シロコとシロッコ   作:メイショウミテイ

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最近二週間に一回ペースに落ちている習慣をなんとか戻したいと考えながら、今回も長くお待たせしてしまいました。色々描きたい場面を出力したくて色々試行錯誤したり、描いていた場面が途中で全部消えて進捗がゼロになったり、本当に色々ありました。

後はMADTOWN見てました。すみません。



エデン条約編 1

 シロッコにグラシュティンの操縦を任せ、シロコ自身は未だに引かない頭痛と悪寒になんとか耐えていた。シロッコが言うように、原因は遠く離れたトリニティで行われていた『エデン条約』の調印式、そこで引き起こされた謎の爆発事件──アリウス分校によるテロによって被害を負った生徒達が感じている痛みや苦しみ、その他諸々の感情の波動を受信してしまった事で、自らもその感覚の一端を共有してしまっているのが良くなかった。

 

 本来であれば感覚を受信する強度を下げるか、もしくは受信するチャンネルそのものを閉じてしまうかして、他者の感覚を感じ取り過ぎない様に対策を取る物だが。シロッコ自身想定が甘かったと自責の念が絶えないが、しかしここまで大きな被害を齎す様な大事件が起きてしまうとは思っていなかったのも、また事実であった。

 

 ニュータイプであっても未来が読める訳ではないし、どこまで行っても人間としての骨子は変わる事はない。逆立ちしたところで、どうあっても人間が神様にはなれないのと同じ様に。

 

 

『調子はどうだ、シロコ。少しは良くなったか?』

 

「……だ、だめ……。痛みが、引かない……。寒気も酷い……けど、少しずつだけど、慣れてはきた……」

 

『……すまない、これは私の失態だ。今を思えば、他人の感覚を感じ過ぎない様にシャットアウトする方法も教えておくべきだった』

 

「そんな事は、良い……。後どれ位で、着きそう……?」

 

『十分かそこら、といった具合だ。最大戦速で移動しているから身体に掛かるGも相当だが、なんとか身体を休めておけ。眠れるのならそれに越した事はないが、眠れなくとも目を瞑って何も考えない様に気を落ち着けておけばいい。それだけでも多少は変わってくる』

 

「ッぅ……、ありがとう……」

 

 

 彼の言う通りに、シロコは目を閉じて再び深呼吸を繰り返し始めた。

 

 それでいい。そうしていれば多少なりとも、ほんの少しであっても改善してくる。

 

 そうでもしてくれなければ、とてもとても戦わせるなど出来ない。いざとなれば、主導権を奪ってでも──。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 この世の地獄とは、ここにあったのか。そう言わんばかりの惨状だった。

 

 調印式が行われる筈のトリニティ大聖堂は、元の姿など見る影も無く無惨に破壊されてしまっている。弾道ミサイルによってトリニティ総合学園の上空にて爆発を起こし、学校全域に爆発と衝撃によって大きな被害を齎した。

 

 長い歴史の中で醸成されて来たトリニティの古き様式で建てられた大聖堂。シスターフッドが毎朝掃除をして、毎週のミサや説教を求める生徒達が集う、間違いなくトリニティの顔になる建物。

 

 それが、このザマである。

 

 

「い、痛い……、痛い……!」

 

「燃えてる! 服が燃えて──熱ッ! 誰か!」

 

「な、何なの、このガスマスクの──ギャっ」

 

 

「……ターゲットではなかった。先に進むぞ」

 

了解(ラジャー)

 

「このまま進むぞ。着いて来い(フォローミー)

 

 

 倒れ伏すトリニティとゲヘナの生徒達に一顧すらせず、その場を後にしていくガスマスクの集団。敵意に満ちた射抜くような視線は、ただ一点にのみ注がれていた。

 

 空崎ヒナ。

 

 彼女を打倒する事が彼らの部隊に課せられた任務であり、それが成せなければ生きる意味はない。

 

 マダムによって示された教義をただ実行する事以外に、彼女達に選択肢は与えられていないのだから。

 

 

 

 

 

「ぐッ……! ぅああ!」

 

 

 倒れた身体にのし掛かるガレキを特異な羽を動かして器用に退けていくのは、ゲヘナ風紀委員会を束ねる空崎ヒナだ。

 

 彼女の様子もまた、他のトリニティ・ゲヘナの生徒達と負けず劣らずの傷だらけ状態なのだが、そもそもの実力やポテンシャルが一般生徒とは一線を画している。この程度の怪我であれば、まだまだ戦闘は可能なレベルだ。身体のあちこちが瓦礫によって出血していたり青痣になっていたり、羽だって無理に動かしたせいでボロボロになってしまった。それでも、まだやれる。

 

 

「先生……! 何処かに居る筈、探さないとッ……!」

 

 

 ヒナは弱音など吐かない。風紀委員長として、先生に誇れる自分で居たいから。先生の前では、頼れる姿を見せていたいから。

 

 

「なんとしても、先生だけは……!」

 

 

 携帯には多くの通知が寄せられている。同じく現地に帯同してきたアコやイオリ、チナツ達他の風紀委員達から連絡が来ているのかも知れないが、それらを確認して返信するような一刻の猶予もない。先生はキヴォトス外からやって来た普通の人間にすぎない、さっきのヒナの様な瓦礫に下敷きになってしまえば、きっと長くは持たないと簡単に推測が立つ。

 何よりも先に先生を見つけて安全な場所に保護しなければ、キヴォトス全体にとって良くない事に……いや、違う。

 

 そんな立場とか良いとか悪いとか、今はそういった事はどうだって良い。ただ死んで欲しくないから、だから行くのだ。

 

 きっと、風紀委員会のみんなには失望されるだろうな。こんな非常時に委員長が部下を助ける事なく、先生を優先して救助していたのだから。組織の長としてまず優先されるべきは先生の筈なのに、そうでなければ風紀委員会のように組織だって活動している意味がない。

 

 

「(私は、風紀委員会よりも、先生を選んだ。選んでしまった)」

 

 

 葛藤があったのは勿論。それでもヒナは、先生を助けると決意した。

 

 風紀委員会(みんな)なら、この状況からでもなんとか逃げ延びられると信じている、というのも判断した理由にもなるが、結局のところはそれも言い訳に過ぎないのだろう。どのような考えや葛藤があったにせよ、最後に選び残った物がたった一つの真実なのだ。

 

 自分の中で先生に対しての様々な感情が渦巻いている。真夜中の哨戒にもわざわざ予定を合わせて付き合ってくれた先生、本当に自分の事など後回しにしているのだと考えられる。普通夜間しか時間が空けられないとか、仕事が終わらないなんて、とても胸を張って言えるような事ではない。そんなヒナの為に先生は時間を割いてくれる、親身になってくれる、隣に立ってくれる。先生自身の仕事が山積されている状況であっても、それでもヒナの事を優先してくれていた。

 

 そんな先生だからこそ、惹かれてしまったのだろうか。

 

 

「……よし」

 

 

 傍に転がっていた機関銃のチェックを簡単に済ませ、傷付いた身体のまま事前に教えて貰っていた先生の居場所、大聖堂があったとされる場所へと駆けて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 グラシュティンから見える光景は、惨憺たる物だった。

 

 何処もかしこも火の手が上がっていて、その上謎のガスマスク集団が我が物顔で学園内を徘徊している。そしてトリニティ・ゲヘナに限らず、見掛けた生徒達に問答無用で攻撃を仕掛けていた。間違いなく、彼らが今回の事件を起こした下手人だろう。どういう目的でこの場を襲ったのかは不明だが、そんな理由の話など今はどうでも良かった。

 

 

『起きろ、シロコ。トリニティ上空だ』

 

「……ん、うぅ、だいぶ落ち着いた……かも」

 

『このような状況では、意識を保っている生徒はそう多くない。生き残りもあのガスマスク共が殲滅している、意識を感じられる人間はそう多く残っていないはずだ』

 

「そっか……、そういう事。誰かの感じた思念を感じ過ぎたって事?」

 

『そうだ。こんな状況でもなければ詳しく説明する所だが──どうだ、誰か感じられるか?』

 

 

 シロッコとの会話の最中であっても、シロコは意識を集中させて誰かしら自分の知っている人間を探しに掛かった。近くに居るのであれば、きっとヒナであっても先生であっても、だれか見つけられるはずだ。

 

 しかし、思うような成果は挙げられない。それもそうだ、多くの生徒達は意識不明の状態だ。そんな彼女達を感じる事は、どうやっても出来ないからだ。

 

 

「……ダメ、みんなの意思が弱くなってる。これじゃ──いや! 何人か見付けた、けど、これは……」

 

 

 依然として強い力を放ち続けている生徒……なのかは不明だが、誰かしら動き回っている人間を見付けた。一人で動き回っている者、数人で固まってゆっくりと移動している者、素早く行動している集団、その他にもちらほら強い力を放っている者がいる。

 

 

『敵の可能性が高いな。今の状況で大きな力を保ち続けているという事は、この惨状の被害を受けていないという事だ。そうでないとするならば、元から強い力を持っていた者か』

 

「手当たり次第で、当たってみる!」

 

『……くれぐれも無理はするな。キミの身体は万全ではない、峠を越えたとしても危険な状況には変わりない。戦闘はなるべく避けろ、グラシュティンとの合体も負荷が大き過ぎる故に禁止だ』

 

「……分かってる」

 

『よし。では、向かうぞ』

 

 

 あれは誰なのかの判別までは付かないが、それでもこの状況で戦い続けるという事は余程の実力者か、もしくはこの状況を引き起こした下手人連中だろう。

 

 眼下では未だに続く散発的な銃撃戦が見えている。傷だらけのトリニティ生徒達が何処のとも知れない制服を着込んだガスマスク生徒達や謎のハイレグ色白ガスマスク集団と交戦しており、トリニティ生徒達はその数をみるみると減らしている。なんならゲヘナの生徒連中がその背後を突いており、トリニティ勢はさらに倍の勢いで殲滅されている。三つ巴の戦闘から一つの勢力が脱落したのなら、次に起こるのは残った二勢力の全面戦争である。

 ゲヘナの連中も傷だらけだがなんとか奮戦して敵戦力を減らし続けているのだが、謎のハイレグ色白ガスマスク集団は倒しても倒してもすぐさま復活して戦闘を継続している始末。キヴォトス生徒並みに硬く倒しても勝手にリザレクションして戦闘を続けるとは、なんというクソゲーなのだろうか。

 

 

『見たか、シロコ』

 

「何なの、あいつら……」

 

『最早人間ではない、一種の概念生命体なのだろうな。理屈は不明だが、アレを生み出している仕組みが何処かに存在しているのだろう。眼前の敵に対処するより先に根本を断つ必要がある』

 

「あんなのが居たら、いくら強くてもいずれは……!」

 

『想像に難くないだろうな。急ぐぞ』

 

「ん、お願い!」

 

 

 シロッコの推測が正しいとしたら、アレとまともに取り合うだけ無駄という事になる。

 

 グラシュティンの上から地表を見下ろしていれば、そんな特徴的な集団が嫌でも目に付く。見付けられただけでも片手を超える数の部隊が交戦ないしは徘徊していた。あのままトリニティとゲヘナの生徒を殲滅し尽くすつもりのだろうか。

 

 嫌な想像ばかりが働いてしまう頭をどうしても抑える事が出来ないまま、シロコは取り返しの付かない状況になっていない事を祈るのだった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 ツルギのショットガンが数える事も嫌になる程に、謎のハイレグ色白ガスマスクを打ち倒した頃。

 

 正義実現委員会のハスミやツルギ、シスターフッドのヒナタに護衛をお願いしてトリニティからの脱出を図っていた先生だったが、その前にはどういう訳か敵対的な集団が立ち塞がっていた。

 全員揃ってガスマスクを被っている為にその顔を拝む事は出来ず、彼女達が着込んでいる装備のどれを見ても覚えのない校章が刻まれている。先生はキヴォトスにおける有名な学校や規模の大きい学校に限らず様々な学校から寄せられる支援依頼に応えてきたが、そんな先生であっても知らない学校の生徒が自分たちに襲い掛かっている。

 

 切れた額から滴り落ちる血を拭い、周囲を火災の熱気と煙に包まれながらも、必死に思考を回していく先生。既にシッテムの箱はバッテリー切れで使えず思うように指揮が出来ないとしても、それでも出来る事はあるのだからそれをしない理由はないのだ。

 

 

「倒しても倒してもキリがありません……」

 

「せめて、先生だけでも脱出させないと……!」

 

 

 一人敵中で奮戦しているツルギにも若干翳りが見えている。先程までの戦場を駆けずり回って撹乱するような縦横無尽の闘いぶりではなく、確実に敵を一射一殺する立ち回りに変化していた。戦っていれば嫌でも気付くだろう、敵を倒しても復活してしまうという事に。

 

 ただでさえ包囲化にある先生達は、まずこれを突破しないと先がない。しかし、頼みのツルギも攻撃を空回りさせられている。

 

 向こうからの攻撃は喰らえば痛く響くというのに、此方からの攻撃は効果がないというのは困った状況だ。そんな敵に対して全力で戦っていては長くは持たない、ツルギもそれを理解した上で戦闘スタイルを変化させたのだろう。突破よりも持久を優先した戦い方を意識し始めた事で安定はするようになったが、それでは状況は変わらないままだ。

 

 どうしようかと苦悩する先生の目の前を、突如として眼前をプラズマが迸る。この攻撃、先生は知っていた。

 

 

「こっち! 突破口を開く!」

 

 “ヒナ! ”

 

「風紀委員長、ですか……!」

 

「……ヒヨリ、抑えられなかったの?」

 

 

 そこに現れた思わぬ闖入者、空崎ヒナが包囲を一点突破して先生の下へようやっと辿り着いた。これまでも偶発的な戦闘があったのか、所々羽が傷付いていたり皮膚が焼け爛れていたりと彼女自身も相当な手傷を負っているように見えるが、それでもゲヘナ最強戦力は伊達ではない。

 

 

「先生! 正義実現委員会も! 時間がない!」

 

「……、いいえ。私達はここで敵を抑えます。ツルギ、ヒナタさんも、良いですね?」

 

「問題ない、退路は私が切り開く」

 

「はい。ここで先生を失う訳にはいきません……!」

 

 “そんな……、何、言ってるのハスミ! ”

 

「業腹ですが、ゲヘナの風紀委員長の言う通り時間がありません。ダメージはともかく私達は疲労的な意味で持ちません、最早脱出は叶わないでしょう」

 

 

 確かに傷の具合で言えば今しがた飛び込んで来たヒナよりもハスミ達は軽傷だと思われるが、その分ずっと戦い詰めで判断力や精神が磨耗していた。ただ敵を倒すだけの戦闘ではなく、先生を守りながら戦わなければならない状況では、心の持ちようが違ってくる。常に先生の状態やそのポジションを意識しながら、それを直ぐにカバー出来る様に立ち回らないといけない。伏兵があっても良いようになるべく離れる訳にもいかないのでは、数も思うように減らせない。

 

 いつもは遠くから離れた場所で指揮を飛ばしている先生も、シッテムの箱によるサポートがなくては有視界で情報を認識して行う必要がある以上、あまり離れている訳にもいかない。そのクセ、敵が大群と来ては戦い難い事この上ない。おまけに、倒しても無力化できず復活してしまう。

 

 それでも復活している間は攻撃が来ないし、生身の敵生徒達はちゃんと攻撃が通って倒せる。抑え切れない事はない。

 

 

「っ……先生! 早く!」

 

 “……みんな! きっと、絶対助けに来るから! ”

 

 

 ツルギが突貫して包囲に切れ目を作り、同じ場所をヒナが持ち前の火力で突破していく。敵側も練度の高い包囲網を築いていたが、流石にキヴォトスでも名が通りに通っているネームドの二人の猛攻を凌ぎ切る事は出来なかったらしい。

 開いた穴にヒナが突っ込み、続いて先生が駆けていく。それに続く様にツルギ、ハスミ、最後にヒナタが抜け出て行く。ある程度まで着いて来ていたが、先生より後ろの3人は殿の役目を果たす為に立ち止まってしまう。

 

 

「風紀委員長、先生を……頼みます!」

 

 

 自信があるからではないし、むしろ最初からそんな物なかった。弱音なんて油断したら口を衝いて出てしまいそうだけど、ここで踏ん張れなかったらきっと後で後悔するから。

 背後から掛けられた声に対して、ヒナは小さく。誰に聞かせるつもりのない、自分に言い聞かせる様に。

 

 

「……任せて。絶対に守り切ってみせる」

 

 

 しかし、決意に満ちた声で、そう返したのだった。

 

 

 

 

 

「──っ! この感覚は、ヒナ!」

 

『トリニティ外縁部か。いつの間にそこまで逃げ延びていたとは』

 

「急ごう!」

 

『……その近くに強力な怨念が四つある。……一筋縄では行かんかもしれない、気を付けろ』

 

「ん!」

 

 

 何度か地上に降りて捜索してみたもののその悉くが謎のガスマスク集団であり、姿を見られた瞬間攻撃を仕掛けて来た以上どうあっても味方ではないのだろう。

 その時シロコもあのハイレグガスマスクとも交戦していたが、単体の能力的に見ればそう苦戦するものでもなかった。が、連中の真に脅威な点はシロッコとも考えていた通り、アホみたいに物量がある点と無限に復活する点である。何か調整ミスを疑いたくなるレベルのハイレグガスマスク。お笑いなのは見た目のシュールさだけで、それ以外はガチすぎる性能に若干戦慄しながら撤退したシロコ達だった。

 

 おそらく手負いの状態のヒナが、この物量に襲われたらと思うと嫌な想像が止まらなくなる。

 

 歴史的に価値のあった旧市街にも火の手が回っており、倒壊している建物も少なくない。被害の及んでいない地域にはガスマスク集団が徘徊しており、逃げ延びて来た生徒を捜索し狩る部隊まで派兵されているらしかった。

 

 

「早く、早く!」

 

『気持ちは分かるが、焦りは禁物だ。その感情は動きを鈍らせる』

 

「そんな事は! 分かってるけど……!」

 

 

 逸る感情のままに動くシロコと、いつもの変わらない様に冷静に諭すシロッコ。

 

 対照的な二人は、それでも目的地へと急ぐ。

 

 

 

 ──見えた、彼女の姿が。

 

 急いだ甲斐もあって、ついに己の視界でヒナを捉えたシロコ。手痛いダメージを受けながらも、それでも彼女は自分の足でしっかりと立っていた。

 だが、彼女の背後にはシャーレの先生が。ヒナの実力があれば多少のダメージを受けながらもここまで容易に突破して来るだろうが、先生を守りながらとなると話は別だ。見れば先生も負傷している様に見えるではないか。キヴォトス外の人間である先生はそれだけで身体能力は生徒に大きく劣る、それに合わせてここまで護衛して来たとなれば常に気を張って行軍していたのだろう。

 

 さらに不味い事に、彼女達の目の前に先程シロッコに忠告されていた例の四つの怨念──やはり顔を覆うマスクを着用した四人組が、その進路を塞いでいた。まず間違いなくエスコートではないだろう。

 

 

「シロッコ! ヒナは……もう保たない!」

 

『分かっている! このままの勢いで突入する、そちらで判断して飛び降りろ! その後は流れだ、あの四人を引き離せ!』

 

「ん、分かった!」

 

『二人をピックアップした後はミレニアムの病院に放り込んでおく。彼女達に任せれば問題はあるまい』

 

「よろしく!」

 

 

 ヒナと先生が、目の前の四人組と何かを話している。会話の内容はわからないが、彼女達の殺伐とした雰囲気が嫌な予感を掻き立てる。

 

 

「ライフルで……!」

 

 

 グラシュティンの前面に設置された機銃とビームキャノン、メガランチャーも使いフル火力でヒナ達と四人組の間を割る様に狙いを付ける。ただ少しの時間を稼ぐ為の脅しになれば良いのだ。

 

 しかしビームと言えども、弾着には間が生まれてしまう。それが、その間こそが、決定的な結果を生んでしまったのかもしれない。

 

 

「間に合って!」

 

『──チ……』

 

 

 四人組の一人が徐に懐から拳銃を取り出し、先生へ向け発砲。銃口が向けられた事にも反応出来ず棒立ちになってしまった先生を庇ったヒナは、その一撃を受けて膝を付いてしまった。

 

 

「さよならだ、先生」

 

「間に合わないっ……!」

 

 

 息を吐かせぬ二射目が、無情にも先生の身体を貫く。

 

 

『飛べ! シロコ! まだ終わってはいない!』

 

「──分かってる!」

 

 

 まだ間に合うと信じて、手遅れではないと信じ、暗雲立ち込める空へシロコは飛び出していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やはり、こうなってしまうんだね……」

 

「ゲヘナとトリニティの積年の恨み、そこに交わるアリウスの深く澄んだ恨み」

 

「もう、誰にも止められない……。ここが、エンディングなのさ」

 

「この物語の先には、どう足掻いても絶望しかない」

 

「だから、私は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




少し短めで申し訳ないですが、ここで切らないと途轍もない文量になりそうだったので。

次話は今から描きますので、きっとお待たせしてしまうと思います。コメント下さってる方の為にも返信の時間くらいは取りたいのですが、どうにも自分の要領が悪く時間が取れず仕舞いです。

投稿も遅れ気味で申し訳ないです。見て下さっている方々になんとか恩返しがしたい所であります。


それでは、次回の投稿でまたお会いしましょう。
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