シロコとシロッコ   作:メイショウミテイ

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予告通り、分割したヤツの後ろ側です。


良く頑張りました。


アビドス編 14

 

「な、なんて強さだ……!でもっ!」

 

「速いね。でも」

 

『それだけでは、私達に一矢報いる事など出来んぞ!』

 

 

一進一退、と言いたい所だが、イオリが大分押し込められていた。シロコとグラシュティンのツーマンセルから繰り出される猛攻を、イオリもなんとかなんとか凌ぎつつ反撃の脚技を繰り出すものの有効打を与えられていない。その癖、シロコとグラシュティンから放たれる蹴撃と火線は、徐々にイオリの体力と集中力を削っていく。

 

 

「ぐっ……、喰らえ!」

 

「見えてるよ」

 

『フハハ、落ちろ!』

 

 

久しぶりの戦いだからか、シロッコのテンションがおかしな事になっているが、そんな事には構わずシロコは眼前の敵との児戯をそろそろ終わらせるべく、一つの奇策に出る。

 

 

「見てて、シロッコ」

 

『……フム、良いだろう』

 

 

シロッコの操るグラシュティンを控えさせたシロコは、彼に似たような妖しげなオーラを纏いつつイオリへとゆったり接近していく。対するイオリ、攻撃の圧がなぜか減った事をいい事に、シロコへと肉薄していく。

 

器用にスナイパーライフルを放ちながら距離を詰めるイオリに対して、シロコは深い集中状態にあるのか目を瞑ったまま歩き続けている。

 

 

「……勝ったつもりか!舐めるなッ!」

 

 

苛立ちを隠さぬイオリの銃撃がシロコに迫る。間違いなく直撃コースに3発の凶弾が置かれている、これを喰らえば身体能力の強化されているシロコであっても大きなダメージを被る事は確実だ。確実に屠る為にはこれだけでは足りないと判断したイオリ、さらに接近してダメ押しの蹴り技を見舞おうとする。

 

 

「……」

 

 

目を瞑ったまま、シロコは僅かに身体を逸らしただけで必殺の3連弾を回避。続け様に繰り出されたイオリの蹴りが首へと迫るが──

 

 

ハァッ!

 

 

──それを見た、シロッコは思わず笑みを溢してしまう。

 

 

イオリの蹴りがシロコを捉える事は無かった。イオリの肉体はまるで金縛りにあったかのように身動きが取れなくなってしまう。自分の身体の筈なのに、何一つ言う事の聞かない肉体にイオリは戸惑いを隠せない様だった。

 

 

「な、なんで!動けないっ……!」

 

「シロッコ」

 

『流石だな、シロコ』

 

 

動けないイオリの眼前へゆっくりと移動し始めるグラシュティン。目的は勿論。

 

 

『貴様には過ぎた一撃だ』

 

「ちょ、待っ──」

 

 

迸るエネルギーの塊を浴びせられたイオリは、たちまちその意識を手放してしまう。彼女は風紀委員会の中でも一際優秀かつ強い生徒であったが、残念ながら相手が悪かったとしか言葉が無い。

 

それよりも、ぶっつけ本番でプレッシャーを放ってイオリを金縛りにさせたシロコの方が大分ヤバい、というかとうとう本格的に人間離れして来ている*1。シロッコのように能動的に、しかもシロッコの補助なしでプレッシャーを発現させる事が可能になる程に、シロコのニュータイプとしての感性は磨き上げられている。流石のシロッコさんもこれには感嘆の声を挙げざるを得ない。

 

 

『流石だな、シロコ。その力の使い方、見事と言わせて貰おう』

 

「シロッコのやってる事は、何回も観てたから」

 

『観ているだけで出来るようになったというなら、キミのそれは正しく才能だよ。キミは、成る可くしてニュータイプになったのかも知れないな』

 

 

もしかしたら、かつての逢瀬も運命によって定められた必然であったのかも知れない。シロッコも本気でそう考えてしまう程には、彼女の引き出した力と秘められたソレの高さを評価していた。

 

かつてのシロッコは、自分を『一握りの天才』であると自認し、一人の力で組織を導こうとして失敗した経緯を持つ男である。間違いなくニュータイプとしては上澄みの存在であり、一握りの天才でもあったのは確かなのだ。しかしながら、世界は一人の手で動かせる程、小さい存在では無かった事を最後の最後になって思い知らされたという、実に哀れな男であった。

人間は誰しも自分の感情を持って、自分の思ったようにしか行動できない。シロッコはその事を理解していながら、それでも自分が世界のキーマンであると信じて疑わなかった、だから敗れた。

 

行き過ぎた力は、いつの日か破滅を齎す。

 

その危険性をシロッコは、文字通り身を持って体験している。

 

 

『私には最早、この世界で成し遂げたいと思う願いは無い。渇望も野心も全て、あの時を超えてまで持ち込むようなモノは、何一つなかった。敢えて言うのであれば、キミの事を見守る位しか、この世界では存在する意義はないと考えている』

 

「……うん」

 

『だからこそ、そんなキミを損なう訳にはいかない。私が教え込んだ力であるが、その力は余りにも危険だ。普段から己の力の使い方を、見誤る事が無いよう心掛けよ。私の様には、ならないで欲しい』

 

「分かってる。それも、シロッコが教えてくれた事だからね」

 

『……フッ、そうだ。(ゆめ)、忘れるな』

 

 

だからこそ、彼はここに来て。自分のようにはならないで欲しいという、僅かな願いを込めて。

 

力に溺れた者の末路を知っている『大人』として再三、その言葉を贈るのだろう。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

イオリを蹴散らした後、さっさと先生と他の対策委員会が戦っている戦場へと合流を果たす為に。

 

 

「これ、人が乗れるんだね」

 

 

グラシュティンに跨って、此処を掴んで下さいと言わんばかりに飛び出してきたハンドルを握りながら、シロコはこれを作った彼に感想を溢す。色々聞きたい事はあるし、説明してほしい事はある。

 

 

『元々そういう設計だ。これでもまだ未完成だが、火力は知っての通りだ』

 

「……いつの間に用意してたの?いや、そもそもどうやって?」

 

 

対するシロッコは一瞬の計算を挟んでから、シロコに対して申し開きを行う事にしたらしい。彼らしくない選択だった。

 

 

『……1〜2ヶ月前から少しずつ用意しておいた。方法については、キミにも察しが付いているのではないかな?』

 

「うーん……体調が悪くなった時期があったのは、そういう事?」

 

『恐らくは。二人の人間の魂が、一つの器に収まっていればそうもなるだろう』

 

「次からは、相談して欲しい」

 

『……了解した』

 

 

話を理解するのが少しばかり相変わらず苦手だが、ニュータイプ的な感性も相待って察しは良くなっているのがシロコだ。話を聞いている内に、なんとなく分かってしまったらしい。特に謝ったりしないのがシロッコだが、そんな彼に対して自分の身体を勝手に使われて怒らないのは、シロコが今回の一件に関してある程度感謝している所が大きかった。

 

確かにグラシュティンの存在がなければ、シロッコの補助を受けたシロコが居ても大分厳しい戦闘になった筈だ。一人だけ突出した戦力があっても、連携という面では足を引っ張る事になりかねない。作戦の幅は広がるかも知れないが、そうにしたって戦力差が離れ過ぎては作戦どうこうでひっくり返せる状況の限りでは無いだろう。

高機動かつ超火力の飛行物体が存在しているだけで、敵方としては否応なしに空を気にしなければならない。何せ気にしていなかった場合、当たれば一撃で戦闘から退場させられてしまう程の危険な攻撃が迫ってくるのだから。正面からやって来るのも素早く、そして痛い攻撃を繰り出してくる人間が飛んで来るのだから、対応に困るというのが共通する感想だろう。

 

結果良ければ、それに尽きる。

 

 

『シロコ、そろそろだ』

 

「うん」

 

 

話していた時間は僅か2分経たないくらいの時間だったが、さすがはグラシュティンだ。走ればもう少し時間が掛かったろうが、頗る速い移動手段があった事で離れた戦域に移動するのも手間ではない。

 

上空から見た感じ、不思議な事に戦闘が起こっていない様に見える。対策委員会の方には先程邪魔だからと見逃した便利屋の姿も見えるが、そちらも同じく動きが見えない。風紀委員会の方も同様に整列、待機しているらしい。

 

 

「どうしたの、この状況は?」

 

“シロコ!無事だったんだね!”

 

「シロコ先輩!?」

 

『おや、彼女がこちらに来たという事は、イオリは負けたという事ですか……。イオリには後で反省文でしょうか』

 

 

上空を旋回しているグラシュティンから飛び降り対策委員会との合流を果たしたシロコ、現在は敵との通信回線が繋がっていたらしい。目の前には世にも奇妙な横乳をはみ出させた女のホログラムが投影されていた。彼女がどうやら、今回の風紀委員会大遠征の責任者だという。

 

 

『貴女には色々と聞きたい事があります。さっきまで私達の部下を虐めてくれたあの兵器の事や、貴方自身の並外れた戦闘能力とか。でも、そんな事は後でも出来ます。なので今は、目の前の問題を片付けましょう』

 

 

ホログラムの彼女が片手を挙げると、風紀委員達は陣形を整えながらじわじわと距離を詰めてくる。見え見えの作戦だが、部隊を集めて圧をかけて来ているのだろう。しかしそんな虚仮脅しに恐れをなす程、彼女達も弱くはない。

 

 

『そちらの邪魔も入った事ですし、改めて聞きましょうか。シャーレの先生、貴方も彼女達と同じ意見ですか?』

 

“そうだね。便利屋の子達も言ってたでしょ?どれだけ間違いで起こった事だとしても、アビドスで起こった問題をアビドス以外の機関が裁くのは、流石に頂けないよ。それが、たとえゲヘナの生徒がしでかした事でも、ね”

 

「そうよ!最初から言ってるでしょ!」

 

「彼女達の背後にいる組織も喋ってもらわないといけませんし、先にお話を聞く権利がありますよね?」

 

『これが私達の答えです!あなた方の交渉は受けません!』

 

“っていう事だね。君にも立場があるだろうけど、ここはどうか理解して引き下がって欲しいな。風紀委員会行政官、天雨アコさん?”

 

 

あくまで交渉の場である以上は、どちらも言葉を尽くして事態の解決を図るのが当然の流れだ。人間にのみ与えられたコミュニケーションツール、それが言語であり、暴力的解決を避ける上では非常に重要な要素だ。それは引き金の軽いキヴォトスであっても変わりは無い。なんならそれの持っている重みは、映し出されている彼女の方がよっぽど理解している事だろう。

それを理解した上で、尚も彼女は引こうとしなかった。そうするだけの理由があると、そうしなければならない理由があると、その態度が雄弁と物語っていた。

 

 

『うーん、それでは仕方ありませんねぇ……。こちらとしても穏便に済ませる事は吝かでは無かったのですが、こうなってしまっては……、やるしかないようですね?』

 

 

彼女の一言を受けて、再編成の完了した風紀委員会が再度展開していく。どうやら後方に待機させていた予備兵力も引っ張り出して来たらしく、初めに交戦していた部隊よりも規模が大きくなっている。これでは勝ち切る事は難しいかも知れない、戦い続けるにはきっと弾薬も足りなくなってしまう。何よりこの数を捌き切るのは、流石のシロコも現実的ではないと判断している。

 

 

「この数は、流石に不味いね」

 

『こちらには、あの便利屋も戦力に含まれているとはいえ、戦力差は如何ともし難いな』

 

「逃げた方がいいって事?」

 

『フフフ、私は()()()()とは、言っていないぞ?シロコよ』

 

「ん、ここからって訳だね」

 

 

また増えた敵の姿に驚きを隠せない対策委員会と便利屋だったが、シロコはまだこの数の敵を目にしても驚くどころか勝ちを拾うことを考えていた。力で上回っていることもあるが、敵の数に絶望するよりも余程建設的というだけだ。

 

 

『再度風紀委員に伝達します。元々想定内とは言え、シャーレとぶつかってしまった以上は作戦の内容を一部変更します。便利屋の捕縛はもちろんですが、先生の身柄も合わせて()()するようにして下さい。くれぐれも先生には銃弾の一発でも当て無いように、命に関わりますからね。……委員長が推進している“条約の締結”まで、もはや猶予はありません。無事に事が済むまで、先生には休暇でもご案内しましょう』

 

「先生を狙って!?」

 

「誰があんたらなんかに渡すもんですか!」

 

“……条約って?”

 

「やっぱりそれも狙ってたって訳か……」

 

 

ノノミは先生が狙われる意味が分からないながらも率先してその前へ立ち塞がり、セリカも強気に言い返している。便利屋のカヨコはハナからこういった事態が見えていたのか、憎々しげにアコのホログラムを睨みつけるが、対するアコは意にも介せず涼しげな顔を向けている。

ドローンに乗り移って活動していた頃に仕入れた情報でしかないが、それでもシロッコは横乳はみ出し行政官が言っている“条約”について知っている事があった。彼女達ゲヘナと長年に渡り険悪な関係だったトリニティ、その両校間の和平条約。確かにそこに先生という要素は邪魔になるかも知れないが、連邦生徒会直属の機関である以上巻き込めばより条件の良い条約締結に繋がるのではと考える事も出来る。何よりシャーレの立ち会いで行われる条約締結なら、生徒同士で執り仕切られたそれよりも影響力的な面で強力ではないだろうか。

 

──いや、だからこその不確定要素という事か。条約がどうなるにせよ、なるほど確かに手元で抑えておいて損は無いか。

 

シロッコは内心強かに立ち回っているあの行政官の事を、少し評価したようだった。あのファッションセンスは少々奇抜過ぎて頂けないが。

 

 

『いえ、シャーレとぶつかる事はあくまで予想でしかありませんでした。私だってエスパーではありませんから、当然未来が見えている事もありません。しかし、最初からそのような可能性を考えた上で作戦を立てていれば話は別でしょう』

 

「今更だけど、もう少しこの状況について考えるべきだった。こんな大部隊を率いての作戦なんて、私達を捕まえるだけなら非効率も非効率だ。けど、私達だけじゃなくアビドス、延いては先生──シャーレとの諍いも考えてあるなら理解も出来る。そもそもこの作戦も風紀委員長が提案した作戦とも言い難い。アコ、あんたの独断での行動っていうなら、色々辻褄も合う」

 

『敵にカヨコさんが居ると実に厄介ですね……。呑気に話なんかしている場合ではありませんでした』

 

 

ホログラムのアコが指をパチンと鳴らす。それが合図となって四方八方から風紀委員が集結し始め、ついには対策委員会と便利屋を完全に包囲してしまった。

 

 

『さて、最終通告です』

 

『アビドスの皆さん、今大人しく便利屋と先生の身柄をこちらに引き渡して頂けるのであれば、あなた方は見逃しましょう。勿論、自治区周辺で事態を起こしてしまった事に対する賠償もしっかりとさせて頂いた上で、です』

 

『しかし、これを聞き入れて頂けない場合は──』

 

「聞き入れる訳ないでしょ!先生も便利屋だってアンタ達に渡すもんですか!」

 

『便利屋の身柄は、私達アビドスが引き取るのが筋です!』

 

「そんな横暴は許しませんよ!」

 

“そう言う事だから、ごめんね”

 

 

 

『──それでは、仕方ありませんね。風紀委員会、全隊前へ。目標はアビドス対策委員会及び便利屋68に限定、市街地への被害はなるべく最小限に抑えるように努力して下さい』

 

 

対立は避けられない。

 

始まってしまえば、きっとどちらか倒れるまでこの戦闘は終わらないだろう。

 

自治区内でのいざこざ──という扱いで便利屋を保護している対策委員会は、諸般の目的の為に引き下がる事は有り得ず。

 

風紀委員会も当初の目的通り便利屋を捕縛し、更に来るXデーの為に後顧の憂いを絶つ為に先生の身柄を何としても確保したい。

 

 

人類は言葉という、他の生物が持たない画期的なコミュニケーションツールを与えられた。それを駆使することで、人類は何度も危機を乗り越えて来たのは確かだ。しかし人間の歴史において、言葉だけで解決出来た事案ばかりでは無かった。そういった場合、人間は自分たちのエゴを通す為の手段として用いたのが。

 

 

『……風紀委員会、攻撃かい──』

 

 

暴りょ……ん?

 

 

『何ですかこんな大事な時に電話してくるのは……!? ひ、ヒナ委員長!?!?』

 

 

ホログラム*2で映し出されている横乳露出女は取り出した端末の画面を見て、顔面を真っ青にしながらこれまで忙しそうに触っていた指揮端末を放って応答し始めた。『ヒナ委員長』と言っていたが、彼女の電話の相手こそが風紀委員会の全権を掌握している風紀委員長なのだろう。

 

 

『どうしたのアコ。いつもなら私からの電話にワンコールで出てくれるのに』

 

『い、いえっ!今は、そうっ!少しだけ立て込んでまして……!』

 

『立て込んでる?何かあったの?』

 

『え、えっと……、今他の風紀委員達と自治区近郊でパトロールをしていたのですがっ、そこで便利屋と遭遇しまして……!』

 

『ゲヘナの、自治区で、ねぇ……?』

 

「嘘じゃん!」

 

「本当に独断行動だったんですか……」

 

 

おもっくそ嘘を付いている。セリカもノノミも話の内容を聞いて思わず突っ込んでしまう。

 

さっきまで自分たち相手にしたり顔で強気に話していた人間と同じとは到底思えない程、彼女の態度は丸っ切り違っていた。なんというか、一生懸命精一杯媚びていた。ますますヒナ委員長という人物がどのような風貌なのか、対策委員会は気になって来た所である。

 

 

「──ん!」

 

『──ッ!』

 

 

『はっ、はい!なので、また落ち着きましたら折り返しお電話致しますので……』

 

『アコ』

 

 

貴方の話は聞きませんと言わんばかりに、アコが妄言を垂れ流している流れをぶった斬ってしまった電話の向こうのヒナ委員長。名前をただ呼ばれただけなのに、まるで狐に摘まれたように縮み上がるアコの様子を知ってか知らずか、ヒナ委員長は次の句を。

 

 

それなら、現在アビドス自治区に展開している風紀委員は、一体何?

 

 

 

そこには、アビドス対策委員会が現在交戦状態にあった風紀委員会、その頂点に君臨しているという生徒。空崎ヒナその人が、立っていた。

 

 

そこに広がっていた光景──展開した対策委員会・便利屋連合と風紀委員会の一触即発の状況──をしっかりと両の目で捉えた上で、このタイミングに限りアコ行政官の息の根を止めてしまいかねない、そんな疑問を口にした。元々ホログラムの画面は青白く映し出されているが、それでも分かってしまう程にはアコの顔は生気を失っていた。正気を失いそうなのは、他の学園自治区に我が物顔で侵入し堂々と取り締まりを行っていた風紀委員の姿を見させられている風紀委員長だというのに。

 

空崎ヒナは正しく理解している、これが学園間の外交問題に直結している事に。

 

既に彼女の頭の中ではこの事態をどのようにして収めるかの計算が、それはそれは高速で繰り広げられていた。あの行政官も言っていたが、“条約”の件があってあまり時間がないという時にこの騒動である。彼女の心労は計り知れないというモノだ。

 

 

「アコ。この状況、私が納得するように、きちんと説明してもらうから」

 

 

鋭い目線をホログラムに向けているヒナ。元々の予定が早く終わって、久しぶりに少しだけ仮眠が出来る程に余裕を持ってゲヘナに帰っている途上で、コレだ。彼女の怒りのボルテージは凄まじい事になっており、この事態を引き起こした張本人に対して静かにキレていた。

 

 

 

──そして、その少し後方からは。

 

 

「うへ、おじさんも今来たばっかりで状況が掴めないから、分かりやす〜い説明が欲しいなぁ?」

 

「……小鳥遊、ホシノ……」

 

 

気持ち良く昼寝をかましていたら*3、自治区で大きな事件が起こっていて気が気ではなかった小鳥遊ホシノも、遅ればせながら参戦。

 

いつもと変わらないにこやかスマイルを浮かべているが、全く目が笑っていない事にお気付きだろうか。

 

 

──おじさんも、静かにキレていたのだ。

 

 

 

 

*1
ニュータイプなんて大なり小なり全員人間辞めてるんだけどね。本作のシロコもなんだかんだでそこの仲間入りし掛けててちょっとごめんって感じです。

*2
今更ながら、ホログラムはスターウ⚪︎ーズみたいな感じのヤツを想定。詰まるところヨコチチハミデヤンの行動はしっかり動画として観測出来ているワケ。横乳で皮膚呼吸している様子もバッチリである

*3
ホシノ談




もう少し丁寧に言葉回しとか考えたかったけど、ちょっと集中力が限界でした。

後で改めて読み返してみて変なところがあれば都度書き直します。
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