一応、ネタバレ踏みたくないって人の為に、踏むと後書きまで飛ばしてくれるリンクを用意しておくので、各自で自衛の方なさって下さい。
配慮はするので、私に文句はくれぐれもナシでお願いします。まぁ今更3章のネタバレで騒ぐ人も居ないとは思うんですが、念の為。
今回工夫した点がそこに凝縮されてるので可能なら見て欲しいですが、それを見なくても後々保管できる様に話は考えてあります。
これを見なかったから話についていけなくなる、なんて事にはしないつもりですので其処はご安心を。
前置きが長くなりました。すみません。
彼が手に持ったシールドが突然上下に開口し、間も無く目も開けていられない程の眩い光が放たれた──。
理事の見るからに鈍重な身体では回避は困難かに思われた。
が、しかし。
「──やってくれる、危なかったぞ……!」
「まぁ、死んではいないと思ったが、やはりか」
『しぶといヤツ!』
理事はまだ死滅してはいなかった。
身体は所々焼けたような傷は見られるが、致命傷を負ったという訳ではないらしい。さっきのビームを受け切った要因、間違いなく彼の左手に掴まれている、真っ黒に焼け焦げたロボット部下の身体がそれだろう。側に控えていた部下には可哀想だがそのおかげで上司の命を繋ぐ事が出来たと思えば、彼も悔いは無いだろう。
理事は部下の貴い犠牲で防ぎ切っていたが、その際に飛び散ったビームの余波までは管轄外だった。理事のように少ない手傷しか負っていない者も居るが、もろに食らった者は意識を失っている。背後に控えていた機械化部隊にも少なくないダメージが入っていると見て間違いはないだろう。
「おのれ……! もう許してはおかん! 貴様一人だけであったとしても、私の前に立ち塞がるのであれば容赦なく押し潰せ! 全隊、進め!」
「フフフ、ようやくやる気になった様だな。──さて、シロコよ。ここからはキミの出番だ。私が持ってきたシールドも、上手く使って見せろよ?」
『うん、任せて。シロッコは今まで通り、援護をお願い』
シロッコはやりたい事はやったらしく、さっさとシロコに身体の操作権を返していた。シロコも故郷を守る為の戦いという事もあり、彼女自身の士気も高そうだ。
理事の指示を受けて、一度は待機したカイザーの大群は一斉の攻撃を開始させて来た。小銃の連射や機関銃の射撃、戦車や榴弾砲からの砲撃なバリエーション豊かな攻撃を繰り出してくるが、グラシュティンはこれまでの物語を見てもらったら分かるように空中を飛行する能力がある。残念ながら小銃や機関銃のような豆鉄砲を食らっても、グラシュティンのボディはびくともしない。榴弾の直撃を喰らう事もシロッコが間接的にとは言え操作している以上、撃墜されるような事は万が一にもあり得ないだろう。
さらに。
「狙うまでもないわ!」
「消えてください消えてください消えてください消えてください!」
「くふふ〜、楽しい〜!」
「一丁前に数だけは多いな、全く……!」
あるタイミングから戦闘に参加していた便利屋68の面々が、伸び切ったカイザー部隊の横っ腹に噛み付いている。彼女達の武装構成上、それこそショットガンや爆発物などの広範囲武装を持っているハルカとムツキ、それに謎の力で敵を萎縮させられるカヨコなど、対多数との戦闘が得意な生徒が多い為、最前列からでも目に見える程に戦果を拡大していた。
先生が手を回して味方に引き入れたらしく、戦力の少ないアビドスの助けに大いに役立っている。まぁ、彼女達も金さえ貰えれば何でもやるっていう触れ込みでああいった事業(?)をやっているらしいし、彼女達にとっては収入にもなるし借りを返す機会にもなるしで一石二鳥だろう。
事前に先生からそれに関しての共有を受けたし、攻撃開始の合図は彼女達の準備が整った事が確認できた段階で行うと先生に伝えるように言ってあった。シロッコも遠目ながら彼女達が待機しているのも確認していたし、それを見た上で理事に向かって攻撃を仕掛けていた。
だからといって、圧倒的なまでの戦力比が覆った訳ではない。多少、本当に多少戦力比がマシになった程度である。
「数が多すぎる……!」
『幸い連中を殲滅できる火力がこちらにはある。ここで粘ってより長い時間連中を釘付けにできれば、カイザーの視線はこちらに向けられるだろう。そうすれば、向こうも動きやすくなるだろう』
「それは、そうだね!」
シロッコに答えつつも空中からシールドに内蔵されたビーム砲を浴びせ掛けると、それを避けられなかったロボット兵やそもそも避ける機動力を持っていない戦車などが大爆発を起こして無力化されていく。ここまで機動力に差があると最早鴨撃ちにしかならない。シロコの射撃の腕も初めて会った頃に比べると見違える程に上昇している──もっとも、初めからシロコの射撃は正確であったが。
シロッコと出会ってからの彼女はいつもの愛銃に加えて、彼の開発した長大な
シロッコの開発したシールドにはその構造上欠点がある。それは攻撃時にシールドが上下に開放してしまう都合上、攻撃が察知されやすい事。今回に関しては戦車のように見てから回避する事が出来ない程に鈍重な敵もいる為、この点に関してはそこまで気にする事でもない。
が、欠点はもう一つある。其方の方は少しばかり気にしなければならない点であり、攻撃の際にシールドを上下に開放しビーム砲門を露出するという機構に問題があった。内蔵された砲門は当然弾丸を受け止めるだけの強靭性を持ち合わせていない。多少の被弾は許容出来るだろうが、それでも此処に攻撃を受ける事は可能な限り避けたい。つまり、攻撃の際には弱い部分を晒さないといけないという事だ。その隙は一瞬なれど、その刹那をモノにできる相手と一戦交える時には大きな弱点になりかねないのだ。
ただまぁ。この世界では基本的に銃にしても大砲にしても実弾での攻撃がメジャーである事もあり、大抵の場合ビームの照射で弾を消滅させる事が出来る為、こちらもそこまで重たい弱点では無い。
それでもシロコは、いつか来るかも知れないその時の為に、なるべく隙を晒さない様に扱う事を意識しているらしい。彼女の基本的な運用方法は、左手にシールドを構えながら右手でARを持っている。グラシュティンの操作は気にする必要がないので、シロコの攻撃とは別口で機体が勝手に攻撃してくれている。その為、シロコ自身はそこまで敵を倒している感覚はないが、カイザーPMCの数は初めの頃に比べると見違える様に減っていた。便利屋の方も4人という寡勢ながら、持ち前のコンビネーションを発揮して奮戦しているようだ。未だの奥の戦場からは機械的な悲鳴と共に爆音が鳴り響いている。……この戦闘における弾薬や可燃物の費用は先生が全て持ってくれるらしく、いつになくテンションの高そうなヤツが一人居たとか居ないとか。
「何故だ! 何故押し通れない!」
「り、理事! ここは危険です! お下がりください!」
「後ろにも便利屋のカス共が居るのだろう! 下がれんではないか!」
「前に進むよりはマシです! 後退しましょう!」
その惨状を見せ付けられて憤慨する理事だが、近くに控えていた副官らしい人物に冷静に諭されている。やはり先程の問答もあって少しばかり冷静さを欠いているらしい、その上で自分が育て上げてきた軍勢がゴミの様に処理されているのだからイライラもしよう。その気持ちは分かってあげられるが、それもこれも全部相手が悪いとしか言えない。
確かに前に進むよりかは後ろの便利屋を突破して脱出を図る方がずっと良い。それは確実であり、頭に血が上った理事であってもそこは間違いなく判断出来ていた。
「おのれあの小娘め……! この借りは必ず返すぞ! 退がるぞ、着いて来い!」
「了解! お前達も着いて理事の護衛だ!」
年端も行かない小娘にやり込められた悔しさを、今は心の内に留めて撤退を始める理事。こういう時に感情的にならず抑える事が出来る事が、彼をこの位置まで押し上げる一因とも言える。どんなに汚く泥に塗れようとも、どれだけ辱められようとも、生きてさえいれば次のチャンスがある。その時を待てる人物、それが彼であった。そして、彼はそのチャンスを物にして何度も復活を遂げて来た。命ある限り、彼の邪心は消える事はない、何度も這い上がる。
死に物狂いで走った、ここまで走り続けるのは営業職以来であった。ロボットであっても営業は営業、誰でもやらねばならない歴とした仕事である。彼は長く苦しかった下積み時代を思い出しながら、当時のように必死に走り続けた。ビームの光に後ろを走っていた部下が焼かれようと、すぐ隣を走っていた部下が頭をSRに撃ち抜かれようと、前で先導していた親衛隊がいつの間に設置されていた地雷で吹き飛ばされようと。
彼は自分さえ生きていれば、その思いだけで走り続け。
「残ったのは……これだけか……っ!」
ついに彼は、戦闘区域を離脱。喫緊の命の危機からはなんとか脱した様だった。
ここに引き連れてきた多くの部隊は未だに戦い続けているだろう、すでに部隊を率いていた理事がその場に居ないことも知らずに。理事に従って撤退していた部隊は近くに居た僅かな隊員達と、彼直属の親衛隊に加えて副官、30人程度の集団だった。しかし、撤退を完遂した彼の機械の瞳に写るのは、僅かに7名であった。副官は弾傷も多く見られ息も絶え絶えであったが、それでも必死に着いて来た。親衛隊も始めは10人フルメンバー居たというのに、今はたったの2人だけ。後方に着いていた部隊も時々爆弾の衝撃で吹き飛んでいる、理事はその様子を恐怖に支配された表情で
見つめていた。
「だが、だが! 私は生きている! 生きてさえいれば、再起は図れる! こちらには小鳥遊ホシノもある、あの得体の知れない男の力を借りるのは業腹だが、まだ打てる手は残って──」
「り、理事! 大変です!」
生き残った事を喜ぶのも束の間、副官の慌てた声を苛立たしい様子を隠さず問い詰める。
「なんだ今度は! 一体何が大変なのだ!」
「カイザーPMC本部が何者かの襲撃を受けているとの事です!」
「なッ、何だと!? 一体誰が……! ──ッ! まさか、奴ら!」
アビドス砂漠に建設したカイザーPMCの実質的な本社と言って差し支えない基地、カイザーPMC本部基地。それが何者かに、いや、この状況で襲撃を掛けて来る連中など一つしか居ない。
アビドスだ、アイツらが本部に殴り込みを掛けてきたに違いない。ちょうど数も合わなかった事だ、連中は5人のハズで、そのうちの1人は既に手中に抑えている。さっきの戦場には1人、憎き便利屋も我々を裏切って向こうに着いた。ならば、本部には残りの3人しかいないハズ。それならば本部に残して来た人員だけでも十分に対処可能だろう。
徐々に冷静になって来た理事には、先程までは無かった余裕が生まれて来ていた。
「いや、アビドスだったとして、奴らの手勢は少ないハズ。十分に対処は可能だろう……。焦る事はない」
「しっ、しかし報告によれば、それだけでは無く……」
「なんだ! 報告は簡潔に! そして要点だけを話せ!」
「は、ハイ! PMC本部の北部から確認中ですが、ゲヘナの風紀委員長の介入を受けています! さらに遠方より、榴弾砲の援護砲撃が行われているとの事で、本部に駐屯している部隊に甚大な被害が出ているとの事! このままでは小鳥遊ホシノの身柄も取り返されるかも知れないと……!」
アビドスの本部襲撃に加えてゲヘナ風紀委員長の介入。さらに何処の不届き者か分からないが、砲撃支援を行っている連中が居る。全てが全て、我々の邪魔をして来る。何故だ、何故、ここまで邪魔をされるのだ! 理事の心は再び荒れ狂う暴風のように吹き荒んでいた。
「ぐ、ぐぐぐッ……! ──アレの準備をさせろ……」
「は?」
「アレの起動準備をさせておけと言ったのだ! このままでは終わらんぞ……、目にもの見せてくれる……!」
どこまで行っても、彼の心が諦めるという選択をとっていない以上、彼の中では負けてはいないのだ。
何かの準備をさせた理事は、後詰として接近しつつあった部隊と共に本部へと全速で帰還していくのだった。
先生の奇策。昨夜ホシノと会って話した時に、先生自身ビックリするほどの手際で彼女のスクールバッグにある仕掛けを施していた。
それはセリカの一件があってから、念には念をという事で用意しておいた発信機であった。連邦捜査部であっても法規には従わなければならない、その上では発信機の無断使用・設置は正直黒寄りのグレーであり、用意はしたが使う事がない事を祈っていた先生だったが、残念ながらその祈りは届く事はなかった。
しかし、これを使う事で生徒の危険を回避できるのであれば、迷わず使う事も先生は決めていた。
今回に限っては、その先生の決断が大いに役に立った。
早い段階でホシノの誘拐に気が付けた先生は、急いで対策委員会全員を招集。シロコ──シロッコの方だが──の確信を持った発言を受けて部隊を二つに分け、シロコが単独で攻め寄せて来るだろうカイザーを足止めし、その隙に残りのメンバーでホシノが誘拐されているカイザーPMC本部へと乗り込んで救出、という作戦を立てた。
途中、色々と誤算はあったが、それでもここまでは順調だった。
というのも、不思議な程に敵の姿が少ないように思えるのだ。確かにアビドスのメインストリートを行進しているカイザーPMCの大群をアヤネのドローンが確認しているが、予想ではそれでも相当数の駐屯部隊が残っているハズだった。しかし、やってみればどうだ。確かに基地内に侵入してから交戦は何度かしたが、それにしても抵抗が薄過ぎる。何か裏があるのかと思いたくなってしまう程に。
先生の疑問は、割とすぐに解消される事になる。
「先生、来ていると思った」
“空崎さん!? ”
「ゲヘナの風紀委員長さんがどうしてここに?」
「……そういう約束だから」
「約束? それってどういう──」
「無駄口は後、エンゲージ!」
“みんな! 9時方向から敵影! 空崎さんも指揮下に入ってくれるかな? ”
「分かった、先生の指示に従う」
思わぬ闖入者である空崎ヒナ、ゲヘナを取り締まる風紀委員会の長がどうしてこんな所に。そう聞きたい所だったが、タイミング悪くカイザーPMCが小隊規模で接近しているとヒナが気付いたタイミングと同じ時に、先生の所持しているシッテムの箱から警告が上がって来た。ヒナを一時的に指揮下に加えた対策委員会はそのまま戦闘行動へ移っていく。
ヒナの実力は元々凄まじい物だと予想はしていた、それこそ、あんな年がら年中
そんな彼女が機関銃を扱って火力を発揮しつつ、素早く場所を変えながら多角的に攻撃を加えていく姿は、正に戦場の女神のようだ。
「残敵無し、クリア」
“お疲れ様、みんな。空崎さんのお陰で楽に終わったよ、ありがとう”
「っ……改めてお礼を言われる様な事じゃない、これくらい」
「いえ、この件はアビドス対策委員会として、後日お礼をさせて下さい。私達にとっては、それだけの事なんです」
「……その気遣いは有り難いけど、今の私はゲヘナの風紀委員長じゃなくて、只の空崎ヒナだから。そういうのは、本当に必要ない」
彼女の立場が今の発言で、少しだけ分かってきた先生。
あくまでも、今回の介入はゲヘナ学園風紀委員会としての名目ではなく、只の空崎ヒナとして駆けつけたという事。それは、この一件を学園間の貸し借りにはしない、ゲヘナ学園が今回の一件に介入したという証拠を残さないための措置。そういえばと、改めてヒナの姿を確認する先生。先日見たようなゲヘナの制服ではなく、色合いこそ黒で似通っているが彼女は制服ではなく私服であった。その態度こそが、何よりの答えだろう。
「私の事は良い。小鳥遊ホシノが監禁されているんでしょう? 早く行ってあげた方がいい」
「そこまで知ってる……」
“みんな、行こう! 空崎さん、ここを任せても良いかな? ”
「問題ない、それが私の役目だから」
先生とアビドス達がホシノを恐らく監禁しているだろう一際大きな建物に入って行ったのを確認しつつ、ヒナはその入口の前に陣取った。その正面には疎ながらカイザーの兵士たちが見えている。
「頼まれ事と言っても、面倒ではある」
ヒナは再び得物を両手に構えると、深く溜息をひとつ。そして──
「だから、手早く終わらせる」
──散発的な攻撃を始めたPMC連中に、その報いを受けさせるのだった。
ここより下にアビドス3章のネタバレを少し含みます。回避したい方はこのリンクを踏んで下さい。後書きへ進みます。
場で聞くのはタイミングが悪くて
った
けれど
で欲しい
論先生にも
前提としてもゲヘナの話も多少掻い摘ん
でしないといけない
している事もあって、ほぼ忘れられた存
在なの
の事を知っている人間は少なければ少な
い程良い
って事にしておく
たりはある?
たら報酬を貰えるって話をしたの、覚え
てる?
許可が降りていないから、もう少し時間
が掛かると思うけど
って欲しい事がある
スだけじゃ手が足りない
ホシノが誘拐されるなんて
ナの言葉じゃないけど、礼儀として
今回は色々使ってみました。
ハーメルンでこういう機能を使った事がある方は分かってくださると思います。
コードがゴチャゴチャしすぎて頭がおかしくなりそうでした。それでも、見栄え的な意味でも機能を使いこなせたという意味でも、個人的に満足度は高いです。
さて。
一旦の終わりまで残り数話です、最後までお付き合いの程よろしくお願いします。
なるべく遅くならないうちに仕上げたいとは思っています。
どっちが先に見たいか
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パヴァーヌ
-
エデン