シロコとシロッコ   作:メイショウミテイ

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前書きで書く事が余りありません。

なんとか面白い話を書こうとしてますが、どうしても説明が多くなったり人物の感情にまで描写が入っていかないです。

今更ながら、本当に難しい。


ミレニアム編 1

「それで、レポートを持って来てくれたんだったね。早速見せて貰っても良いかな?」

 

「……ん」

 

 

 自己紹介と用向きを伝えて、とりあえずは部室の中へと入れて貰えたシロコ。見た感じクールっぽい雰囲気なのに、何だか抜けている? ような印象を受ける、何とも不思議な感じだ。

 

 応接間……と呼ぶには少々、いや大分散らかっているスペースへと通され、早速本題を切り出して来たウタハ。楽しみにしていたのか心なしかウキウキしているらしい、シロコは好意的な感情が受け取れるので少し安心している。

 

 引き延ばす理由も無いので目的の品物をシロコが手渡すと、一言ありがとうと言い残し暫しの間アヤネが作ったレポートに目を通すウタハ。さっきの爆発事件の件はなかった話になったのだろうか、所々綺麗な髪の毛が煤で汚れている事は気にせず本題に入ってしまった。

 彼女の背後ではエンジニア部の部員が爆発した件に関する原因究明を進めていたり、黒く汚れた部室を掃除していたり、損壊した部室の現状復帰が着々と行われていた。

 何だか手慣れていると感じたシロコだが、それもそのはず。エンジニア部においてこんな感じの爆発事故が起こる事は珍しい事ではなく何なら日常茶飯事、こういった事態への対応には自然と慣れてしまっているのである。

 

 テキパキと壊れた部室の修繕を行なっていく統率の取れたエンジニア部の作業を見つめていると、レポートに目を通し読み終わったのかウタハが顔を上げる。

 

 

「凄いね……とても読み易いレポートだ。軽く読んだだけでここまで内容を伝えられる文章を書けるとは思っていなかったよ。また後でじっくりと読み込ませてもらうよ」

 

「そう言ってくれると、アヤネも喜ぶと思う」

 

「これなら、こちらからテスターを依頼するのも良いかもしれないね」

 

 

 自分の後輩が正しく評価されて、それが褒められているのは良い気分だ。それに良い話も聞けた事だ、アヤネにとって良いお土産話になるかもしれないと、シロコの脳裏にひらめきが走る。

 

 

「……それって、報酬とか出たりする?」

 

「勿論。こちらから依頼する以上、報酬を用意するのは当然だよ」

 

「もしそういう話があったら、是非アビドスに回して欲しい。正直言うとアビドスにはお金が無い、資金を得る為の手段は沢山欲しいから」

 

「……ああ、そうか。研究ばかりで他校の事情には疎い私だが、それでもアビドスの事情は分かっているつもりさ。──分かった。これも何かの縁だ。何かあれば頼らせて貰うよ」

 

「ありがとう。そうしてくれると助かる」

 

 

 これで委員会の皆にわがままを言って遠征を許して貰った事への言い訳が立つという物だ。いや、お土産はそもそも用意するつもりだったが、それとは別で美味しい話も持って帰る事が出来るとは正に僥倖という物だろう。

 

 少し脱線していたが、これで今日やっておかなければならないタスクは済んでしまった。明日から始まるミレニアムプライスを全力で網羅する為に、今日は早めに休息を取って調子を万全にしておいた方がいいだろう。一応アポイントは取ってあるとは言え、客の身分でそう長居するのも忍びない。

 彼女が一言残してエンジニア部の部室を後にしようとした時に気付くだろう、さっきまで話していたウタハがまんじりとシロコを見つめている事に。

 

 

「どうしたの?」

 

「ああ、すまない。しかし、これはマイスターとしての性でね。気になった物はじっくりと観察し、その構造や仕組みを知り尽くしたいと思う人間なのさ、私は」

 

「……えっと、つまり?」

 

「君が腰にぶら下げているその銃、これまでに見た事がない形状だと思ってね。もし良ければ、少し見せて貰っても良いかな?」

 

「あー……えっと」

 

「勿論無理強いするつもりは無いんだ。駄目なら──」

 

 

 駄目なら構わないと言いつつも未練がましく何とかシロコの銃を見せて貰いたいと御託を捏ねているウタハ。その様子を他人事のように見つめながら、シロコは銃の製作者であるシロッコに確認を取っていた。

 HML製作の経験と実績を糧に、この世界でも小型されたビームライフルの開発を試みていたシロッコ。ここ一ヶ月間は委員会そのものがバタバタしていたのはシロッコにも関係しており、そのお陰で彼にとってもゆっくり試行錯誤する時間が確保されていた。当然シロコにも許可を得て夜間に身体を使わせて貰っていたので、ミレニアム遠征の前々日にようやく人間が扱えるサイズにまで小型化されたビームライフルの試作品がこの世に誕生した。*1

 

 という訳で今回の遠征に間に合ったのならと件の試作品を持ってきたのだが、それに目敏く気づいたのがウタハという訳で彼女の好奇心が目線に表れていた。別にニュータイプ云々関係無しにじっと一点集中で見詰められれば、誰だってそれに気付くし何故見られているのかも気になる物だ。

 

 

「(どうするの?)」

 

『この世界では恐らく実用化されていない技術が詰め込まれているのがコレだ。余り誰かに見せる事は避けたいが、ここで一つ貸しを作っておく事も良いかもしれん。とはいえ、見せた程度で私の培って来た技術が理解出来るとも思えん。それ以上に、これを見せて彼女がどのような反応を示すのか、技術者としてそちらの方が気になる』

 

「(……えっと)」

 

『何はともあれ、だ。先ずは彼女たちが開発した物を見せて貰わねば、そもそもキヴォトスの最先端を行くという彼女たちの実力が分からない。これでは話の前提が組み立てられん』

 

「(エンジニア部の発明を見せて貰ってから、って事だね)」

 

『後は分かるな?』

 

「(ん)」

 

 

 シロッコは彼女たちが生み出した成果をご所望らしい。自分の作った物はこの世界に重大な影響を及ぼしかねない、だから先にお前達の開発を見せて貰いたい、と。自分の技術が再現可能なレベルまで発展しているのであればここで見せてしまうのは危険だろう、つまりはその逆であるならば許容出来るラインなのだが。己の自己顕示欲を満たしたいという邪な思いが混じっているにしても、今の彼にキヴォトスを乱すつもりが無い以上わざわざ危険な択を選ぶ事はあり得ない。

 

 彼が危惧は正しい物だが、彼は一つ見落としている事があった。理解していたが自然と頭の中から抜け落ちてしまっていた事。

 

 

 それは彼女達(エンジニア部)もシロッコと同じく開発・設計に携わっている()()()であるという事だ。

 

 

「……えっと、失礼かもしれないけど、先にエンジニア部でどんな物を開発しているのか見せて貰えたりはする?」

 

「それは構わないよ。……コトリ、来てくれるかい!」

 

 

 そう言ってウタハが呼び出したのは、大胆にシャツの胸元のボタンを解放しあろう事かネクタイをその豊かな胸の間に挟んだままの生徒であった。キヴォトスの倫理観は一体全体どうなっているのかと小一時間問い詰めたくなる程に破廉恥かつ暴力的な装いの彼女に、同じ女性であるシロコも若干圧倒されて一歩後ずさる。

 

 

「シロコさん、紹介するよ。彼女はコトリ、豊見コトリ。今年エンジニア部に入って来た一年生だよ」

 

「ご紹介に預かりました、豊見コトリです! 説明や解説が必要なら、私にお任せください!」

 

「ん、私は砂狼シロコ、よろしく。それで──」

 

「彼女を呼んだのは、さっきも自分で言っていた通り、解説要員として呼んだのさ。それじゃ、こっちに来てくれるかな、案内するよ」

 

「知りたい事は何でも懇切丁寧に解説しますので、何でも聞いてくださいね!」

 

「ん、ありがとう」

 

 

 そうして、突発的に始まったエンジニア部の発明コレクション鑑賞会。一体何の役に立つのか分からない発明から、実用性抜群の優れた発明、市場でも見かける発明など、その種類は多岐に及んだ。ウタハが手ずから設計・開発したという椅子──というか、最早タレットと言い換えても差し支えない『雷ちゃん』は、彼女の発明の中でも最高峰の発明品らしい。コトリの解説が他の発明品に比べて長かったように感じる事も理由の一つだが、シロッコもこれには素直に賞賛の声を挙げていたのだ。

 

 

『……ふむ、中々出来ている。完成度が高いな』

 

「(そうなの?)」

 

『車輪が付いている事で自走しての位置変更が可能。人の動きを感知して追従する、射撃指示を理解出来るだけの知性を持ったAIを搭載しているのも良い。ロボットでありながら、単純に人間代わりの戦力として火力が期待出来る。……何故椅子を作ろうとした結果に自走機能が付けられ、挙句機銃が取り付けられるのか、その発想は正直理解出来ないが……』

 

「(そ、そう……)」

 

 

 必死に理由を考えていたのか苦悶の表情を浮かべていたが、結局彼自身の中で納得出来る理由付けは生まれなかったらしい。

 

 しかし、その後も彼には理解出来ない開発が続けて紹介されていく。タバスコを噴射出来るように改造された銃火器、戦闘機能が付与された洗浄便座など、最早何を考えていたらそういう発想になるのかとこれまた小一時間問い詰めたくなるような奇妙な品物が続く。加えて、ロマンと称してやたらと自爆機能を搭載させたがるのは何なのか。*2

 

 その癖、安全管理には細心の注意を払っているのが全く噛み合わない。

 

 

「ただただ注文される物だけ作っていても、面白くないじゃないか。ね、コトリ」

 

「ロマンは追い求めてこそです! それこそが発展の近道ですから!」

 

『……夢のような目標を持って行動するのは、人間として当然の行動原理だが……』

 

「……うーん、そっか」

 

 

 声を揃えて自信満々にそう主張するウタハとコトリ。エンジニア部でもこの考えが定着というか、共有されているのか。そう思うと少し心配になってくる。

 彼女達の発言に対して理解を示したがイマイチ納得いってなさそうなシロッコと、理解の及ばない領域に飛んでった話題に付いていけなくなったシロコ*3。そんな二人(一人)の様子を気にする事なく、どんどんと自分達の発明品を紹介してくれるウタハとコトリは楽しそうだった。

 

 彼女達の話や他のエンジニア部員達が駄弁っている内容を聞く限り、今年に入ってからエンジニア部では宇宙戦艦を建造しようという壮大すぎる計画が動いていたらしい。何を隠そう、さっきの事件もそれに関連しての事らしいが、それに興味を示したのはやはりシロッコだ。

 

 

「宇宙戦艦を作るって計画があったって、本当?」

 

「ああ、本当だよ。最も、武装を一つ作った時点で今年分の予算がなくなってしまってね。その計画は一時凍結といった所かな」

 

「なので、アビドスの皆さんが依頼を出してくれてとても助かっていまして……。あのドローン開発を依頼してくれた事で、多少なりとも資金が出来ましたし」

 

『是非とも、その宇宙戦艦に搭載する予定だった武装も見せて欲しい所だが。見た感じ見当たらんな……?』

 

 

 エンジニア部の部室は広いが宇宙戦艦に搭載する事を考えた武装ともなれば、大型の兵器だと予想できるだろう。であれば、たとえエンジニア部の部室が建物一棟丸ごとを使った巨大な物であっても、簡単に見つかりそうな物だがその影すら見えないのは不思議だった。シロッコも同じように考えているようで、不思議そうに呟いていた。

 

 おそらくその兵器こそ、シロッコにとっての一つの判断基準になるだろう事をシロコも何となく分かっていた。

 

 

「えっと、その武装も見たいんだけど……」

 

「アレは私達の技術の粋を結集して作られた、いわば今のミレニアム部の最高傑作とも言える物だ。是非とも見せてあげたい所だけど、今はここにはないんだ」

 

「壊れちゃったって事?」

 

「いえ、そういう訳ではないです! とりあえず設計図通りに作ってみて、正常に動作はしたんです。その上で宇宙戦艦まで作れる予算が無くなってしまったので、ミレニアムの生徒に譲ったんです」

 

「……なるほど」

 

 

 エンジニア部の手元を離れているのであればここにはない理由も納得だ。しかし、それではこちらも引き下がれない、シロッコは悪いとは少しばかり思いつつもしつこく要求を伝える。

 

 

『既に関係のない個人の所有物というのなら、無理強いも出来まい。設計図だけでも見せて貰えないものか』

 

「設計図とか開発資料とか、そういった物を見せて貰えたりはする?」

 

「今後の研究の糧になる物だからね。しっかりと残してあるよ」

 

 

 シロコがそういう要求を出してくると予想していたウタハは、先んじて一連の資料を用意していた。受け取ったシロコは適当に読み進めてみるが、まぁてんで分からない。当たり前である。

 が、感覚を共有しているシロッコはその資料を見て、彼女達に対する評価を一気に改善させた。さっきからロマンだ何だとふざけた事を抜かしているが、確かな技術力を保有している団体だと確信が持てた。これを開発するには様々な前提技術が必要になる、伊達にミレニアム最高峰の技術力だと言われてはいないらしい。

 

 

『シロコ』

 

「(決まった?)」

 

『面白い物を見せて貰った以上、こちらも礼は尽くそう』

 

「(分かった)」

 

 

 彼のお眼鏡には適ったらしい。どういう基準があったのかはシロコにも分かっていないが、それでも彼が満足しているのならいいかと、案外適当に考えていた。彼が作った物に対してどうこう言うのも違うだろうとシロコの考えもあるし。それでも、彼女の心の端っこには、少しばかり靄が生まれつつあった。

 

 

「ありがとう、色々見せてくれて」

 

「礼には及ばないとも。それで、私達は信用出来そうかな?」

 

「うん。大事に扱ってね、大事なモノだから」

 

「勿論。私達エンジニア部の誇りを掛けて、丁重に扱うと誓うよ」

 

 

 力強く断言したウタハ。新たな知識を獲得する事に貪欲な彼女の事だ、きっと問題ないだろう。その言葉と態度を受けて、試作品のビームライフルを引き渡したシロコ。Eパック*4という宇宙世紀ではメジャーな方式を採用したそれは、良くも悪くも一般的な出来前だった。シロコはともかく、シロッコはその出来前に対し満足していない。彼女には話していないし彼自身も期待していないが、今回のライフル貸与には改良の糸口をエンジニア部から得られるかもしれないと僅かながらに期待している節もあった。

 

 

「いつ受け取りに来れば良い? 一応ミレニアムプライスが終わるまでは、こっちに居る予定だけど」

 

「時間一杯調べたい所だけど、流石にそれは悪い。そうだね……ミレニアムプライス二日目、つまりは明後日また此処に来てくれるかい?」

 

「ん、了解」

 

『元に戻せるなら分解してもいいし発砲も許可すると、彼女達に伝えてくれ』

 

 

 何を考えているのだろうか、シロッコは。この技術が危険だと言いながら、見せびらかす様な事をしている。シロコは少し疑問に思うが、すぐさま何か考えがあっての事なのだろうと思い至る。違和感を感じつつも、エンジニア部には彼が言っていたような言葉を自分のソレに置き換えて伝えていく。

 

 

「……元に直せるなら分解しても良いし、数発だけなら撃っても良いよ。でも、壊さないでね」

 

「本当かい!? それはありがたい! 必ず元通りにして返すとも」

 

「見た事ない形の銃ですし、内部構造も気になってたんです! ありがとうございます!」

 

「……ちょっと、いや結構危険かもだから、本当に気を付けて」

 

 

 何度も何度も釘を刺すように警告を残してからエンジニア部の部室を去ったシロコだが、本当に大丈夫なのかと少しばかり不安が拭えない様子だ。シロッコはそんな彼女を理解した上で放っておく事にしたらしい。一体彼には何が見えているのか、何を考えているのか。すっかり分からなくなってしまっていた。アレだけ力の使い方に念を入れて来たシロッコなのに、エンジニア部には直ぐに信頼を寄せて武器を預けるなんて。シロコは何とも良い表せない気持ちに苛まれていた、その気持ちの正体も分からないまま。

 

 今のシロッコは普段では見れない程に楽しそうなのだが、それを素直に受け止められないモヤモヤとしたシロコが残されていた。

 

 

 

*1
オーヴェロンのビーム・ショット・ライフルによく似ている。というか最早その物

*2
死ぬ程痛い

*3
宇宙狼

*4
原典のオーヴェロンのライフルがEパック方式かMS本体からエネルギーを抽出する方式なのかは不明。例によって本作の独自設定になります。でも、バトオペでは弾数制なのでまぁ良いかなって感じ




そういえばと思って、先日コメント付き評価とか確認したら結構来てました。

有難いです、相当前の物とかも今更気付いたんですけどね。

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