シロコとシロッコ   作:メイショウミテイ

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お待たせしました。


新年から幸先の良くないスタートになっていますが、皆様は如何お過ごしでしょうか。こういった良くない流れに吞まれないように、日々を過ごしていきたい物です。

本作の話に移りまして、感想や評価、お気に入り登録等、誠に感謝致します。
これからもその評価に応えられるように更新を続けていこうと思います。
アンケートにご協力いただきまして、そちらの方も感謝致します。色々作品を作っていくうえで先生の性別は割と重要かな、と考えていました。結果を反映して、どっちにも取れるように文章表現していきたいと思います。

今回もあとがきで自我を出しています。ご注意ください。


アビドス編 2

 結果から言えば、先生の指揮の効果は覿面であった。

 

 そもそもカタカタヘルメット団が統制皆無のチンピラ集団である事も考慮しなければならないが、それにしても先生の指揮は正に神算鬼謀そのものであった。

 

 シッテムの箱の内部AI*1のサポートによって敵の位置が常に割り出されている状況であり、状況に応じて的確に射撃の指示を飛ばしつつ確認の特性を活かした指揮を行っていた先生を、味方でありながら恐ろしく思ったのはアビドス対策委員会の面々。出会ってから情けない姿しか見ていなかったシロコでさえも「これが大人の力……」と、再び驚く事になったのは言うまでもない。

 

 普段ならば遮蔽物に隠れられてしまったり、彼我の距離が遠かったりして正確な場所を特定する事はなかなか難しい。それこそ、上空からの目がなければ分からない事が分かってしまっているのだ。しかし、アヤネのドローンとは接続を共有している訳ではないらしく、正真正銘先生(と、シッテムの箱管理AI)のお陰で、ここまで楽に戦闘を進める事が出来たと言える。

 更にどういう訳か、前線で戦うアビドス生徒たちの残弾数まで把握していたり、どれだけの銃弾を受け被害を負っているのかまで正確に把握していた事に、彼女たちは二度驚かされる事になった。なにせ、残弾切れが近づいてきたとセリカが感じていた頃には、既に上空に待機していたアヤネの補給ドローンが補給物資を投下していたのである。

 

 

「ここまで楽に勝たせて貰っちゃったらなぁ~、ありがとね先生」

 

「凄いです☆ これが大人の力なんですね!」

 

「私でも気づかなかったのに、あのタイミングで補給が飛んでくるなんて……」

 

「す、凄いです先生!」

 

「納得いかない……、けど凄いね」

 

 “みんながちゃんと指揮したように動いてくれたからだよ”

 

 

 先生は謙虚にそう言ったが、その実力は間違いなく示せただろう。生徒を導く先生としての立場は、この時より揺るぎないものとなった事だろう。

 

 先生自身もシャーレ奪還作戦依頼久しぶりの指揮であり、内心心臓バクバクであったが何とかなったと一息吐いていた。そういった事情を感じさせないように振舞うという技術も、先生にとっては必要な事なのだろうか。

 

 

「しかし、まさか勝っちゃうとはね~」

 

「勝っちゃうとはね~。じゃないですよ。勝たないと学校がヘルメット団の溜まり場になっちゃうじゃないですか!」

 

「ごめんね先生。いきなり指示に従ってって言われた時、ちょっと先生の事を信じてなかった」

 

“砂狼さんに言われたら、私も仕方ないかもって思うよ……”

 

 

 出会って以来情けない姿しか見せていない事もあり、シロコから先生への評価は地に近かったのは言うまでもない。しかし、その状況も今日この時をもって払拭される事にはなるだろう。

 

 

「一応、先生は既に知っていらっしゃると思いますが……」

 

 

 そういってアヤネは先生に対して向き直る。

 

 

「私達は、アビドス対策委員会です。ここに居る五人で構成されている委員会で、私は書記とオペレーターを担当している一年の奥空アヤネです。こちらは──」

 

「同じく一年の黒見セリカよ、よろしくね先生」

 

 

 赤色に縁が彩られたメガネを掛けたしっかり者そうなアヤネと、黒髪ツインテールでツンツン勝気そうな雰囲気のセリカ。

 

 

「二年の十六夜ノノミ先輩と、砂狼シロコ先輩」

 

「よろしくお願いしますね~、先生!」

 

「……ん、よろしく」

 

 

 ベージュのロングヘアを左側だけお団子状に結んでいるふわふわした感じのノノミに、犬耳とセミロングの銀髪に季節感の無い水色のマフラーを付けたシロコ。

 

 

「最後に委員長で三年生の、小鳥遊ホシノ先輩です」

 

「これからよろしくね~、先生」

 

 

 ピンク色の髪を伸ばした現在すっごく眠そうなホシノ。この五人が、現在アビドス高等学校に在籍している全ての生徒であった。

 

 先生は素直な感想として、少ないなと思った。どうしてそうなったのかという原因も知っている以上、仕方のない事だとも思っているが。

 

 

“うん。みんな、よろしく!”

 

 

 これが、先生とアビドス対策委員会のファーストコンタクトであった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 先生が指揮した戦闘を上空から見ていたシロッコは、一か月前にキヴォトスに着任したにしては指揮能力がトップクラスに高いと評価していた。まるで敵の位置を全て看破したかのように的確に繰り出される射撃、完璧に見計らったタイミングで投下される補給物資、最前線に布陣したピンク髪の生徒の特性を利用してヘイトを集めて十字砲火を行う戦術。

 

 全てが計算された完璧な指揮であったと、さしものシロッコもそのように評価せざるを得なかった。

 

 

『ほう……。まさかここまで出来る存在とは、思ってもみなかったな』

 

 

 ジュピトリスの艦長を務めていた事もあり人を使う能力に関して、シロッコが元居た時代で彼に比肩し得る者はそういなかった。そういった事もあり、自分が指揮する人間の特性を素早く理解し、正確に運用できていた先生の事が少しばかり興味が出て来た。

 

 

『大体ここの地理や特性は掴んだ。それよりも、あの先生を名乗る人間は気になる。それに──』

 

 

 シロッコの興味は他にもあった。それこそ、先程の戦闘を高みの見物を決めていた中で気付いた事であった。

 

 

『あのピンク髪の少女、凄まじい力を秘めている。それこそ、シロコ以上の何かを感じる。どういう事だ』

 

 

 盾を使って自分に注目を集めて、ショットガンで確実に敵戦力を削っていた、あの少女。

 

 シロッコの琴線に、どうやらホシノは触れたらしい。彼の人を見る目は間違いのないモノであり、同じように高く評価している悪い大人もキヴォトスには居るのだ。

 自分がそのように感じた事に関して間違いだとは思わないが、何故()()()()()()()が知りたかった。きっと彼女には、そう判断されるだけの理由が、原因があるはずなのだ。

 

 

『フフ……ヤザンではないが、面白いな』

 

 

 腹の内を決して見せなかったかつての部下を思い出した。奴は純粋に戦いという物事に全てを掛けていたに過ぎないが、あれも人間の生き方の一つであると今ならば分かる。愉快そうに、妖しく笑うシロッコ。全ての柵から解放された彼は、最早野獣と評したかつての部下と同じである事を理解していた。

 

 彼の見ている方向には、アビドス高等学校から出て何処かへと出撃していった対策委員会が映っていた。

 

 

(けん)に回るのはここまでだな』

 

 

 機体をアビドスが向かっていった方向に向かわせたシロッコは、どのように事態が転んでいくかが気になって仕方なかった。先生の辿る道筋を理解したい、あの力溢れる生徒がどのような選択をするのか。

 そして、自分が目を掛けた彼女がどのように開花していくのか。

 敵対した覚醒者に言われたように、真に傍観者となった──なってしまった彼は、今の現状にそれなりに満足していたのだった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 自律行動しているドローンに上空から観察されている事など露知らず、アビドス対策委員会+先生はヘルメット団が駐屯している前哨基地へと向かっていた。それは、カタカタヘルメット団が定期的に襲撃を掛けてくる問題を解決するため、ホシノ委員長が珍しく自分から動いて考えた計画に基づくものだった。

 

 普段からダラダラとして先輩としての威厳に欠けるホシノだが、こういったようにやる時はやる人間なのだ。しかし、他の委員会のメンバーはそんな委員長の様子に驚くばかり。なにせ、ホシノは一人でカタカタヘルメット団の駐屯基地を特定し、規模や陣地の形状に加え、駐屯している敵の凡その数まで調査をしているのだから余計に驚かされる。普段からその行動力を持っていて欲しいと、ホシノ以外の対策委員会の心中は寸分違わず一致するのだった。

 

 

『っ! ホシノ先輩の情報通りです! 前方にヘルメット団のモノと思われる前線基地を発見!』

 

「ホントにあるなんて……。委員長もやる時はやるのね」

 

「おじさんだってただお昼寝ばかりしている訳じゃないのさー」

 

「そうですよ〜♪ 感謝の気持ちとして、ホシノ先輩には帰ったら膝枕してあげますね」

 

「ノ、ノノミちゃんの膝枕でお昼寝なんて……! こんなに嬉しいことはないよ〜!」

 

 

 薄い胸を張って先輩としての立場を示すホシノ、アビドス対策委員会の委員長は決して伊達ではないのだ。

 ──直後ノノミに甘やかされて、にへらと口を緩ませるホシノ。さっきまでのやる時はやる女雰囲気は何処に行った。

 

「よーし、んじゃあ細かい指揮は先生に任せるねー」

 

“あ、そこは私が考えるんだね。そこも抜かりなく、小鳥遊さんが考えて来てるのかと思ってたよ”

 

「んー、おじさんが考えてもいいけど、さっきみたいに先生の指示に従った方が楽に勝てそうだしさー。そうした方が作戦も考えなくていいからおじさんは楽だし~

 

“楽かはともかく、なるべく危険な目にも合わせないつもりだよ。分かった、それじゃあ細かい布陣はさっきの戦闘と──”

 

 

 そうして、ヘルメット団の基地を目前に控え、暫しの小休止とブリーフィングへと入る事になった先生たち。

 

 

 

 

 

 同じ頃、ヘルメット団の上空には既にシロッコのドローンが待機しており、先生が主導する作戦の開始を待っていた。

 

 シロッコ自身、奴らの基地を軽く偵察してみただけで分かった。ヘルメット団が前線基地と呼んでいる陣地は、『基地』と呼ぶに相応しくない程にお粗末だと言わざるを得ない。積み上げ方が雑な土嚢の壁に適当に掘られている為に高さがバラバラな塹壕、監視台の配置も歪で全く考えられていないとしか思えない。こういった監視塔を配置する際、二つ以上の監視塔から見える監視範囲が被っている必要があるのだが、それが徹底されてないのだ*2。戦場では僅かな隙でさえ、敵にとっては大きなチャンスになる事をヘルメット団は全く考えていないのだろう。

 

 

『これでは彼女たち(アビドス)の力を推し量るには足りんな』

 

 

 彼女たちの力を見極めるいい機会だと思ったが、とんだ茶番になりそうだとがっかりした様子のシロッコ。心なしかドローンも残念そうにフラフラと左右に揺れている(?)。

 

 統率の取れない野獣の群れを蹴散らすことくらい、才能ある彼女たちならば当然のようにやってのけるとシロッコは判断した。直接言葉を交わした訳でも無いのに知ったような口を利く男だが、その予想は裏切られる事無く現実となる。

 

 

 先生たちの初動は、ホシノを前面に出して突破口を開くという戦法は先ほどの戦闘と共通していた。幼稚園のお遊戯会レベルの出来栄えとは言え、曲がりなりにも陣地は陣地。攻撃側よりも防御側の方が有利なのは戦術的に間違いのない話だ*3。アビドス側は寡兵であるので苦戦は必至、かと思われたがそこは先生の指揮が光った。

 

 

「ドローン、展開。上空から背後を取る」

 

『こちらのドローンからも爆弾を投下させます!』

 

 

 シロコとアヤネの駆るドローンが空からの攻撃という、三次元的な攻撃を行った事によって前方にはホシノからの猛烈な攻勢、後方と空中からはドローンがミサイルや爆弾で圧力を掛ける。

 

 たったこれだけの事でヘルメット団は総崩れとなってしまった。陣地の中を右往左往し逃げ場を求めて恐慌状態となったヘルメット団の事を、さすがに可哀そうだと思ったのかホシノの一声で逃げる者は追いかけない事になった。

 甘すぎると思うかもしれないが、体力だって無限にある訳じゃないのだ。不必要な戦闘は行わない方が良いと判断しての事だし、先生もその意見には賛同していた。

 

 しかし、陣地に残った物資に関しては、全てアビドス再建の為に使わせてもらう事になった。具体的には再利用出来そうな弾薬は回収、まだ使えそうな車両や銃火器は全て先生の方で引き取ってオークションへ出品し、少しでも復興資金の足しに。

 各種物品の回収の為レンタカーを借りて来たアヤネに、先生は使えそうな車両をアビドスで接収してはどうかと提案してみたが、アビドスの財政を管理している彼女の顔色は芳しくなかった。

 

 

「維持費が……うちの財政状況では洒落にならないんです。燃料代、整備費、砂に対しての防塵加工もしないといけないってなると、とても車両一台抱える隙間は……無いんです……!」

 

“えっと、うちでお金出そうか?”

 

「うっ……。だ、ダメです! アビドスで運用するなら、アビドスのお財布で管理するのが筋です! なので、本当に残念ですが……」

 

“そっかぁ……。しっかりしてるね、奥空さんは”

 

「ありがとうございます……」

 

 

 そういう事らしい。一時的にシャーレの所有物という事にしてアビドスへ貸与するのはどうかと提案してみたが、これもアヤネには却下されてしまった。なんでも、これ以上先生に良くしてもらってはいざという時に独り立ちできなくなってしまいそうだから、と。アヤネの中でそういった譲れないラインがある事を先生は理解しその思いを尊重して、少しでも高値で買い取ってもらおうと奮起する先生であった。

 

 そうして使えそうな物資やら売れそうな廃材やらを積み出していった結果、ヘルメット団の前線基地はその日のうちに跡形もなく姿を消してしまい、後には砂に塗れた大地だけが残っていた。

 

 

 

 先生が回収すべき物資をシッテムの箱に収納し学校へと帰還した後で、先生は先程交わした会話の中で気になる点があった事を思い出した。

 

 

“ねぇ奥空さん。さっき財政が厳しいみたいな事を言ってたけど、借金ってどのくらいの金額なの?”

 

「え、どうしてその事を」

 

“調べたからね、色々と。別に学校に借金がある事は、キヴォトスでは不思議な事じゃないでしょ? *4

 

 

 先生は事前にシッテムの箱管理AIからそういった話をレクチャーされていた事もあって、アビドスの財政状況や経営に関しても情報を収集しておいたのだ。さすがに深い所までは分からなかったが、凡その活動から判断してもアビドスの経営は余り上手くいっていない事は容易に察せられた。砂漠に呑み込まれつつある学校をたった五人で支えているのだから、銀行から借金をして自転車操業をしていても不思議では無いと先生は思っていた。

 

 そういった事前調査もあり、悪いとは思いつつも半分鎌をかける様にその事を聞いてみた所、やはり借金問題は抱えていそうな反応だった。

 

 

「じ、実のところは──」

 

「ちょ、ちょっと待ってよ! わざわざ話すようなことでもないでしょ! それも、今日会ったばかりの部外者なのに!」

 

「セリカちゃん。私たちが悪いことして抱えたわけじゃあるまいし、話しちゃってもいいと思うよ~?」

 

「先輩の言う通りだよ。色々気になるけど、先生は信頼できる大人だと思う」

 

「で、でも……! 今日来たばかりの大人じゃん! 先生がいたからって借金がすぐになくなる訳でも無いし!」

 

 

 感情を爆発させるセリカ。先生の事が気に入らないという訳ではないが、今までどんなに助けて欲しいと願っても見向きもしなかった大人が、今になってやって来た事実を認めたくないのだ。これまでアビドスの問題は、アビドスの五人で乗り越えて来た事。それを、今日やって来ただけの大人に背負わせたくないという、セリカ自身のプライドもそこには含まれているのだろう。

 

 

「確かにセリカちゃんの言う通り、一朝一夕で解決できる問題じゃない。でも、この問題に耳を傾けてくれる大人は、後にも先にも先生だけだと思うんだよね、おじさんは。事実、こんな辺鄙な場所にまでわざわざ足を運んでくれた訳だしさー」

 

「そ、それは……」

 

「セリカちゃん、私は先生の事信じてみたいです。……一緒に、先生を信じてみる事は出来ませんか?」

 

 

 ホシノは理論的に、ノノミは感情的に、セリカへと訴えかける。

 

 セリカは顔を伏せて唸りながら考えているが、それでもキッと先生を鋭い目つきで睨みつけ、

 

 

「今更この学校の問題に大人が介入するなんて、私は認めない! 例え先輩や委員長が認めても私は……、っ!」

 

「セリカちゃん!」

 

 

 捨て台詞とばかりに先生に──遅れてやって来た大人に対して厳しい言葉を投げつけて、その場を走り去ってしまった。様子を見に行くと言ってノノミもその後を追いかけ、部屋には四人が残された。その中で、先ほどの先生の疑問に答える様にホシノが口を開いた。

 

 

「……先生の予想していた通り、確かにうちには借金があるんだ」

 

 

 言い難い事らしく、柔らかな声でしかし重い口調で事実を告げていくホシノ。

 

 

「問題なのはその額でさ。ざっと九億円くらいあるんだ」

 

 

 捕捉するようにアヤネが「9億6235万円です」と付け加える。

 

 借金は恥じる事ではない、しかしいくら何でも金額が大きすぎる。先生は驚きを隠すことが出来ず、目を見開いてしまう。

 この天文学的な借金を返済できなければ、アビドス高等学校は銀行の手によって引き取られる事となり廃校手続きを取らなければならない。そのようにアヤネは付け加え、口を閉じる。

 

 

 先生は考え至る。

 それが、この学校に生徒が五人しかいない本当の理由。砂漠化による環境の変化も間違いなく原因の一つだが、それを解決しようと積み重なった借金がこの学校を苦しめてしまっている。約九億円にも膨れ上がった借金を返す事を諦めてしまった生徒が、続々と他の学校へと流出してしまったのだろう。

 

 

「私達は、アビドス対策委員会は、この学校の廃校を何とか避ける為に活動している委員会なんだよ。どう、先生。とんでもないでしょ~?」

 

 

 軽い様子で聞き返してくるホシノに先生はすぐに言葉を返す事が出来ず、事情を説明してほしいと辛うじて聞き返す事しか出来なかった。

 

 数十年前に突如として起こった砂嵐の影響で学区の一部や自治区郊外が砂に襲われるという、()()()()が起こった。元々、アビドス自治区では小さな砂嵐が起こる事は珍しくなく、それを利用して毎年のようにアビドス砂祭りという催しが執り行わていた。

 

 しかし、その時の砂嵐は想像を絶する規模のモノであった。多額の資金を使って被害から回復したかったアビドスだが、融資をしてくれる銀行は一向に現れる事無く。結果として、高金利の悪徳金融業者に頭を下げるしかなかった。

 しかし、その後も砂嵐の被害は拡大の一途を辿り、それの被害対応の為にお金が必要になり……。

 

 後は聞かなくても分かるような無限ループだった。高金利によって利息も意味が分からない程に跳ね上がり、現在は利息を返す事すら精一杯で元金が全く減っていない状況。

 

 その頃から、()()()ヘルメット団のような底辺チンピラ集団に絡まれるようになったらしく、ようやく直近の問題が片付いたところだったのだという。

 

 

 先生はそれらの概要を聞いて、確かにとんでもない問題だと思った。

 

 しかし、そこで逃げ出すような人間ならば、先生には選ばれていないのだ。

 

 

“私は、対策委員会の事を見捨てる事は決してしないよ。シャーレが、私が、貴方たちの力になる事を約束する”

 

 

 先生は力強く、そう宣言した。

 

 ──アビドスに、僅かだが光が差し込んだ瞬間だった。

*1
キヴォトスでも随一のセキュリティを簡単に突破した超高性能人工知能からのハッキング攻撃を、居眠り中のくしゃみ一つで弾き飛ばす程度には最強。電力を消費して全周囲にバリアを展開したり、戦場をスキャンして敵味方の位置をシッテムの箱上に表示したり、何か他にも色々出来たりする。そんな管理AIが一番恐れるのは端末の充電が切れる事。連邦生徒会長の声に限りなく似ている。

*2
本当の戦場だとどうなのかは知らない。だが、一人の人間のチェックで済ませてしまうより、二人以上の人間でダブルチェックをした方が良いというのは当然の話である。そうした方がミスは削減できるだろう、つまりヘルメット団はミスをしたという事。

*3
一般的に攻撃側は防御側の三倍の戦力を用意する必要があるとされる。陣地攻撃ならば尚更の事である。

*4
本当かどうかは知らない。しかし、あれだけ毎日レベルでドンパチやっていれば弾薬費や被害を受けた町の修繕費など、色々と出費が嵩む事は容易に想像できる事から、借金を背負っている学校は他にも存在していてもおかしくは無いと判断。アビドス程の規模ではないにせよ。




今回も拙作を読んで頂いて、少しでも楽しんで頂けたならこれ以上の喜びはありません。
ありがとうございました。

活動報告の方に前まであった自分語りは移しておきました。色々心境の変化もあって匿名を解除したので、そういうことは活動報告の方にでも投げておこうと思います。
お目汚し失礼しました。
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