中央歴1639年11月30日 19時5分 日本国 長崎県 佐世保市 赤崎町
日が暮れるのもすっかり早くなり、この時間になると、窓から見える景色も夕日に照らされたオレンジ色の景色から、黒をベースに様々ないろでキラキラと輝く佐世保の街並みになる。
ニュースキャスター『続いてのニュースです。昨日午後14時頃に、海上自衛隊の護衛艦が所属不明船舶の襲撃にあっていた貿易船を交戦の末救助。
その際に今月24日からパーパルディア皇国に侵攻されているアルラスタ王国から亡命していた、アルタラス王国の王女であるルミエス王女を保護しました━━━━』
チラり、と夫の方を見てみると「ああこれか」と言わんばかりの顔でテレビを見ている。
恵「何があったの?」
すると幸輝は苦い顔をして“まあ箝口令敷かれてないしニュースでもやってるしな……”と独りごつった上で
幸輝「いや、この艦艇佐世保で試験してる新型艦でさ…帰ってきた時に上の方が
中央歴1639年11月29日 13時57分 日本国領海 沖縄沖 護衛艦うみかぜ
CIC要員「艦長、飛行中のV-BATが気になるものを…」
艦長「正面モニターに出せ。」
サブウィンドウが表示され、V-BATからの映像が映される。
そこには必死に逃げる1隻の貿易船と、それを襲う3隻の船が映っていた。
艦長「助けに行くぞ。対水上戦闘用意!」
CIC要員「対水上戦闘」
各部から「対水上戦闘用意よし」と報告が帰ってくる中、1人のCIC要員があることに気づく。
CIC要員「艦長どうされたんですか。そんな浮かない顔をして。」
艦長「いやなぁ…妙に引っかかるんだよ……」
うぅん、と艦長が唸る。
艦長「この間パ皇がアルタラスってとこに侵攻したじゃん。」
CIC要員「それが何か?」
艦長「いやさ、この貿易船が来たのアルタラス王国のある方向じゃん。何よりさ、たかが海賊が3隻のも組んで襲うなんてこと、今まであったか?」
言われてみればそうだ。異世界転移以降施行された、“日本近海海賊対処法”における作戦行動を、私自身護衛艦あさひの乗組員として何度か経験してきているのだが、常に海賊は1隻だけだった。
他の事例でも、今まで1度たりとも今回のような事例はなかった。
艦長は続ける。
艦長「この3隻のは海賊に偽装したパ皇の艦艇なんじゃないのか?」
CIC要員「だとしてもなぜ?」
艦長「この貿易船、こいつも怪しい。今までこの海域を通る船は無かったし、今まで日本が国交を結んだ国には、日本方面にくる船に優先的にAISを配布してつけさせてる。けどあの船からAISの反応が出ないんだよな。」
CIC要員「だとしたらこの船は一体…?」
一瞬の沈黙。
CICを囲むように取り付けられたモニターや、それぞれのディスプレイが怪しく光を放つ。
徐に口を開く艦長。
艦長「わからん!!もしかするとアルタラスから亡命してきたお姫様でも乗っているのかもしれんな!!」
ケタケタと笑いながら艦長が冗談交じりに言う。
CIC要員「なんですかそれw」
いつもの艦長である。
艦長「さぁ仕事だ。いつでも砲撃できるようにしておけ。」
そういうと全員が持ち場に向き直る。
緊張が戻ったCICの中で艦長は1人考える。
艦長(さっき変に気負わせないためにコイツらにはああ言ったが、あながち間違いではないかもしれんな…)
正面モニターに映る貿易船に目をやる。
艦長(いずれにしろ、厄介事になるのは確定だな…)
机に置かれたコーヒーを1口飲む。
モニターに映る青色とは対称的に、CICは灰色に支配され薄暗い。
ついに全周囲モニターが件の4隻を捉える。
V-BATからの映像では、ついに追いつかれ、大砲で襲われ始めている。
艦長「対水上戦闘用意!」
各部から「射撃用意よし」と報告が帰ってくる中、外では
キィィィィィィィン……
と甲高い音が辺りに響く。
CIC要員「CIC指示の目標!」
一瞬の沈黙。息を吐く。
艦長「攻撃初め!」
砲術長「主砲撃ちィ方始め!」
一瞬の衝撃。人には見えない速さで主砲から砲弾が飛び出す。
ガァンッッ!!!!!!
という発射音が続けて3回、辺りに響く。
電気の力で放たれた鉄の槍は、海賊船目掛けて飛翔したかと思うと、一瞬でそれを貫く。
貫かれた海賊船は、一瞬遅れてきた
ドォォォォォォォォォン!!!!
という轟音と共に、乗組員共々弾け飛ぶ。
そして何が起きたか理解する暇もなく、続く2隻目と3隻目の海賊船も、同様に弾け飛んでいった。
正面モニターに映し出された2つ目のサブウィンドウに映る主砲から、1つ目のV-BATからの映像が映るサブウィンドウに目を移すと、丁度3隻目の海賊船と思わしき所属不明船舶に弾着していた。
ダーツが当たった風船のように、文字通り弾け飛ぶ所属不明船舶。
艦長「貿易船を映せ、詳しくだ。」
程なくして画面に映った貿易船には、複数箇所穴が空いており、いくつかの遺体も見受けられた。
艦長「すぐにSH-60を飛ばせ、本艦も急行するぞ。それと、場合によっては曳航する。その準備もしておけ。」
曳航の指示を出すのには理由がある。怪我人がヘリで収容できる数を超えている可能性があるからだ。
艦長「さて、鬼が出るか蛇が出るか…」
何かが聞こえる。
「……らは海…自………あ……直ち…停船…よ。繰り返……た…ち…停…せ……」
分からない。もう何を言われているのかも理解できない。
先程、有り得ないものを見た。
追っ手の船が、粉々に弾け飛んだ。
だが有り得ない、そんなことは起こりえない。
きっと勝手にそれが起きたと思い込んでいるだけだろう。
これもさっき受けた毒矢の影響だろうか。
そんなものが見えたと勘違いしまうほど、死に近づいてしまった。
泣きそうな顔でリルセイドが何かを言っている。
もうそれすらも分からない。
リルセイドの隣に誰かくる。
青い服を着ている。誰だろうか。
しかしどの道、私はもう助からない。
命からがら自分を逃がしてくれた父や臣下の者たちにどう詫びればいいのだろうか…
ルミエス「ごめんなさい…」
そうつぶやくと、自分の意識は深い水底に沈んで行った。
中央歴1639年11月30日 19時5分 日本国 長崎県 佐世保市 赤崎町
ニュースキャスター『事件後、ルミエス王女は市立那覇中央病院へと搬送。一命を取り留め今日の午前11時頃に意識が回復されました。外務省並びに政府は━━━━━』
幸輝「あ、助かったんやな。良かった良かった。」
恵「え、でもこれヤバくない?」
疑問を呈す恵。
幸輝「えなんで?」
恵「だってアルタラス王国って侵略されたんでしょ?ならこの国で亡命政府立てる可能性ない?」
それを言われハッとする幸輝。
幸輝「確かにな、それ口実にパーパルディアが喧嘩ふっかけて来るかもしれへんなぁ。」
幸輝はまだこの時は知る由もなかった。
自分が想定しているよりも遥かに最悪の事態が発生し、両国が戦争になることを。
中央歴1639年12月3日 14時27分 パーパルディア皇国 皇都エストシラント 皇城
重臣達が平伏し、張り詰めた空気が場を支配する。
議長「これより、御前会議を開始します。」
皇帝であるルディアスが話し出す。
ルディアス「アルデよ、アルタラスはどうなっている?」
アルデ「既に掌握し、撤退準備に入っています。」
軍の最高司令官であるアルデが答える。
それに対して満足気な表情をするルディアス。
しかし一呼吸置くと一気に雰囲気が変わる。
ルディアス「ところで、だ。」
一気に場が凍る。
ルディアス「どうやら最近、たかが監査軍を1度斥けた程度で調子に乗っている蛮族国家があるそうだな?」
一呼吸置く。
ルディアス「日本国…だったか?」
この場にいる全員に冷や汗が流れる。
ルディアス「最近、報告書を読んでいると、どの国も挙って“日本が”と言っているらしいな。」
各外務局長はより一層冷や汗をかく。
ルディアス「とはいえまあ、日本が皇国に舐めた態度をとるようになったのは、監査軍が敗北したからでもあるな。」
アルデの額に冷や汗が浮かぶ。
ルディアス「で、どうするのだ?アルデよ。」
それに対して急いで答えるアルデ。
アルデ「い、今すぐに軍を編成し懲罰へ向います!!」
ルディアス「馬鹿者。」
嘲笑したようにルディアスが言う。
ルディアス「我々は寛大で寛容なパーパルディア皇国ぞ?日本にも反省の機会をやろう。」
アルデ「どのように…でしょうか?」
恐る恐る聞くアルデ。
ルディアス「分からぬか?フェンをつぶすのだ。昔から舐め腐った奴らではあったが、特にココ最近は日本の名前をすぐに出して余計舐め腐っている。それに日本もフェンと関係を深めているようだしな。これなら、日頃生意気な国も罰せれて、調子に乗っている新興国にも深く注意できる。」
なるほど、これは理にかなっている。
事実この前の監査軍派遣の理由は、フェン南部の一部、縦横約20kmの範囲を498年間の租借、更にはそれの副次的効果で我が国から準文明圏国扱いを受け、技術供与まで受けれるという、もはや慈悲にすら近い破格の待遇と副次的効果に対してキッパリと
そうなれば、列強国としてのメンツに泥を塗られたこちらとしても
おそらく日本とフェンが大規模な水上艦隊を組織して、必死に抵抗したのだろう。
そうでなければ説明がつかない。
そして、こういった列強国への反抗はお互いが力を合わせれば勝てるという淡い希望にも近い信頼があるからだろう。
であれば、その片方を叩くだけで、簡単にもう片方は態度を改める。
さすが陛下、素晴らしい考えだ。
ルディアス「できるな、アルデよ」
アルデ「はい、勿論であります」
ルディアス「また日本とフェンに返り討ちにされるかもしれんぞ?」
アルデ「あの敗北は、装備が旧式の監査軍であったからです。だからといって文明圏外国に敗北するなど以ての外ではありますが…しかし今回は正規軍です、絶対に負けることは無いでしょう。」
ルディアス「それでこそだ。」
そういうとルディアスは何かを思い出したか、付け加える。
ルディアス「それとだ、わかっているとは思うが、ガハラには手を出すなよ」
アルデ「勿論であります!が、しかし何故…?」
ルディアス「あの国は未解明な部分が多すぎる、それに我が国のワイバーンロードやオーバーロードすら凌駕する風龍が軍の主力だ、おそらく返り討ちにあう。何よりかの国には皇国の初代皇帝が色々と世話になったからな…恩を仇で返すような真似はできんよ。」
さすが陛下、弱小国であっても一度助けられた恩があるならば共に歩むつもりとは、まるで海のような広い心を持っている。
ルディアス「戦略や細かいところはお前に任せる。戦後の領土や国民の扱いについても同義だ。」
思わず全員が息を飲む。一国の領土と国民を軍という1つの組織が自らの思いのままに扱っていいという暖かいという言葉では済まされないほどの温情。
こうなれば軍の士気はうなぎ登り。
アルデは床に額を打ち付ける勢いで平伏する。
アルデ「あ…ありがたき幸せ!!必ずや陛下のご期待に沿う事をお誓い致します!!」
中央歴1640年1月22日 19時35分 日本国 長崎県 佐世保市 赤崎町
首相の記者会見のライブ中継は、開始早々に日本人にとって衝撃と波乱の内容で始まった。
会見が始まったかと思うと、すぐにテロップが流れ出す。
“今から残酷且つグロテスクな映像が、20分間流れます。お子様がテレビを見ないようにしてください。”
慌てて優太をリビングから遠退ける。
そして始まる映像。
そこには
拉致された日本人に対する交渉に向かった外務省の職員3名。
そしてその交渉が始まると直ぐに、パーパルディアから提示された、日本を事実上の植民地化とする旨の命令書。
そしてその命令書が出されて直ぐに、交渉の場に連れ出され、惨殺されて言った拉致国民約500名。
それに猛烈に抗議し、殺された外務省職員1名。
映像が終わる。
そして首相が口を開く。
拓海『以上のことから我が国は、フェンに残る国民を約700名を保護するために、陸海空全自衛隊をフェン王国に派遣。パーパルディア皇国を撃滅します。』
12年前、中国軍に想像を絶する苦しみを与え、3年前にロシアを恐怖のどん底にたたき落としたバケモノが、大きく口を開ける。
次はどんな美味しい料理が出てくるのだ、と。
遂に米海軍にsidekick仕様のF-35Cが納入されたらしいですね。
ウェポンベイに入る空対空ミサイルの本数が4発から6発に増えるのは控えめに言ってデカい。
そしてAIM-260の続報もようやく発表されましたね。近々配備始まるのかな…?
あれ、もしかして近い将来にはF-35はAIM-260六発積みが出始める…ってコト!?
わァ…………ァ…(脳死)
追記:「キィィィィィィィン……」のところの文字色を明るくできません…どうしたらいいかご存知の方がいたらコメントで教えて頂けると幸いです……