ポケットモンスターSV 新たな物語の始まり 作:通りすがりのポケモントレーナー
基礎テストを終えて、レポートも書き終わり、オレンジアカデミーに戻ってきたリコたち。そして、リコたちがシンヤと合流すると、オレンジアカデミーのエントランスホールでは、オレンジアカデミーの制服を着ている、テラスタルを研修を受けに来ている人たちが集まっていた。
オレンジアカデミー・エントランスホール
ジニア「皆さん、ありがとうございましたぁ。後でしっかり、皆さんの書いたレポートを拝見させてもらいますよぉ」
クラベル「では、次の課題ですが…その前に、私から二つほど、皆さんに発表があります」
シンヤ「発表?」
ピカチュウ「ピィーカ?」
クラベル「まず一つ目は、私たちから皆さんに、あるお楽しみを用意しました」
リコ「お楽しみ?」
ドット「何だろう?」
クラベル「それは《交流戦》です。私の目の前にいる、シンヤさん以外の皆さんには、特別ゲストの方々とポケモンバトルをしてもらいます」
ロイ「やったぁ!バトルだ!」
アン「そうこなくっちゃ!」
リコ「でも、どうしてシンヤはバトルできないんだろう?」
シンヤ「俺はテラスタル研修を受けてないからな」
リコ「あっ、そっか」
シンヤ「だから今回は、リコたちのバトルを見学させてもらうよ」
クラベルからの2つの発表。その1つは、シンヤを除いたエントランスホールにいる、テラスタル研修を受けている全員が、特別ゲストとポケモンバトルをするというお楽しみだった。それを聞いたリコたちは、特別ゲストとバトルするのが楽しみなようで、みんな笑顔になっていた。
サンドウィッチ「どうせバトルするなら、オニ強い相手とバトルしたいんですけど〜」
クラベル「そのことならご安心ください。…あっ、丁度お着きになられたようです」
スタッスタッ
オモダカ「お待たせいたしました。今回は特別に、パルデア地方の《四天王》の方々に、交流戦の相手をしていただけることになりました」
リコ「四天王⁉︎」
ロイ「すごい!」
オニギリ「ほう…」
サンドウィッチ「少しは楽しめそうじゃん」
オモダカ「皆さんが四天王の方々とのバトルで、その才能を発揮されること、私たちも楽しみにしています」
「「「「はい!」」」」
どうやら特別ゲストとは、パルデア地方の四天王のことのようだ。本来であれば、四天王とバトルするには《ジムバッジ》を集めなければならないが、今回は特別に、ポケモンリーグの委員長でもあるオモダカが四天王とバトルするチャンスを作ってくれたようだ。
クラベル「そして、二つ目の発表ですが。二つ目は、《イッシュ地方》に建てられている、我がオレンジアカデミーの姉妹校である《ブルーベリー学園》から、留学生の皆さんがやってきます」
シンヤ「えっ!」
リコ・ロイ「「留学生?」」
ドット「学校に通ってる人が、他の学校に勉強しに来る人のことだよ」
クラベル「留学にやって来る生徒の皆さんは、ブルーベリー学園の《リーグ部》という部活に入部している生徒さんたちだけで、生徒の皆さんと一緒にいらっしゃる先生は、私の古い友人でもある、ブルーベリー学園校長の…」
オモダカ「…あっ、クラベル校長」
クラベル「どうやら、いらしたようですね」
クラベルから発表された二つ目の内容は、イッシュ地方に建てられている、オレンジアカデミーの姉妹校の《ブルーベリー学園》から、留学生がやって来るという発表だった。以前クラベルから、自分が《キタカミの里》に行った時に知り合った、ブルーベリー学園の生徒でもある、《スグリ》と《ゼイユ》が来るとは聞いていたが、まさか他の生徒が来るとは思っていなかったので、シンヤはびっくりしていた。すると、エントランスホールにある扉から、下のズボンがブルーベリー色の学生服を着た、ブルーベリー学園の生徒たちがエントランスホールに入ってきた。そして、ブルーベリー学園の生徒たちの先頭には、頭に藍色のリボンが巻かれた白い中折れハットをかぶっている、褐色肌の年配の男性が歩いていた。
???「ベルちゃん!久しぶりー!」
クラベル「…《シアノ先生》。生徒の皆さんの前で、その呼び方は…」
シアノ「まあいいじゃない。僕とベルちゃんの仲なんだからー」
クラベル「ハァ…ところで、留学にやってきた生徒の皆さんは、これで全員ですか?」
シアノ「うん。《校長》である僕を含めて、リーグ部に所属している《30人》の生徒だけだよ」
クラベル「そうでしたか」
ブルーベリー学園の生徒たちがエントランスホールに入ってくると、ハットをかぶっている男性がクラベルの前にやってきた。その男性は《シアノ》といって、黒のワイシャツの上に藍色の白ジャケットを着ていて、白ズボンを穿いていた。首元には蝶下げ結びの赤いネクタイを巻いており、ベストの上に出している。ネクタイは学園校章を象ったシルバーのネクタイピンでとめていた。
スーツの襟下からは黒のストールをなびかせており、《ヒトツキ》のような縫い目と藍の模様が入っている。どうやらこの人が、ブルーベリー学園の校長のようだ。そして、このオレンジアカデミーに留学してきたのは、ブルーベリー学園のリーグ部に入部している、30人の生徒だけだった。
クラベル「えぇ、皆さん。こちらの方は、私の昔からの知り合いで、イッシュ地方のブルーベリー学園で校長をしている。《シアノ校長先生》です」
シアノ「初めまして。僕、シアノ。よろしくー」
「「「「……よろしくお願いします」」」」
リコ「なんか…」
ロイ「クラベル先生と違って…」
シンヤ「すごいファンキーな感じだな…」
ドット「うん」
シアノがリコたちに挨拶するが、クラベルのことをベルちゃんと言ったり、のんびりした挨拶をされたことで、みんなはシアノにどう反応すればいいのか分からなかったが。とりあえず、シアノに挨拶をすることにした。
オモダカ「ブルーベリー学園の生徒の方々は、少しの間ですが、オレンジアカデミーに滞在します。他校との交流は、皆さんにとっても良い経験になるでしょう」
クラベル「皆さん。仲良くしてくださいね」
(シンヤ・先生を除く)全員「「「「はい!」」」」
クラベル「それでは、ブルーベリー学園の生徒の皆さんも来たことですし、早速ですが、交流戦を始めます。もし良ければ、ブルーベリー学園の生徒の皆さんも、交流戦を見ていってください」
シアノ「ん?交流戦?ベルちゃん、何それ?」
クラベル「だから、生徒の前でベルちゃんは辞めてください。実はこれからここにいる皆さんに、パルデア地方の四天王の方々と、ポケモンバトルをしていただくのです」
シアノ「へぇー!四天王とバトル!僕の学校にも、《ブルべリーグ四天王》って呼ばれてる子たちがいてね」
クラベル「ほほう。ブルベリーグ四天王…」
シアノ「簡単に言えば、ブルーベリー学園の四天王ってこと。あっ、そうだ!《タロちゃん》!《カキツバタ君》!《アカマツ君》!《ネリネちゃん》!それに《スグリ君》!ちょっと前に来てー!」
シアノがブルーベリー学園の5人の生徒の名前を呼ぶと、エントランスホールにいるブルーベリー学園の生徒たちの中から、シアノに名前を呼ばれた5人の生徒たちが、シンヤたちの前に歩いてきた。
シアノ「この子たちがブルーベリー学園の四天王で、そのうちの1人の子がチャンピオンなんだー。みんな、順番に挨拶をして」
カキツバタ「じゃあオイラから。オイラは《カキツバタ》。ブルべリーグ四天王の1人。よろしくなあ」
最初にみんなに挨拶をしたのは、白髪に薄紫色のメッシュが入った特徴的な髪型をした少年だった。服装は紫色のジャージの上に、黒をベースに金のラインが入ったジャージを羽織り、金色のドラゴンの柄が入った紫色のマントをスカートのように腰に巻いていて、ジャケットにはオラチフの顔が描いてあった。
シアノ「彼は《ドラゴンタイプ》の使い手で、お爺様がイッシュ地方のジムリーダーなんだー」
タロ「あっ、人の個人情報を勝手に、そういうのよくないと思います!」
シアノ「まぁいいじゃない。じゃあ次は、タロちゃんが挨拶をしてー」
タロ「もう!…皆さん、初めまして。私は《タロ》といいます。ブルべリーグ四天王の1人で、使っているタイプは《フェアリータイプ》です」
2番目に挨拶をしたのは、太眉に垂れ目で、穏やかそうな印象の顔立ちをしている女の子だった。髪型は毛先を切りそろえたミディアムヘアーで、菖蒲色をしていた。眉毛・睫毛・瞳は茶系であり、宝石のような緑色の菱形をあしらったヘアピンを、頭の両側につけて耳を出していた。服装は制服の上から、ニット生地らしき藤色の長いカーディガンを羽織っていた。
シアノ「タロちゃんは2年生で、お父上はイッシュ地方のジムリーダーでねー」
タロ「あっ、今度は私の個人情報を勝手に、そういうの本当によくないと思います!」
シアノ「さぁ、どんどん挨拶をしてー」
アカマツ「じゃあ次は俺が。俺の名前は《アカマツ》!ブルべリーグ四天王の1人で、使っているタイプは《ほのおタイプ》!料理作りが好きなんだ!よろしくな!」
3番目に挨拶をしたのは、髪の色が炎のような赤髪の元気な少年で、手にフライパンを持ち、袖と裾が赤く縁取られたコック服を制服の上に着ていた。
シアノ「そして、最後の四天王は」
ネリネ「《ネリネ》といいます。ブルべリーグ四天王の1人で、《はがねタイプ》を使っています」
4番目にみんなに挨拶をしたのは、髪を編み込んでネジ型にした髪型が特徴的な、眼鏡をかけた褐色肌の少女だった。長袖長ズボンの制服を着ていて、灰色のブーツを履いていた。
シアノ「この子たちがブルーベリー学園の四天王で、ブルベリーグ四天王だよー。そして最後に、ブルーベリー学園《チャンピオン》の《スグリ》君だー」
スグリ「……スグリ」
シンヤ(ッ!あれがスグリか!…なんか、雰囲気がだいぶ変わったな)
最後に挨拶をしたのは、前髪をヘアバンドで後ろに無理矢理括り纏めたオールバックで、右側に一房前髪が残っている少年だった。服装はジャージを全開にし、その下は赤いタンクトップ1枚という、ワイルドな格好をしており、瞳のハイライトも消え、目の下にはうっすらクマができていて、首のところにホクロがある少年だった。この少年こそ、シンヤが《キタカミの里》に行った時に出会ったスグリなのだ。しかし、スグリの挨拶は4人と違って名前を言っただけなので、シンヤとシアノ、ブルーベリー学園の生徒以外の全員は、ポカンとした顔をしていた。
アン「なんか、他の人たちと違って…」
ドット「ちょっと暗い感じが…」
ロイ「具合が悪いとか?」
リコ「う〜ん。そうなのかな?」
シアノ「あっ、そうだ。この中に、《シンヤ》君っていうトレーナーがいると思うんだけど。誰かな?」
スグリ「ッ!」
リコ・アン・ロイ・ドット「「「「えっ⁉︎」」」」チラッ(シンヤを見る)
シンヤ「…えっ?…俺?」
クラベル「シンヤさんですか?」
シアノ「うん。うちの生徒の《ゼイユちゃん》って子から、シンヤ君を是非、ブルーベリー学園にって推薦をされてねー。それで、一体どんな子かなーって」
クラベル「…シンヤさん。すみませんが、前の方に来ていただけますか」
シンヤ「あっ、はい」
リコ(シンヤをブルーベリー学園に推薦⁉︎それに確かゼイユって、前に校長先生が言ってた、シンヤがキタカミの里に行った時に知り合った人だったはず…)
スタッスタッ(シンヤが前を歩く)
シアノからシンヤの名前が出されると、シアノ以外のエントランスホールにいる全員は驚いた顔をしていた。そして、クラベルから前に来てくれと言われたシンヤは、ピカチュウと一緒にスグリたちがいる前の方に歩いて行った。
スグリ(…シンヤ…やっと会えた)
シンヤ(…スグリ)
シアノ「君がシンヤ君?」
シンヤ「あっ、はい」
シアノ「……ん?君ってもしかして、以前《イッシュリーグ》で優勝して、今年の《ポケモンWCS》で優勝した、あのシンヤ君かな?」
シンヤ「はい…そうですけど」
研修生「えっ!」
ブルベリ生徒「あっ、テレビで見たことある!」
研修生2「すげぇ!本物だ!」
ブルベリ生徒2「何でここに?」
アン「シンヤ、すごい注目されてるね」
リコ「う、うん」
シアノがシンヤの顔を見て、シンヤが以前イッシュリーグで優勝したことや、今年のポケモンWCSで優勝したシンヤだと聞くと、オレンジアカデミーの制服を着ている研修生や、ブルーベリー学園の生徒たちは騒ぎ出した。
カキツバタ「へぇ〜、アンタがシンヤか。よろしくな。(^_^)」
シンヤ「えっ?…ああ、よろしくお願いします」
タロ「あなたがシンヤさんですか。初めまして。あなたの話は、パパからよく聞いています。(^_^)」
シンヤ「えっ?…パパ?(・_・)」
リコ(むぅ〜〜!あのタロっていう人、シンヤと距離が近い!しかも、2人でなんかこそこそ話してるし!)
アン(…へぇ〜、リコって、シンヤが他の女の子に近づくと、こんな顔をするんだ。…でも、シンヤもリコのことを大切にしてるし、他の女の子に目移りするなんてことはないと思うけど)
シンヤがシアノと話をしていると、カキツバタとタロの2人が、シンヤのいるところに歩いてきて、シンヤに挨拶をした。そして、タロがシンヤの前に歩いきて笑顔を向けると、リコはヤキモチを焼いてしまう。目元の下が赤くなっていくリコは、軽く左頬を膨らませ、怒った顔をしてシンヤとタロの2人を見ていた。シンヤが前のイッシュリーグの優勝者であることや、今年のポケモンWCSの優勝者だと知ってからは、みんなシンヤの方に目を向けていて、リコが怒った顔をしてると気付いたのは、リコの隣にいるアンだけだった。
シアノ「あっ、そうだ!良ければ、シンヤ君の実力を見せてくれないかな?」
シンヤ「えっ?…それって、ポケモンバトルの実力ですか?」
シアノ「うん。うちの学校はポケモン勝負の教育に注力していてねー。バトル学の授業も、ポケモン勝負に関することが多いんだよ。だから、君の実力がどれほどのものなのか、ぜひ見せてほしいんだー。最初はゼイユちゃんに推薦されて興味があっただけなんだけど。実際君に会って、僕もいいなーって思えたからね」
クラベル「ほほう!シアノ先生もそう思われますか!…って、ちょっと待ってくださいシアノ先生!勝手にシンヤさんにバトルを見せてほしいなどと…」
シアノ「別にいいじゃない。それとも、シンヤ君も四天王とバトルするの?」
クラベル「いえ、四天王の方々とバトルするのは、シンヤさんを除く、テラスタル研修を受けている皆さんだけです」
オモダカ「それにシンヤさんは、以前パルデア地方に来た時に、パルデアの四天王と戦って勝利していますし。私にも勝っていますから」
シアノ「だったらいいじゃないー。ベルちゃんやここにいるみんなだって、シンヤ君のバトルを見たいと思わない?世界チャンピオンのバトルするところなんて、滅多に見られないしー」
オモダカ「それは…見たいとは思いますが…」
クラベル「シンヤさんの意見を聞いてみないと…」
シアノ「う〜ん。まあ確かにそうだよねー。…シンヤ君、君はどうかな?」
シンヤ「俺は別に構いませんけど。バトルを見学してるだけじゃつまらないと思っていましたし、バトルができるなら、こっちからお願いしたいぐらいです。なっ、ピカチュウ」
ピカチュウ「ピカビィーカ!」
シアノ「そっかー!ありがとう!」
ブルベリ生徒「おぉ!すげぇ!」
研修生「世界チャンピオンのバトルが見られるなんて!」
ブルベリ生徒2「ラッキー!」
どうやらブルーベリー学園は、ポケモン勝負の教育に力を注いでいるようで、ポケモンバトルに関する授業も多いようだ。そして、ゼイユからシンヤを推薦していたこともあり、シンヤはシアノから、ポケモンバトルの実力を見せてほしいと言われた。そして、シンヤがバトルをすることを了承すると、周りにいる人たちは、シンヤのバトルを見られることに興奮していた。
シンヤ「でも、俺は誰とポケモンバトルをすれば?」
シアノ「ああ、そうだったね。君の相手を考えてなかったよー。じゃあ、相手はうちの学校の生徒にしようかー。誰が…」
スグリ「俺がやりたい!」
シンヤ「ッ!スグリ…」
スグリ「俺、シンヤとポケモンバトルがしたい!」
シンヤ「…」
シンヤが誰とバトルすればいいのかとシアノに聞くと、シンヤの対戦相手を決めていなかったシアノは、自分の学校にいる生徒とシンヤをバトルさせることに決めたようだ。そして、シアノがシンヤとポケモンバトルをする相手を決めようとすると、いきなりスグリがシンヤとバトルをしたいと言い出した。さっき挨拶をしてからずっと黙っていたスグリが、いきなりシンヤとバトルをしたいと大きな声を出したことに、リコたちは驚いていた。
アン「…なんか」
ロイ「さっきと雰囲気が…」
ドット「…全然違う」
リコ「うん」
シアノ「…カキツバタ君たちはどうかな?シンヤ君とバトルするのは、スグリ君でいいかい?」
カキツバタ「オイラは別にいいぜぃ」
タロ「私もいいですけど…」
アカマツ「俺もいいよ」
ネリネ「ネリネも構いません」
シアノ「よし!じゃあシンヤ君の相手は、スグリ君で決定だ!世界チャンピオンと、うちの学校のチャンピオンのポケモンバトル。きっといいバトルになるね!」
シンヤ「…あの、使用ポケモンの数はどうしますか?ルールなんかも決めておかないと」
シアノ「そうだねー。…どうせなら《フルバトル》にしようか」
シンヤ「フルバトルですか」
シアノ「うん。6対6のフルバトルで、ポケモン一体ずつの勝負。試合時間とポケモンの交代は無制限で、先に相手の6体のポケモン全てを倒した方の勝ちにしよう。そうすれば、シンヤ君もスグリ君も思いっきりバトルができるでしょう?」
シンヤ「…《テラスタル》や《メガシンカ》、それに《Zワザ》なんかはどうしますか?」
シアノ「ああ、そっか。それもあったねー。う〜ん。ここはテラスタルの地であるパルデア地方だしー、お互いにテラスタルだけで勝負することにしよう。ベルちゃんもそれでいい?」
クラベル「全くあなたという人は、勝手にどんどん話を進めて…分かりました。それでは、シンヤさんとスグリさんのポケモンバトルは、ポケモン一体ずつを戦わせる、6対6のフルバトルにしましょう。時間無制限の交代はありで、先に相手の全てのポケモンを倒した方の勝ち。そしてこの勝負で使えるのは、テラスタルのみということにします」
こうして、シンヤの対戦相手はスグリに決まり、シンヤとスグリがするポケモンバトルは、ポケモン一体ずつを戦わせる、6対6のフルバトルになった。試合時間とポケモンの交代は無制限で、先に相手の全てのポケモンを倒した方の勝ち。そしてこの勝負で使用できるのは、お互いテラスタルだけだ。
クラベル「その代わり、シンヤさんとスグリさんのポケモンバトルは、交流戦が終わってからにします。シンヤさん、スグリさん、それまでお互いに準備をしておいてください」
シンヤ「はい」
スグリ「…はい」
クラベル「では、これで話は終わりです。それでは皆さん、グラウンドに行ってください」
シンヤとスグリがフルバトルをするのは、リコたちが交流戦を終えてからということになり、それを聞いた全員は、シンヤとスグリのフルバトルを見るのが楽しみなようだ。そして、四天王とバトルする研修生とブルーベリー学園の生徒はグラウンドに向かって歩いて行った。すると、シンヤの目の前にスグリが歩いてきた。
スグリ「…シンヤ」
シンヤ「…久しぶりだな、スグリ」
ピカチュウ「ピィーカ!」
スグリ「…ここにいるって聞いた時は驚いた」
シンヤ「……」
スグリ「今度は俺が勝つから。…シンヤとフルバトルするの、楽しみにしてる」
シンヤの近くに歩いてきたスグリはそれだけ言うと、交流戦を見に行ってしまう。
スッ(オーガポンの入ってるモンスターボール)
シンヤ(スグリ。《オーガポン》のこと、やっぱりまだ引きずって…)
リコ「シンヤ!」
シンヤ「ん?…ああ、リコ。どうした?」
リコ「…さっき、タロさんと何を話してたの?」
シンヤ「えっ?話してた?」
リコ「さっき、タロさんがシンヤの近くに歩いてきた時、2人でなにかコソコソと話してたでしょ!」
シンヤ「ああ、そのことか。なんかタロさん、俺の話をお父さんから聞いてるって言ってたんだよ」
リコ「お父さん?」
シンヤ「ああ」…(そう言えば、お父さんがジムリーダーだって言ってたな。一体誰のことだろう?)
シンヤがオーガポンの入っているモンスターボールを見ていると、シンヤの後ろから、リコが不機嫌そうな顔をして声をかけてきた。リコは、さっきタロがシンヤに近づいた時のことを少し怒っていて、シンヤがタロと話していた内容を聞こうとしていた。するとシンヤは、さっきタロと話していた内容をリコに説明した。
リコ「…タロさんと話したのはそれだけ?それにゼイユって人から、ブルーベリー学園にって、推薦もあったみたいだったし…」
シンヤ「タロさんと話してたのはそれだけだよ。推薦のことに関しては俺も初耳だった。クラベル校長からも何も聞いてないし」
リコ「…ならいいけど」
シンヤ「ロイたちは?」
リコ「私がシンヤを呼んでくるから、ロイたちには先にグラウンドに行ってもらった」
シンヤ「そっか」
???「シンヤ!」
シンヤ「ん?…《ゼイユ》!」
ゼイユ「久しぶり!すっごく‥…会いたかったでしょ!」
リコ(この人がゼイユさん…やっぱり、女の人だったんだ)
シンヤがリコと話をしていると、ブルーベリー学園の制服を着ている、背が高い女性がシンヤの前に歩いてきて、シンヤに声をかけてきた。その女性は、緋色のインナーカラーが入った黒髪ロングで、瞳は金色。睫毛と唇が特徴的で、左目の下には泣きぼくろがある女性だった。この女性がスグリと同じように、シンヤがキタカミの里に行った時に出会ったゼイユだった。リコはゼイユの名前を聞いてから、ゼイユが女ではないかと疑っていたが、実際ゼイユに会うと、やはり自分の勘は間違っていなかったのだと心の中で納得していた。
シンヤ「久しぶりだな。ゼイユ」
ピカチュウ「ピカビィーカ!」
ゼイユ「ピカチュウも久しぶり!……ところで、その女の子は誰?」
リコ「………」
ゼイユがシンヤに久しぶりと挨拶をすると、シンヤもゼイユに久しぶりと挨拶をした。その後、ピカチュウもゼイユに挨拶をした。ゼイユがシンヤに会うのも、キタカミの里でお別れをして以来なので、ゼイユはシンヤとの再会は心から喜んでいた。それはシンヤも同じだった。……そこまではよかったのだが、1つだけ問題があった。…それは、シンヤがゼイユと話をしている時に、いつの間にかシンヤの近くにやってきて、自分の胸をシンヤの腕に押し付けて腕を組んできた、シンヤの彼女でもある、ヤキモチを焼いているリコのことだけだろう。
シンヤ「紹介するよ。今、一緒に冒険をしてて、俺が付き合ってる、かわいい彼女のリコだよ」
リコ「⁉︎///……初めまして、リコです」
ゼイユ「へぇ〜、シンヤの彼女だったんだ。…私はゼイユ。シンヤの友達。……シンヤ、スグを見たでしょ?」
シンヤ「…ああ」
ゼイユ「そのことで、少し話がしたいんだけど」
シンヤ「俺もあれから、スグリがどうしてたか気になってた。それに、あの変わりようにもな」
ゼイユ「じゃあ場所を…」
ブルーベリー生徒1「あの!シンヤさん!」
シンヤ「んっ?」
リコ「…あっ!」バッ(シンヤから離れる)
シンヤ(今更離れても遅いだろ)…「えっと、確か君たちは、ブルーベリー学園の…」
ブルーベリー生徒2「俺たちはリーグ部に入部している、ブルーベリー学園の生徒です!」
シンヤがゼイユにリコのことを紹介すると、リコはゼイユに自己紹介をした。すると、ゼイユもリコに自己紹介をした。そしてゼイユが、スグリのことでシンヤに話があると言い出した。シンヤもキタカミの里でスグリとお別れしてから、ずっとスグリの様子が気になっていて、さっき久しぶりに会ったスグリの変わりように驚いていたので、ゼイユからスグリのことを聞きたいと思っていた。そして、ゼイユが場所をと言おうとしたタイミングで、シンヤたちのいるところに、ブルーベリー学園の制服を着ている3人のトレーナーがやってきた。すると、リコは慌ててシンヤに組んでいた自分の手を離し、シンヤから少し離れた。
ブルーベリー生徒3「シンヤさん!お願いします!スグリを倒してください!」
シンヤ「えっ?」
ブルーベリー生徒1「俺たち……アイツのことが嫌いなんです」
シンヤ「嫌いって…なんで?」
ブルーベリー生徒1・2・3「「「………」」」
シンヤ「スグリを嫌いってどういう意味かな?どうして、俺にスグリに勝ってほしいのか、その理由を教えてくれないかな?もちろんバトルをやるとなったら、俺もポケモンたちも全力でバトルするけど」
ブルーベリー生徒2「…スグリがチャンピオンになってから、リーグ部はピリピリしてるんです。あんまり楽しくないし。…アイツのせいで、退部してるトレーナーまでいるんです!」
シンヤ・リコ「「⁉︎」」
ゼイユ「……」
シンヤ「退部だって!」
ブルーベリー生徒1「理由はゼイユも知ってますから、詳しいことはゼイユに聞いてください」
ブルーベリー生徒3「ゼイユもアイツの姉ちゃんなら、スグリを止めろよ」
ブルーベリー生徒2「大体、姉なら弟に負けるなよ」
ゼイユ「ッ!」
シンヤの前にやってきたブルーベリー学園の生徒たちは、いきなりシンヤにスグリを倒してくださいと言ってきた。いきなりそんなことを言われてシンヤは一瞬混乱したが、どうしてスグリを倒してほしいのか、3人からその理由を聞いてみた。どうやら、スグリがチャンピオンになってからは、リーグ部は楽しくなくなり、退部をしているトレーナーまでいるそうだ。すると、シンヤの目の前にいる3人は、スグリの姉であるゼイユに、どうして弟のスグリを止められないとかと言い出した。するとシンヤが…
シンヤ「あのさ、ポケモンバトルに姉とか弟とかないんじゃないかな?歳上が歳下に負けることだってあるし」
ブルーベリー生徒1・2・3「「「………」」」
シンヤ「詳しいことは、後でゼイユにちゃんと聞いてみるつもりだけど、スグリがチャンピオンになったのは、それだけスグリが頑張ったってことじゃないのかな?」
ブルーベリー生徒1「…それは」
ブルーベリー生徒2「そうかもしれないですけど…」
ブルーベリー生徒3「アイツの態度は…」
シンヤ「君たちは留学するためにここに来てるんだろう?それとも、ゼイユとスグリの悪口を俺に言うために、わざわざオレンジアカデミーに来たのか?」
ブルーベリー生徒1・2・3「「「………」」」
シンヤ「俺とスグリ、どっちが勝つかは分からないけど。俺とスグリのバトルを見るなら、悪口抜きで見てほしいんだがな」
ブルーベリー生徒1・2・3「「「………」」」
ブルーベリー生徒1「分かりました」
ブルーベリー生徒2「…ゼイユ、悪かった」
ブルーベリー生徒3「あの、シンヤさんとスグリのバトル、楽しみにしてます」
シンヤにそう言われると、ブルーベリー学園の生徒の3人は、そう言い残して交流戦を見に向かった。
ゼイユ「シンヤ、ありがとう。私とスグを庇ってくれて」
シンヤ「別にいい。…ってか、そろそろリコもグラウンドに行った方がいいんじゃないか?交流戦が始まるぞ」
リコ「私のバトルは1番最後だから大丈夫。シンヤは行かないの?」
シンヤ「俺はスグリのことでゼイユと話があるから、話が終わったら後で行くよ。俺とスグリのバトルは交流戦が終わった後だから、ゼイユから話を聞く余裕があるし」
リコ「そう。……」チラッ(ゼイユを見る)
ゼイユ「えっ?」
シンヤ「……ハァ、分かったよ」
リコ「えっ?」
シンヤ「俺とゼイユを2人っきりにするのが心配なんだろう?」
リコ「うっ⁉︎」
シンヤ「図星か。…まっ、リコのそんな嫉妬深いところも、俺は大好きなんだけどな」
リコ「うぅ〜〜っ///」
シンヤ「ゼイユ。リコも一緒に話を聞いてもいいか?」
ゼイユ「えっ?……うん。いいけど」
シンヤがリコにグラウンドに行った方がいいと言うと、自分のバトルは1番最後だから大丈夫だとリコは言った。そして、シンヤはゼイユと話をしてから行くと言うと、リコはゼイユの方をチラッと見た。すると、シンヤとゼイユを2人っきりにするのが不安なのか、リコはグラウンドに向かおうとしなかった。それを察したシンヤは、ゼイユにリコも一緒に話を聞いてもいいかと言うと、ゼイユはいいと言ってくれた。そして、シンヤ、リコ、ゼイユの3人は、グラウンド近くの人気のない場所にやってきた。
シンヤ「ここなら、しばらくの間は誰も来ないだろう。みんなも今頃、交流戦を見てるだろうし」
ゼイユ「…うん」
リコ「……」
シンヤ「リコ。今から俺たちが話すことは、リコの胸の中だけにしまっといてくれよ」
リコ「う、うん」
シンヤ「…ゼイユ。リコは秘密をペラペラ喋る子じゃないから安心していい。だから、スグリに何があったのか話してくれ。俺とキタカミの里で別れてから、スグリがどうしてあんなに変わったのかを」
ゼイユ「…分かった」
本来なら、シンヤとゼイユが今から話すことは、リコには全く関係ない話だ。しかしゼイユも、リコの彼氏であるシンヤと2人っきりで話をするのは、さすがにリコに悪いと思った。だから、これから話すことを誰にも言わないことを条件に、リコが話を聞くことを納得してくれた。
ゼイユ「スグがあんなに変わってて、驚いたでしょ?…スグ、見た目も性格も、ちょっと変わっちゃって」
シンヤ「俺と出会った頃のスグリは内気だったからな。…そんなスグリが何故あんな風になってしまったのか、その理由を教えてくれないか?さっきのリーグ部の生徒が言ってた、スグリがチャンピオンになってから、リーグ部が楽しくなくなったことや、退部するトレーナーまでいるってことの意味と、俺をブルーベリー学園に推薦したその理由も全部含めてな」
ゼイユ「分かった。アンタには全部話す。……スグが変わったのは、林間学校が終わってからだった。…《恐れ穴》で、アンタがオーガポンをゲットした後、アンタとお別れしてから」
シンヤ「…やっぱりオーガポンのことが原因か」
ゼイユ「多分……そう言えばオーガポンは?元気にしてるの?」
シンヤ「ここにいるよ」スッ
ポーーン
オーガポン「ぽにおーっ!」
リコ「オーガポン!久しぶり!」
オーガポン「がお?……ぽにおっ!」
ゼイユ「リコ、オーガポンのことを知ってるの?」
リコ「はい。ゼイユさんもですか?」
ゼイユ「…ゼイユでいい」
リコ「は、はい。…ゼ…ゼイユ」
オーガポンは元気にしてるかとゼイユから聞かれたシンヤは、ベルトについているオーガポンの入っているモンスターボールを取ると、ボールの中からオーガポンを出した。リコはセキエイ学園で、ニャローテがまだニャオハだった時、オーガポンに「リーフストーム」を見せてもらい、それからオーガポンと特訓をしたので面識があった。
リコ「シンヤ、ゼイユ、あのスグリって人が変わったのは、オーガポンが原因ってどういうこと?」
シンヤ「…順を追って説明するよ。あれは俺がオモダカさんに勝って、その後にパルデアの大穴に行ってから、1週間後のことだった。オレンジアカデミーでは、毎年ある時期に他校と合同で林間学校を実施してたらしく、そのメンバーに俺が選ばれたんだ」
リコ「えっ?シンヤ、オレンジアカデミーに通ってたの?」
シンヤ「いや、俺にお世話になったからって、クラベル校長が林間学校に行くメンバーの中に、俺を入れてくれたんだ」
リコ「そうだったんだ」…(シンヤにお世話になったて…もしかして、前に校長先生が言ってた、シンヤがパルデア地方を救ってくれたってことと、何か関係があるのかな?)
シンヤ「んでその後、俺がキタカミの里に行った時、スグリとゼイユに出会ったんだ。その後ちょっと色々あって、ゼイユとポケモンバトルをしたんだけど」
ゼイユ「アンタに負けて、私はすごく悔しかったけどね」
リコ「(やっぱり、バトルはシンヤが勝ったんだ)
シンヤ「その後、《オリエンテーリング》をやることになって、二人一組でペアになって、キタカミの里に設置されている、3つの看板を見つけることになったんだ。その時、俺のペアになったのがスグリだった。…っで、看板を2つ見つけた時には、もう日も暮れていたから、最後の看板を探すのは明日ってことになったんだ。その後スグリから、キタカミの里の《キタカミセンター》って場所で、《オモテ祭り》っていう祭りがあるから、一緒に行かないかって誘われたんだ。そのお祭りが始まった後に、このオーガポンと出会った」
リコ「へぇ〜、シンヤとオーガポンの出会いは、お祭りをやってる時だったんだ」
シンヤ「ああ。……ただそこからが、スグリと溝ができる切っ掛けになったんだ」
リコ「えっ?なんで?」
シンヤはリコに、自分がキタカミの里に行くことになった切っ掛けや、キタカミの里に行った後から、オーガポンと出会ったところまでを話し、お祭りでオーガポンと出会った後から、スグリと溝ができる切っ掛けになったことを話した。
シンヤ「実はオーガポンは、キタカミの里ではみんなに恐れられてたんだ」
リコ「えっ⁉︎それ、どういうこと?」
シンヤ「さっき、オリエンテーリングをした時に、看板を探した話をしたよな?」
リコ「えっ?…うん」
シンヤ「実はその看板には、オーガポンに関する昔話が書いてあって、昔キタカミの里で起きたことが書いてあったんだ」
リコ「それって、オーガポンの昔話ってこと?」
シンヤ「そう。俺が見た一つ目の看板にはこう書いてあった。『むかしむかし、キタカミの里には恐ろしい鬼がいた。鬼は村の上の裏山を根城にし、山に入った人たちを驚かしていた。そしてある日、怒り狂った鬼が山から下りてきた。村の人たちは鬼を恐れたが、偶然そこに居合わせた、《イイネイヌ》、《マシマシラ》、《キチキギス》様と呼ばれるポケモンたちが、命をかけて鬼を山へと追い返した。そんな勇気ある彼らを、村人たちは親しみをこめて《ともっこ》と呼び、鬼との戦いで命を落としたともっこの亡骸を丁寧に埋葬し、その上にともっこの像を建てた』」
リコ「…その鬼って…もしかして…」
シンヤ「そう。オーガポンのことだ」
リコ「ええっ⁉︎」
シンヤがキタカミの里に設置されている、オーガポンのことが書かれていた看板の昔話を説明すると、リコは驚いていた。
リコ「でも、オーガポンは優しいよ!…顔はちょっと…その…怖いけど」
シンヤ「あっ、そっか。リコはオーガポンの素顔を見たことなかったな。オーガポン。碧の仮面を取って、リコに素顔を見せてやれよ」
オーガポン「ぽにおっ?」スッ(仮面を取る)
シンヤからオーガポンの昔話を聞いたリコだが、リコにはどうしても、オーガポンが昔話で聞いたような、凶暴なポケモンには思えなかった。ニャローテがまだニャオハだった頃、「リーフストーム」を見せてくれた後、一緒に特訓をしてくれたという贔屓目もあったが、リコはオーガポンが優しいポケモンだと信じていた。しかし、やっぱりリコから見ても、オーガポンはちょっと怖いようだ。するとシンヤは、オーガポンに碧の仮面を取って、リコに素顔を見せるように言った。そして、オーガポンが仮面を取ると、オーガポンの素顔が明らかになった。橙色の肌に、前髪のように垂れている葉っぱ。上顎から伸びた2本のキバ。さらに目には星のような模様が入っていて、非常に可愛らしい顔だった。
リコ「えっ?これがオーガポンの素顔なの?」
シンヤ「そっ。リコが怖いと思ってたオーガポンの顔は、碧の仮面だったんだよ」
オーガポン「ぽにおっ!」
リコ「かわいい!オーガポン、女の子みたい!」
シンヤ「オーガポンは♀だよ」
リコ「えっ⁉︎そうなの⁉︎」
シンヤ「ああ。でっ、オーガポンと出会った後のことなんだけど。俺とオーガポンが初めて会って、楽しく話をしている時に、そこにゼイユがやってきてな。そしたら、オーガポンは逃げちまってさ」
リコ「えっ?逃げた?」
シンヤ「オーガポンは、すごい怖がりなポケモンなんだ」
リコ「でも、私と初めて出会った時は、そんな感じには見えなかったけど。今だって」
シンヤ「あの時、リコとニャオハはオーガポンから少し離れてたからな。だからオーガポンは、リコとニャオハを怖がらなかったんだ。オーガポンは人見知りだけど、相手が安全だと分かれば、誰とでも仲良くなれるからな」
リコ「そうだったんだ」
シンヤ「んで、オーガポンが逃げる時に、今手に持っている《碧の仮面》を落としてしまって、俺がそれを拾って渡そうとしたんだけど。オーガポンはキタカミの里の山の中に逃げて行ったんだ」
リコ「なるほど。でも、それでどうして、あのスグリって人と溝ができちゃったの?」
ゼイユ「…スグはね、オーガポンのことが好きだったの」
リコ「…えっ!」
ゼイユ「村のヤツらはオーガポンのことを怖がってたけど、スグは小さい頃から、オーガポンのことが本当に好きだったの。小さい頃、キタカミの里の山の上にある、オーガポンの住んでいる場所に1人で行ったことがあるくらいだから」
リコ「…」
ゼイユ「だから、もし私とシンヤだけが、鬼であるオーガポンに会ったって知ったら、あの子が嫌な気持ちになるかもって思って、お祭りでオーガポンと出会ったことを黙ってたの」
シンヤ「その次の日に、俺の泊まっている《公民館》ってところにゼイユが来て、自分のお爺さんが歴史に詳しいからって言うから、オーガポンの落とした碧の仮面のことを聞きに、ゼイユとスグリの家に行ったんだ。その時、スグリとバッタリ会ったんだけど」
ゼイユ「その後、私がスグを追い払ったの。オーガポンと会ったことを、スグに知られたくなかったから」
リコ「……」
シンヤ「俺たちは、スグリがどっかに行ったと思ってたけど、スグリはどこかに行くふりをして、自分の家の門柱に隠れてたんだ。それで、ゼイユのお爺さんが教えてくれたことを、黙って聞いていたみたいで」
リコ「ゼイユのお爺さんが教えてくれたこと?」
シンヤがキタカミの里に行った後の話はドンドン先に進んでいき、シンヤはリコに、ゼイユのお爺さんが教えてくれた、オーガポンの過去に起こった出来事を話し始めた。
シンヤ「…本当の歴史は逆だったことを聞いたんだ」
リコ「逆?」
シンヤ「俺とゼイユは、お爺さんから鬼の名前がオーガポンだったことや、スグリとゼイユの家で、代々語り継がれてきた本当の歴史を聞いたんだ。ゼイユのお爺さんがお父さんから聞いた、一族だけで口伝えてきた話。他の者にも、絶対に教えてはならない真実の話を」
リコ「…それってどんな真実なの?」
シンヤ「『はるか昔。キタカミの里に、1人の男と鬼が異国からやってきた。しかし村人たちは、自分たちとは違う彼らの姿を恐れ、男と鬼を、自分たちの住んでいる村に近づけさせないようにした。男と鬼は、村人たちに歓迎されずに悲しんだ。だけど、お互いがいれば幸せだったから、2人は裏山の洞窟で、つつましく暮らし始めた。しかし、村人の中にただ1人、2人を不憫に思った者がいた。それは村のお面職人で、お面職人は男と鬼のために、4つのお面を作ってあげた。男が異国から持ってきた宝石をあしらった、光り輝く見事なお面を。お面をかぶれば、素顔を隠して村人たちと仲良くできる。男と鬼は、お面職人の優しさにたいそう喜び、とても感謝したそうだ。それからお面をかぶった男と鬼は、村の祭りにこっそり来るようになった。不思議な2人組の綺麗なお面はたちまち評判になり、その噂はあっという間に、遠くの国々まで知れ渡った。ところが、世にも珍しい輝くお面の噂を聞きつけたのか、数匹の欲深いポケモンたちが、キタカミの里にやってきた。そして、その欲深いポケモンたちは、男と鬼の住処に忍びこみ、男と鬼が大事にしまっていたお面を奪い取ろうとした。しかし、偶然そこに居合わせた男が、なんとか碧のお面だけは守りきったが、残りの3つのお面は、欲深いポケモンたちに奪われてしまった。夕刻後、鬼が洞窟に戻ると、そこには男とポケモンたちが争った跡と、碧のお面だけが残っていた。その後、鬼は男を探すためなのか、碧のお面をかぶって村に下りてきた。そして、輝くお面を掲げて喜んでいる、欲深い3匹のポケモンを見つけると、鬼は真相を悟り、欲深いポケモンたちをやっつけた。しかし、事情を知らない村人たちは、何が起こったか分からなかったため、ただただ怒り狂う鬼を見て、その姿をとても恐れた。事情を知らない村人たちは、イイネイヌ、マシマシラ、キチキギスたちが、鬼から村を守ってくれたと考え、親しみを込めて彼らをともっこと呼び、丁寧に彼らを埋葬した。そして、傷つき悲しみに暮れた鬼は、1人で裏山の洞窟に帰って行った』」
リコ「ぁっ……」
シンヤ「俺もこれを聞いた時はびっくりしたよ。最初にオーガポンと会った時には、看板に書いてあるような凶暴なポケモンには思えなかったしな」
シンヤから語られた、過去にオーガポンに起こった出来事。リコは最後まで話を聞いていたが。しばらくすると、リコは目を見開き、黙ってオーガポンを見ていた。
リコ「…オーガポンに…そんな悲しい過去があったんだ」
シンヤ「ああ。当時その現場を見ていた、お爺さんのご先祖のお面職人も、必死に村人に真実を話したそうだけど、誰にも相手にもされず、異端者だと迫害されたらしい。だからこそ、ご先祖たちは子孫を守るために口をつぐんで、秘密裏に真実を子供たちに伝えていったらしい」
リコ「…そうだったんだ」
ゼイユ「その後、オーガポンが仮面を落とした時に、額の宝石部分が少し欠けていたから、お爺ちゃんにお面を直してもらって、オーガポンにお面を返そうとしたの」
シンヤ「碧のお面をお爺さんに預けた後、俺はスグリと最後の看板を探しに行ったんだけど。その時からスグリの様子がおかしくなってて、その日はスグリと一旦別れたんだ」
リコ「……」
シンヤ「その次の日、お爺さんを訪ねに行ったんだけど、お面を完全に修復するには、1つの素材が足りなかったらしく、《てらす池》って場所にある、《けっしょうのかけら》が必要だったらしい」
ゼイユ「それで、私とシンヤがてらす池に行って、けっしょうのかけらを取りに行ったの。その後家に戻ったら、スグリがオーガポンのお面持って、ともっこたちが埋葬されてる、《ともっこプラザ》って場所に行ったことを、お爺ちゃんから聞いたの」
シンヤ「そこでスグリから、オーガポンが本当は悪くないってことと、自分を除け者にして、内緒でオーガポンと会ってたことを言われたんだ。その後スグリが、自分とポケモンバトルをしてほしいって俺に言って、俺が勝ったらお面を返すって言ったんだ」
リコ「でも、その勝負って…」
シンヤ「ああ、俺が勝った」
リコ(やっぱり)
シンヤ「っで、約束通りスグリは俺にお面を渡すと、どっかに行っちまったんだ。するとその数分後に、イイネイヌ、マシマシラ、キチキギスの3匹が、埋葬されている墓の中から出てきたんだ」
リコ「えっ⁉︎どういうこと⁉︎」
シンヤ「俺とゼイユも何が起こったのか分からなかったけど、イイネイヌたちは、俺たちがいる目の前で生き返ったんだよ」
リコ「…そんなことがあり得るんだ」
シンヤ「それでその後、3匹はキタカミセンターに行ったんだ。そしたら、キタカミセンターで保管していた、3つの輝くお面を持って行こうとしていたらしい」
リコ「えっ?それ誰が言ってたの?」
スグリ「キタカミセンターの職員たち」
シンヤ「ほら、さっき話したろ?オーガポンはキタカミの里では、みんなに恐れらているって…」
リコ「あっ!そっか!キタカミの里にいる人たちは、本当の歴史を知らないから!」
シンヤ「そっ。っで、職員の人たちはイイネイヌたちに、お面をどうぞどうぞって返したんだ」
リコ「返すって…元々そのお面は、オーガポンと、話の中に出てきた男の人の物でしょ?それに、どうしてお面がキタカミセンターにあったの?」
シンヤ「オーガポンがイイネイヌたちを倒した後、仮面を持った3匹の亡骸を見つけた村人たちは、仮面を回収した後、それをずっと保管していたらしい。っで、時が流れて…」
リコ「3つのお面は、キタカミセンターに保管されることになったってこと?」
ゼイユ「うん」
シンヤ「その後、墓から出てきたばっかのともっこの3匹が、腹を空かせていることを知った村の人たちや職員の人たちは、スパイスたっぷりの《キタカミもち》っていう餅を、たっぷりとイイネイヌたちにあげたらしい」
ともっこというポケモンたちが生き返ったことをシンヤに聞いた時、リコはすごくびっくりしていた。それもそのはずだ。人間でもポケモンでも…いや、例えどんなもの生き物でも、死んだものが生き返るなど、絶対にあり得ないことなのだ。シンヤもピカチュウも、そしてゼイユも、イイネイヌたちが生き返ったところを見た時は、夢でも見ているのかと思い、自分が今見ているものを疑っていたぐらいだったのだから。
リコ「それで、その後は?」
シンヤ「その後イイネイヌたちは、キタカミもちをたっぷり食った後、どこかに向かったらしい。俺たちはイイネイヌたちを捜そうとしたんだけど、何も手掛かりがなかった。でも、もしかしたらイイネイヌたちは、オーガポンに復讐するかもしれないと思って、俺はオーガポンを助けに向かって、ゼイユはスグリの持っていったお面を直すために、急いでお爺さんの元に向かったんだ」
リコ「でも、そのともっこってポケモンは、オーガポン1人にやられちゃったんでしょ?だったらオーガポンが勝つはずじゃ?」
シンヤ「それが、オリエンテーリングの時に見つけた二つ目の看板には、こう書いてあったんだ。『鬼は不思議な4つの輝くお面を持っていた。かぶる面によって、鬼が振るう棒の力が変わったそうだ。碧の面をかぶれば、枯れた植物を生き返らせ。赤の面をかぶれば、ろうそくの火をごうごうと燃やし。青の面をかぶれば、川の流れをせき止め。灰の面をかぶれば、硬い岩もやすやすと砕いた。ともっこたちは倒れ際に、3つのお面を鬼から奪い、鬼の力を封じたとされている』って」
ゼイユ「だから、お面を1つも持ってなかったオーガポンは、ともっこたちに勝てる訳なかったの」
リコ「へぇ〜、かぶるお面によって、オーガポンは力が変わるんだ」
シンヤ「正確には、蔦を巻きつけた棍棒の力が変わるんだけどな。それで、オーガポンの住んでいる恐れ穴ってところに俺が行った時、イイネイヌ、マシマシラ、キチギチスの3匹は、俺たちの予想通り、オーガポンを襲ってたんだ。まあその後、俺が3匹まとめてぶちのめしたがな」
リコ(やっぱり、シンヤにやられちゃったんだ)
シンヤ「そしたらイイネイヌたちは、バラバラになってどっかに逃げたんだ。その後、碧の仮面が直ったからって、スグリとゼイユがお面を持ってきてくれたんだ」
ゼイユ「スグは、私が強引に連れてきたんだけどね。でもその後、お面を勝手に持ってたことをシンヤに謝って、スグが自分からお面を渡したいって言うから、オーガポンに直った碧のお面を渡そうとしたの。でも、会ったばかりのスグが怖いのか、オーガポンはお面を受け取ろうとしたかったの」
シンヤ「それで、俺からお面を返すことにしたら、オーガポンは碧の面を受け取ってくれたんだ」
リコ「そうだったんだ。…それで、残りの3つのお面はどうしたの?」
シンヤ「オーガポンに碧の仮面を返した後、イイネイヌたちがどこにいるかを調べてから、ゼイユとオーガポンも一緒に、残りの3つのお面を取り返しに行ったんだ。最初はキチキギスが持っていた、赤いお面の《かまどのめん》を取り返して。次はマシマシラの持っていた、青の面の《いどのめん》だろ。そして最後に、イイネイヌが持っていた灰の面の《いしずえのめん》。その3つを取り返したんだ」
リコ「そっか。…それでその後、イイネイヌたちはどうなったの?」
シンヤ「さあ?お面を取り返した後のことは、俺も知らないからな。ゼイユは知ってるのか?」
ゼイユ「ううん。アンタに倒されて山の中に逃げて行った後から、私たちもイイネイヌたちの姿を見てないの。多分、今は山の中にいるんじゃない?」
シンヤ「そうなんだ」
リコ「…それからは?」
シンヤ「3つのお面を取り返すと、俺たちと別行動を取っていたスグリがやってきて、オーガポンを連れて村に来てほしいって言い出したんだ」
リコ「えっ?でも確か…村の人たちは」
シンヤ「ああ、オーガポンを悪者だと思ってる。けどスグリが、俺を信じてって言うから、オーガポンを連れて村に行ったんだ。そしたら、村の人たちがオーガポンに謝ってきたんだよ」
リコ「えっ?」
ゼイユ「シンヤがお面を取り返そうと戦っている間に、スグは村を走り回って、本当の歴史を村のヤツらに伝えていたの」
シンヤ「お爺さんは反感を買うから、やめた方がいいと言ったそうだけど、スグリはオーガポンが大好きだったから、オーガポンのために行動したんだろうな」
リコ「じゃあ!もうオーガポンは怖がられずに済んだんの?」
シンヤ「ああ。良ければお祭りの時には、また来てくれって言われたし。センターで保管していたお面も、元々はオーガポンの持ち物だったから、ともっこたちから取り返したなら、そのまま持ってていいって」
リコ「……あれ?でも、今オーガポンは、シンヤのポケモンだよね?ってことは…」
シンヤ「ああ、話はまだ残ってる。…最後に、俺とスグリとゼイユの3人で、オーガポンを恐れ穴まで送ることにしたんだ」
ゼイユ「それで、私たちがオーガポンを恐れ穴に送った後、シンヤが帰ろうとしたら、オーガポンはシンヤと一緒に行きたいって言ってたんだよね。多分、自分のためにお面を取り返してくれたことが、オーガポンは嬉しかったんじゃないかな」
リコ「じゃあ、それでシンヤはオーガポンをゲットしたんだ!」
シンヤ・ゼイユ「「……」」
リコ「えっ?……違うの?」
シンヤ「さっきゼイユが、スグリは小さい頃からオーガポンのことが好きだって言ってたろ」
リコ「えっ?…うん」
ゼイユ「……その後、スグはどっちがオーガポンをゲットするかを決めようって、シンヤにポケモンバトルを挑んだの」
リコ「えぇっ⁉︎」
ゼイユ「オーガポンを好きなスグの気持ちも分かるけど、私はシンヤと一緒に行きたがってる、オーガポンの気持ちも考えるべきだと思った」
シンヤ「…その後どうなったかは、何も言わなくても分かるだろ?」
リコ「…バトルに勝ったのはシンヤで、オーガポンはシンヤのポケモンになった…」
シンヤ「そう。スグリとはそれっきりで、林間学校が終わって、俺がオレンジアカデミーに戻る時にも会わなかったんだ。そしてその後、俺はオレンジアカデミーに戻り、クラベル校長に林間学校での話をした後、カントー地方に行って、そこでリコと出会ったってわけ」
リコ「シンヤが私と出会う前に、そんなことがあったんだ」
シンヤから語られた、スグリとゼイユとオーガポンとの出会い。そして、キタカミの里での冒険の話。ここまで黙って話を聞いていたリコは、ただただ驚いていた。オーガポンの過去の話。ともっこと呼ばれるポケモンたちのこと。そして、シンヤとスグリにあった出来事。まさかシンヤとスグリの過去に、そんなことがあったなんてしらず、シンヤとゼイユの関係を疑っていたリコは、すぐにシンヤとゼイユに謝った。
リコ「シンヤ!ゼイユ!ごめんなさい!」
シンヤ・ゼイユ「「えっ?」」
シンヤ「なんで、リコが謝るの?」
リコ「だって…私、シンヤとゼイユの関係を疑ちゃって、そんな深刻なことがあったなんて知らずに、シンヤとゼイユから、辛いことを言わせちゃったから」
ゼイユ「ううん。リコは悪くないよ。…私がオーガポンと会ったことを隠そうとしなかったら、スグは…あんな風にはならかった。…シンヤは、オーガポンに会ったことをスグに話した方がいいって言ってたけど、私が強引に、シンヤに黙ってて言ったの」
リコ「……」
ゼイユ「…それからスグは変わった。ポケモンバトルも、ポケモンを育てるのも、勉強だって。…スグはその後、ポケモンバトルでカキツバタたちを倒して、学校のチャンピオンになった。…シンヤ、私がアンタを推薦したのは、アンタは強いし、ブルーベリー学園に来たら、面白そうだと思ったから。もしかしたら、アンタなら今の学園の状況も、大きく変えてくれると思ったから」
シンヤ「…それで、俺をブルーベリー学園に推薦したわけか」
ゼイユ「リーグ部のみんなも、スグのことを怖いとか、近寄りたくないとか、早く負ければいいって言ってるヤツもいて…退部したヤツも何人かいて、今もリーグ部の中には、退部しようと考えてるヤツもいる」
シンヤ「だからさっき、リーグ部の部員たちは、俺にスグリを倒してほしいって言ってきたのか」
リコ「………」
ゼイユ「スグは、きっとなにかを間違えてる。だから私は姉として、あの子を正そうと思った。…でも、私の声は…もうスグには届かなかった。文句があるなら、俺に勝ってから言えばって、言われるぐらいだったから。…だから…本当は…私は…アンタに助けてほしかった」
シンヤ「……」
リコ(…ゼイユの言ってること、私にはすごく分かる。私もシンヤと出会ってから、今日までどれだけシンヤに助けてもらったか。ゼイユがシンヤに助けてほしいって気持ち。シンヤに何度も助けてもらった、私だからよく分かる)
ゼイユから聞いたスグリの近況。そして、ゼイユの嘘偽りのない、シンヤに助けてほしいという気持ち。それを聞いたリコは、ゼイユの気持ちが痛いほど理解できた。それは、シンヤと出会ってから今日まで、何度もシンヤに助けてもらったリコだからこそ分かることだった。そして、ゼイユの話を聞いたシンヤは…
シンヤ「…ゼイユ、お前の気持ちは分かった。…でも、俺はブルーベリー学園には行けない」
ゼイユ「えっ?」
リコ「シンヤ?」
シンヤ「俺は今、そこにいるリコや、友達と冒険をしている途中なんだ。…だから、俺はブルーベリー学園には行けない」
ゼイユ「……」
リコ「…シンヤ」
シンヤ「…だから、今この状況を変えるよ」
リコ・ゼイユ「「えっ?」」
シンヤ「スグリがあんな風になったのは、俺にも責任があるからな。だから、リコたちの交流戦が終わった後、俺はスグリと全力でバトルをする。それでスグリがどう変わるかは分からないけど、今の俺にできることは、スグリと全力でバトルをすることだけだから」
リコ「シンヤ……」
ゼイユ「……うん。それでいい」
スグリが変わってしまった原因は、自分にも責任があるからとシンヤは言うと、交流戦が終わった後、スグリと全力で戦うことをゼイユと約束した。それでどう変わるのかはスグリ次第だが、今のシンヤにできることは、スグリと全力でポケモンバトルをすることだけなのだ。
リコ(そう言えば、前に私が《ワカバ》さんに勝ちを譲った時、《カブ》さんにこう言われたな。対戦相手のトレーナーだって、勝つために頑張ってきた、それをわざと手加減されるバトルをされて、相手はどう思うのかって。それに、一緒に戦ってるポケモンの気持ちも。シンヤが全力でポケモンバトルをするのは、ポケモンたちの気持ちを考えていて、あのスグリって人が、頑張ってチャンピオンになったことを認めているからなんだ)
シンヤ「さて、そろそろグラウンドに行こう。もうそろそろ、リコの出番だろうからな」
リコ「うん」
ゼイユ「そうね」
オレンジアカデミー・グラウンド
アン「あっ、やっと来た!」
ドット「シンヤを呼びに行っただけなのに、随分遅かったな」
ロイ「シンヤ!リコ!遅いよ!僕とドットのバトル終わちゃったよ!」
リコ「ごめん!」
シンヤ「悪い悪い。…あれ?なぁ、今《ハッサク》さんと話をしてるのって、《コルサ》さんだよな?なんでオレンジアカデミーにいるんだ?」
ドット「交流戦は《タッグバトル》で、基礎テストを担当してくれた《ジムリーダー》とタッグを組んで戦うらしいんだ。それで、四天王は2体のポケモンを使ってきて、そのどちらか一体を倒せたら、四天王の負けになるらしい。反対に、研修生のポケモンが倒れたら、四天王の勝ちってルールなんだ」
ロイ「それと、研修生とタッグを組んで戦うジムリーダーは、テラスタル禁止なんだって」
シンヤ「へぇ〜、ジムリーダーとタッグか。なかなか面白いルールを考えたな」
リコ「そっか。ドットの担当は《ナンジャモ》さんで、ロイの担当は《コルサ》さんだったから」
シンヤ「っで、ロイとドットの結果はどうだったんだ?」
ロイ「僕とコルサさんは、ハッサクさんに負けちゃって」
ドット「僕はナンジャモ姉さんのお膳立てがあったから、なんとか四天王の《ポピー》さんに勝ったよ」
シンヤ「へぇ〜!すげえじゃん!」
リコ「うん!四天王の人に勝つなんてすごいよ!」
ドット「僕はほとんど何もしてないよ」
シンヤ「でも、クワッスは戦闘不能にならなかったんだろ?四天王のポケモン2体を相手に最後まで戦ったんだ。それはすごいことだぞ」
???「オニゴーリ!「じばく!」」
オニゴーリ「オーーーニッ!」
ドカァァァーーーーーン!(爆発音)
シンヤ「な、何だ⁉︎」
ピカチュウ「ピィーカ⁉︎」
ゼイユとの話を終え、やっとグラウンドにやってきたシンヤたち。そしてシンヤとリコは、ドットから交流戦の細かいルールを聞き、ドットとロイの試合の結果を聞いた。すると、グラウンドのバトルフィールドで、オニゴーリに「じばく」を指示するトレーナーがいた。それは、シンヤたちもよく知っている人物だった。
シンヤ「あれは…サンゴに…《ハイダイ》さん!」
ハイダイ「ウ、《ウミトリオ》!」
サンドウィッチ「やりぃ!」
バトルを見ている全員「「「「………」」」」
キハダ「…全ポケモン戦闘不能。勝負あり!勝者《アオキ》!」
サンドウィッチ「はああああ⁉︎」
シンヤ「何やってんの、アイツ…」
ピカチュウ「ピィーカ…」
オニゴーリに「じばく」を指示したのは、エクスプローラーズの幹部のサンゴだった。サンゴは今、シンヤとリコ、そしてテラパゴスを監視するため、サンドウィッチという偽名を使って、オレンジアカデミーに潜入していた。そして、オニゴーリが「じばく」を使うと、オニゴーリを含めたバトルフィールドにいる全てのポケモンが、戦闘不能になってしまった。そのうちの倒れた一体は、サンゴ如サンドウィッチのパートナーである、パルデア地方《カラフシティ》のジムリーダーで、みずタイプの使い手である《ハイダイ》の、あなごポケモンの《ウミトリオ》だ。そして残りの倒れた2体のポケモンは、ハイダイとサンゴの対戦相手でもある、四天王の《アオキ》のポケモンで、シンクロポケモンの《カラミンゴ》と、ダンスポケモンの《オドリドリ》、ぱちぱちスタイルが倒れた。いきなりオニゴーリが「じばく」をしたことで、バトルを見ている全員は口を開けてあんぐり顔していた。そして、交流戦のジャッジを務めている、オレンジアカデミーの教師の《キハダ》の判定により、勝者はアオキとなった。それが気に入らなかったのか、サンゴはキハダに食って掛かる。
サンドウィッチ「オニゴーリが吹っ飛ばしたんだけど?」
キハダ「「じばく」を使って全てのポケモンが倒れた場合、「じばく」を使った側の敗北となるんだ」
サンドウィッチ「どんな形でも勝ちは勝ちじゃん!」
アオキ「社会に出ると、自分ルールは通用しません」
ハイダイ「しょうがないんだい、サンドウィッチ嬢。アッハハハハ!」
サンドウィッチ「…なんでもありなら、負けないんだからな!」ダッ!
サンゴはそう言い残すと、オレンジアカデミーに通じる通路を走っていた。
オニギリ・アゲート「「ハア………」」
リコ「ビックリした…」
アン「めちゃくちゃじゃん、あの子…」
「じばく」を使った場合、先に自分のポケモンが倒れるため、ポケモンバトルの大会などでも、「じばく」を使った側が敗北となるルールがある。だからこそ、キハダのジャッジは正しかったと言える。そして、いよいよ次のバトルが終われば、リコがバトルをする順番に回ってくる。そしてその次は、シンヤとスグリのフルバトルだ。
ドット「次はリコの番だな」
リコ「ドット、テラパゴスをお願い」
ドット「うん」
アン「リコ!ファイトだよ!」
リコ「うん!」
ロイ「リコ、頑張って!」
リコ「ありがとう!ドットやロイみたいに、思いっきりバトルしてくるね!行こうニャローテ!」
ニャローテ「ニャッァァロッ!」
シンヤ「……」
リコ「…シンヤ…あの」
シンヤ「リコ、今は目の前バトルに集中しろ。じゃないと、四天王には勝てないぞ」
リコ「……」
シンヤ「俺はスグリと全力でバトルをする。だからリコも、今は全力でバトルをしてこい!」
リコ「…分かった!じゃあ行ってくるね!」
シンヤ「ああ。頑張れよ!」
ピカチュウ「ピカビィーカ!」
ドォォォォン!
シンヤ「ん?…あれは、オニキスと…《リップ》さん!」
キョジオーン「ジオーン⁉︎」
バタンッ
キハダ「キョジオーン、戦闘不能!勝者チリ!」
リップ「あなた分かってるの?あなたのポケモンが倒れたら負けなのよ」
オニギリ「助っ人を犠牲にしてまで、自分が生き延びることなどできん」
チリ「なんでやねん!そんで負けたら意味ないやん!」
オニギリ「無様な勝利にも意味がない」
リップ「ワケワカだけど分かるかも。それがあなたの美学ってことね」
チリ「ならしゃーないか。お疲れさ〜ん」
リップ「フフ、お疲れさまで〜す」
リコはバトルフィールドに向かう前に、テラパゴスをドットに預けた。そして、アンとロイ、そしてドットに頑張れとエールを送られると、思いっきりバトルをしてくると言った。すると、リコはシンヤの方を向いた。やはり先の話のことを気にしているのか、リコは少し元気がなかった。しかし、シンヤに目の前のバトルに集中しろと言われ、全力でバトルをしてこいと言われると、リコは元気を取り戻し、バトルフィールドの方に向かった。すると、ちょうどバトルが終了したようだ。バトルしていたのは、エクスプローラーズの幹部の《オニキス》だった。オニキスもサンゴと同じように偽名を使い、シンヤとリコ、そしてテラパゴスを監視をするために、オレンジアカデミーの生徒になりすましている。そして、オニキスがバトルしている対戦相手は、じめんタイプを扱う四天王の《チリ》で、オニキス如オニギリのパートナーは、パルデア地方《ベイクタウン》のジムリーダーで、エスパータイプの使い手である《リップ》だった。そして、オニキスとリップがバトルフィールドから離れると、チリのいるバトルフィールドの方に、リコとニャローテが歩いてきて、リコとニャローテの前には、以前リコがテラスタル研修の時に戦った、セルクルタウンのジムリーダーの《カエデ》と、バッタポケモンの《エクスレッグ》が歩いてきた。
オレンジアカデミー・グラウンドのバトルフィールド
リコ「カエデさんと一緒にバトルができるなんて、とても嬉しいです」
カエデ「心をこめて、一緒にバトルを楽しみましょうね」
リコ「はい!」
ニャローテ「ニャッァ!」
チリ「フッ、まいど、チリちゃんやで!こっちは連チャンやけど、遠慮せんと、かかってきいや!」
To be continued
次回予告
いよいよ最後の交流戦。リコ・カエデVSチリのバトルが始まった。リコは旅で経験してきた今までのことを活かし、ニャローテやカエデたちと一緒に、全力でチリにぶつかっていった。しかし、チリのポケモンのドオーとダグトリオの前に、リコとカエデは苦戦をしいられてしまう。そんな中、テラパゴスがどこかに行ってしまうので、シンヤとドットはテラパゴスの後を追っていき、エントランスホールにやってきた。そして、シンヤとドットはエントランスホールで、テラパゴスに関する1冊のある本を見つける。
次回「リコVSチリ!バトルの先にある思い!」
今回はロイとドットのバトルの話がないかわりに、シンヤとオーガポンの出会いをリコに説明し、シンヤがゼイユから、ブルーベリー学園でのスグリの近況を聞く話にしました。シンヤがスグリの近況を知らなければ、スグリに何があったのか分かりませんので。リコ以外は、アニメ通りの流れだと思ってください。