやって来て人の悪意を身に染みて理解しているシロコには、他人の心中を推し量ることなど簡単に出来てしまうのだから。*3特に集中せずとも、彼女にはシロッコが自分を本心から思いやっての発言である事は理解している。だからこそ、彼女もシロッコの言う事なら信頼も出来るし、彼の長い話だって一生懸命理解しようとする。
さっきの銀行(闇)もヒフミが言うには相当に悪どい事に関わっているらしく、キヴォトスで行われる犯罪活動によって得られる金融資産の15%があそこに運び込まれ、さらなる犯罪や黒い取引に使用されているのだという。銀行が犯罪に巻き込まれている……のではなく、銀行も犯罪組織の一環として密接に結び付いているのだ。実際に犯罪組織の下部組織として運営されている銀行だって、あったりなかったりするのだという。
そんな銀行に一台の車両が走って来ていた。見た感じ、カイザーローンの現金輸送車だが、あの銀行へ用があると見て間違い無いだろう。しかもその車両の護衛には、先ほど彼女たちが接触した部隊とは別のマーケットガードが護衛に就いていた。
『む、連中はさっき彼女が言っていた……』
「ん……」
「マーケットガードが現金輸送車の護衛をしていますね……」
目の前を通り過ぎていく現金輸送車の一団、その車両の横面には彼女達の見知った会社のロゴが記されていた。
「あれは、カイザーローン!?」
“そうだね、連中もそういう会社だったって訳だね”
「カイザーグループは私の在籍しているトリニティのティーパーティー*4でも、特に危険視されている企業なんです。犯罪スレスレの手口を使って生徒を手玉に取っているとか何とか……」
「ヒフミちゃん……自分を普通の生徒って言う割には、結構内情知ってるんだねぇ〜?」
「へっ? あぁいえ! 知り合いがいらっしゃると言いますか……、トップと言いますか……」
「ん〜〜〜??」
言い切らないヒフミの様子を不思議そうに見ていたホシノだったが、少し目を別に向ければ、さっきのカイザーの現金輸送車から運転手が降りて来た……のだが。
『皆さん! 現金輸送車がこの座標の銀行に現金を……って、皆さん現場にいらっしゃるんですか!?』
「おっ、アヤネちゃん。そっちも見つけたみたいだね」
『ずっと追跡していましたから! そちらの状況も横目で見てはいましたが、まさか戦車の出処は……!?』
“ここでかち合ったのは紛れもない偶然なんだけど、とは言え無駄足にはならなかったみたいだね”
これまで手掛かりを掴めていなかった現地組と、しっかり成果を上げていた待機組のアヤネ。戦車やら小銃やらの出処が不自然に隠されている以上、これ以上の進展は見込めまい。
そのまま観察を続けていると、銀行側からも職員が出て来て一言二言会話した後、証明書に記入してからカイザーの役員は現金の入ったジュラルミンケースを引き渡して帰って行った。細かな会話の内容は聞き取れなかったが、そうでなくとも状況は分かり易いだろう。それこそ状況証拠だけで話が通じる程に。
「カイザーとあの闇銀行が繋がっていたって事ですか!?」
「そういう事だろうね、私達の現金はここに運び込まれちゃったみたいだし」
「私たちは、犯罪の資金を提供してたって事……? 冗談じゃないわ!」
「……」
“奥空さん、ドローンの録画はバッチリかな? ”
「えっ? ええ、あの輸送車の通ったルートは全て把握しています。車両をロストした瞬間は、トンネルを経由した時以外はありません」
“お手柄だね。とは言え、これでもまだ弱いかな”
「弱いって、何がですか?」
“カイザーがこの銀行に関与……アビドスの返済金が提供されたっていう、動かない証拠がさ”
確かにアヤネはドローンを回して、ほぼほぼ全ての現金輸送車の動向を把握していた。しかし、トンネル内までは追えていない以上、その追跡も完璧とは言えなかった。アビドスで確保した現金が確実にあの銀行へと渡ったという決定的な証拠が無い限りは、カイザーを糾弾する事は出来ないのだ。現金輸送車を映像内に全ての時間捉え続けていればその限りではなかっただろうが、前提として今回は運ばれる現金輸送車の行き先を確定させる事こそが目的だった事もある。
事態は常に変化し続けている、状況を読み違える事は許されない。
「ん、ここはアレしかない」
「シロコちゃん、アレってもしかして……」
「もしかして、アレですか!」
「え、ホントにアレやるの……?」
『備えておいて憂いはありませんでしたね』
好機を得たとばかりに目を輝かせるシロコに対し、対策委員会4名はそれぞれ違った反応を返すがしかし、現にそれしか対応策がないのも事実ではある。各々がカバンの中に手を突っ込んで、何かを探し始める。
その様子を見てオロオロしているのは先生とヒフミであった。何も聞かされていない、どういう話の流れなのかも全く分かっていないのだから仕方ないのだが。
“えーっと、アレってのは一体どういう……? ”
いやな予感をビリビリ感じつつも知らないままで居る訳には行かないのが先生、恐る恐るといった様子でシロコに問いかけると。
「銀行を襲う」
さも当然といったドヤ顔で、そう言い放った。
こういった物語の組み立てもあまり上手くないんでしょうね、と自分でも思います。
文字を書くのは本当に難しい。
次回、銀行強盗……と言いたいところですが、多分地の文で事後報告みたいな形にします。
銀行強盗まで綺麗に描写してたらもう1話銀行編になってしまう。
追記:注釈が一個抜けていたみたいなんですが、何を書こうとしてあそこに注釈を入れていたのか不明なので適当に解説を入れておきました。
報告くれた方ありがとうございます。