シロコとシロッコ   作:メイショウミテイ

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早めに投稿しました

次も早めに上げたい。

追記:ちょっと注釈ミスしてたみたいなので、少し手を加えて直しました。元々自分が何を書きたかったのか分からんので、それっぽく。


アビドス編 12

 結果から伝えれば、呆気ない程に簡単に銀行強盗は完遂されてしまった。

 

 それは先生が事細かに指示を飛ばす必要すらなく迅速に、そして華麗に行われた。

 

 

 覆面を被ったシロコとホシノが、事前に先生のスキャンによって特定されていた警備員を速攻で無力化していき、その隙にノノミとセリカ、そして覆面が用意されていなかった為にたい焼きの入っていた紙袋を被っての参加になった我らがボス(ファウスト)の3名が、ロビー内をこれまた素早く制圧。構内に残っていた職員や顧客などを一箇所に集め終わった後、シロコが職員の一人に輸送記録書類を要求。どういう訳か書類と共に現金をバッグの中に放り込まれていたが、それすらも最早誤差レベル。犯行時間およそ10分で行われた、正しくプロ集団の手際であった。

 

 先生は一般人に極力被害を出さないようにという条件で今回の銀行強盗の許可を出したが、本音を言えばもう少し穏便な手段を模索したかった。暴力に頼るのは本当の最終手段の時だけにしたかったのが根底にあったが、1に暴力2に暴力、3に来てようやく対話が出てくるような世界なのが良くなかった。

 実際のところ、先生の言うような穏便な手法では時間ばかりが掛かってしまう結果になるだろう。相手はブラックマーケットを牛耳っている一角、真っ当な交渉が通じるとも思えないのは後々考えてみれば分かることだ。

 

 学校へ帰還する最中、一緒に持ってきてしまった1億もの大金の処分を考えなければならなかったが、偶然居合わせた便利屋の首魁たる陸八魔アルと邂逅。覆面を被っただけで碌な変装をしていなかった面々は身バレするかもしれないと冷や汗を流したが、そこはアル様である。銀行強盗犯が最近仕事で襲撃をかましたアビドスの連中だとは気付かずに、犯行の手際の良さを手放しで褒めちぎり挙句名前を聞かせてほしいと言う始末。ノノミが適当に言った『覆面水着団』*1という名前を心に刻み、そして何故か一億円を受け取って帰って行った。彼女はそれで良いのか……。

 

 

 何はともあれ、無事に目当ての書類は確保、怪我人も無し。現時点で目標の一つである『カイザーに返済した現金の行方』は判明した訳だ。とは言え、納めた現金が闇銀行に渡った時点で何かしらの犯罪資金になっているのは、最早逃れようのない真実ではあるのだが。一応部外者ではあるのだが一緒に死線を潜り抜けた事もあり、確保した書類の分析にはヒフミも同席する事になった。

 

 さて。

 

 気になる書類の中身を簡単に纏めれば、カイザーはアビドスの返済資金を利用してアビドスを襲撃する為の武器や戦車を調達し、それをヘルメット団に先行投資という形で横流しされていた事が判明。債権を持っているのはカイザーの筈なのに、そのカイザーがアビドスを潰そうとしている。矛盾している、学校が潰れれば金の回収が出来なくなるというのに。九億という数字は流石のカイザーであっても大金だと判断するだろうが、襲撃を命令するという事はアビドスには潰れて貰った方がいいと言っているような物だ。

 

 

『……寧ろ、アビドスが無くなってしまった方が都合が良いという事か?』

 

「シロッコ?」

 

『そうするだけの価値が、このアビドスにはあるのかも知れないな』

 

「砂漠ばっかりのアビドスに?」

 

『アビドスの土地に用があるのでは無く、アビドスという学校組織、延いては名前を邪魔に思っているのかも知れないが、な』

 

「……」

 

 

 可能性の話とは言え、アビドスが無くなるとかそういった事は言って欲しくは無いのが本音だが、それをいっても仕方がない事くらいはシロコも分かっている。当然、意味が無い事も。何よりも、そんな意味の無いと分かっている事でシロッコの思考を邪魔したくないと、彼女自身が考えて判断したのだ。前までの彼女とは違った考え方であった。

 それはそれとして、シロッコの考えにも一理あった。シロコ自身はこのアビドスという土地に対して愛着があるし、ここを離れるつもりは何があってもないのだが。しかしながら彼女がそう思っていても、何も知らない人間からしてみればアビドスという土地は、砂に覆われた発展性の見込めないどころか生きて行く事すら苦労する程のどうしようもない大地である。そんな土地をわざわざ手を差し向けてまで奪おうとする意味は何処にあるのだろうか。

 

 

 ヒフミもティーパーティーに報告して協力を得られないか手を回してみると話していたが、仮にそんな事をして貰っても返せる物がないとホシノは固辞した。確かに、ここで借りを作ってトリニティに対して頭が上がらなくなっては、簡単にアビドスが傀儡に成り果ててしまう危険性だってある。無償の愛はこの世界には存在しない、差し伸べられた手を取る事すら自分の首を絞める結果になりかねない事を、まだ若いながらホシノは深い場所で理解しているようだった。

 

 

 ともかく、これで当面の目標は達成された。返済した金の行き先は判明し、それがヘルメット団へと武器として流れていた。それが真実であった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 ブラックマーケットでの調査を終えたアビドス対策委員会は暫しの休息期間に入った。各々が各々好きな事をして過ごしており、ホシノは学校にやって来てはノノミの膝枕でお昼寝を繰り返し、アヤネは別館の図書館で新しい技術を学んでいる。セリカは色々なバイトに挑戦してはキレて帰って来たり。シロコもシロコでサイクリングしたりランニングしたりで好き勝手して過ごしていた。偶に調子の悪い日もあったりしたが、具体的にどう言った条件で不調になるのか、未だに原因が掴めていないのが心配そうではあるが。まぁ原因は9割9分シロッコのせいなのだが、彼を信じきっているシロコはそんな事とは露と知らず、彼も彼で決して無駄なことをしているとは思っていない為打ち明けるタイミングがあるとしても、それは()()()()の有事の際になる事だろう。

 

 

 その日は通常通りの登校日。済ませておかなければならない用事があるとかなんとかで、ホシノは登校するかわからないと事前に連絡が入っている以外は普通の日であった。

 

 基本的に対策委員会が学校に集まる時は、何も依頼が入っていなくて暇な時である。そういった暇な時間は学校に集まって、お菓子調達大臣のノノミが持ってきたお菓子を摘みながら駄弁ったりなんやらをしている。わざわざ学校に集まるのは手間が掛かると言えばそうだが、何せ5人しかいない学校の仲間なのだ。出来る限り一緒に過ごしたいと思う気持ちに不思議な点がある筈もない。そういった意味では彼女達には仲間とか絆とか、そういう言葉で説明しきれない程の深い繋がりがあるのだと実感出来る。その繋がりがあってこそ、このアビドスで生きていけるのだろう。

 

 

「今日は委員長だけが欠席なのよね、どこ行ってるんだろう?」

 

「さぁ……、行き先までは教えてくれなかったけど」

 

「う〜ん、そうですねぇ……。案外お昼寝してるだけだったりして?」

 

「ありえないとは、言い切れないけど」

 

 

 ホシノ以外はすでに登校している状況の対策委員会。お昼寝なら学校でいくらでも出来るとは思ったが、そもそも本当にお昼寝しているのかわからない上にあくまでプライベートな問題だしそこまで詮索する程の事でもないかと、セリカの持ち込んだ怪しげなマルチ商法の話へと移っていく。

 ノノミの持ち込んだお菓子類が半分程なくなった頃に、事件は起こった。未だホシノからの連絡もないというのに。

 

 

 ドォンと、遠くで何かが爆発したような音が響き。

 次いでキヴォトスでは珍しい地震にも似た、しかし微弱な振動が学校に到達する。

 

 

「なっ、何!?」

 

「一体何が……!?」

 

「今確認します!」

 

「いや、これは……」

 

 

 アヤネがドローンを飛ばして可能な限り速く状況を認識しようとしている中、シロコは既に大まかな事態を掴んでいる様だった。

 

 

『シロコ』

 

「分かってる」

 

「分かってるって、何が分かったんですかシロコちゃん?」

 

 

 シロッコは当然のように状況を理解しているらしい、シロコの様子を見て満足そうに微笑を浮かべている。流石は木星帰りのニュータイプ、伊達ではない。

 彼と会話しているつもりだったシロコは無意識に口にしていた言葉をノノミに突っ込まれるが、それに対して要点だけを端的に答える。

 

 

「今の爆発は柴関ラーメンだよ。誰がやったとかは分からないけど、便利屋が居ると思う」

 

「ど、どういう事!? ちゃんと説明してよ!」

 

「そんな時間はない。きっと戦闘が予測されるから、みんな急いで準備して」

 

「……便利屋が柴関ラーメンを? そんな……!」

 

「状況は不明ですが、確かに現場には便利屋68の姿が確認出来ました。しかし、便利屋も手傷を負っているみたいですが……」

 

 

 シロコの報告よりも正確な情報がアヤネによって齎される。便利屋にも被害が出ている以上、彼女達が今回の犯行の下手人とは断定できない。何者かに攻撃を受けたというのが分かりやすく一番確率の高く、私怨目的での襲撃というのが最も分かりやすい話だ。が、やはり論ずるには材料が足りなさ過ぎる。

 アビドス自治区での揉め事である以上、対策委員会が出張るのは当然の理屈である。

 

 

「みんな、行こう」

 

 

 ホシノが現時点で居ない以上、2年生が後輩を引っ張らなければならないのは道理だ。

 

 シロコの一声で、各々思う所がありながらも戦闘準備を素早く整え、現場へと急行していく。アヤネのドローンが先行してルート案内を行なっており、到着まで総時間は掛からないだろう。並行してアヤネから先生へホットラインで連絡済みであり、ちょうど近くに居た先生も急いで現地へと

 向かってくれる事になっている。我が方の戦力としては申し分ない状況になっている。

 

 

 

 過程はどうあれ、既に賽は振られている。願わくば、後悔のない選択を。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 予め情報としては入っていたが、現場は既に一戦闘有りましたと言わんばかりの惨状であった。

 

 爆発によって柴関ラーメンは跡形も残さずあらゆる物が消失、大将は爆心地からは少し離れた厨房にいた事もあってか比較的軽傷のように見える。*2意識もはっきりしているため、少し離れた場所のシェルターに避難して貰った。セリカは先生の迎えに寄越した、今頃は合流している頃だろうか。

 その間に、アヤネは再度周囲をドローンで確認。こういう時、大抵は火事場泥棒のようにチンピラ集団が集まってくるのが常である。それもアビドスのように行政が崩壊している自治区では特に。

 

 ノノミとシロコは目視で安全確保をする……のだが、シロコは脇目も振らずに歩いていく。目線の先には爆発の際にできたのだろう、ちょうど4人ぐらいの姿が隠せそうな大きな瓦礫があった。まさかと思ったノノミも慌ててその後を着いて行くと、やはり。

 

 

「……」

 

 

 苦虫を噛み潰したような表情のカヨコがハンドガンを構えて居た。

 

 ──撃たれる! ノノミは咄嗟にシロコを庇おうとするが、それよりも先にシロコが動いている。

 

 

「その必要はないよ、戦うつもりなんてないでしょ?」

 

「──え……?」

 

 

 引き金が引かれる前に手を伸ばしハンドガンをグッと下へ向けさせる。カヨコの力はこの前の戦闘で見ているし、格闘戦だってやれる程に能力が高い事も分かっている。戦いに関してのセンスが高いのは最早言うまでもない。しかし今のカヨコには、その時とは比べ物にならない程力弱く感じた。事実、簡単にハンドガンを押し除ける事が出来てしまったし、カヨコの顔も余裕が無さそうだった。

 

 そして、カヨコの後ろにはアルとハルカの姿があったが、その姿はカヨコよりも傷だらけであった。アルもハルカも自らの得物をこちらに向けているが、ノノミの目にはその姿がなんとも弱々しく映っている。キヴォトス人でなければ確実に命が失われていたであろう、甚大な手傷を負わされていたのだ。

 

 

「確かに爆発はあなた達のせいかも知れない。でも、あなた達の態度を見れば分かる。きっと、アビドスを襲う算段でも立てていたのかも知れない……けど、目を見れば分かる」

 

「そんなに、分かりやすいつもりはないけど」

 

「貴女は、ちょっと分からないけど。後ろの人は、分かりやすいから」

 

「……。そう、だね」

 

「シロコちゃん……」

 

 

 アルの表情を見れば未だ動揺の中から立ち直れていないのが見て取れる。正しく茫然自失という状態で、突然に引き起こされたこの状況をうまく飲み込めていないらしい。ハルカはそんなアルを守る為に毅然と前に立っている、自らも酷く傷付いているというのに。自分を捨てて戦える者、ハルカは余程彼女の事を大切に思っているのだろう。

 カヨコはどういう修羅場を潜り抜けてきたのか、自分を殺す事が上手すぎる。表情を見ても何一つ情報が読み取れない程のポーカーフェイスを身に付けるには、どれほどの苦難を乗り越える必要があったのだろうか。*3

 

 

『シロコ先輩! ノノミ先輩!』

 

「ん、分かってる」

 

『ここより市街地の方に──えっ?』

 

「向こうの方、アビドス旧市街の方にゲヘナの風紀委員が、一個中隊規模。わざわざここに来たって事は、便利屋目当てかな?」

 

「私たちが引き寄せてしまった、という事か……」

 

 

 アヤネから通信が入る。どういった経緯なのか分からないが、既に自治区内に侵入されている以上は警告の後、排除するしか無いだろう。

 

 アビドス旧市街。既に放棄された地域ではあるが、それでもアビドス自治区である事には変わりが無い。アビドスの自治区に他学園──ここではゲヘナ学園だが──が侵入する事は、一種の政治的問題に該当する。*4当然アビドス・ゲヘナ間でそういった取り決めがある訳もなく、今回の領土侵犯はアビドス側にはなんの通告もない物だった。そもそもゲヘナ側においてアビドスがまだ学校として存続している事を知っている人間は、最早ごく少数しかいない。

 

 だが、今回ゲヘナ勢力が差し向けられた事に関して、風紀委員──それこそ、命令を下した上層部は知っているはずだ。

 

 だから、今回の件には伏せられた目的があるに違いない。学園自治区を領土侵犯してまで成すべき事、それがただの便利屋を捕縛する為だけの作戦とは。

 

 

『裏がある。警戒するに越した事はない』

 

「分かってる」

 

「どうしましょうか、シロコちゃん。ホシノ先輩が居ない以上、私達で処遇を決めなきゃいけませんが……」

 

「ん、それよりも対処しなきゃいけない問題がある」

 

「それって……ゲヘナの?」

 

「うん」

 

 同じ2年生であるノノミが便利屋に関しての判断を促すが、シロコの意識はそこにはなかった。

 

 ゲヘナの意図。それが分からない以上、便利屋の身柄をみすみす連中に引き渡す事はしない。今回のゲヘナの行動の目的を明確にしない限りはまた同じような事が引き起こされかねない。

 

 いやそれより、ゲヘナには一度この一件に関しての──

 

 

「いや、それは今はいい」

 

 

「まずいよカヨコちゃん! 風紀委員の奴らが……ってアビドス!?」

 

「これで、便利屋さんは4人全員揃いましたね」

 

「早く逃げて。目的は貴女達だから」

 

「……いいの? 私達はアビドスを──」

 

「いいから、早く行って。貴方達が居たら、邪魔になる」

 

「……ごめん」

 

 

 そう言い残して全員で引き下がって行く便利屋。こちらの敵だというのにごめんと言うのは、少しイラっと来た所だがこの場においては雑念にしかならない。シロコは必要の無い考えを即座に振り払って、目の前の状況を掴もうとする。

 

 

『ここより3kmの距離にゲヘナ風紀委員の擲弾兵を確認しました! 狙われています!』

 

 

 僅かに警告の方が早かったのが幸いした。シロコはノノミを近くの廃ビルの中へ力の限り放り投げる。その勢いを使って自らも同じ廃ビルに滑り込んだ、その直後。

 

 

 眼前を通っていた道路が突如として爆発、それが何度も何度も繰り返される。擲弾兵からの砲撃だ。夥しい数の砲撃が浴びせられ、静かになった頃には道路だった場所には大きなクレーターが出来上がっていた。

 

 

「た、助かりました、シロコちゃん」

 

「礼には及ばない。けど、あれを何とかしない限りは、こっちに勝ち目はないね」

 

 

 無数の擲弾兵から繰り出される面制圧。雑な作戦だし無駄も多い。けれど、正直あの選択肢を敵が握っているというだけで、こちらは随分とやりづらい事は確かだ。

 

 

「癪だけど、便利屋は離脱させる。ノノミ、出来る限り援護をお願い」

 

「それは構いませんが、シロコちゃんは?」

 

「私は突っ込んで攪乱。ホシノ先輩とやっているような事だね」

 

「むっ、無茶です! あの数を相手に、それも今回は一人なんですよ!?」

 

「敵の数は関係ない、援護があればあんな数、簡単に捌き切れる。セリカにも同じように伝えておいて……、それじゃ、行って来る」

 

「待ってください! シロコちゃん!」

 

 

 有無を言わさず、高速で敵集団へと突貫していくシロコ。あっという間に豆粒サイズになっていく彼女の姿を、ノノミはただ見送るだけしか出来なかった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「一人突っ込んできたぞ!」

 

「擲弾兵は後退しろ! 前線を固めろ!」

 

 

「相手じゃない」

 

『無論だ』

 

 

 マニュアル通りの後退をしているゲヘナ風紀委員。

 

 流石は自由と暴力の学園であるゲヘナを管理し切っている*5風紀委員会だ。これまでシロコ達が戦ってきた有象無象のチンピラ集団とは比べる事すら烏滸がましい、そう思う位には彼女達の練度は高い。整然と後退していく擲弾兵、前進するは小銃を携えた戦列。統制の取れた見事な部隊であると、流石のシロッコも少し驚いている風だった。

 

 が、だからと言って、私達が負けるような相手ではない。それはシロコも、シロッコも同じ事を思っているに違いない。

 

 

『先ずは軽く当たってみろ』

 

「了解」

 

 

 指示を受けたシロコは、目に付いた正面の風紀委員へ銃口を向けて──

 

 

「撃てーっ!」

 

 

 そのタイミングで敵戦列からの集中砲火が浴びせられる。無数の弾丸が降り注ぐ中、シロコはすばしっこく物陰を駆使してやり過ごし、それでいて敵との距離を凄まじい速度で詰めていく。まさに電光石火と言える俊敏な動きに、風紀委員の掃射もまるで効果を成していない。

 

 

「軽いね」

 

『狙い目はあそこの一団だ』

 

「うん」

 

 

 シロッコが指し示した方には、見た感じは普通のゲヘナの一団が整列していた。何が違うのかと言えば、既にマガジン内の残弾が尽き、リロードを行っている最中という事。銃である以上は当然、いつしかリロードを挟む必要があるのは知っての通り。そのタイミングを狙って攻撃を仕掛けられる事だってある。

 シロッコがそこの一角を狙ったのには、もう一つ理由があった。

 

 

「貰ったよ」

 

「「「うわぁっ!?」」」

 

 

 シロコの全速力の助走を付けた飛び回し蹴りで、狙った正面の三人の意識を刈り取った。これで戦線に穴が空いた。

 

 彼女達は戦闘慣れしていない事を、シロッコに既に見抜かれていたのだった。ニュータイプとして彼女達の怯え・恐れを感じ取った彼は、それが初陣によって引き起こされる恐怖だと判断。初めて人を撃つとなると恐怖心が芽生えるもので、幾ら訓練用の的を上手く撃ち抜けたからといって、戦場でも同じように出来るとは限らないのだ。

 ──現に蹴られた彼女達、銃を持つ手が震えていたのだから。彼女達だって崇高な意思や憧れとか、各々の目的があって風紀委員に入会を希望していたのだろうが、戦場ではそんな物クソの役にも立たないのだ。

 

 

『射線を増やすぞ、ドローンをあちらの敵部隊に』

 

「了解」

 

 

 廃車の陰に隠れながらドローンの準備、その間にも敵方はこちらを飲み込もうと包囲陣形を取ってくるが、生憎とこっちも一人ではないのだ。

 

 

「こっちにも居ますよ〜! え〜い⭐︎」

 

「ゲヘナの風紀委員がなんだってこんなところに!」

 

「目線があっちに向いた」

 

『今が好機だ、進むぞ』

 

「分かった」

 

 

 ノノミとセリカの背後には先生の姿も見えた、無事に合流できたらしい。彼の指揮の下でシロッコも考えていた、弱そうな敵集団に向けて攻撃を仕掛けている様だった。流石は先生だと褒めてやりたい所だが、シロッコも眼前の状況からは目が離せない。依然としてホシノからの連絡が途絶したままなのが気になる所だ。彼女は一体どこで油を売っているのだろうからの、本当に昼寝でもかましていたら始末書モノだが。

 

 

 ──切るならば、今か。

 

 

『シロコ、まだ行けるな?』

 

「問題ないよ」

 

『私に、少し考えがある』

 

「うん」

 

『身体の主導権を、少しだけでいい。私に明け渡してはもらえないだろうか?』

 

「……それが、今必要な事なら」

 

『頼む』

 

「……、分かった。私はどうすればいい?」

 

「眠る時と同じ様に全身の力を抜いてくれれば、あとはこちらでやる」

 

「了解」

 

 

 言われるがままに、力を抜いたシロコ。

 

 そして、その意識は、急に失われ……再び力を取り戻した様に。

 

 

「フフフ……、では、始めようか」

 

「ちょうど、お披露目には良い機会だ」

 

 

 彼は、大きく手を振り上げ。

 

 

「我が下に来たれ! グラシュティン!」

 

 

 ──遠くの方で、一際大きな爆発が起こって。

 

 ソレは、迫る。 喚び声を、辿って。

*1
水着要素は一体何処にあるのだろうか? 

*2
まずキヴォトス人である為、仮に直撃していたとしてもぶっ倒れるとかはない。言うなれば誤差。

*3
ただ単に顔が怖いだけ、もある。

*4
キヴォトスでは学園が国家に相当した立ち位置にある。現実世界で例えるのなら、ドイツがいきなりベルギー国境を越境したり、ロシアがウクライナ領に軍隊を進めたりする事と言い換えられる。国対国の戦争では基本的には宣戦布告してから行われるのが常であるが、一部真珠湾のように例外あり。キヴォトスでも戦争に至るまでのプロセスが同じようになっているかは不明。しかしながら今回のような事態や、ストーリー3章のように奇襲攻撃というか、最早テロ紛いの事をされている事から察するに、宣戦を布告するという文化その物が無いとも考えられる

*5
管理出来ているとは言っていない。




ランキングに載ってたみたいで、結構閲覧数とか伸びてたみたいで。

凄いね、ランキング。
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