何が言いたいのか、拙作の評価に色が付きました。誠にありがとうございます。
感想を送ってくださる方々にも感謝申し上げます。
それはそれとして、一週間のうちに何本も投稿できる人は凄いですね。
今の自分には最早無理です。
ちょっと今回内容薄めかもしれません、すみません。
シロコがジュピトリスに──宇宙世紀にやって来てから早いモノで三週間が経ってしまった。
毎日同じような流れで一日が過ぎ去っていく事に、シロコも焦りのようなものを感じつつあった。もうすぐで一か月が経ってしまうという状況、アビドスの皆には心配をかけてしまっているのは勿論の事だが。それと関連して、シロコの頭の中にはもう一つ思っている事があった。
それはアビドスの借金の話だ。
アビドス自治区──アビドス高等学校には知っての通り借金がざっと9億程と、それに付随する利息が山のように積み重なっている状況である。それをアビドスのみんなで頑張って返済──とは言え、返済のほとんどは利息分を返済するだけで元金は全く減っていない、全くもってお先真っ暗な状況なのだが。
五人で頑張って利息をようやく返済出来ていたというのに、シロコが居ないまま三週間経過してしまった。今月分の利息は何とかなるのだろうか、自分が居ない事で利息の支払いは一層厳しい事になるのは予想に難くない。
自分が居ない間にアビドスのみんなが利息すら払いきれず、アビドスという名前がキヴォトスから失われてしまったとしたら。
アビドスのみんなと離れ離れになってしまったら。
──いや、それよりも。
このままみんなに会えないまま、この世界で生き続けなければならないとしたら。
きっと死んでも死にきれないだろう。
でも、自分がやれる事は何もない。ただただ、待つことだけ。
シロコは辛くて悔しくて、そして無力だった。
シロコがジュピトリスに──宇宙世紀にやって来てから早いモノで三週間が経ってしまった。
その日はシロッコから呼ばれてモビルスーツハンガーなる場所へと呼ばれていた。なんでも、この前後ろに乗せてもらったメッサーラのような機体が多数並べられている場所らしい、そこで何をするのか──いや、させられるのか。
シロッコからの頼み事を断る事はシロコの立場上難しかった。シロッコにそういうことをする気は毛頭ない、というのはここに来た時に自分で宣言していた事もあり何となくそんな気はしている。きっと今回の頼みを断った所で、シロコの不都合になる事をシロッコが押し付けてくる事はない。
だが、気持ちの面では話が別だ。
シロコは異世界からの来訪者であり、身元を始めとした一切の情報が不明の不審者だ。そんな人間がジュピトリスにおいて飲食が自由に出来て、トレーニングがいつもよりも格段に良い施設で行えて、艦の中を散策していても何も言われない。そんな待遇なのは、全てシロッコが裏で手を回してくれているお陰だった。それをシロコ自身しっかりと理解しているからこそ、シロッコの頼みを無下にする事は出来ないのだ。
端的に言えば、恩がある訳だ。この艦での生活を確約してくれたシロッコに対して。
「ん。来たよ、シロッコ」
「あぁ、よく来てくれたシロコ。断ってくれても良かったが、その様子だと持ってきてくれたという事かな」
「まぁ、銃の方だったら嫌だったけど」
そういってシロコがいつも持っているスクールバッグの中から取り出したのは、これまたシロコがいつも携行している『撮影用ドローン』*1だった。ドローンはキヴォトスではありふれた機械でありコンビニには置いていないものの、そこら辺のスーパーであれば取り扱いがある位には簡単に入手出来るものだ。大型のショッピングモールまで足を延ばせば、多彩なドローンを取り扱っている専門店も見つかる事だろう。*2
「宇宙世紀においてドローン技術は既に通り過ぎているものだ。だから本来であれば、君のドローンを借り受けて解析する事も必要ないのだが……」
このシロッコの発言が全てである。宇宙世紀の技術レベルは既にキヴォトスのそれを遥かに上回っている。ミレニアムではようやく宇宙戦艦に搭載するレールガンのテストが行われたが、宇宙世紀では既にビーム兵器が主流の時代である。レールガンも確かに素晴らしい技術であるし、宇宙世紀でもまだまだ現役の兵器であるとも言えよう。しかし、宇宙世紀ではそれ以上の破壊力・殲滅力・連射力を誇るビーム兵器がすべてにおいて優越している。
ドローン技術に関係がある所で話をすれば、前の戦争でジオン軍が投入していた『とんがり帽子の付録』*3のようなモノがそれと同じような技術だと言えよう。脳波を用いることでビットを遠隔操作して、多角的に射線を作り出す事が出来る代物だ。宇宙空間は滞留しているデブリなどを除けば遮蔽物が存在しないので、敵がどこからやって来るかによって360度全てが射線に成り得る。その射線を味方の協力なし、単機で増やせるのであれば対峙する方としては堪ったモノではない。目前の敵に対処しなければならないのに、自分の周囲にはいつ攻撃をしてくるか一切不明のビットが飛び回っているとあっては、敗北は必至だろう。*4
シロコもキヴォトスでは同じような運用をしている。自分は遮蔽物に隠れて射線を切り、撮影用ドローンのミサイルを使ってもう一つ射線を作る。それが成功すればよし、失敗・対処されればシロコ自身が再攻撃を仕掛けると言った具合だ。ドローンがヘイトを吸っている隙に自分が別の有利射線を作り出すことも可能だろう。
結局のところ。ドローン技術は大きく発展したが、その根本は大きく変容していないのだ。
だからこそ、シロッコも見た目が旧時代のドローンとは言え、その内部構造に何かしらキヴォトス由来の独自機構が内蔵されているのではないかと興味を抱いたのだ。
「壊さないでね」
「万が一にもそのような事態にはさせんよ。私は勿論だが、今回一緒に作業してくれるメカニックも皆優秀だ」
「それならまぁ、安心かな」
「解析にはそこまで時間は掛からないだろうから、ここで待ってくれていても構わないが。君が良ければだが、アレをやってみるか?」
「アレ?」
そう言ってシロッコが見遣った方には黒い球体のオブジェクトがあった。よく見ると銀色の取手が付いており、それが開くことで中へと入る事が出来そうだ。*5
「アレはシミュレーターだ。モビルスーツパイロットの操作慣熟の為に使うもので、最新の映像技術とCGによって現実でモビルスーツを動かしている感覚で訓練を行う事が出来る」
「……私はパイロットじゃないけど」
「こちらが頼み込んでドローンの解析をさせてもらっているのだ。それくらいの事はこちらでどうとでもなるのさ」
「うーん……。じゃあ、折角だしやってみる」
「分かった。ならば、一番奥側のモノを使ってくれ。解析が終了次第、シミュレーター内に通信を入れる」
「やり方は?」
「全部コンピューターが教えてくれる、安心していい」
シロッコは近くに居た作業員にシロコを案内するように告げ、借り受けたドローンを大事そうに運んでいった。
そうしてシロコがシミュレーターの中に入っていったのを確認してから、携帯端末を取り出して何処かへと連絡を始めた。
「私だ、至急やってもらいたいことがある」
『何でしょうか』
「君の研究しているデータ、全てコピーしてモビルスーツハンガーへと持ってきて欲しい」
『どういうことです? ようやく素体の量産が終わって、ここから植え付けていくという時に……』
「簡単な話さ、もう一つそれが増えるだけだよ。急げよ!」
『……了解しました、直ちに』
満足そうに電話を切ったシロッコは今度こそドローンの解析作業へと移る様で、モビルスーツハンガーの一角に解析の為に設けたブースへと急いだ。
シロコはシミュレーターの訓練兵モードをあっさりとクリアし、続く一般兵モードへと挑戦していた。
敵はこの前シロッコのメッサーラに乗った時に見た、あの緑色の機体によく似ていた。オレンジに赤熱したヒートホークとザクマシンガン、加えてシュツルムファウストを装備したザクⅡが1~3機毎登場し、それが第4波まで続く。目標はこれを一機残らず殲滅する事だ。
最初のザク3機がシロコの乗機──連邦の量産モビルスーツGMへと殺到する。シロコは直感でフットペダルを踏み込み、機体のスラスターを全開にして突っ込んでいく。3対1の中に自ら飛び込んでいくのは自殺行為とも思える凶行だが、シロコにはちゃんとした作戦があった。
「(引いていてもジリ貧だし、まずは1機減らす!)」
3機で囲うように展開したザクに対して、シロコのGMはその中心へと入り込んで行く。
包囲できたと判断したザク小隊はシロコに対してマシンガンで攻撃を仕掛けてくるが、シロコはふわりふわりと飛来してくる銃弾を回避していく。連射されるマシンガンを一発の被弾無しで捌いているシロコに対して、埒が明かないと見たのかザクの一機が赤熱化させたヒートホークを構えて突っ込んでくる。
「ん、こっち!」
突進を回避したシロコはそのザクにカウンターとばかりに廻し蹴りをお見舞いすると、体勢を崩して大きく吹き飛ばされていく。上手く動けていないザクに対して、ビームスプレーガンを2発撃ち込むとたちまち大きな爆発となって消滅していく。
これで残りは2機。
「まだまだ、これから」
一機仕留めて調子の出て来たシロコは、自機を二機のザクの方へと再度接近戦を仕掛ける為スラスターを勢いよく吹かす。二機のザクもそれを見てから同じように突撃を掛けてくる。
左手に装備した盾を前面に構え機体をその後ろに隠しつつ、右手のスプレーガンで正確に狙いを付ける。狙うは二機のザクのうち、前に出てきている方だ。
前に出て来たザクはシュツルムファウストをこちらに放出、難なく回避したシロコは反撃にスプレーガンを2発発射するがこれは回避されてしまう。
「ん、そこ!」
しかし、3発目の射撃を放つ際に偏差を読み、ザクが動きそうな場所に狙いを置いて射撃。そうすると、予想通りにザクが狙いの地点へやって来て自ら焼き鳥へと変わっていった。
ヒートホークをこちらに振りかぶってくる最後のザクに対して、左手で保持したシールドを構えて防御。徐々に断ち切られていくシールドから手を放し、そのままの手でサーベルを抜き放ち最後のザクを頭から唐竹割りにして仕留め切った。真っ二つになったザクは、割れた表面からバチバチとスパークを巻き起こしながら最後にはロウソクのようにきれいに爆発していった。
「あとは、何機出てくるんだろう……」
シールドを喪失したものの、五体満足の状態のシロコのGM。まだまだ、ミッションの続行は十分に可能であるとみられる。
最初は勧められたからやってみただけのモノだったが、案外シロコはシミュレーターから得られる体験に楽しさを見出している。確かに戦争という側面を持っているのがモビルスーツ戦だが、それを抜きにしてもなかなかに良く出来たマシンであった。
もう少しの間、シミュレーターの明かりが消える事は無いらしい。
一方、ドローンを預かったシロッコだが。
凡そ、シロコのドローンは旧時代の技術で作られたものだという事が解析の結果から分かったらしい。材質などは未知のモノだが見て触ってみた感じはプラスティックのような、樹脂のようなものであると感じる。なんにせよ、剛性はモビルスーツなどに使われるガンダリウムには遠く及ばない。
推進機も至って普通でありプロペラを回して浮力を獲得するという、旧来のそれと何も変わらない仕様であった。バッテリーも大して見どころの無い、普通の市販品が内蔵されているなといった具合。
結論を言えば、特に目立った技術などは見当たらない、既に通り過ぎた技術のみで構成されているマシンだった。
「いたって普通のドローンですな……、これは」
「そんな事は分かっている。思い違いだったか」
「両翼に付いているミサイルユニットはどうしますか?」
「ふむ……、念の為だ。弾頭を1発だけ拝借して分解するぞ」
『了解、作業開始します』
指示を受けて、ミサイルユニットから1発の弾頭を取り出して内部構造の解析を始めるが、こちらも至って普通の機構を使用したものであった。内蔵されていた炸薬の方も特段変わった事は発見できない。
「そうか……。いや、こういう事もあるか。このドローンの構造は記録しているか?」
「既にやってありますが、こんなものを記録してどうするのです?」
「ふふふ……、少し考えがあるだけだ」
協力に感謝すると言い残して、さっさとその場を後にしてしまうシロッコ。その際トレーシングペーパーを数枚補充してから、恐らくシロコを呼び出したのだろう。
わざわざ呼び出されて言われるままに解析作業を行っていた技術者たちも、何が何やら分からないといった様子だったがまぁ
まぁ、今回のシロッコの思い付きは純粋な善意100%に満ち溢れているのだが。
その後、やり切った顔のシロコと合流したシロッコは食堂へと共に向かい、各々の成果を報告する事になるがそれはまた別の話である。
なんとか次回も一週間位以内に投稿します。
ここだけの話、卒論があと2週間くらいで締め切りになるんですね。
投稿できなかったら、そういうことだと思ってください。