シロコとシロッコ   作:メイショウミテイ

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早めかなの投稿だと思ってます。

今回は箸休め的な回です。


エデン条約編 3

 救護騎士団、その本部。

 

 

 普段であればトリニティ自治区内で発生した怪我人や急病人を救助する為の組織であり、本部施設は高度な医療設備が伴った病院としての役割を持っている。が、今現在はトリニティを襲ったミサイル攻撃及び謎の部隊による襲撃テロに対応して、緊急的に避難所として全面開放されている。

 

 その為に無傷な人間や怪我人、惨禍から逃れて来た避難者、正義実現委員会の腕章を付けた人間や自警団の人間などでごった返しの状況だった。病院としても救護騎士団総出でフル稼働している状態であり、空いている病室は一つとして無い。それどころか普段は物置として使っているような部屋も開放して、診察を行い治療行為を行なっている。既に収容可能人員(キャパシティ)という概念は崩壊している。

 余程の重傷者でなければベッドを宛てがっては貰えず、邪魔にならない様に通路の両端に雑魚寝している怪我人で一杯だ。

 

 

「酷い……」

 

 

 シロコはそんな病院通路を歩いて行く。何処にヒナが運び込まれているのかは分からないが、まぁ歩いていればいずれ辿り着けるだろうという楽観的な思考から来る行動だった。が、ここに運び込まれている以上、適切な処置を受けて……いると信じたい。流石にこんな状況であっても治療はしっかりと行われていて欲しいという、心が自然と生み出した一種の願望とも言えるが。

 

 病室は全室扉が開いており中をチラと確認しながら、しばらく手当たり次第といった具合にヒナを探していくが、はっきり言ってどの病室も中は酷いものだ。

 顔の半分以上を包帯でぐるぐる巻きにされた生徒、骨折でもしたのか腕をギプスで固定している生徒。廊下でも不慣れな松葉杖をついて正実生徒を見掛けている。

 

 嫌でも気付いてしまう事実なのだが、ここは避難所と言いつつその実態は負傷者ばかり。シロコのように戦闘に耐え得るだけの軽傷者やダメージを受けていない人間が余りにも少な過ぎる、そもそもの無差別攻撃の規模を考えれば仕方がない事なのだが。病院として運営されていた以上は仕方がないが、ここを護れるだけの戦力が確保されていない事は大きな問題だ。大抵の雑魚相手であれば今のシロコであっても遅れを取ることはまずないが、それでも彼女一人で此処を守り切れる程圧倒的な戦力という訳でもない。

 

 

 

 ──意識を失う程にダメージを負っている正実生徒が二人、トリニティの聖職者らしき装いの生徒が寝かされている。この部屋も違う……。

 

 

 残っているのは最上階のみ、依然としてヒナの姿は見当たらない。彼女だって直ぐに動ける程の軽傷では決してない、どうあってもしばらくは休息が必要なハズだ、だから絶対に上の階層に居るはず。

 

 自分に言い聞かせるようにそう繰り返しながら、最上階へ続く階段を登っていく。

 

 

 

「……感じる」

 

 

 微弱ながら、慣れ親しんだ感覚だった。

 

 逸る気持ちのまま、彼女が居る部屋の扉を開ける。

 

 

「ヒナ!」

 

「……! シロコ……」

 

 

 寝かされた病床の上で窓の外を見ていたヒナは、シロコの登場に気付くと蚊の鳴くような声で鳴いた。頭には包帯が巻かれている、顔全体に絆創膏で処置された跡が見られる。火傷による熱傷があった左腕も、表面積は小さいながらも弾丸から身を守る防壁代わりにした特異な羽も、病院着の下に見える弾丸による青痣が見える小さな体躯も、その全てが適切に処置されていると分かった。実際彼女の様子は安定している様に見える。その隣に控えた、小煩く世話を焼いてくれる行政官が居るからかも知れないが。

 

 

「あ、貴女は……!」

 

「無事そうでよかった、ヒナ」

 

「……うん、貴女のおかげね、シロコ」

 

「えっ、それは一体どういう事ですか!? 彼女のおかげとは、一体……!」

 

 

 ヒナの意識が戻ったのは本当についさっきだったのだろうか、事情が伝わっていないのは少々面倒だ。

 

 

「アコ、貴女には嫌な思い出かも知れないけれど。私は彼女の、シロコの使っている“あのマシーン”で此処まで辿り着けたの」

 

「……っ、あの時の、ですか。という事は、それで先生も」

 

 

 その話を聞いたアコは慌てて佇まいを直し、かっちりとした様子でシロコに向き直る。そして。

 

 

「砂狼シロコさん。委員長を助けて頂き……、本当に、ありがとうございました」

 

 

 ──そのまま深々と頭を下げた。

 

 以前会った時は色々小細工を使って先生を捕まえようとしたり、その過程でアビドスに迷惑を掛けていると分かっても強気な態度だったり、その事に関しての彼女名義での正式な謝罪も受け取りはしたが。それでも彼女(アコ)個人に関して言えば、少し気に入らない所は感じていたけれど。

 この時ばかりは、誠心誠意の、心から安堵しているのだろうと。シロコはそう感じていた。

 

 

「(こういう所は、ちゃんとしてるんだ)」

 

「そう畏まらないでいいよ。ヒナは私の友達だから助けた、それだけだから」

 

「それでも、です。風紀委員会全員を代表して──」

 

「あなた一人の、感謝の言葉でお腹いっぱいだから、ね」

 

 

 能力を使うまでもなくアコの感情は分かりやす過ぎる、今に限った話なのかも知れないけれど。その全身で『ヒナが助かって良かった』と表現している様な物だった。眼から涙が止め処なく流れ出ていて、彼女自身が此処に辿り着くまでに受けたのであろう泥や煤が、式典用に薄く施された化粧共々流れ落ちている。

 

 

 今はただ、貴方に感謝を。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「そっか。先生はまだ……」

 

「……意識は戻っていませんが、手術自体は成功したと先程うち(ゲヘナ)の救急医学部とトリニティの救護騎士団が報告を寄越してくれました」

 

「……こうやって先生が助かったのも、シロコのお陰。ありがとう、本当に……」

 

「そうやって自分の事を棚に上げるのは良くない。私は最後の最後、良い所を取った様なものだから」

 

「それでも最後は──」

 

「ヒナ。貴女が道中先生を守り切れなかったら、私が到着するまで保たなかった。それが結果だよ、だから自分をもっと褒めてあげてほしい」

 

 

 ヒナだって文字通り死力を尽くして先生を守り切ったのは事実。それを彼女自身が卑下するのをこれ以上聞きたくも見たくもなかったシロコは、彼女が喋ろうとするのを遮って心からの賛辞を贈る。ヒナは異常に自己評価が低い事も、それなりに長い付き合いになっている今であれば分かる事だ。

 

 

「そうです! 委員長はいつもいつも、自分の評価が低過ぎます!」

 

「え、えぇ……?」

 

 

 日頃の鬱憤、なのか……はともかく、いつもヒナの補佐をしているというアコも同じ事を思っていたらしく、こういう場でしか言えない様な文句──という名前の、ヒナ委員長がいつもどれだけ凄い事をやっているのか本人に自覚させる為の講釈が始まった。

 

 多少休んで体力が回復したとはいえ、それでも激戦明けで疲弊しているヒナには少々酷な状況かも知れない。が、ヒナには是非ともその自覚を持ってほしいとシロコも常々思っている事なので、特に止めようとは考えていない。

 

 そんな事よりも優先して考えていたのは、先生の事に関してだった。正確に言えば、ヒナが思っていた以上に先生の事を引っ張っていない事だった。結果だけ見れば、ヒナの力が及ばなかった事で先生が生死の淵まで追い込まれたという捉え方が出来るが、その事をヒナの中で重い失態だと考えていない様に思える、という話だった。

 結果的に先生が生きているからこそ、ヒナの中で持ち直せているのかな。シロコはそういう風に纏めてみるが、少しの違和感が残る。きっとシロコであれば、自分が好意を抱いている人間を自分のミス・力不足で守り切れなかったとなれば、きっと自責が止まらなくなるだろう。*1思っていた以上に精神が図太いのかな……*2と、そう結論付けて意識を戻せば未だに行政官アコによるヒナ委員長自慢が続いていた。

 

 シロコにとって“シャーレの先生”という存在は然程大きな物ではない。確かにアビドスを助けに来てくれたたった一人の大人であり、その存在が助けになった展開も多々あった。そういった点もあったけれど、それでも彼女にとってはシロッコが余りに頼りになり過ぎる存在であった。生徒によっては目の前のヒナやアコの様に先生に淡い感情を抱いている事も珍しくない*3のだが、事シロコに至っては良くも悪くも一線を引いた位置に置かれていた。

 

 多くの生徒たちと交流を重ねている先生は、今となっては最早一人だけの存在ではないのだ。

 

 

「取り敢えずヒナが無事そうで良かった」

 

「ええ、もう少し休めば動ける様になると思うわ。……本調子とは行かないけれど」

 

「正直な所、委員長には完治まで休んで欲しいのが正直な気持ちですが、この混乱を収める為にはヒナ委員長の力が必要です。……ヒナ委員長を抜きにした風紀委員会では残念ながら力不足です」

 

「いいえ、アコ。エデン条約を推進していたのは私。だからこそ、この事態を収めるのは私がやらなければならない事よ。責任という面でも、わざわざこうやって助けに来てくれた、とっ……友達に報いる為にも」

 

「エデン条約、ね……」

 

 

 エデン条約。今回の惨劇が引き起こされた舞台。

 

 ヒナがその条約の締結にどれだけ心血を注いできたか、シロコは割と間近で見ていたからこそ知っている事だ。それは彼女の隣に佇んでいるアコや、その他大勢の風紀委員会の面々も同じ事が言えるだろうが、やはり彼女とそれ以外では賭ける思いが大きく違うのではないかと考えている。

 

 しかし、それだけ距離感が近い間柄とは言いつつも、条約の責任者とも言えるヒナは公私混同はしない人間である。たとえ親しい間柄であったとしても、仕事の最重要機密であるエデン条約の詳細に関しての情報開示は一切行ってこなかった。それは彼女の誠実さと責任感から──“ゲヘナ“らしくもない、規則と制約を重んじる彼女であれば当然の事だが──来る行動なのだが、余計な心配をして欲しくなかったという事情も少々含まれていた。ヒナにとってシロコと語らい交流する日々は、普段ゲヘナで過ごす生活では味わえない新鮮なものだ。守秘義務が有る無しに関わらず、シロコとはなるべくならそういった仕事っぽい会話はしたくないと考える様になっていたヒナは、らしくもない自分のエゴを押し通し日常を守ろうとしていたのだ。

 

 しかし、事此処に至っては、表立って介入していないにしてもシロコはこの一件に介入している様な物だ。

 

 

「ヒナ。それと、天雨さん。アイツら(ガスマスク共)は一体何者なの? ……エデン条約と、何か関係がある?」

 

「……そう、ね」

 

 

 本当なら、その質問は突っぱねたかった。貴女には関係ないわと、追い返したかった。

 

 ヒナが此処にいる以上自分に判断する資格を持っていないと考え、アコはこちらに視線を向けている。如何しますか、と。

 

 

「……奴らは自分達を、アリウスと、そう名乗っていたわ」

 

 

 しかし、助けにきてくれた事に関して、結局のところ巻き込んでしまった様な状況で負い目があったヒナは、隣から向けられる視線に対して応える形で端的に回答を寄越す。

 

 

「アリウス……、聞いた事のない名前」

 

「大昔のトリニティに存在した派閥の一つだったと、情報部から報告が上がっています。今回の襲撃の原因としましては、やはり私達(ゲヘナ)やトリニティに対する長年の怨恨による物かと推測出来ます」

 

「今になって、そいつらが……」

 

「それだけ、恨みというものは人々の心の中に残っているんです。アビドスに居る砂狼さんも、遥か昔からゲヘナとトリニティの仲が悪い事は知っていますね?」

 

 

 不快感を抱かない様に多少オブラートに包まれたアコの話に同意するシロコ。ゲヘナとトリニティの不仲はキヴォトスでは誰でも知っている常識のような物で、それこそ『右足を出して左足を出せば歩ける』といったレベルで当たり前の話だ。

 

 

「きっとそれと同じ様な事なんですよ。どれだけ遠い過去の話でも、古文書が作られた遥か過去の時代からであったとしても、その恨みが消える事なく現世に止まり続けたのなら、それは歴とした動機になってしまうんです。何を隠そう、私達がそれを証明してしまっています」

 

「どうして互いを嫌いあっているのか、それすらも分からないのに……。それでも、“嫌悪”という感情だけが今でも残っている」

 

「そういった不健全な状況に嫌気が差していたのが連邦生徒会──いえ、連邦生徒会長だったんです」

 

「……」

 

 

 その存在があっただけで、キヴォトス全体の治安がある程度のレベルで維持出来ていた程の才覚を持っていたという、連邦生徒会長。

 

 その失踪による影響は今でも色濃く残っていると言わざるを得ない。その存在とヒナ率いる風紀委員会の二重体制によって比較的安定していたゲヘナ自治区*4は、今でこそ見られる様になった物だが、失踪当初はほぼ全域で暴動が起こっている様な状況であった。おかげでヒナは今でも纏まった休暇を取る事が出来ず、残業に次ぐ残業を繰り返しているのだ。それは勿論、アコもだが。

 トリニティには、身代金目的で誘拐を企む馬鹿共(ゲヘナ生)が大量に流入し、それが両者の仲をより一層険悪にさせる結果にも繋がっていた。

 

 そういった事情を恒久的に解決する為の施策がその“条約”であったのだが、件の会長が居なくなった以上進展は望めないと思われ──ていたのだが。

 

 

「それを引き継いだ人こそ、我らが空崎ヒナ委員長!」

 

「それと、トリニティのフィリウス派トップである桐藤ナギサという訳。私達も元々条約の細かな内容を策定する為に参画していたのだけど、あくまで連邦生徒会長主導*5で行われていた取組だったから、その当時はサポーター程度の役割でしか無かったの」

 

 

 あんな事件があったというのに案外元気そうだな、この横乳。俄かにテンションの上がり始めたアコを横目に、淡々と話を続けるヒナ。彼女の沈んだ気持ちを盛り上げようとしているのだと考える事にしたシロコは、そのまま続きを促す様に黙したままで耳を傾ける。

 

 

「幸いにして、連邦生徒会長が描いていた構想に関しては共有されていたから、私達はそれを実現する為の根回しと交渉をメインで進めれば良かった」

 

「今を思えば色々やりましたね。トリニティの実業家達と懇談会を行ってパイプを作ったり、逆にゲヘナの実業連中と()()()()をしたり、クソ狸共(万魔殿)に頭を下げてこの一件に関する全面的な主導権を確約させたり……!」

 

 

 話していてイライラしてきたのか、アコは病室だというのに地団駄を踏む。直ぐに隣のヒナがピシャリと言い付けて辞めさせるが、それだけ色々考える事があって大変だったのだろう。政治の事は何も分からないシロコは、その心中を察する事も出来そうにないが。

 

 

「紆余曲折……があって、ようやくの今回締結にまで進めたのだけど」

 

「アリウスの襲撃があった、って事だね」

 

「私達はアリウスという派閥が未だに存続していた事すら知らなかった。当然武装蜂起をしていた兆候なんて掴めている筈がない。悔しいけど、初動の時点で大多数の隊員達は満足に対応出来なかった」

 

「砂狼さん、これはオフレコでお願いしたいのですが……。実は条約締結の一ヶ月程前の頃でしょうか、トリニティ側でクーデター未遂があったという情報を掴んでいます。そして、そこに一人のティーパーティー(美園ミカ)とアリウスが関わっていた()()()があるとも」

 

「それが本当なら……」

 

 

 恐ろしい話だ。壁に耳あり障子にメアリー*6とはよく言うが、その情報が正しいのなら部屋の中に居た人間が情報をわざわざ提供してしまっているではないか。

 

 

「この条約に関する情報は、ゲヘナでも限られた人間しか知らない程に厳しく情報統制*7されています。トリニティ側も同じ筈なので、知っている人間はごく僅かでしょう。そして、その僅かの人間の中に、ティーパーティーは間違いなく含まれているでしょうから……」

 

「いつ、どこで、誰が、どのように、そして何故。その話を真とするなら、至る所まで情報が抜き取られている……いえ、()()されていると言い換えた方が正しいかしら」

 

 

 実際に襲撃を受けている以上、真だったのだろう。そういえばとシロコは思い返してみるが、インターネット・SNSで条約の話が出始めたのはほんの数日前だったのだ。それ以前は条約に関しての話題は僅かすらなく、互いに罵詈雑言を浴びせ合って遊んでいる位の状況であった。

 報道機関にもしっかりと根回しは行われていた様で、誰かが先走って情報を漏らす事も確認出来なかったらしい。条約の正確な発効日、調印式の日取りや会場、その出席者に至るまでが入念に隠された上で、突如として調印式が行われるという情報のみが開示されているのだ。その時点以降に襲撃の計画が立てられて実行されたとは考え難い。更に言えば、調印式の日取りや会場情報などは全く公表されていないのだ。一般の人間であればまず正確な情報を掴む事は出来ない。組織にどれだけ優れたOSINT(オシント)*8が育成されていたとしても、正確な情報はどうやっても掴めない様になっている。公開されていない情報は引き出せない、元よりそういう腹積りだったからだ。

 

 エデン条約の調印式をやります、場所と時間は秘密です。それでは条約としての信憑性が著しく弱い事など重々承知。だからこそ、クロノススクールを招待させる契約を結んで、その様子を生中継させる事で大々的に周知させる方法を取ったのだ。今のご時世、インターネットに関わる物を持っていない人間などそうそう居まい。仮にネットとの関係が希薄な人間にも導線を繋ぐ為、ゲヘナ・トリニティとD.U.に存在している街頭モニターを借り受ける契約まで握っているのだ。資金や利権などの関係で全てを使える訳ではないが、それでも導線確保の面で言えば十分と言える。

 

 

 まぁ、なんだ。色々説明を受けたが、少なくともヒナ達がどれだけこの条約を成功させようと必死な根回しをしているのか、どれだけ限られた条件の中で工夫しているのかが、十分に、痛い程に、身に沁みるほどに伝わって来た。

 

 

「兎も角、そうなるとトリニティ側から情報が漏れていたって事?」

 

「少なくとも私はそう考えています」

 

 

 アコはそれなりに自信のありそうな表情を浮かべている。といっても、ゲヘナ側の状況証拠的*9にはそう判断するしかない。

 

 思っていた以上に敵味方が混在している。自分の事では無いのにシロコは頭が痛くなってしまいそうだった、お互いがお互いを警戒しながら追加で獅子心中の虫の対応もやっているとは……。

 

 

「……あー、話聞いただけでお腹いっぱい。ごめん、もういいや……」

 

「正直言って話し足りない気分ではありますが……」

 

「……まぁ。アリウスとか、条約の事とか、大雑把には話したつもり」

 

 

 何はともあれ、仕入れたい情報は粗方仕入れられただろう。

 

 流石にそろそろアビドスに戻らないとマズいだろう、何分出て来た時の状況が割と最悪の部類だった訳で。きっとアビドスのみんなにはそれはそれは心配を掛けただろうと思いながらスマホを見れば、ホーム画面をびっしりと埋め尽くす程のモモトークの通知と不在着信の数々。

 

 

「う……」

 

「凄い顔ね」

 

「複雑な表情ですね? 何かマズい事でもありましたか?」

 

「ま、まぁ……。私が此処に居る事がそもそも不味いっていうか……」

 

「それはそうでしょうね」

 

 

 アコの最もですねと言った態度がシロコに突き刺さる。アコの誠心誠意の感謝を受けたものの、それはそれこれはこれ。こんな地獄に助けに来るような人間は、控えめに言っても馬鹿である。しかし、馬鹿は来るのである。

 

 

 

 

 二人に少し出て来ると伝え、意を決して通話を開く。

 

 残っている4人の中で、なんとなくアヤネの携帯を選んで*10着信を掛ける。

 

 ワンコールで──

 

 

『やっと繋がった! シロコ先輩!』

 

 

 今何処に居るんですか、無事なんですか、体調は大丈夫ですか、どうして直ぐに掛け直してくれないんですか、心配したんですから。

 

 怒涛の勢いで並べられた通話口のアヤネによる文句と心配の応酬が続いた後、急に電話の向こうの雰囲気が変わった。

 

 

『シロコちゃん』

 

「う、うん」

 

『覆面は持ってるよね?』

 

「? うん……持ってるけど」

 

『色々言いたい事はあるけど一先ず……、私達覆面水着団のボスであるファウストさんから招集が掛かったから、トリニティに出張するよ〜』

 

「???」

 

 

 意味の分からないという表情のシロコが其処に生まれ落ちたのだった。

 

 

 

 

 

 

*1
所謂原典のヒナの状態。自宅でゲヘナシナシナシロモップになっていたアレ。

*2
原典では若干先生に依存していた様な状態のヒナだったが、今作においてはシロコとの個人的な友誼を結んでいる事で先生への依存が半分近く薄まっており、そのシロコが救援に駆けつけた事で安心出来ている……という感じか。

*3
アビドス勢に関して言えば、ホシノさんは結構重めの矢印を先生に向けています。というより、シロコさん以外はみんな先生に大なり小なり矢印が向いています。ごめんねシロコさん貴方が先生に飛ばすはずの矢印壊しちゃった……。

*4
当社比。誤差。五十歩百歩。

*5
ここら辺の設定は正直フレーバーくらいに感じて置いて欲しい。深くは考えていません。

*6
目あり。

*7
少なくとも、本作ではそういう設定です。アリウスじゃないけど、こんな条約憎い相手と結ぶよってなったら絶対大々的に反対運動とか起こりそうだし。それを避けるために秘密裏に動いて置いて、条約をさっさと結んで両校の生徒に文句を言わせない様にしたいというのがヒナとナギサの共通意識、という話です。

*8
O()pen S()ource I()N()T()elligence の頭文字を取ってOSINT。誰でも閲覧可能なインターネット・SNSや公式から発表される情報などを収集・分析し、様々な分野に活用できる様に再構築する活動を指す。

*9
実際のところは半分正解といった所か。ゲヘナ側もタヌキ共(万魔殿)がしっかりアリウスと内通しており、更にその動機を考えればこっちの方が最低な事をやっている。ゲヘナ学園のギャグ担当的な立ち位置で許されている感。

*10
嘘である。なんだかんだ4人の中で一番優しく対応してくれそうな気がしたからだ。一番悪手なのは間違いなくノノミ。




ダンツフレームの実装を、我々メイショウミテイ一同心からお祝い申し上げます。

待ち望んだ時が来ました。





次回も早めに投稿出来るように頑張ります。

毎度毎度ちゃんと推敲しているつもりなのですが、誤字に気付いて報告してくださる方には感謝ばかりです。その他、コメント・評価・お気にいり等支援してくださる方々には感謝の言葉しかありません。
ダンツフレームにも感謝します。ありがとうダンツフレーム。

パーメットスコア8にも感謝します。ありがとうパーメットスコア8。

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