ポケットモンスターSV 新たな物語の始まり 作:通りすがりのポケモントレーナー
ナッペ山ジムで、グルーシャから応用テストを受けたリコは、グルーシャとのバトルに負けてしまい、応用テストを不合格と言い渡されてしまう。そして、リコ、ロイ、ドット、3人の応用テストが全て終わったので、シンヤたちはオレンジアカデミーに戻るため、ナッペ山を後にした。
ナッペ山ジムの近く
ドット「ここを歩いて行けば、ナッペ山の麓まで下りられるみたい」
ロイ「あぁ、もう雪遊びができなくなるのか。またやりたいな」
シンヤ「…」チラッ(リコを見る)
リコ(あっという間だったな、テラスタル研修。…ロイとドットは応用テストに合格したのに、私だけ不合格…もう、テラスタルは使えないんだ)
応用テストを受けるため、再びパルデア地方を回る冒険をしたシンヤたち。楽しかったことや大変だったこともあったが、ここまであっという間だった。しかし、リコは応用テストに不合格し、ロイとドットだけが合格した。そんなリコの複雑な心情を思うと、シンヤはリコになんて言葉をかければいいか分からなかった。そして、シンヤたちがオレンジアカデミーに戻るためにナッペ山の麓に歩き出すと、ナッペ山の上空から、シンヤたちを監視している一体のポケモンがいた。
オーベム「…」
上空からシンヤたちを監視しているのは、エクスプローラーズの幹部の1人である、《スピネル》のオーベムだった。そのオーベムのトレーナーのスピネルは、ナッペ山の森の中に車で来ていて、オーベムに取り付けられている小型カメラを使い、オーベムの見ている景色を車の中で見ていた。
車の中
スピネル「アゲートさんの情報通り、彼らはナッペ山にいました」
アゲート『奴らはこれからオレンジアカデミーに戻る筈だ。仕掛けるなら、ナッペ山を下山される前に事を済ませろ』
スピネル「ええ。分かっていますよ」
アゲート『それと、お前がナッペ山にいることに《アメジオ》が気づき、こちらに向かっている』
オレンジアカデミーに教師と潜入しているアゲートから、シンヤたちがナッペ山にいる事を知らされたスピネルは、ナッペ山の近くでシンヤたちを監視し、アゲートと何かを企んでいた。そして、スピネルの動きを調べていたアメジオは、ナッペ山にスピネルがいることを知ると、このナッペ山に向かっているようだ。
スピネル「やはり来ましたか。私が《エクシード社》で何をしていたのか、よほど気になるようですね。…ちょうどいい。後でゲーチスさんと合流した時に、この機を利用させてもらいましょう」
スピネルの話では、後でゲーチスがこのナッペ山に来て、そのままスピネルと合流するようだ。そして、スピネルの目の前には、一つのカプセルが入ったアタッシュケースが置いてあり、そのカプセルの中には、以前シンヤとフリードがエクシード社に行った時に見た、《永遠のめぐみ》と呼ばれているピンク色の結晶石が入っていた。何故、エクシード社に置いてあった永遠のめぐみをスピネルが持っているのか?スピネルは永遠のめぐみを使って、いったい何をするつもりなのだろうか?…そしてその頃、オレンジアカデミーに向かって歩いているシンヤたちは、ナッペ山の麓まで下りてくると、《パルデア最高峰》と書いてある看板が立っている所にやってきた。
ロイ「パルデア最高峰?」
シンヤ「このナッペ山の頂上にある、パルデア地方で1番高い山の事だ。パルデア地方を代表する10か所、パルデア十景にも数えられてる」
ロイ「へぇ〜、シンヤは行ったことあるの?」
シンヤ「ああ、いい景色が見られるぜ」
ロイ「そうなんだ!リコは行ったことある?」
リコ「えっ?……ううん。有名なのは知ってるけど」
ロイ「じゃあさ、オレンジアカデミーに戻る前に、みんなで寄って行こうよ」
ドット「えぇ〜!あんな高いところに登ったら、もっと寒くなるよ」
ロイ「せっかくナッペ山に来たんだし、思い出にもなるし。ねっ、リコ」
リコ「あ……うん」
ドット「いやいや、そんな気分じゃない時だってあるだろ。なっ、リコ」
リコ「えっ……うん」
ナッペ山を下りる前から、リコに元気がないことに気づいていたロイは、リコの気分転換のために、パルデア最高峰に行こうと言い出した。リコに元気がないことに気づいていたのはドットも同じで、リコを休ませるために、このままナッペ山を下りようと言い出す。リコが元気のない理由は、応用テストに不合格になってしまったからだと、ロイとドットは気づいていて、2人なりにリコを気遣っていた。
リコ(どうしよう。私が元気ないから、2人に気を遣わせちゃってるのかも)
シンヤ「…リコはどうしたい?」
リコ「えっ?」
シンヤ「パルデア最高峰に行くのか、このままナッペ山を下りるのか。俺はリコに任せるよ。今1番大事なのは、リコの気持ちだからな」
リコ「シンヤ……」
ニャローテ「ニャァロ」
リコ「ニャローテ……うん。みんなでパルデア最高峰に行こう!」
ロイ「そうこなくっちゃ!」
シンヤ「ドットはどうする?」
ドット「まぁ、リコがいいなら」
シンヤ「よし。話は決まりだな」
ピカチュウ「ピィカッ!」
リコは自分に元気がないせいで、ロイとドットが自分を気遣ってくれていることに気づいていた。そして、ニャローテやシンヤに自分の気持ちが見透かされている事に気づくと、リコはしばらく思い悩んでいたが、パルデア最高峰に行こうと言い出したので、シンヤたちはパルデア最高峰に向かうことになった。
ナッペ山・坂道
ロイ・ホゲータ「「ホ、ホ、ホホゲ!ホ、ホ、ホホゲ!」」
ドット「ハァ、ハァ」
ウェルカモ「ウェ、ウェ」
リコ「ハァ、ハァ、すごい坂道」
ニャローテ「ニャッァ」
シンヤ「ハァ、ハァ」…(コライドンとミライドンに乗った方が速いんだが、コイツらは寒さに弱いし、そう何度も頼む訳にいかないからな)
ピカチュウ「ピィカッ…」
パルデア最高峰に向かう為、ナッペ山の坂道を登り始めたシンヤたち。ロイとホゲータは歌いながら先頭を歩いていて、リコとドットは、それぞれ自分のパートナーである、ニャローテとウェルカモに背中を押してもらって歩き、シンヤはピカチュウと一緒に最後尾を歩いていた。真っ直ぐな道ならまだしも、やはり坂道はキツイのだろうか、シンヤたちは息切れを起こしながら歩いていた。
シンヤ「ハァ…ん?」
リコ「…」
シンヤ「リコ、どうした?」
リコ「…ごめんね、シンヤ」
シンヤ「えっ⁉︎」
ロイとドットがどんどん先を進んでいて、自分が坂道を登っている途中、自分の前を歩いていたリコが急に足を止めていたので、シンヤはリコにどうしたと声をかけた。すると、いきなりリコが謝ってきたので、シンヤは動揺してしまう。
シンヤ「何でお前が謝るんだ?」
リコ「私がくよくよしてるせいで、シンヤとロイとドットに気を遣わせちゃってるし、さっきから暗い顔ばかりしてるから」
シンヤ「…仕方ねぇよ。俺がお前の立場でも、そんな顔するだろうし」
応用テストの結果を不合格とグルーシャに言われた時から、リコに元気がない事に気づいていたシンヤは、リコになんて言えばいいのか、どうやってリコを励ませばいいのか分からなかった。リコの真面目な性格を考えれば、気にするなと言うには無理があるし、不合格になったのは仕方ないと簡単に言える訳がない。
リコ「…ねぇ、こんな時になんだけど……キスしてもいい?」
シンヤ「え?…そりゃ、別にいいけど」
リコ「…ありがとう」
パルデア最高峰を目指して歩いている途中に、突然リコがキスをしたいと言ってきたので、シンヤはリコと久しぶりにキスをした。
リコ「ん…はっ…ふっ///」
シンヤ「はっ……んん」
リコが自分の目の前にやってくると、シンヤは肩に乗っているピカチュウを下ろし、顔を少し下げた。すると、リコは両手をシンヤの首に回し、シンヤがリコの背中に両手を伸ばしてリコを抱きしめると、リコは自分の唇をシンヤの唇に重ね合わせると、シンヤの口の中の舌を自分の舌と絡ませ合い、数分はシンヤとキスを続けた。
リコ「ぷはっ」
シンヤと数分ディープキスをして呼吸が苦しくなったのか、リコはようやく自分の唇をシンヤの唇から離し、シンヤがリコと舌を絡ませた時に出来た銀色の唾液の糸が伸びていき、リコがシンヤからある程度離れると、唾液の糸は自然と切れてしまう。
シンヤ「ハァ、ハァ」
リコ「…嫌だった?」
シンヤ「嫌じゃないけど……ヤケになってるようにしか見えない」
リコ「ッ⁉︎…ゴメン…私…最低だ。応用テストに不合格になって…辛い気持ちを忘れるために、こんな方法でシンヤに甘えて(涙)」
シンヤ「そんなことねぇよ。本当なら、彼氏の俺が励ましの言葉をかけなきゃいけないのに、何にも思いつかずにキスすることでしかリコを元気にしてやれないんだから」
応用テストに不合格し、その辛い現実から目を背けるために、シンヤにキスをしたリコだが、シンヤに心の内を見透かされると、涙を流しながらシンヤに謝った。しかし、シンヤはリコがヤケを起こしてキスしたことなど気にしておらず、むしろ、リコの彼氏でもある自分が、元気のないリコを励まさなきゃいけないのに、それが出来なかったことを気にしていた。
リコ「そんなことない!シンヤはいつも私を元気にしてくれてる。…応用テストを不合格ってグルーシャさんに言われて、勝手に私が落ち込んでただけ…それだけだよ」
シンヤ「…そうか。…俺も以前、ある事が切っ掛けで挫折したことがあるから、今のお前の気持ちがよく分かる」
リコ「えっ⁉︎シンヤも挫折したことがあるの?」
シンヤ「そりゃあ、そんな時が誰しも一回はあるだろ」
シンヤが挫折したことがあると言うと、リコは意外そうな顔をしていた。するとシンヤは、過去に自分が挫折した時の事をリコに話し始めた。
シンヤ「…あれは確か、俺がシンオウ地方の冒険を終えて、カントー地方に行く1週間前のことなんだけど。森を散歩している時に、偶然出会った男のトレーナーからフルバトルを挑まれて、俺は負けたんだ。そいつのポケモンを一体も倒せずにな」
リコ「えっ⁉︎一体もポケモンを倒せずに、シンヤがフルバトルに負けたの⁉︎」
シンヤ「ああ。俺の完敗で、相手の圧勝だった。ただバトルに負けるだけならまだしも、シンオウリーグを優勝したメンバーでバトルしたのに、相手のポケモンを一体も倒せなかったんだ」
リコ「ぁ……」
シンオウ地方のポケモンリーグを優勝したメンバーで、偶然出会ったトレーナーとフルバトルをしたシンヤだったが、相手のポケモンを一体も倒せずにフルバトルで敗北した話をシンヤから聞いたリコは、意外すぎるシンヤの過去の話に驚愕していた。
シンヤ「それと、バトルが終わった後に、そいつにこう言われたよ。『これがシンオウリーグを優勝したトレーナーの実力か?こんなヤツがチャンピオンなら、シンオウ地方のトレーナーのレベルはたかが知れてるな』って」
リコ「酷い!たった一回バトルに勝っただけで、そんなことを言うなんて!……あっ、もしかして、シンヤが挫折したのって?」
シンヤ「ああ。初めてバトルで完膚なきまでに叩きのめされ、負けた後にそう言われた俺は、今のリコみたいに、少し無気力になっちまってさ。…あの頃の俺は、まだメンタルが強くなかったし、シンオウ地方を旅して、俺自身、色々な経験を積んできたけど。それが全く通用せず、バトルに負けた時にこう思ったんだ。今の俺のレベルじゃあ、コイツには手が届かないレベルなんだって」
リコ「…そうだったんだ。…それからどうしたの?」
シンヤ「バトルに負けた後、俺、2日は部屋に引き篭っててさ。そんな時、リュウガがポケモンバトルをやろうって俺の家に来て、俺がそんな気分じゃないって言って、部屋に引き篭ってる理由を話したら、アイツに『くだらねえ』って言われたよ」
リコ「えっ⁉︎」
シンヤ「『たかが一回相手のポケモンを倒せず、バトルに負けたぐらいでなんだよ』って。『バトルに負けたなら、今以上に強くなって、そいつにリベンジすればいいじゃねえか』って。リュウガにそう言われた時、確かにそうだよなって思った。バトルに負けたら、次に勝てばいいって。負けた経験は無駄にならないし、自分が諦めなければ、まだ終わりじゃないんだって…だから、俺はその時に決めたんだ。次にアイツと出会ってバトルする時まで…俺は、俺たちは今まで以上に強くなってやるって!」
リコ「…」
シンヤ「リコ、お前はどうする?」
リコ「えっ?」
シンヤ「お前はテラパゴスをラクアに連れて行きたいんだろう?応用テストに不合格になった今のお前の気持ちは分かるが、応用テストに不合格になったからといって、テラパゴスをラクアに連れていけない訳じゃない」
リコ「ッ!」
シンヤ「俺はアイツに勝つのを諦めてないけど、お前はテラパゴスをラクアに連れて行くのを諦めるのか?」
シンヤが過去に挫折し、そこから立ち上がるまでの話を聞いたリコは、今の自分の様に、シンヤも落ち込んでいた時があったのだと思うと、意外そうな顔をしていた。そしてシンヤから、テラパゴスをラクアに連れて行くのを諦めるのかと言われたリコは、以前、テラパゴスをラクアに連れて行くと心に決めた時の事を思い出し、決意を固めた目をシンヤに向けた。
リコ(…そうだ。私はテラパゴスをラクアに連れて行くって決めたんだ。シンヤも、フリードたちだって、私やテラパゴスの為に頑張ってくれてる。なのに、私が諦めちゃいけないんだ!)…「嫌だ」
シンヤ「ぉっ」
リコ「まだ冒険は終わってない。六英雄探しも、ラクアを目指す冒険も…私、諦めたくない!テラパゴスをラクアに連れて行きたい!」
シンヤ「……フッ、だったら俺は、お前がテラパゴスをラクアに連れて行けるように、全力でサポートするだけだ」
リコ「うん!ありがとうシンヤ!」
応用テストに不合格し、無気力になっていたリコだが、テラパゴスをラクアに連れて行くのを諦めるのかとシンヤに言われると、テラパゴスをラクアに連れて行くと決めた日の事を思い出し、改めて、テラパゴスをラクアに連れて行くことを誓うのだった。
リコ「あっ、そう言えば。シンヤがフルバトルして負けた人って、一体どこの誰なの?」
シンヤ「えっ?…えっ〜と、歳は、俺やリコと同じぐらいだと思うんだけど、名前は聞かなかったから知らないんだよな。そいつとはあれから会ってないし」
リコ「そうなんだ。…でも、今のシンヤがその人とバトルしたら、絶対シンヤが勝つよ!」
シンヤ「ハハッ、サンキュ。けど、バトルに絶対はないからな。…さて、話が長くなっちまったが、リコが元気を取り戻したなら、先に進んで行ったロイたちと合流するか」
リコ「うん!ロイやドットにも心配かけちゃったから、2人にありがとうってちゃんと言わないと!」
シンヤ「ああ」
ピカチュウ「ピィカッ!」
ニャローテ「ニャッァ!」
シンヤ「ああ、悪い悪い。リコと少しイチャついてたけど、お前らのことを忘れてた訳じゃないよ」
リコ「ごめんねニャローテ、私はもう大丈夫だから」
ピカチュウ・ニャローテ『『…シンヤもリコも、最近イチャイチャしすぎ…』』
応用テストに不合格し、元気をなくしていたリコだが、シンヤから過去の話を聞き、テラパゴスをラクアに連れて行くと決めた日の事を思い出すと、リコは心機一転し、先に進んで行ったロイたちと合流するため、シンヤと一緒にナッペ山の坂道を登って行った。…シンヤたちがその場から居なくなると、坂道に立っている木の影から、4人の人物が姿を現した。
ゲーチス「フフッ。やはりあの少女は、彼の弱点のようだ」
ダークトリニティ1「あの娘をいかがいたしますか?」
ダークトリニティ2「ゲーチス様」
ゲーチス「……今は何もしなくていいです。とりあえず、先にスピネルさんと合流しましょう」
ダークトリニティ3「はっ!」
木の影から姿を現したのは、エクスプローラーズのゲーチスと、ゲーチスの配下のダークトリニティたちだった。どうやらゲーチスたちは、シンヤとリコが坂道を登ってきた時からシンヤとリコの行動を一部始終を見ていたようで、リコがシンヤにとってどれだけ大切な存在であるかということを知ったようだ。そして、シンヤとリコが坂道を登って行くのを確認すると、ゲーチスたちはスピネルと合流するためその場を後にした。…シンヤとリコが再び坂道を歩いている頃、どんどん先を歩いて行ったロイやドットたちは…
ロイ「あっ、向こうに山小屋がある!少し休んで行こうよ!」
ホゲータ「ホゲホゲ、ホンゲェ!」
ロイ「ハァ、ハァ、疲れた。水を飲みたい」
ウェルカモ「ウェ、ウェ」
ズズズッ(岩が動く音)
シンヤとリコの前を歩いてナッペ山の坂道を登っていたロイやドットたちは、パルデア最高峰に向かう途中、以前フリッジタウンに行く前日に泊まった山小屋を見つけたので、そこで少し休憩することにした。そして、ロイたちが山小屋に向かって真っ直ぐ歩いて行くと、急に大きな岩がひとりでに動き出し、ロイたちが通ってきた道を塞いでしまう。
シンヤ「ハァ、ハァ、やっと坂道を歩き終わったって……あれ?」
リコ「どうしたの?シンヤ」
シンヤ「いや……多分、俺の気のせいだな。先を急ごう」
リコ「うん」
ズズズッ(岩が動く音)
大きな岩が山小屋への道を塞いでからしばらくすると、その場所にシンヤたちがやってきた。シンヤはそこで、何か違和感を感じ始めたが、大きな岩が、ロイたちが向かった山小屋への道を見えなくするように塞いでいたので、リコと一緒に真っ直ぐ道を進んで行った。そして、シンヤたちがその場から居なくなると、山小屋への道を塞いだ岩がまたひとりでに動き出し、今度はシンヤたちが通った道を塞いでしまう。…すると、シンヤたちが通った木の影から、2人の人物が出てきた。
アゲート「ご苦労、チャーレム」
チャーレム「レム」
木の影から姿を現したのは、オレンジアカデミーに《アゲパン》という名で教師として潜入している、エクスプローラーズの幹部の《アゲート》と、アゲートのポケモンである《チャーレム》だった。岩がひとりでに動いていたのは、チャーレムがエスパータイプの技の「サイコキネシス」を使って岩を動かしていたからだったようだ。どうやらアゲートたちは、シンヤたちを分断させて何かを企んでいるようだ。そして、スピネルを追ってナッペ山に来たアメジオは、アーマーガアに乗ってナッペ山の上空を飛んでいた。
ナッペ山・上空
アメジオ「スピネル。一体どこにいる?」
アーマーガア「アーマッ」
アメジオ「ん?…アーマーガア、止まれ」
(スピネルの車)
アーマーガアに乗り、ナッペ山の上空からスピネルを探していると、アーマーガアが下の方に何かあることに気づいたので、アメジオはアーマーガアに止まれと指示し、下の方を確認すると、スピネルの車がナッペ山の森の中に停めてあるのを見つけた。
アメジオ「やはり、ジルとコニアの情報通り、奴はこのナッペ山にいるのか?」
スピネルが黒いレックウザをパルデア地方に呼び寄せてから、アメジオはスピネルの行動を密かに探っていて、ジルとコニアにスピネルの行動を監視するよう頼んでいた。そしてジルとコニアから、スピネルがこのナッペ山に向かったと連絡をもらうと、アメジオはスピネルを追ってこのナッペ山にやってきた。スピネルの車がここにあるという事は、ジルとコニアの情報通り、スピネルはこのナッペ山に来ているということになる。
ガチャ(車の扉が開く)
アメジオ「ん?」
アメジオがスピネルの車を見つけてしばらくすると、車の扉が開き、中から車の持ち主であるスピネルと、スピネルのポケモンであるブラッキーが出てきた。スピネルとブラッキーは車の中から出てくると、そのまま森の中に歩いて行ったので、アメジオは地上からスピネルの跡を追うため、アーマーガアにゆっくり降りてくれと指示を出した。
ナッペ山・坂道
ロイ「お〜い!シンヤ〜!リコ〜!」
ドット「2人ともどこに行ったんだ?」
ホゲータ「ホンゲェ?」
ウェルカモ「ウェル?」
ロイ「僕ら、先に行きすぎちゃったかな?」
ドット「登るのに精一杯で、後ろを確認してなかったからな」
シンヤたちが山小屋への道に気付かず、そのまま真っ直ぐ歩いてしばらくすると、シンヤとリコが来ていないことに気付いたロイとドットたちは、シンヤたちを捜しにやってきた。しかし、シンヤたちが通った道は、チャーレムの「サイコキネシス」によって動かされた大きな岩によって塞がれているため、ロイたちはシンヤたちが通った道には気付かず、自分たちが歩いてきた坂道の方に向かって歩き出し、そのままシンヤたちを捜しに行った。
ザッザッ(雪の上を歩く音)
シンヤ「もうそろそろ、ロイたちに追いついてもいい筈なんだがな」
ピカチュウ「ピィカッ」
リコ「…ねぇ、何か変じゃないかな?ナッペ山を登ってる感じがしないし」
シンヤ「あぁ、何か俺もそんな感じがする」…(何だ?心がざわつくこの違和感は?まるで誰かに誘導でもされてる気分だ)
ザッザッ(雪の上を走る音)
リコ「あっ、向こうから何か聞こえるよ!」
シンヤ「えっ?」
ピカチュウ「ピィカッ?」
ニャローテ「ニャッァ?」
休憩なしにナッペ山を登って数分は経つが、先に歩いて行ったロイたちに追いつけないことに、シンヤとリコは違和感を感じ始めた。すると、突然シンヤたちのいる前の方の曲がり道から誰かが走ってくる足音が聞こえてきたので、リコはその足音がロイかドットだと思い、1人で前の方に走って行ってしまう。…しかし、曲がり道を走ってきたのは、ロイやドットでもなかった。
アメジオ「あっ」
リコ「あっ、アメジオ!」
シンヤ「ッ!」
ピカチュウ「ピィカァ!」
ニャローテ「ニャッァ!」
曲がり道の所には雪が積もっているため、そこから走ってきた人物の姿は見えなかったが、シンヤたちの目の前に現れたのは、スピネルを追ってナッペ山にやってきた、エクスプローラーズの幹部の《アメジオ》だった。
アメジオ「…何故お前たちがここにいる?」
シンヤ「何故って…偶然ナッペ山を登ってたら、そこからお前が走ってきたんだよ」
アメジオ「なに?……何か引っかかるな」
シンヤ(違和感の正体は、アメジオがナッペ山に居たからか?…いや、恐らく何か違う)
シンヤとリコはパルデア最高峰を目指している途中に、アメジオはスピネルを追ってここまで来たが、その偶然により、ナッペ山で再会したシンヤたちは、互いにいきなりの再会に驚いていた。しかし、シンヤとアメジオは自分たちがここに会ったことに互いに違和感を感じていて、これが偶然ではないと思い始めた。いきなりアメジオが現れたことに動揺したリコだったが、すぐに冷静さを取り戻すと、テラパゴスの入っている鞄を後ろに隠した。
アメジオ「ん?その中にテラパゴスが入っているのか?」
ヒョコ(テラパゴスが鞄の中から顔を出す)
テラパゴス「パーゴ!」
リコ「あっ、テラパゴス、顔を出しちゃダメ!」
テラパゴス「パゴ!パーゴパーゴ!」
リコが鞄を大事そうに持っているのを見ると、その鞄の中にテラパゴスがいることをアメジオは見抜いた。すると、テラパゴスは鞄の中から顔を出し、ガラルの古城で初めてアメジオに会った時のように、アメジオに対して威嚇を始めた。
アメジオ「随分嫌われているようだな」
シンヤ「…さっきのお前の発言からすると、どうやらお前は、テラパゴスを捕獲するためにここに来た訳じゃないらしいな」
アメジオ「だとしたら?」
シンヤ「だったら、このまま俺たちを見逃してくれないか?」
アメジオ「…俺とお前たちが会ってしまった以上、俺がお前たちを見逃すという選択をすると思うか?」
シンヤ「やっぱりバトルするしかないか」
スピネルを追ってナッペ山にやってきたアメジオだったが、ナッペ山でシンヤたちと出会い、リコの持ってる鞄の中にテラパゴスがいることを知ると、アメジオは目の色を変えた。こうなってしまった以上、アメジオとのバトルを避けられないと思ったシンヤは、アメジオとのバトルを受けることにした。
シンヤ「…まぁいいか。以前レックウザがパルデア地方にやってきた時、お前とはバトルする約束をしたんだしな」
アメジオ「覚えていたか」
シンヤ「俺は自分からした約束は、死んでも守る男なんでね」
そう。あれは以前、エクスプローラーズが黒いレックウザを捕獲するため、共鳴発生装置という物を使って、黒いレックウザをパルデア地方に呼び出した時。レックウザ捕獲作戦はシンヤたちによって阻止され、その作戦が失敗した後、エクスプローラーズたちは撤退したが、レックウザ捕獲作戦に参加していなかったアメジオは、単独でレックウザを捕獲しようとしたのだが、その時シンヤに共闘を持ちかけられた時があった。そしてアメジオは、シンヤに共闘する条件として、次に会った時、誰も邪魔をしない、1対1のポケモンバトルをすることを条件に、シンヤと共闘してレックウザとバトルしたのだ。シンヤ自身、その約束をちゃんと覚えていたので、今その約束を果たそうとしていた。
シンヤ「リコ、後ろに下がってろ」
リコ「えっ?」
シンヤ「どうせアメジオとのバトルは避けられないんだ。それに、一度した約束を破るっていうのは、俺のプライドが許さないんでね」
リコ「…わかった。絶対勝ってね!」
シンヤ「ああ。…でっ、勝負のルールはどうする?」
アメジオ「互いに使用ポケモンは1体。先に相手のポケモンを倒した方の勝ちでどうだ?」
シンヤ「OK。メガシンカとテラスタル、それとZワザの使用は?」
アメジオ「どれでも好きなものを選べ。ただし、互いに使えるのはどれか一つだけだ」
シンヤ「よし。ルールが決まったなら、お互いバトルで使うポケモンを決めて、同時にモンスターボールを投げるってのでどうだ?先にポケモンを出せば、相性がいいポケモンを出すことになるだろうからな」
アメジオ「…いいだろう」
シンヤ「じゃ、始めようぜ!」
スチャ(互いにモンスターボールを構える)
アメジオ「いけ!ソウブレイズ!」
ポーーン
ソウブレイズ「ブレイズ!」
シンヤ「頼むぜ、ゲッコウガ!」
ポーーン
ゲッコウガ「コォォウガッ!」
シンヤはリコを自分の後ろに下がらせたあと、アメジオにバトルのルールを聞き、互いにルールを確認すると、それぞれモンスターボールを構えて宙に投げ、同時にポケモンを繰り出した。アメジオのモンスターボールからはソウブレイズが、シンヤのモンスターボールからはゲッコウガが出てきた。
シンヤ「やはり、お前はソウブレイズか」
アメジオ「そっちはゲッコウガか…」
シンヤ「前にお前が言ったんだろ?キズナゲッコウガとミライドンでバトルしろと。だけど、ポケモン1対1ずつでの勝負なら、どっちかとしかバトルできないだろう?だったら、どっちでバトルするかは俺に決める権利がある筈だ」
アメジオ「確かにそうだな」
シンヤ「準備ができたら、早速バトルを始めようか」
ソウブレイズ「…」
ゲッコウガ「…」
ニャローテ「…」
テラパゴス「…」
リコ「シンヤ…」
ゲッコウガとソウブレイズはボールから出てくると、互いに戦う相手の姿を確認した。ゲッコウガもソウブレイズも、互いにバトルするのはこれが初めてだ。相性ではゲッコウガが有利だが、アメジオのソウブレイズの強さはシンヤもリコも充分に知っているので、気を抜けないバトルになるのを理解していた。
アメジオ「ソウブレイズ!「ゴーストダイブ!」」
ソウブレイズ「ブレィズ‼︎」
シンヤ「ゲッコウガ!「かげぶんしん!」」
ゲッコウガ「コォォウガッ!コォォウガッ!」
ゲッコウガとソウブレイズ、1対1のポケモンバトルが始まると、先に技を指示したのはアメジオだった。ソウブレイズはゲッコウガに向かって前に走り出すと、その途中に自分の影の中に潜って姿を隠した。すると、ゲッコウガは「かげぶんしん」を発動させ、自分と姿が同じ分身を何体も作り出した。しばらくすると、影の中に姿を隠したソウブレイズが出てきたが、ゲッコウガが分身を作っていたため、どれが本物のゲッコウガか分からなくなったソウブレイズは、「サイコカッター」を発動すると、両手の剣から小型の「サイコカッター」を複数枚飛ばし、全てのゲッコウガに命中させた。本来、エスパータイプの技の「サイコカッター」は、あくタイプのゲッコウガに効果がないが、ゲッコウガが作り出した分身には関係ないので、ソウブレイズの「サイコカッター」が全て命中したゲッコウガの分身は消え、本物のゲッコウガだけが残った。
シンヤ「ゲッコウガ!「あくのはどう!」」
ゲッコウガ「コウッ、ガーーーッ‼︎」
アメジオ「むねんのつるぎ!」
ソウブレイズ「ブウゥゥレエーーイッ‼︎」
ゲッコウガが「あくのはどう」を放つと、ソウブレイズは両手の剣をクロスして「むねんのつるぎ」を発動すると、ゲッコウガの放った「あくのはどう」を粉砕し、ゲッコウガに向かって接近した。
シンヤ「ゲッコウガ!「みずしゅりけん!」」
ゲッコウガ「コウガッ!」
ソウブレイズが接近してくると、ゲッコウガは両手に水の手裏剣を作り出し、それを一つに合わせて忍刀のような形に変化させた。
リコ「えっ⁉︎」
アメジオ「何⁉︎」
シンヤ「どうだ?面白い戦略だろ?」
リコ「「みずしゅりけん」にあんな使い方があるなんて。シンヤ、すごい」
ニャローテ「ニャッァ!」
テラパゴス「パーゴ!」
ピカチュウ「ピィカッ!」
本来、ゲッコウガが覚える「みずしゅりけん」は、敵に水の手裏剣を投げ飛ばして攻撃する遠距離攻撃の技だが、それをまさか、水の手裏剣の形を忍刀に変えて接近戦の技として使用するとは思っていなかったので、リコとアメジオは「みずしゅりけん」の意外な使い方に驚いていた。そして、ゲッコウガは「みずしゅりけん」で作った忍刀を両手で持つと、ソウブレイズに突っ込んで行き、ソウブレイズと激しい斬り合いを始めた。
カキンッカキンッ!(刃で何度も斬り合う)
ゲッコウガ「コォォォウ、ガーーッ‼︎」
ソウブレイズ「ブゥゥゥレエーーイッ‼︎」
ガキィィィィン‼︎(刃をぶつけ合う)
シンヤ「うっ!」
アメジオ「くぅぅ!」
リコ「んっ!」
ニャローテ「ニャッァ!」
テラパゴス「パーゴ!」
ピカチュウ「ピカァ!」
グググッ(鍔迫り合い)
ゲッコウガ「コォォォォッ…!」
ソウブレイズ「ブゥゥレィィズ…!」
ゲッコウガとソウブレイズは、互いに刃を何度もぶつけ合って斬り合いを続けると、同時に刃を振り上げ、同時に刃を相手に向かって振り下ろした。すると、刃から激しい火花が飛び散り、技のぶつかり合いによって衝撃波が発生した。ゲッコウガとソウブレイズは刃で鍔迫り合いを続けていたが、ゲッコウガは左手を刀から離して「みずしゅりけん」を発動すると、ソウブレイズに向かって水の手裏剣を投げつけてダメージを与えた。
シンヤ「いいぞゲッコウガ!」
ゲッコウガ「コォォォウガッ!」
アメジオ「まさか、「みずしゅりけん」を刀の形に変えて、至近距離で攻撃してくるとはな」
ソウブレイズ「ブゥゥレイ」
シンヤ「俺のゲッコウガの覚える技の中で、相手に接近戦して戦える技は、「いあいぎり」と「つじぎり」しかない。けどそれだったら、「みずしゅりけん」や「あくのはどう」の方がまだ威力が高い。それに、俺のゲッコウガは特殊技を使った方が威力が高いから、特殊技しか覚えてないんだ。…でも、それじゃあゲッコウガは接近戦で不利になる。だからこそ、その弱点を補うために、投げ技である「みずしゅりけん」を、接近戦で戦う武器にすることを考えたんだ」
アメジオ「…なるほどな。やはりお前は一筋縄ではいかないようだ。…ならば!」
スチャ(テラスタルオーブを取り出す)
リコ「ッ!」
シンヤ「テラスタルか!」
シンヤとアメジオがバトルするのは、ガラル鉱山のとき以来だった。あれからもう何日も経つが、あの日から、お互いにポケモンを鍛えてレベルアップし、パルデア地方で六英雄のレックウザとバトルした時よりも、お互いさらに強くなっているということがこのバトルで分かった。だからこそ、アメジオは今のソウブレイズではゲッコウガを倒せないと悟ると、テラスタルオーブを取り出した。
アメジオ「我が道を貫け!ソウブレイズ!」
アメジオがテラスタルオーブを構えると、テラスタルオーブにエネルギーがチャージされていき、エネルギーが満タンになると、アメジオはソウブレイズに向かってテラスタルオーブを投げ飛ばした。テラスタルオーブはソウブレイズの頭上で溜め込んだエネルギーを解放すると、ソウブレイズは無数の結晶石に身を包み込まれた。そして、結晶石が弾け飛ぶと、そこには全身がクリスタル化し、頭部に幽霊の王冠を被るソウブレイズがいた。
(ゴーストテラスタイプ)ソウブレイズ「ソォォォォォ、ブウゥゥレエーーイッ‼︎」
シンヤ「テラスタルを使ってきたか。…なら、こっちも本気で相手をするしかないな」
ゲッコウガ「コォォォウガッ!」
シンヤ「俺たちはもっと強く!うぉぉぉぉぉぉ‼︎」
ゲッコウガ「コォォォォォウガッ‼︎」
シンヤ・ゲッコウガ「「うぉぉぉぉぉぉ‼︎」」
ゴゴゴゴゴゴゴッ!(激流が発生する)
バッシャーーーーーン!(激流が弾け飛ぶ)
アメジオがソウブレイズをテラスタルさせると、今のゲッコウガでは勝つのは難しいと判断したシンヤは、ここからは本気でアメジオたちと戦うことを決めた。そして、シンヤとゲッコウガが互いに心をシンクロさせると、揃って雄叫びを上げた。すると、突然ゲッコウガの足元から激流が発生して、ゲッコウガは身を包み込んだ。そして、激流に身を包み込んだゲッコウガはその中で姿を変え始め、激流の水が弾け飛ぶと、弾けた激流の水はゲッコウガの背中に集まって巨大な水の手裏剣を形成すると、ゲッコウガは背中に巨大な水の手裏剣を身につけていた。
キズナゲッコウガ「コォォォォウガッ‼︎」
アメジオ「それが、《キズナ現象》と呼ばれる、お前とゲッコウガの絆で起こった力か?」
シンヤ「ああ、キズナゲッコウガだ!」
ゲッコウガがキズナゲッコウガに姿を変えると、初めてキズナ現象を見たアメジオは驚いていた。しかし、まだバトルは終わってないため、シンヤもアメジオもバトルに集中した。
アメジオ「ソウブレイズ!「ゴーストダイブ!」」
(ゴーストテラスタイプ)ソウブレイズ「ブレイッ!」
シンヤ「ゲッコウガ!両手に「みずしゅりけん」を発動させて、水の剣を2つ作れ!」
キズナゲッコウガ「コォォウガッ!」コクッ
アメジオがソウブレイズに「ゴーストダイブ」の指示を出すと、幽霊の王冠の輝きも増し始め、ソウブレイズはゲッコウガに向かって走り始めると、自身の影の中に沈んで姿を消した。ソウブレイズが自分の影の中に沈むと、ゲッコウガは両手に水の手裏剣を作り出し、両手の水の手裏剣の形を忍刀に変えると、ソウブレイズを迎え討つために水の双剣を構えた。
キズナゲッコウガ「…」
シンヤ「後ろだ!」
シュン!(ソウブレイズが背後から現れる)
(ゴーストテラスタイプ)ソウブレイズ「ブゥゥゥレエーーイ‼︎」
キズナゲッコウガ「コォォォォウガッ‼︎」
バァァァァァァン‼︎
(ゴーストテラスタイプ)ソウブレイズ「ブレ、ィッ⁉︎」
ゲッコウガが水の双剣を構えてしばらくすると、突然ゲッコウガの背後の影が揺らいだ時、そこからソウブレイズが飛び出し、両腕の剣をゲッコウガに振り下ろしてきた。しかし、ソウブレイズが背後から攻撃してくることを読んでいたシンヤは、ソウブレイズがゲッコウガの影から現れるより先に、ゲッコウガに指示を出していた。そのおかげで、ゲッコウガはソウブレイズより先手が取れたので、ソウブレイズが剣を振り下ろすより先に、両手の水の双剣でソウブレイズを斬りつけた。
アメジオ「ソウブレイズ!」
(ゴーストテラスタイプ)ソウブレイズ「ブレ…ィッ」
シンヤ「キズナゲッコウガになったことで、技の威力も上がってるからな。当然、水の手裏剣で作った剣の攻撃力も「みずしゅりけん」の時とは比べ物にならないくらいに上がってるぜ」
アメジオ「くっ!まだだ!ソウブレイズ!「ゴーストダイブ!」」
(ゴーストテラスタイプ)ソウブレイズ「ブレイ!」
シンヤ「逃すか!「れいとうビーム!」」
キズナゲッコウガ「コウッ、ガーーーッ‼︎」
水の双剣の攻撃が思ったより効いたようで、ゲッコウガに斬られたソウブレイズはしばらく動けなかった。だが、技を発動する力は残っているようで、ソウブレイズは「ゴーストダイブ」を発動し、自分の影の中に潜ろうとした。しかし、ソウブレイズが影に潜ろうとするより早く、ゲッコウガが「れいとうビーム」をソウブレイズに放つと、ソウブレイズの体が凍ってしまい、「ゴーストダイブ」は不発に終わってしまう。
シンヤ「隠れんぼはもう充分だろ」
アメジオ「…何故だ?」
シンヤ「ん?」
アメジオ「何故、お前のゲッコウガはテラスタルしてないのに、俺のソウブレイズが押されている」
シンヤ「…テラスタルすることだけが、ポケモンバトルじゃないだろ」
リコ「えっ?」
シンヤ「自分のポケモンや、戦っている相手のポケモンの能力を見極め、技や特性を使いこなし、トレーナーが的確な指示を出す。そういう全てが組み合わさっているのがポケモンバトルだ。テラスタルすることだけが、ポケモンバトルの全てじゃない」
アメジオ「ッ!」
リコ「…テラスタルすることだけが、ポケモンバトルの全てじゃない」
シンヤ「…アメジオ。この勝負、俺たちの勝ちで終わらせてもらうぞ。行け!ゲッコウガ!」
キズナゲッコウガ「コォォォォウガッ‼︎」ダッ!
ゲッコウガは水の双剣を強く握ると、ソウブレイズの元に走って行った。ソウブレイズはどうにかしてゲッコウガの攻撃を避けようとしたが、体全体が凍っているため身動きが取れなくなっていた。そして、ゲッコウガがジャンプし、ソウブレイズに斬りかかろうとした、その時!
「りゅうのはどう!」
「サザァァーーッ!」
キズナゲッコウガ「コウォォォガッ!」
バァァァァァン!
ゲッコウガがソウブレイズを斬ろうとしたその時、突然、竜の形をした衝撃波がゲッコウガに向かって飛んできた。すると、ゲッコウガは自分に向かって飛んできた衝撃波を、両手に持っている双剣で斬り裂いた。衝撃波を斬ったゲッコウガが地面に着地すると、シンヤは「りゅうのはどう」を放った者の正体を確認した。
サザンドラ「サザァァ!」
シンヤ「サザンドラ。…てことは」チラッ(横を見る)
ゲーチス「フフッ」
ダークトリニティ「…」
ダークトリニティ2「…」
ダークトリニティ3「…」
シンヤ「ゲーチス、ダークトリニティまで」
リコ「ダークトリニティ?」
ゲッコウガに「りゅうのはどう」を放ったポケモンは、ゲーチスのサザンドラだった。サザンドラが上空に飛んでいるを見たシンヤは、左の方にある森の中を確認した。すると案の定、サザンドラのトレーナーであるゲーチスと、ゲーチスの配下であるダークトリニティたちが森の中から姿を現した
シンヤ(胸騒ぎの原因はコイツらだったか)
スッ(モンスターボールを構える)
ゲーチス「フッ、今日はブラックキュレムを連れてきていないので、そう警戒しなくても大丈夫ですよ」
シンヤ「…」
ゲーチス「お久しぶりですね。あなたと会うのは、あなたがゼクロムを奪われたとき以来ですか?」
シンヤ「ッ!…見え見えの挑発に乗る気はない。…フリッジタウンに向かう途中にダークトリニティと戦ったが。まさかお前が、トルネロス、ボルトロス、ランドロス、ウルガモスをゲットしていて、ダークトリニティが新たなゲノセクトまで復活させていたとはな」
ゲーチス「彼らから聞きましたよ。あなたに赤いゲノセクトを倒されたと。以前我々が復活させた4体のゲノセクトより、赤いゲノセクトの方が強いというのに。…ちなみに、あなたが倒した4体のゲノセクトはどうなりましたか?」
シンヤ「あの4体のゲノセクトは、今はイッシュ地方の自然保護区で幸せに暮らしてるよ」
ゲーチス「そうですか。てっきり処分でもされたのかと」
シンヤ「勝手に化石からゲノセクト復活させて改造までしたくせに、やっぱりお前はゲスだな」
自分の欲を満たすために4体ものゲノセクトを復活させ、あまつさえ、負けたゲノセクトに興味がない発言をしたゲーチスに、シンヤは怒りを覚えた。
アメジオ「…ゲーチス、バトルに横槍を入れろと頼んだ覚えはないぞ」
「勘違いしないでください。別にあなたを助けた訳ではないですよ」
ブラッキー「ブラァッ」
アメジオ「ブラッキー!」
スピネル「フフッ」
リコ「スピネル!」
シンヤ(やはりそうか。アメジオと俺たちがここで会ったのは、コイツらの作戦だったってことか?)
ゲーチスとダークトリニティに続き、シンヤたちの目の前にブラッキーが現れると、そのブラッキーのトレーナーであるスピネルが、シンヤたちの目の前に現れた。ゲーチスとダークトリニティ、そして、スピネルがここに現れたことで、さっき自分が思った通り、アメジオとここで会ったのは偶然ではないと、シンヤは確信した。
スピネル「アメジオ。何故あなたがナッペ山に?作戦の指示は出てないはずですが?」
アメジオ「しらじらしい。俺とシンヤをここで戦わせて、消耗させるつもりだったか…」
スピネル「さて、私には何のことやら。…私がここに来た目的は」
チラッ(テラパゴスを見る)
テラパゴス「パゴ?」
アメジオの言葉を聞き、スピネルの態度を見たシンヤは、やはり、アメジオとここで会ったのは偶然ではなく、ゲーチスやスピネルの策略によるものだったと強く確信した。さらに、スピネルがテラパゴスの入っている鞄を見ると、スピネルやゲーチスがここに来た目的は、テラパゴスを捕獲するためだと思った。
リコ「やっぱり、あなたもテラパゴスを狙ってるの!」
ダークトリニティ2「喚くな小娘!」
キッ(リコを睨みつける)
リコ「ッ⁉︎」
スピネルがテラパゴスの入っている鞄を見ると、リコはテラパゴスの入っている鞄を後ろに隠し、テラパゴスを渡さないと、スピネルに強気な態度をとった。すると、ダークトリニティの1人が、殺気のこもった目をリコに向けた。ダークトリニティから強い恐怖を感じ取ったリコは、今までこんな威圧感を感じたことがなかったため、恐怖で体が動かなくなってしまう。
リコ「ぁ…ぁ…」
スッ(シンヤがリコの目の前に立つ)
ダークトリニティ1・2・3「「「ッ」」」
シンヤ「お前らの怖い顔は、リコにはちょっと刺激が強すぎる。…それによ、初対面の女の子に、いきなりガン飛ばすなよ」
キッ(ダークトリニティたちを睨みつける)
ダークトリニティ1・2・3「「「ッ⁉︎」」」
アメジオ「ッ⁉︎」
ダークトリニティがリコを睨みつけると、シンヤはリコを守るように、リコの目の前に移動した。そして、シンヤがダークトリニティを睨みつけると、ダークトリニティとアメジオは、初めて見るシンヤのキレかかった表情を見てたじろいだ。
ゲーチス「ほぅ、あなたもそんな顔ができるんですね」
シンヤ「…リコ、安心しろ」
リコ「えっ?」
シンヤ「俺の命に変えても、必ずお前らを守るから」
リコ「ッ!…うん!」
『俺の命に変えても、必ずお前らを守る』、そうシンヤから言われると、リコの顔はさっきまで恐怖でひきつっていた顔から、優しい笑みを浮かべている顔に変わっていた。
ゲーチス「…スピネルさん、そろそろ要件を済ませた方がいいのでは?」
スピネル「ええ」
スッ(ポケットからカプセルを取り出す)
シンヤ「ッ!それは!」
ピカチュウ「ピカァッ!」
スピネルがポケットからカプセルを取り出すと、シンヤとピカチュウは目を見開いた。それも当然だった、スピネルが取り出したカプセルの中には、フリードが以前働いていた“エクシード社”という会社に行ったときに見た、“永遠のめぐみ”と呼ばれている、ピンク色の結晶石が入っているのだから。
シンヤ(やはり俺の思った通り、あのエクシード社は、エクスプローラーズと何らかの繋がりがあったんだ。そして恐らく、俺とフリードが地下室に行った時、警備員を呼んだのもスピネルで間違いない。スピネルがラクリウムを持っていることを考えれば、その全てに説明がつくからな)
シンヤは、前にフリードとエクシード社に行った時、エクシード社の社長の《クレイブ》という人に会った時のことを思い出し、永遠のめぐみと呼ばれているラクリウムが、『上から持ち込まれ、外部の研究者チームが取り仕切っていたと』クレイブが言っていたのを覚えていた。あの時はまだ半信半疑だったが、今、自分の目の前にいるスピネルが、ラクリウムの入っているカプセルを持っていることで、クレイブの言っていた、ラクリウムをエクシード社に持ち込んだ上の正体と、ラクリウムを調べていた外部の研究者チームが、エクスプローラーズの人間であることを物語っていた。
スピネル「特別に見せてあげましょう。永遠のめぐみを…」
シンヤ「何!」
スピネルがラクリウムを使って何かしようとしてると察したシンヤは、スピネルを警戒していたが、スピネルがカプセルのスイッチを起動させると、カプセルの中のラクリウムが光りだし、カプセルの中にピンクのもやが発生した。そして、カプセルの中がもやでいっぱいになると、スピネルはカプセルを開き、ピンクのもやをブラッキーとサザンドラに浴びせた。
ブラッキー「ブラ…ブラ、ブラァァァ〜キィィ!」
サザンドラ「サザ…サザ、サザァァァ〜〜!」
ピンクのもやを浴びたブラッキーとサザンドラは、突然苦しそうにうめき声を上げ、開けていた目を閉じた。そしてしばらくすると、ブラッキーとサザンドラは閉じた目を開けたが、その目はさっきまでと違って、攻撃性を露わにするような目になっており、ブラッキーとサザンドラは体にピンクのオーラを纏っていた。
ブラッキー「ブラァァーーッッ‼︎」
サザンドラ「サザァァァーーッッ‼︎」
シンヤ「なっ!」
ピカチュウ「ピカッ!」
キズナゲッコウガ「コウガッ!」
リコ「ぁっ…」
アメジオ「あっ…」
バッ(鞄からテラパゴスが出てくる)
リコ「あっ、テラパゴス」
テラパゴス「パーゴ」
チラッ(ラクリウムを見る)
テラパゴス「パーゴ‼︎」
ピンクのもやを浴びたことによって、ブラッキーとサザンドラが狂暴化すると、シンヤとリコとアメジオは、スピネルがいったい何をしたのか、ブラッキーとサザンドラに何が起きたのか、全く分からなかった。すると、リコの鞄の中にいたテラパゴスは何かを感じ取ったのか、鞄の中から突然飛び出てきた。鞄の中から出てきたテラパゴスは、スピネルが手に持っているラクリウムを見ると、歯を噛みしめ、怒りに満ちた表情に変わり、今までシンヤたちが聞いたことのない、怒りの声を上げた。
スピネル「ブラッキー、ソウブレイズを始末してください」
ブラッキー「ブラァッ!」
アメジオ「ッ!ソウブレイズ!「むねんのつるぎ!」」
(ゴーストテラスタイプ)ソウブレイズ「ブレイ!」
ブラッキーが凶暴化すると、スピネルは味方のはずのアメジオのポケモン、ソウブレイズを倒すように指示を出した。スピネルのその言葉に、アメジオは一瞬動揺したが、すぐに冷静さを取り戻すと、ソウブレイズに「むねんのつるぎ」を指示した。
バッ!(素早く移動する)
ブラッキー「ブラァッ!」
シンヤ「なっ!」
ドォォォォン‼︎
ソウブレイズが「むねんのつるぎ」を発動しようとすると、ブラッキーは瞬間移動でもしたかのように移動し、テラスタルしているソウブレイズの懐に飛び込むと、そのままソウブレイズにタックルをした。
(ゴーストテラスタイプ)ソウブレイズ「ブレァ⁉︎」
アメジオ「ソウブレイズ!」
シンヤ「嘘だろ。ただのタックルで、テラスタルしているアメジオのソウブレイズを倒すなんて…」
ブラッキー「ブラァァ!ブラァァ!」
リコ「何これ…ブラッキー、何か変だよ」
ニャローテ「ニャァ…」
ゲッコウガとのバトルのダメージが残っているとはいえ、ブラッキーがタックルしただけで、ソウブレイズは後ろに吹き飛ばされ、テラスタル化が解除されてしまう。ブラッキーを倒したソウブレイズを見たリコとニャローテは、あまりのブラッキーの変わりぶりに、恐怖を感じて戸惑っていた。
ゲーチス「サザンドラ!「あくのはどう!」」
サザンドラ「サザァァァ、ザーーーッ‼︎」
シンヤ「ッ!ゲッコウガ!「あくのはどう」を斬り裂け!」
キズナゲッコウガ「コォォォウ、ガーーッ‼︎」
ザァァァァァン!
ゲーチス「ほぅ、パワーが上がっているサザンドラの「りゅうのはどう」を粉砕するとは、流石の強さですね。エリアゼロでテツノイワオとバトルした時より、遥かにパワーが上がっているようだ」
シンヤ・リコ・アメジオ「「「ッ!」」」
アメジオ「テツノイワオだと?」
リコ「どうして…」
シンヤ「何でお前がその事を知ってる!」
ゲーチス「見たから、とでも言っておきましょう」
シンヤ「ッ!」
サザンドラが衝撃波を放って攻撃してくると、ゲッコウガは両手の水の双剣を重ね合わせて一つにすると、刀身が長い忍刀を作り出し、それで「りゅうのはどう」を斬り裂いた。そして、ゲッコウガがサザンドラの攻撃を防いだあと、ゲーチスがテツノイワオの名を口に出すと、アメジオは頭にクエスチョンマークが浮かび、シンヤはゲーチスに、何故テツノイワオのことを知っているのか聞くと、ゲーチスは見たからと答えた。
テラパゴス「パァァゴ!パーーゴ!」
シンヤ(何だ、テラパゴスのこの反応?こんなに敵意をむき出しにしてるテラパゴスは初めて見るぞ)
テラパゴス「パァァァゴ!」
リコ「テラパゴス…」
テラパゴス「パ〜〜〜ゴ〜〜〜!」
ピカァァァァン(テラパゴスの体が光る)
いつも笑ってばかりいるテラパゴスがラクリウムを見た途端、急に敵意をむき出しにしていたので、シンヤは、ラクリウムに対するテラパゴスのこの反応が気になっていた、そして、再びテラパゴスが大声を出すと、テラパゴスの体が光り輝き、姿を変え始めた。尻尾と両手両足と首に付いているリングからはふさふさの毛が生えてきて、背中の甲羅は大きくなってクリスタルのように変化すると、クリスタルの甲羅は、ポケモン18タイプのアイコン柄に見える五角形に構成され、テラパゴスの額の突起物が少し突き出てきた。
???フォルムテラパゴス「パーゴー‼︎」
リコ「あぁ…」
シンヤ「この姿は、前にゼクロムが目覚めた後に見た」
アメジオ「あっ…」
ゲーチス「ぉぉ…」
スピネル「ほぅ…」
???フォルムテラパゴス「パゴーーー‼︎」
パァァァァ!(光が降り注ぐ)
ブラッキー「ブラァァァ⁉︎」
サザンドラ「サザァァァ⁉︎」
テラパゴスの姿が変わると、シンヤたちは光り輝くテラパゴスの姿に目を奪われていた。そして、姿の変わったテラパゴスが雄叫びを上げると、テラパゴスの体から強い光が放たれ、その光を浴びったブラッキーとサザンドラはうなり声を出した。…すると次の瞬間、カプセルの中に入っていたラクリウムは砕け散り、ブラッキーとサザンドラが体に纏っていたピンクのオーラが消えると、ブラッキーとサザンドラは元の状態に戻り、テラパゴスはノーマルフォルムに戻り、ブラッキーやサザンドラと一緒に、その場に倒れて気を失ってしまう。
パリン‼︎(テラパゴスが元の姿に戻る)
リコ「テラパゴス!」ダッ
テラパゴス「パァァ…ゴッ…」
テラパゴスが気を失うと、リコはすぐにテラパゴスの元に駆け寄り、テラパゴスを鞄の中に入れた。六英雄のラプラスが仲間になったあと、テラパゴスはさっきと同じ、背中の甲羅が大きくなった姿に変わった時があったが、背中の甲羅が大きくなった姿から普段の姿に戻ったあと、力を使い切ったテラパゴスは朝まで眠っていた。となると、恐らく今度も、当分テラパゴスは眠っているだろうとシンヤは考えた。
スピネル「実に興味深い。…ブラッキー、ボールに戻って休んでください」
ゲーチス「サザンドラ、戻りなさい」
シュルルーン
ゲーチス「これでよかったのですか?」
スピネル「ええ。目的を果たせた上に、キズナゲッコウガを見ることができましたから。…シンヤさん、リコさん、ご協力感謝します」
シンヤ「待て!お前、ブラッキーとサザンドラに何をした!あれはいったい何なんだ!」
アメジオ「答えろスピネル!」
スピネル「…フッ」ダッ!
ブラッキーとサザンドラをボールに戻すと、目的を果たしたスピネルはこの場を去ろうとした。すると、シンヤはスピネルを呼び止め、ブラッキーとサザンドラに何をしたのかスピネルに聞き出そうとした。アメジオもさっきのブラッキーとサザンドラの様子が気になっているようで、スピネルにさっき何をしたのか聞き出そうとしたが、スピネルはシンヤとアメジオの質問には何も答えず、森の中に走って行った。
アメジオ「ッ!走れるか、ソウブレイズ?」
ソウブレイズ「ブレイ」コクッ
ダッ(アメジオとソウブレイズがスピネルを追う)
ゲーチス「さて、スピネルさんのボディガードをアゲートさんに頼まれてここまで来ましたが、スピネルさんの用事も終わった事ですし、私たちは失礼させてもらいます」
シンヤ「ッ!待て!」
ゲーチス「私たちに構っていていいんですか?ブラッキーとサザンドラに何をしたのかは、スピネルさんでなければ分かりませんよ」
シンヤ「クッ!」
スピネルが森の中に走って行くと、アメジオとソウブレイズはスピネルの跡を追って森の中を走って行った。そして、スピネルがこの場から居なくなると、ゲーチスはシンヤに失礼すると声をかけ、ダークトリニティとこの場を去ろうとした。シンヤはゲーチスを止めようとするが、ゲーチスは言葉巧みにシンヤを煽り始めた。ゲーチスの言う通り、シンヤはスピネルがラクリウムを使って何をしたのか気になっていたため、ここはゲーチスを捕まえるより、スピネルを捕まえることを優先するべきだと考えた。
ポーーン
トルネロス「トルネッ!」
ボルトロス「ボットッ!」
ランドロス「ランドォ!」
赤いゲノセクト「ゲーーノッ!」
ゲーチス「では、いずれまた会いましょう。理想の英雄よ…」
ダークトリニティたちがモンスターボールを宙に投げると、ボールの中から赤いゲノセクトと、イッシュ地方の伝説のポケモン、トルネロス、ボルトロス、ランドロスが出てきた。ランドロスたちが出てくると、やはりバトルをするのかとシンヤは思ったが、ゲーチスが赤いゲノセクトの背中に乗り、ダークトリニティたちがランドロスたちに乗ると、赤いゲノセクトたちは空に飛び上がり、ナッペ山の空に消えていった。
シンヤ「…リコ、俺はスピネルとアメジオを追うから、お前はコライドンとミライドンと一緒に、ロイとドットを捜して合流しろ」
リコ「…私も行く!」
シンヤ「えっ?」
リコ「さっきのブラッキーの様子が気になるし。…それに……シンヤ1人じゃ無茶するから心配だもん!私も一緒に行く!」
シンヤ「ぁっ」
リコ「シンヤがダメって言っても、私はシンヤと一緒に行くからね!」
ゲーチスとダークトリニティがこの場から居なくなったことで、少しは安全だろうと思ったシンヤは、コライドンとミライドンと一緒に、このナッペ山のどこかにいるロイとドットを捜し、2人と合流するようにリコに伝える。しかし、リコもさっきのブラッキーの様子が気になっているようで、何より、恋人であるシンヤが無茶をしないか心配なため、リコはシンヤと一緒に行くと伝えると、決意のこもった眼差しをシンヤに向けた。
シンヤ「……ハァ、分かったよ」スッ(モンスターボールを2つ取り出す)
ポーーン
コライドン「コラァァイ!」
ミライドン「アギャアア!」
シンヤ「コライドン、ミライドン、悪いんだけど、今メールを送る時間がないから、このナッペ山のどこかにいる、ロイとドットを捜してきてほしい。もし、ロイとドットを見つけたら、2人をお前らの背中に乗せて、今度は俺たちを捜してほしいんだ。めちゃくちゃな頼みごとをしてるというのは分かってるけど、今は事を急ぐんだ」
コライドン「コラァァイ!」コクッ
ミライドン「アギャアア!」コクッ
かつてスピネルは、リコの記憶を消し、ペンダントの状態だったテラパゴスを奪った男だ。さっき逃げたスピネルの事を考えると、恐らくこの先には罠があるとシンヤは読んでいた。だからこそ、リコを連れて行かず、ロイやドットを捜すよう頼んだが、こういう時のリコには何を言っても聞かないと思ったシンヤは、コライドンとミライドンをボールから出し、2人にロイとドットの捜索を頼んだ。
シンヤ「リコ、卑劣な手を使うスピネルのことだから、この先には必ず罠が仕掛けられていると、俺はそう思ってる。…だから、絶対に俺のそばを離れるなよ!」
リコ「うん!分かった!」
シンヤ「ピカチュウ、ゲッコウガ、行くぞ!」
ピカチュウ「ピッカッ!」
キズナゲッコウガ「コウガッ!」
リコ「行こうニャローテ!」
ニャローテ「ニャァ!」
ナッペ山・洞窟の入り口
アメジオ「ハァ、ハァ」
リコ「あっ、アメジオ!」
シンヤ「あんなところに洞窟があったとはな」…(洞窟か。…嫌な予感がする)
ニャローテ「ニャッァ」
ピカチュウ「ピィカッ」
キズナゲッコウガ「コウガッ」
スピネルとアメジオの跡を追ってきたシンヤたちは、ナッペ山の森の中を走ってきた。森の中を抜けた先には洞窟があり、スピネルの跡を追ってその洞窟の中に入って行くアメジオとソウブレイズを見たシンヤたちは、洞窟の中に入って行った。
洞窟の中
キラーメ「ラーメッ」
ダグトリオ「ダグッ」
ヤミラミ「ヤミッ」
シンヤ「キラーメにダグトリオ、それにヤミラミまで。ここにもポケモンたちがいたんだ」
リコ「…あっ、シンヤ、アメジオがいたよ」
シンヤ「えっ?」
アメジオ「ッ!お前たちは!」
スピネルとアメジオの跡を追いかけ、洞窟の中を進んでいたシンヤたちだったが、洞窟の中は迷路のように広かったので、中々スピネルとアメジオを見つけられずにいた。しかし、洞窟の中を歩いてしばらくすると、シンヤたちはアメジオとソウブレイズを見つけた。
アメジオ「何でお前たちがここに居る?」
リコ「え…えっと…」
シンヤ「スピネルを追いかけてここまで来たんだ」
アメジオ「…これは俺と奴の…エクスプローラーズの問題だ。お前たちには関係ない!今日は見逃してやるから、さっさと帰れ!」
シンヤ「…悪いが断る」
アメジオ「何!」
シンヤ「俺はお前とスピネルの関係や、エクスプローラーズの問題には何の興味もない。俺が今興味を持っているのは、さっきスピネルがしたことだ。それを奴から直接聞き出すまで、俺たちは帰るつもりはない」
アメジオ「ッ!勝手にしろ!」
シンヤ「ああ、そうする。…リコ、行くぞ」
リコ「う、うん」
シンヤとリコがアメジオに追いつくと、アメジオはシンヤたちに帰るように言った。しかし、スピネルからさっきの事を詳しく聞くまで帰らないとシンヤがアメジオに言うと、アメジオはソウブレイズと洞窟の奥に歩いて行き、シンヤとリコも洞窟の奥に進んだ。
洞窟の奥
リコ「…いないね」
シンヤ「ああ、ここで行き止まりのはずなのに、いったいスピネルはどこに行ったんだ?」
アメジオ「…まさか!これは奴の…」
ガラガラ(岩が崩れる音)
ドォォォォン!
シンヤ「何⁉︎」
ピカチュウ「ピカァ!」
キズナゲッコウガ「コウガッ!」
リコ「出口が⁉︎」
ニャローテ「ニャァ!」
スピネルを追って洞窟の奥を進んでいたシンヤたちは、高い段差が多いところにやってきた。しかし、どうやらこの先に道はなく、ここで行き止まりのようだ。だが、どこにもスピネルの姿がなかったので、シンヤたちはスピネルがどこに行ったのかを考えていた。すると突然、洞窟の中の岩が崩れきて、シンヤたちが通ってきた洞窟の出口を塞いでしまう。
スピネル「フフッ、これであなたたちは終わりですね」
シンヤ・リコ・アメジオ「「「ッ!」」」
アメジオ「スピネル!」
シンヤ「そんなところに隠れていたのか!」
オーベム「オーベッ!」
シュン!(スピネルとオーベムが消える)
リコ「あっ!」
シンヤ「しまった!これが奴の目的だったのか!」
洞窟の外
シュン!(スピネルとオーベムが現れる)
スピネル「ご苦労様でした、オーベム」
オーベム「オベッ!」
洞窟の高い段差があるところに隠れていたスピネルは、洞窟の中に仕掛けた罠を起動させ、自分もろともシンヤたちを洞窟の中に閉じ込めた。しかし、スピネルはオーベムの「テレポート」を利用し、自分だけ洞窟の中から出てきた。これで洞窟の中に閉じ込められているのは、シンヤたちだけということになる。
アゲート「事は順調に運んだようだな」
スピネル「ええ。実験もうまくいきました」
スッ(カプセルを取り出す)
アゲート「ラクリウムを失ったのか!」
スピネル「正しくは、テラパゴスの力で失ったと言う方が正しいでしょう。どうやら、ラクリウムとテラパゴスは共鳴するわけではないようです。…言うなれば、テラパゴスとラクリウムは、“相反する存在”」
アゲート「なるほど…それが分かっただけでも、十分な収穫だな」
スピネル「ええ」
アゲート「ゲーチスとダークトリニティは?」
スピネル「例の物を開発するために、先にアジトに戻りました。ところで、残りの2人は?」
アゲート「サンゴとオニキスが向かっているから問題はない」
スピネル「フッ、ならば問題はありません。これで、シンヤさんもアメジオ君も終わりですね」
アゲート「余程アメジオを嫌っているのだな」
スピネル「彼はギベオン様の孫であり、ギベオン様にとって特別な存在です。いずれ私たちの邪魔になることは明白ですから」
アゲート「…血のつながりとは、時に難儀なものだ」
スピネル「我らエクスプローラーズの未来のために、お孫さんには……このまま消えてもらいましょう」
どうやらスピネルの目的は、ラクリウムとテラパゴスを使って何らかの実験を試し、シンヤとアメジオを洞窟の中に閉じ込めることだったようだ。…そしてその頃、シンヤとリコを捜しているロイとドットは…
ホテルの部屋
フリード「シンヤとリコがいない?」
キャプテンピカチュウ「ピカ?」
ロイ『途中までは一緒だったんだけど…』
ドット『歩いてきた道を捜しても見つからないし。スマホロトムも圏外になってるんだ』
フリード「分かった、すぐにリザードンでそっちに行く」
ピッ(通話を切る)
フリード「キャップ、これからナッペ山に行くぞ」
キャプテンピカチュウ「ピカァ!」
フリード「…待てよ。確かナッペ山のジムリーダーは…」
山小屋に辿り着いたロイとドットは、どれだけ待ってもシンヤとリコが来ないので、シンヤとリコを探し回り、スマホロトムで連絡もしたが、2人のスマホロトムが圏外になっているため、フリードに連絡した。事情を知ったフリードは、すぐにリザードンで行くと伝えたあと、ロイとドットの電話を切り、ある人物に連絡をした。…そして、場所は再びロイたちのいる所に戻る。
山小屋の前
ドット「シンヤが一緒なら、リコも大丈夫だと思うけど。…フリードが来るまで時間があるし、シンヤとリコを捜しに行こう!」
ロイ「うん」
ザッ(前から現れる)
「そうはいかん」
ロイ「あっ!」
ドット「お前たちは!」
フリードがナッペ山に来るまではまだ時間があるので、ロイとドットはフリードが来るまで、シンヤとリコを捜そうとした。そして、ロイとドットがシンヤとリコを捜しに行こうとすると、2人の目の前に、2人の男女が現れた。
サンドウィッチ「…」
オニギリ「…」
ロイ「オニギリにサンドウィッチ!」
ロイとドットの目の前に現れた2人の男女の正体は、エクスプローラーズの幹部であり、オレンジアカデミーに生徒として潜入している、サンドウィッチ如《サンゴ》と、オニギリ如《オニキス》だった。
サンドウィッチ「はぁ〜、オニだる!なんでスピネルに手を貸さなきゃいけないわけ?」
オニギリ「ここは黙って奴に協力しておけ。奴に貸しを作っておくのは悪くない」
サンゴ「…まっ、気晴らしにちょうどいいけど」
ロイ「えっ、スピネルって…」
ドット「まずい!早くシンヤとリコを捜しに行こう」
サンゴの口からスピネルの名が出た時、ドットは嫌なものを感じ、すぐにシンヤとリコを捜しに行こうとした。しかし、オニキスとサンゴはそれを許そうとせず、2人の行く手を塞ぐ。
ロイ「急いでるんだ。そこをどいて…」
オニギリ「学生ごっこは今日で終わりだ!」
ピッ(左手につけている時計型のアイテムに触れる)
シュルル!(服が制服からスーツに変わる)
オニキスはロイの言葉を遮ると、サンゴと一緒に左手につけている時計型のアイテムに触れた。すると、オレンジアカデミーの服装だったサンゴとオニキスの服装は、エクスプローラーズとして行動する時のスーツ姿に変わった。
サンゴ「オニゴーリ、出ておいで!」
オニキス「いくぞ、キョジオーン!」
ポーーン
オニゴーリ「オーニッ!」
キョジオーン「ジオーン!」
オニキス「ここからは、エクスプローラーズとして行動させてもらう」
サンゴ「アッハ、サンゴたちと楽しく遊ぼうぜ」
ロイ・ドット「「くっ…」」
ホゲータ「ホンゲェ…」
ウェルカモ「ウェール…」
服装がスーツ姿に変わると、サンゴとオニキスはモンスターボールを宙に投げ、オニゴーリとキョジオーンを繰り出した。どうやらここからは、2人はエクスプローラーズとして行動するようだ。…ロイとドットがオニキスとサンゴと対峙している頃、洞窟に閉じ込められたシンヤたちは…
洞窟の中
シンヤ「ゲッコウガ!連続で「みずしゅりけん!」」
アメジオ「ソウブレイズ!「連続で「サイコカッター!」」
キズナゲッコウガ「コウガ!コウガ!コォォォォウ、ガーーーッ!」
ソウブレイズ「ブレイ!ブレイ!ブレイ!ブゥゥゥゥレエーーイッ!」
バンバンバンバン‼︎
洞窟の出口を塞いでいる岩を壊そうと、ゲッコウガは「みずしゅりけん」を、ソウブレイズは「サイコカッター」を連続で放つが、ゲッコウガもソウブレイズも、さっきのバトルで互いに力を使い切っていたので、力があまり残ってなかった。
アメジオ「さっきのバトルで力を使いすぎたな。…ソウブレイズ、少し休め」
ソウブレイズ「ブレイ…」
シンヤ「ゲッコウガ、お前も少し休め」
キズナゲッコウガ「コウガッ…」
ピッ(リコがスマホロトムをタッチする音)
リコ「スマホロトムが圏外になってる」
シンヤ「ってことは、スピネルがレアコイルを使って、また磁気嵐を発生させてるんだろ」
リコ「そんな…」
ゲッコウガもソウブレイズもさっきのバトルで疲れているため、シンヤとアメジオは、ゲッコウガとソウブレイズに一旦休むように指示を出した。ゲッコウガとソウブレイズが岩を壊そうとしている間、リコはスマホロトムでロイやドットに連絡したが、スピネルがレアコイルに磁気嵐を発生させているため、ロイやドットに連絡が取れなかった。これでは、シンヤたちがここに居ることを知らせられないため、誰もシンヤたちを助けに来られないという事になる。
ヒョコ(テラパゴスが鞄の中から顔を出す)
テラパゴス「パ〜ゴ!」
リコ「テラパゴス。よかった、気が付いたんだね!」
ニャローテ「ニャアー」
テラパゴス「パーゴ」
シンヤ(今回はすぐに目を覚ましたか。てっきり、明日まで目を覚さないかと思ったぜ)
ピカチュウ「ピィカッ…」
シンヤたちが洞窟の中に閉じ込められてしばらくすると、意識を失って眠っていたテラパゴスは目を覚ますと、鞄の中からあくびをしながら顔を出した。前に甲羅が大きくなった姿になった時は、次の日の朝まで目を覚さなかったので、てっきりシンヤは、テラパゴスがもう少し眠っていると思っていたが、テラパゴスの元気な姿を見てホッとした。
アメジオ「…」
テラパゴス「パゴ!」
バッ(鞄からテラパゴスが出てくる)
テラパゴス「パゴ!パゴパゴ!」
アメジオ「落ち着け。こんな状況でお前を捕まえようとは思っていない」
テラパゴス「パゴ!パゴパゴパゴ!」
リコ「テラパゴス!落ち着いて」
テラパゴス「パーーゴッ!」
シンヤ(…ガラルの古城の時といい、さっきといい。どうしてテラパゴスは、アメジオに対してこんなに怒りを露わにするんだ?テラパゴスとアメジオに、いったい何の関係があるんだ?)
目を覚ましたテラパゴスは、自分の目の前にアメジオがいることに気がつくと、鞄の中から飛び出し、アメジオに吠え始めた。テラパゴスが吠えると、アメジオは、今はお前を捕まえる気はないと説明するが、テラパゴスはアメジオの言葉を聞こうとせず、アメジオを威嚇していた。リコはテラパゴスに落ち着くように言うが、こんなに怒りを露わにしたテラパゴスを初めてみるので、リコはどうしていいか分からなかった。そしてシンヤは、テラパゴスが何故ここまでアメジオに対して怒っているのか、アメジオとテラパゴスに何の関係があるのかを考えていた。…こんな状況で、シンヤたちは洞窟から脱出することが出来るのだろうか?そして、今サンゴとオニキスと対峙している、ロイとドットはどうなるのか?
第68話終わり
次回予告
スピネルの策略によって、シンヤとリコとアメジオは、洞窟の中に閉じ込められてしまう。シンヤとアメジオは他に出口がないかを探すが、どこを探しても他の出口が見つからないので、一旦寒さを凌ぐために、焚き火をして暖を取ることにした。そんな中、リコはアメジオに、何故エクスプローラーズはテラパゴスと黒いレックウザを求めているのか、その理由を聞き出した。
次回「シンヤとリコとアメジオ。洞窟の中で」
今回の話は久しぶりに、文字数が25000を超える話です。楽しんで読んでいただけたら幸いです。
次の話はちょっとオリジナルを足しますが、流れはアニメ通りになります。