ポケットモンスターSV 新たな物語の始まり   作:通りすがりのポケモントレーナー

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 エリアゼロの中で、ルシアスの六英雄の中で最強の《黒いレックウザ》と激しい激戦を繰り広げたリコたちは、長い戦いの果てに、黒いレックウザをゲットすることに成功した。それにより、ついにルシアスの六英雄が揃い、リコのテラパゴスが真の力を取り戻すと、シンヤたちはブレイブアサギ号に戻り、ラクアに向かって出発した。そして、その様子を影で見ていたオニキスとサンゴとカガリは、エクスプローラーズのボスであるギベオンにこのことを報告するために、エクスプローラーズのアジトへと戻っていった。


第93話『アメジオの決意!己が進む道へ!』

 

 エクスプローラーズのアジト

 

 

 オニキス「ライジングボルテッカーズが黒いレックウザをゲットしたあと、テラパゴスは力を取り戻して覚醒しました。そして、今ライジングボルテッカーズは、全ての六英雄とテラパゴスと共に、ラクアに向かっています」

 

 ギベオン『そうか』

 

 

 サンゴとカガリと一緒にエクスプローラーズのアジトに戻ったオニキスは、目の前の壁の一部の模様が光っている所を通して、エクスプローラーズのボスであるギベオンに、シンヤたちがラクアに向かっていることを報告していた。今この場には、アメジオを除く他の幹部とハンベル。そして、マツブサとゲーチスとフラダリがいた。

 

 

 ギベオン『時は満ちた』

 

 ゲーチス「彼らがラクアに向かっているなら、こちらから動く必要はありませんね」

 

 ギベオン『ああ。奴らがラクアに辿り着くまで待つ。スピネル』

 

 スピネル「はっ」

 

 ギベオン『ラクアでは、お前の頭脳が必ず必要になる。期待しているぞ』

 

 スピネル「ギベオン様の願いを叶えるために、全身全霊を尽くす所存でございます」

 

 

 スピネルがギベオンにそう言うと、壁の模様の光が消えてしまう。すると、ハンベルがスピネルたちの前にやってきて、これからの行動が伝えられる。

 

 

 ハンベル「では、皆様は直ちに、ラクアに向かってください。ハデス様は、後でラクアに向かわれ、皆様と合流するとのことですので」

 

 サンゴ「アメジオ坊ちゃんとアオギリのおじさんは行かないの?」

 

 オニキス「あの2人がいれば、かなりの戦力になると思うが」

 

 ハンベル「アオギリ様は、今回の作戦には参加しません。ゲーチス様とフラダリ様。そして、ハデス様が改良したばかりのカオスオーブを自身のカイオーガに使ったことで、アオギリ様のカイオーガは、体に相当な負担を受けています。そして、メガシンカとテラステルの力が合わさった、《メガテラスタル》という姿になったメガジュカインとのバトルで、カイオーガが酷いダメージを受けたこともあり、今回は出ないと、アオギリ様がそうおっしゃられたので」

 

 スピネル「それに、アメジオは任務から外された身です」

 

 アゲート「その通りだ。戦力ならば、ゲーチス、マツブサ、フラダリがいれば十分だと思うが?」

 

 ゲーチス「フフッw」

 マツブサ「フンッ」

 フラダリ「…」

 

 オニキス「ふむ…」

 サンゴ「んじゃ、ラクアに出発するか」

 

 

 サンゴがそう言って前に歩き出すと、他のメンバーもラクアに向かって出発した。

 

 

 エクシード社

 

 

 アメジオ「…」

 ジル(変装した姿)「…」

 コニア(変装した姿)「…」

 

 

 スピネルたちがラクアに向かっている頃、パルデア地方にある《エクシード》社では、スピネルたちと別行動しているアメジオが、変装しているジルとコニアと共に、エクシード社のある部屋へと向かっていた。このエクシード社は、かつてフリードが働いていた会社でもあり、このエクシード社の社長である《クレイブ》は、アメジオの実の父親でもあった。

 

 

 スタッスタッ(誰かが前から歩いてくる)

 

 

 コニア(変装した姿)「お、おはよう…」

 ジル(変装した姿)「ど、どうも…」

 

 エクシード社の社員「おはようございます!」

 モココ「モココ!」

 

 ジル・コニア(変装した姿)「「…はぁ」」

 

 アメジオ「ジル、コニア、もっと堂々と歩け」

 

 コニア(変装した姿)「は、はい!」

 ジル(変装した姿)「す、すいません」

 

 

 アメジオは幼い頃から何度もここに来ていたことがあるため、アメジオが幼い時からここで働いているエクシード社の社員は、アメジオに会うと頭を下げて挨拶をしていた。しかし、ジルとコニアはこのエクシード社とはなんの関係もないため、エクシード社の社員に変装して潜入していた。いつ変装がバレるのかと心配している2人が緊張しながら歩いているので、アメジオはジルとコニアに堂々と歩けと伝えた。そして、エクシード社の中を歩き続けてしばらくすると、アメジオがある部屋の前で止まったので、ジルとコニアも足を止めた。

 

 

 コニア「ここですか?」

 アメジオ「ああ。スピネルの研究室だ」

 

 

 アメジオたちがやってきたエクシード社のある場所とは、スピネルの研究室だった。なぜエクシード社にスピネルの研究室があるのか?それは、エクスプローラーズの幹部になる前のスピネルが、このエクシード社で働いている研究員の1人だったからだ。アメジオはスピネルとアゲートの策略にはまり、ギベオンに全ての任務から外されたあと、ジルとコニアと共に、密かにスピネルのことを探っていて、かつてスピネルがここで働いていたことを突き止めたアメジオは、スピネルが何を企んでいるのかを調べるために、手がかりが残されている可能性があるスピネルの研究室にやってきたのだ。そして、アメジオはスピネルの研究室に入るために必要な鍵を使って中に入ると、スピネルの机に置いてあるパソコンを開き、中に入っているデータを調べ始めた。すると、スピネルのパソコンのデータの中から、《ラクリウム》を研究してわかった詳しいデータが表示された。

 

 

 コニア「これは?」

 

 アメジオ「お祖父様がラクリウムと呼んでいる物質で、ポケモンの力を無理やり引き出して凶暴化させる効果がある」

 

 ジル「本当なんですか?」

 

 アメジオ「ああ。スピネルがナッペ山でこれを使用したとき、奴のブラッキーとゲーチスのサザンドラが凶暴化したところを確認した。……ッ!ベータ版だと!奴がナッペ山で使ったあれは、まだ未完成だというのか!…ん?これは…」

 

 

 アメジオがマウスを使ってパソコンの中にあるデータを調べていると、データの文面の中に、ラクリウムの名を持つ《ラクリウムスフィア》と書かれているものを見つけた。

 

 

 アメジオ「ラクリウム、スフィア?スピネルの奴、こんなものを作って何をするつもりだ?」

 

 ウィーン(扉が開く)

 

 アメジオ「っ!」

 

 

 警備員1・2・3「「「…」」」

 

 キリキザン「キッザァ!」

 イオルブ「イオッ!」

 ミルホッグ「ミルホッ!」

 

 

 アメジオがパソコンのデータの中にあるラクリウムスフィアと呼ばれるものを見つけると、スピネルの研究室の入り口の扉が開いた。するとそこには、以前シンヤとフリードがラクリウムのことを調べに来た時に遭遇した3人の警備員と、彼らのポケモンと思われるキリキザンとイオルブとミルホッグがいた。

 

 

 ジル「見つかったか!」

 コニア「こうなったら!」

 

 スッ(アメジオが横に手を出す)

 

 ジル「えっ?」

 コニア「アメジオ様?」

 

 アメジオ「…」

 

 警備員1「一緒に来ていただきます」

 

 警備員に見つかると、ジルとコニアはモンスターボールを取り出して強行突破しようと思ったが、アメジオは横に手を出して2人を制止した。アメジオの実力なら、目の前のキリキザンたちなど敵ではないが、ここでは自分の父親が働いているため、アメジオは騒ぎを起こしたくなかったのだ。そして、警備員に連れられたアメジオたちは、エクシード社の近くにある倉庫街へと連れてこられた。

 

 

 倉庫街・とある倉庫内

 

 

 ドンッ(背中を押される)

 

 

 コニア「ちょっと!こんな所に連れてきてどういうつもり!」

 

 

 警備員2「しばらくの間、皆さんにはここにいてもらいます。クレイブ社長からのご命令ですので」

 

 

 ジル「なっ⁉︎」

 コニア「クレイブ社長の命令ですって⁉︎」

 

 アメジオ「…」

 

 

 警備員3「では」

 

 

 警備員の1人がそう言って倉庫のシャッターを下ろすと、アメジオたちは倉庫の中に閉じ込められてしまった。ここから脱出しようにも、ソウブレイズたちの入ったモンスターボールをスピネルの研究室で奪われてしまったため、今のアメジオたちにはここから抜け出す手段がなかった。そしてその頃、テラパゴスや六英雄と一緒にラクアを目指しているシンヤたちは…

 

 

 上空

 

 

 テラパゴス「パァァァゴォ、パァァゴッw!」

 黒いレックウザ「グォォォォッ」

 

 

 ブレイブアサギ号・甲板

 

 

 リコ「パゴゴ、すごく嬉しそう」

 

 シンヤ「こうして2人を見てると、初めてパゴゴのテラスタルフォルムを見た時のことが嘘みたいに思えるな」

 

 リコ「うん」

 

 フリード「あとは、レックウザが導いてくれるままに進むわけだが、エクスプローラーズに見つからないよう気をつけないとな」

 

 ロイ「えっ?」

 

 フリード「奴らの狙いがラクリウムだとわかった以上、奴らをラクアに行かせるわけにはいかないからな」

 

 ドット「あ、そっか」

 シンヤ「ラクリウム…か」

 

 リュウガ「シンヤとリコは、前にラクリウムを見たことあるって言ってたよな?」

 

 リコ「うん。スピネルがナッペ山で、ブラッキーとサザンドラに使ってた」

 

 シンヤ「そのあと、ブラッキーとサザンドラは凶暴化してたけどな」

 

 N「シンヤ、そのサザンドラって…」

 

 シンヤ「ああ。ゲーチスのサザンドラだ。あの場にはゲーチスもいたからな」

 

 N「…そっか」

 

 フリード「そのことで、一つ気になったことがある」

 

 シンヤ「えっ?」

 リコ「気になること?」

 

 フリード「なぜエクスプローラーズが、ラクリウムを《永遠のめぐみ》と名付けたのかってことだ」

 

 ロイ「永遠って、ず〜っと続くってことでしょ?」

 シンヤ「ああ」

 

 モリー「…もしかして、ラクリウムは体の細胞を活性化させることができるんじゃないかな」

 

 リコ「活性化?」

 ロイ「どういうこと?」

 

 モリー「私たち人間やポケモンはね、目に見えない小さい細胞が集まってできてるんだ。毎日ご飯やおやつを食べて栄養を体の中に取り入れると、体の中で新しい細胞が作られて、古くなった細胞と入れ変わるんだ。そうやって、細胞が増えたりなくなったしてるから、私たちは体を維持できるんだ。例えば、怪我をして傷ができても、何日か経てば綺麗に治るでしょ?あれだって、皮膚の細胞が新しく生まれ変わるからなんだ」

 

 ロイ「へぇ〜」

 リコ「なるほど」

 

 オリオ「さすがモリー!勉強になるよ!」

 

 シンヤ「モリーって、ポケモンだけのお医者さんかと思ってたけど、人間の体にも詳しいんだな」

 

 モリー「多少の知識はあるけど、私はあくまでポケモン専門の医者だよ」

 

 

 確かに、ポケモンドクターとしてのモリーの腕はピカイチだが、人間の体に関してここまで詳しい知識を持っているなら、人間を治療する時のモリーの腕もピカイチなのは間違いだろう。実際、よくシンヤたちが怪我をして傷ができた時、モリーが手当てしてくれているのだから。

 

 

 モリー「もしかしたら、ラクリウムには体の細胞を無理やり活性化させる力があって、常に強くて新しい体にすることができるのかもしれない」

 

 リュウガ「じゃあ、もし人間にラクリウムを使ったりしたら…」

 

 モリー「若い肉体をずっと保ち続けることができるかもね。もちろん、これは可能性の話だけど…」

 

 フリード「もしかすると、ギベオンはエクシード社の技術を使って、自分にラクリウムを使っているのかもしれない」

 

 オリオ「じゃあギベオンは、ラクリウムを使って100年も生きてるってこと⁉︎」

 

 マードック「そう考えると、やっぱりエクスプローラーズのボスは、ルシアスやリュウセイと旅をしたギベオンってことになるな」

 

 リコ「やっぱり、そうなのかな」

 

 ミコ「本人に会わない限り、まだなんとも言えないわね」

 

 ドット「けどさ、もう奴らはラクリウムを持ってるんだろ?だったら、ラクアに行く必要はないんじゃない?」

 

 フリード「物質である以上、使うラクリウムにも限りがあるはずだ。だから、より多くのラクリウムが必要なんだろう」

 

 ロイ「ラクリウムって、今もラクアにあるのかな?」

 

 フリード「リスタルさんから聞いた話の通りなら、まだラクアにあると考えた方がいいだろう。だが、今ラクアがどういう状態なのかもわからないからな」

 

 リコ「リスタルさんは、ルシアスが六英雄とパゴゴと力を合わせてラクアを守ったって言ってたよね」

 

 フリード「パゴゴが自分のエネルギーを六英雄に渡し、六英雄の力を増幅させたあと、ラクリウムのある場所にバリアを貼った。その結果、世界中にラクリウムの影響が出なかったから、ルシアスや六英雄の活躍で、世界は守られたと言っていいだろう」

 

 マードック「ってことは、ラクリウムはラクアにある可能性が高いってことか?」

 

 フリード「それはわからない。ただ、エクスプローラーズがラクリウムを手に入れるために今まで行動してたのなら、その可能性は高いと考えた方がいいだろう。そして最大の問題は、もしラクリウムをラクアで見つけた時、どうすればいいのかってことだ」

 

 フリード・モリー・マードック・オリオ「「「「う〜ん」」」」

 

 

 フリードたち大人組は、ラクアにラクリウムがあった時、六英雄の力でも破壊できなかったものをどうすればいいのか、頭の中で必死にその答えを探していた。するとフリードは、シンヤならいい答えを持っているのではないかと思い、隣にいるシンヤに聞いてみることにしたのだが…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シンヤ「ふわぁぁ〜〜(-o-)、眠い」

 

 フリード・モリー・マードック・オリオ「「「「だぁっ⁉︎」」」」(コケる)

 

 シンヤ「は?なに?どうしたの?」

 

 フリード「お前な、こっちはラクリウムがラクアにあった時のことを真剣に考えてたのに…」

 

 シンヤ「だって、あれこれ考えても仕方ないだろ。それに、リコたちだってそんな不安な顔をしてないぞ」

 

 フリード「えっ?」

 

 

 シンヤにそう言われると、フリードはシンヤの隣にいる、リコ、ロイ、ドットの顔を見た。すると、リコたちが楽しそうな顔をしていることに気づく。

 

 

 フリード「お前ら、ラクリウムがラクアにあるかもしれないってのに、怖くないんだな」

 

 リコ「少し不安はあるけど、六英雄やパゴゴとみんなと一緒に、ルシアスたちが目指したラクアに行けるんだって思ったら…」

 

 ロイ「わくわくしてくるよ!」

 

 ドット「ラクアがどんな場所なのか、早く見てみたい!」

 

 フリード「ぉっ…」

 

 

 冒険を始めた最初の頃は、不安でいっぱいいっぱいだったリコたちだったが、シンヤたちと一緒に冒険をしてきたことで、精神的にかなり成長したようだ。それを見たフリードたちは、自分たちが大人がいろいろ考えすぎてたのだと反省すると、シンヤに言われた通り、今はあれこれ考えても仕方ないため、ラクアに着いたあとで考えればいいと思うのだった。…すると、急にシンヤが口を開いた。

 

 

 シンヤ「フリード、ちょっと出かけていいかな?」

 

 フリード「出かけるって、どこにだ?」

 

 シンヤ「アメジオに会いに、パルデアまで行ってくる」

 

 フリード「はっ!?」

 

 シンヤとN以外の全員「「「えっ?」」」

 

 

 シンヤがアメジオに会いにパルデアまで行ってくると言うと、N以外の全員は思わず変な声を出してしまう。すると、すぐに我に返ったフリードはシンヤに詰め寄る。

 

 

 フリード「お前、いきなり何言ってんだ!ここからパルデアまでどれだけ距離があると思ってる!」

 

 リコ「そうだよ!それに、なんでアメジオに会いに行く必要があるの?」

 

 シンヤ「ギベオンやラクリウムのことを聞きに行くだけだ。話を聞いたらすぐに戻るから」

 

 フリード「ちょっと待て!アメジオに話を聞きに行くのはいいが、ここからひこうタイプのポケモンに乗ってパルデアまで行ったとしても、行きと帰りだけで数時間はかかるぞ」

 

 シンヤ「誰がひこうタイプのポケモンに乗るなんて言った?」

 

 フリード「えっ?」

 

 シンヤ「俺はここからパルデア地方に行って、パルデアに行ったあと直接ここに帰ってくるんだから、行きも帰りもそんなに時間はかからないよ」

 

 

 シンヤがそう言うと、リュウガとミコ以外の全員はシンヤの言っていることの意味がわからず、頭の上にクエスチョンマークが浮かんだ。

 

 

 シンヤ「口で説明するより、見せた方が早いか」

 

 

 シンヤはそう言いながらスーパーボールを取り出し、ウイングデッキにやってくると、取り出したスーパーボールから、あるポケモンを出した。

 

 

 ポーーン‼︎

 

 パルキア「パァァァァルルルルッ‼︎」

 

 

 マードック「なっ⁉︎」

 モリー「こ、このポケモンって…」

 オリオ「パルキアじゃん⁉︎」

 

 

 シンヤがパルキアをウイングデッキに出すと、初めてシンヤのパルキアを見るオリオたちは驚いていた。

 

 

 シンヤ「パルキア、ハッコウシティに続く道を作ってくれ」

 

 パルキア「パァァァルルッ!」

 

 

 パルキアはシンヤにそう言われると、右手にパワーを集めた。すると、パルキアの右肩の真珠が光り、パルキアが右手を真っ直ぐ下に向けてさげると、ウイングデッキに1人の人間が通れるほどの空間の裂け目ができた。その空間の裂け目をよく見てみると、向こう側にハッコウシティの景色が映っていた。

 

 

 シンヤ「これなら、行きも帰りもすぐだろ」

 

 フリード「なるほど。これが、空間を自由自在に操れるパルキアの能力ってわけか」

 

 ドット「あのさ、パルキアにこんな力があるなら、もっと大きい裂け目を作ってもらえば、ブレイブアサギ号でラクアに行けるんじゃないの?」

 

 リュウガ「それは無理だ」

 ドット「えっ?」

 

 ミコ「小さい裂け目ならともかく、大きい裂け目を無理やり作ったりなんかしたら、空間が大きく歪んでしまって、世界にどんな異変が起こるかわからないわ。それこそ、アカギがやろうとしたように、世界を消滅させることにだって繋がるんだから」

 

 ドット「えっ⁉︎そうなの?」

 

 シンヤ「ああ。小さい裂け目を作っても空間は少し歪むんだけど、ほんの小さい空間なら、世界に異変を起こすようなものにはならないんだ。それに、俺のパルキアが空間を切って道を作るには、パルキアが行ったことのある場所じゃなきゃ繋がらないんだ」

 

 ロイ「じゃあ結局、パルキアの力を使ってもラクアに行けないってことか…」

 

 シンヤ「そういうことだ。じゃあ、俺はこれからアメジオに会ってくるから」

 

 リコ「待って!」

 

 

 シンヤはパルキアをボールの中に戻すと、パルキアの作った空間の裂け目に入ろうとした。すると、突然リコがウイングデッキに走ってきたので、シンヤは足を止めた。

 

 

 シンヤ「どうした?」

 

 リコ「私も一緒に行く!」

 

 シンヤ「え?何で?」

 

 リコ「シンヤを1人で行かせるのが心配だから、私も一緒に行く!」

 

 シンヤ「あ〜、悪いんだけど、リコはここに残ってくれないかな」

 

 リコ「なんで?私は邪魔ってこと?」

 

 シンヤ「そうじゃなくて、ゲーチスやハデスに遭遇する可能性もあるから、万が一のことを考えて、お前にはここに残ってほしいんだ」

 

 リコ「むー///」

 

 

 シンヤの言葉に怒ったリコの両頬が赤くなると、リコは赤くなった左頬を軽く膨らませてシンヤをジッと見た。

 

 

 シンヤ「ぅっ…」

 

 

 リコの顔を見ると、ほんの一瞬、一緒に行こうと言い出しそうになったシンヤだったが、すぐにハデスやゲーチスに遭遇する可能性を考えた。さすがに街の中で襲撃されるなんてことはないと思うが、敵は卑怯な手を使うことに長けているため、最悪な状況に陥ることを考えれば、リコを船に置いていく方がいいと思った。しかし、自分が空間の裂け目に入れば、リコが強引についてくる可能性が高いと思ったシンヤは、ある方法を使ってリコを置いていく方法を瞬時に思いつく。

 

 シンヤ「…リコ」

 リコ「?なに?」

 

 ぎゅっ(リコを抱き寄せる)

 

 リコ「えっ⁉︎///」

 シンヤ「…ごめん」

 

 リコ「え?」

 

 チュッ

 

 リコ「んっ⁉︎///」

 

 

 モリー「なっ!///」

 オリオ「ちょ!///」

 マードック「おいおい!///」

 ランドウ「…若いのう」

 

 

 シンヤは右手をリコの後ろ頭に回し、左手をリコの背中に回すと、リコを軽く抱きしめた。そのシンヤの行動に、リコは顔を真っ赤にしてしまうが、次の瞬間、自分の両手をリコの両肩に移動させて掴んだシンヤは、リコを引き離して少しの間を作ると、リコの唇に自分の唇を重ね合わせ、リコの口の中に自分の舌を入れた。すると、リコの顔はさらに真っ赤になり、目は渦巻き状になっていた。それを見ていたモリーとオリオとマードックは、顔を赤くしながらその光景に見入っていて、シンヤとリコがキスするところを見たことがあるNを除くリュウガたちは、その光景に見慣れてしまったのか、またかと思いながらシンヤとリコのキスするところを見ていた。そして、数秒間リコとディープキスをしたシンヤはリコの唇から自分の唇を離すと、リコの両肩を掴んでいる両手を離した。

 

 

 シンヤ「ごめん、これで許してくれ」ダッ!

 

 

 シンヤはリコにそう言うと、すぐにリコから離れて後ろにある空間の裂け目にピカチュウと一緒に飛び込んだ。

 

 

 リュウガ「待て!俺も一緒に行く!」ダッ!

 

 ミコ「あっ!リュウガ!」

 

 シュン!(空間の裂け目が消える)

 

 

 シンヤが空間の裂け目の中に飛び込むと、リュウガは急いで展望室からウイングデッキに続く階段を降りていき、シンヤの後を追って空間の裂け目の中に飛び込んだ。すると、パルキアが作った空間の裂け目が閉じてしまい、シンヤにディープキスをされたリコは我に返った。

 

 

 リコ「…シンヤの……シンヤの……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バカァァァァァァァァァッ‼︎」

 

 

 ロイ「いいっ⁉︎」

 ドット「ああ…」

 フリード「これは…」

 

 モリー「シンヤが帰ってきた後が大変だね…」

 オリオ「うん…」

 マードック「ああ」

 

 ミコ「私、どうなってもし〜らないと…」

 N「?」

 

 

 倉庫街・アメジオたちが閉じ込められている倉庫内の近く

 

 

 シンヤ「何でお前まで来たんだよ?」

 リュウガ「お前1人じゃ危険だと思ってな」

 

 シンヤ「お前よりは強いつもりだが」

 

 リュウガ「よく言うぜ。俺とお前のポケモンバトルの戦績は、全部で92戦。この戦績は、この前パルデアのポケモンリーグでバトルしたのも入ってる。その92戦中、互いに46勝46敗してる。つまり、この前のバトルで俺に勝つまでは、お前は俺より多く負けてたってことだ」

 

 シンヤ「たった1回だろ。そんなつまらん結果を持ち出すなんて、お前も小さい男だ…あっ…」

 

 リュウガ「ん?…あっ…」

 

 

 パルキアの力で出来た空間の裂け目を通ってきたシンヤたちは、アメジオたちが閉じ込められている倉庫の近くにやってきた。そこでシンヤとリュウガが話をしていると、2人の近くにタキシード姿の老人が歩いてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ハンベル「…」

 

 

 リュウガ「あの人、前にダイアナさんが見せてくれた写真に写ってた…」

 

 シンヤ「ああ。《ハンベル》っていったけ?」

 

 

 シンヤとリュウガは、偶然やってきた倉庫街でダイアナの知り合いのハンベルを見つけると、急いで近くの物陰へと隠れた。

 

 

 リュウガ「何でこんな所に?」

 

 シンヤ「わからん。だけど、あの人はエクスプローラーズだ。尾行すれば、エクスプローラーズの情報をなにか得られるかも」

 

 リュウガ「アメジオってヤツに会いに行かないのか?」

 

 シンヤ「それはあと」ダッ!

 ピカチュウ「ピッカッ!」ダッ!

 

 リュウガ「おいおい」ダッ!

 

 

 シンヤとピカチュウが気配を消してハンベルの後を追っていくと、リュウガもシンヤとピカチュウに続いてハンベルの後を追いかけた。

 

 

 倉庫内

 

 

 コニア「どこかに出口はない?」

 ジル「いや」

 

 アメジオ「…」

 

 

 シンヤとリュウガがハンベルの後を追っている頃、倉庫内に閉じ込められているジルとコニアは、どこか他に出口がないか探していて、アメジオは壁にもたれかかると、顎に手を置いて何かを考えていた。

 

 

 ジル「クソッ、モンスターボールさえあったら!」

 アメジオ「慌てるな」

 

 ジル「えっ?」

 アメジオ「ジタバタしても何も解決しない」

 

 ジル「それは、そうですけど…」

 

 コニア「でも、自分の息子をこんな所に閉じ込めるなんて、クレイブ社長は何を考えているの?」

 

 アメジオ「いや、おそらく父は何も知らないだろう」

 

 ジル・コニア「「えっ⁉︎」」

 

 アメジオ「あの警備員たちは、スピネルの息がかかった連中だ。わざわざ俺たちをここに連れてきたのは、それを父に知られて問題を起こしたくないからだろう」

 

 ジル「どうしてそう思うんですか?」

 

 アメジオ「スピネルは、いずれ俺たちが自分の研究室に辿り着くと読んでいて、パソコンの中にあるデータを見るとわかっていたんだ。そのために、何人かの警備員をエクシード社に潜り込ませ、俺たちが研究室に入ったら、ここに連れてくるよう命令していたんだ。そう考えれば、タイミングよく警備員がやってきたことも納得がいく」

 

 コニア「ですが、どうして同じエクスプローラーズのメンバーであるスピネル様がそんなことを?」

 

 アメジオ「それは…」

 

 

 ガラガラッ(シャッターが上がる音)

 

 

 ジル・コニア「「えっ?」」

 

 

 同じエクスプローラーズの仲間であるなら、わざわざ自分たちを閉じ込める理由がないので、なぜスピネルがこんなことをするのか、コニアとジルには全く理解できなかった。しかし、アメジオにはスピネルがなんでこんなことをしたのか心当たりがありそうなので、ジルとコニアをそれをアメジオに聞こうとした。すると、いきなり倉庫のシャッターが開いたので、アメジオたちはシャッターの方に目を向けた。

 

 

 ハンベル「お迎えに上がりました」

 

 

 アメジオ「やっと来てくれたか」

 

 ジル「ハ…」

 コニア「ハンベル様⁉︎」

 

 シャッターが完全に開くと、そこにはエクスプローラーズの執事である《ハンベル》が立っていた。ハンベルの右手には、アメジオ、ジル、コニアのポケモンたちが入っているモンスターボールがあり、ハンベルがそのモンスターボールをアメジオたちに渡すと、アメジオとジルとコニアは自分のポケモンたちをボールの中から出して互いの無事を喜びあった。

 

 コニア「ゴルダック!エアームド!」

 ジル「みんな無事でよかった!」

 

 ゴルダック「ゴルダッ!」

 コニアのエアームド「エァァァッ!」

 

 サイドン「サァァァイッ!」

 ジルのエアームド「エァァァァッ!」

 

 アメジオ「ソウブレイズ、アーマーガア、心配をかけた」

 

 ソウブレイズ「ブレイッ」

 アーマーガア「アァァマッ」

 

 ハンベル「また無茶をされましたな」

 

 アメジオ「だが、俺が奴の罠にかかることを読んでいたから、わざわざここに来たのだろう。それに、奴を怪しんでいるのはハンベルも同じはずだ」

 

 スッ(髪で隠れているハンベルの右目が開く)

 

 ハンベル「…スピネル様のことですね」

 

 アメジオ「ああ。スピネルは、お祖父様を裏切るつもりだ」

 

 ジル・コニア「「えっ⁉︎」」

 

 ハンベル「やはり、そのことにお気づきになっておりましたか」

 

 アメジオ「ハンベル、お祖父様やスピネルがラクリウムと呼ぶあの物質は、いったい何だ?知っていることがあるなら教えてくれ!俺は、お祖父様の力になりたいんだ!」

 

 ハンベル「…わかりました。ここに長居は無用です。屋敷へと戻りましょう。そこで、ギベオン様から聞いた、私の知っている全てをお話しします」

 

 アメジオ「わかった」

 

 ハンベル「…さて、そろそろ出てきてはいかがですか?」

 

 アメジオ「ん?」

 ジル「えっ?」

 コニア「ハンベル様?」

 

 ハンベル「先ほどから、私の後をつけてきているのはわかっています。盗み聞きなどしていないで、出てきたらどうですか?」

 

 

 アメジオたちが閉じ込められていた倉庫の近くの物陰にハンベルが声をかけてしばらくすると、そこからハンベルを尾行するために隠れていたシンヤたちが出てきた。

 

 

 シンヤ「なんだ、バレてたのか」

 ピカチュウ「ピィカッ」

 リュウガ「…」

 

 

 コニア「あっ!」

 ジル「お前は!」

 アメジオ「…シンヤ」

 

 

 シンヤ「よっ。久しぶりだな、アメジオ。それと、あなたはハンベルさんであってますよね?」

 

 

 ハンベル「?なぜ私の名を?」

 

 

 シンヤ「キタカミの里で、ダイアナさんに会った時に聞きました。あなたがエクスプローラーズの人間だってことも」

 

 

 ハンベル「そうですか。お初にお目にかかります。シンヤ様、リュウガ様」

 

 

 リュウガ「っ!」

 

 

 アメジオ(こいつがハンベルの言っていた、イベルタルを持つリュウガか)

 

 

 シンヤ「なるほど。あなたもアゲートという女が仕掛けた小型カメラを見たんですね」

 

 

 ハンベル「はい。あなたがディアルガの力で、オーリム博士とフトゥー博士を助けるところも拝見しました」

 

 

 シンヤ(あんなところまで見られてたのか。…しかし、この人できるな)

 

 

 ハンベル(なるほど。アメジオ様が一目置くはずです)

 

 

 シンヤはダイアナからハンベルのことを、ハンベルはアメジオからシンヤのポケモントレーナーとしての実力を聞いてはいたが、こうして実際に会ってみると、シンヤとハンベルは、互いが相当な実力者だということを感じ取っていた。

 

 

 ハンベル「しかし、今ライジングボルテッカーズは、ラクアに向かっている途中のはずです。それなのに、なぜあなたたちがここに?」

 

 

 シンヤ「それは、俺の質問に答えてくれれば話しますよ。エクスプローラーズのボスであるギベオンのことと、《ハデス》のことを教えてくれればね」

 

 リュウガ(なるほど。ギベオンだけじゃなく、ハデスのことも聞くためにここまで来たのか)

 

 

 ジル「はぁっ⁉︎お前、何言ってんだ!」

 

 コニア「私たちは敵同士なのよ!そんなこと教えるわけが…」

 

 ハンベル「わかりました」

 

 アメジオ「ハンベル?」

 

 ハンベル「アメジオ様、彼らにも屋敷に来てもらい、そこで一緒に話を聞いてもらった方がよろしいかと」

 

 コニア「ハンベル様!」

 ジル「本気なんですか⁉︎こいつは敵なんですよ⁉︎」

 

 ハンベル「もちろんわかっています。しかし、今ここで我々が争っても、何の意味もありません。それに、これからアメジオ様にお話しすることは、彼にも深く関わっていることなのです。かつて、ギベオン様と一緒にラクアを目指して旅をした、リュウセイとアリアの子孫である彼には」

 

 

 シンヤ・リュウガ「「っ!」」

 

 

 ジル「リュウセイ?」

 コニア「アリア?」

 

 

 シンヤ「そこまで調べられてるってことは…」

 

 

 ハンベル「ええ。ダイアナと、テラパゴスを持つリコという娘が、ルシアスとリスタルの子孫だということも調べがついています」

 

 

 シンヤ(やはりな)

 

 

 ダイアナがリコにお守りとして渡したペンダントを狙ってアメジオがセキエイ学園にやってきた時から、どうしてリコがペンダントを持っていることを知っているのか気になっていたが、その理由をハンベルから聞いたことで、シンヤはその理由にやっと納得した。

 

 

 アメジオ「…」

 

 ハンベル「アメジオ様は驚かれないのですね」

 

 アメジオ「不思議と、そうじゃないかと思っていた」

 

 ハンベル「そうですか。…ここにいる皆さんは、それぞれ思うところや言いたいことなどあるかもしれませんが、私はこれから、アメジオ様と共に屋敷に向かいます。もし聞きたいことがあれば、一緒に同行してください」

 

 

 シンヤ「んじゃ、そうさせてもらおうかな」

 

 リュウガ「おい、いいのか?敵の罠に踏み込むようなものだぜ?」

 

 シンヤ「最初は警戒してたけど、ハンベルさんは、アメジオと同じで信用できる」

 

 

 リュウガの言う通り、普通なら罠と考えるのが当然だが、目の前にいるハンベルが、アメジオと同じように卑怯な手は使わない人物だと、シンヤは直感的にそう感じ取った。

 

 

 ハンベル「リュウガ様はどうしますか?」

 

 

 リュウガ「行っていいなら、俺も同行させてもらうぜ。ダチを1人にさせるわけにはいかないし、アンタを信じていいのかという疑いがあるんでな」

 

 

 ハンベル「畏まりました。ジル様とコニア様は?」

 

 コニア「えっ?」

 ジル「俺たちは…」

 

 アメジオ「お前たちも一緒に来てくれ」

 

 ジル・コニア「「はい!」」

 

 ハンベル「では皆さま、迎えの手配をしておりますので、こちらへどうぞ」

 

 

 シンヤとリュウガはハンベルの案内で、アメジオたちとリムジンが停まっている場所にやってきた。そのリムジンに乗って数分後、シンヤたちはハンベルの言っていた屋敷へとやってきた。そこは、アメジオの家だった。

 

 

 アメジオの家の前

 

 

 シンヤ「すげぇ…」

 ピカチュウ「ピィカッ…」

 

 ジル「ここが、アメジオ様のご自宅か…」

 コニア「そうみたいね…」

 

 シンヤ(…やっぱりアメジオって、お坊っちゃんだったんだな)

 

 

 エクスプローラーズのボスの孫なのだから、アメジオがそれなりの財力を持っているとは思っていたが、目の前にあるアメジオの家は、土地代も含めれば数億円はするだろうと思われる大豪邸で、扉の入り口には、門番と思われる2体の《ネギガナイト》が立っていた。

 

 

 シンヤ「すごい家だな…」

 

 リュウガ「お前の家だってすごいだろ。立派な洋館で庭だってあるし」

 

 シンヤ「そうか?」

 

 アメジオ「何をしている?早く来い」

 

 シンヤ「あ、ああ…」

 

 アメジオに呼ばれると、シンヤたちはアメジオの家の中に入って行った。家の中にある廊下を進んで行くと、2体の《チラーミィ》が尻尾を使って家の中を綺麗に掃除しており、家の中を守っていると思われる《シュバルゴ》が見回りをしていた。そして、2階に続く階段のある場所にやってくると、目の色がアメジオに似ている若くて綺麗な女性の肖像画が壁に飾られていた。

 

 シンヤ「この人、アメジオに似てるな」

 ジル「ああ」

 コニア「もしかして、アメジオ様の…」

 

 アメジオ「母だ。小さい時に、交通事故で亡くなっている」

 

 シンヤ・リュウガ「「えっ?」」

 

 ジル・コニア「「あ…」」

 

 

 突然アメジオが自分の重たい過去を話すと、シンヤたちはアメジオに何て言っていいか分からず困惑してしまう。

 

 

 アメジオ「お前たちが気にすることじゃない。それに、俺が物心つく前の話だ。俺にとっては、ハンベルが親みたいなものだからな」

 

 

 アメジオはそう言うと、ハンベルと一緒に階段を登って2階に歩いて行ったので、シンヤたちもアメジオとハンベルの後に続いて階段を登って2階に向かうと、2階にあるアメジオの部屋の中に案内された。

 

 

 アメジオの部屋

 

 

 シンヤ「ん?この写真に写ってる男の人って…」

 

 

 シンヤはアメジオの部屋の中に入ると、アメジオの部屋にある壁掛けテレビの下の所に、写真立ての中に入っている5枚の写真を見つけた。その5枚の写真には、幼い頃のアメジオが写っていて、アメジオの相棒であるソウブレイズが進化前のカルボウだった頃の写真や、ハンベルやヨノワールと一緒に写っている写真に、お母さんと一緒に写っている写真があった。それを見たシンヤは、アメジオにもかわいい時があったんだと思っていた。すると、1番右にある写真の中に、エクシード社の社長である《クレイブ》が写っていることに気づいた。

 

 アメジオ「俺の父だ」

 

 シンヤ「そ、そうか」…(アメジオのお母さんと一緒に写ってるんだから、そう考えるのが普通だよな。しかし、まさかクレイブさんがアメジオの親父さんだったとは)

 

 ハンベル「皆様、お好きな所にお座りください」

 

 

 ハンベルに座るように言われると、シンヤとリュウガは隣同士で近くのソファーに、ジルとコニアはアメジオが座った椅子の近くにあるソファーに座った。そしてしばらくすると、紅茶の入ったカップとポケモンフーズの入った皿を運んできた2匹のイエッサンがアメジオの部屋の中にやってきた。

 

 

 カチャ(紅茶の入ったカップを置く)

 

 イエッサン「サーン」

 

 リュウガ「あ、どうも」

 シンヤ「ありがとう」

 

 

 1匹目のイエッサンが運んできてくれた紅茶をシンヤたちが飲んでいると、シンヤのポケモンであるピカチュウやジルとコニアのサイドンとゴルダックたちは、2匹目のイエッサンが運んできてくれたポケモンフーズを仲良く食べていた。

 

 

 ジルとコニアにとってシンヤは敵だが、さすがにアメジオの家で暴れるわけにはいかず、今はハンベルから話を聞くためにここにいるので、お互いに静かにしていた。

 

 

 ハンベル「では、そろそろ本題に入りましょう。アメジオ様やシンヤ様も、ある程度はご存知かと思われますが、初めて話を聞くジル様たちも一緒なので、最初から順を追ってお話しします。これから私が話すことは、全てギベオン様から語られたことです」

 

 

 ハンベルはそう言って近くにあるリモコンを手に取ると、アメジオの部屋にある壁掛けテレビをつけた。すると、壁掛けのテレビにかなり古い写真が映し出された。その写真には、左からギベオン、アリア、リュウセイ、ルシアス、リスタルが映っており、リュウセイたちの相棒ポケモンである、ディアルガ、黒いレックウザ、白いジガルデ。そして、アリアに抱っこされているピカチュウと、リスタルに抱っこされているテラパゴスが映っていた。

 

 

 ハンベル「今から100年前、ギベオン様は相棒である白いジガルデと共に、ポケモンたちの楽園と呼ばれる《ラクア》を目指して旅をしておられました。その旅の途中に、リュウセイ、ルシアス、アリア、リスタルの4人と出会ったギベオン様は、彼らと共にラクアを目指すことを決められ、後に彼らと《エクスプローラーズ》を結成しました。ギベオン様は、リュウセイとルシアスを唯一無二の友と信じていました。3人とも、人間とポケモンが共に力を合わせて、平和に生きられる世界を夢見ておりました。そして、ルシアスとリスタルと共にラクアにたどり着いたことで、ギベオンの願いは叶いました。…ですが…ギベオン様とルシアスは、ラクアでラクリウムをめぐって対立されました」

 

 ジル「ラクリウムって…」

 コニア「さっきアメジオ様が言ってた…」

 

 ハンベル「ええ。ギベオン様たちがラクアで見つけた、結晶石の形をしている不思議な物質です。それを見つけたルシアスは、このままラクアを去ろうとギベオン様とリスタルに伝えましたが、ギベオン様はラクアを去ることを拒んだのです」

 

 ジル「何故です?」

 

 ハンベル「ラクリウムが特別な力を持っている物質だと気づいたギベオン様は、ラクリウムの謎を解き、その力を人間とポケモンの未来のために使おうと考えました。反対にルシアスは、人智を超えた力を使おうとすれば、人間やポケモンたちが滅んでしまうと考えたので、ラクリウムに手を出さず、このままラクアを去るべきだと、そうギベオン様に伝えました」

 

 コニア「それで、ギベオン様とルシアスは対立したんですね?」

 

 ハンベル「はい。そしてギベオン様は、相棒である白いジガルデの力を使い、ラクアの地中にあるラクリウムを掘り起こそうとしたのです。その時、掘り起こそうとしたラクリウムに、ある異変が起きたのです」

 

 アメジオ「異変?」

 

 ハンベル「白いジガルデが掘り起こそうとしたラクリウムから、ピンク色の煙が噴出し、その煙がラクア全体に広がり始めたのです。すると、ラクアにある植物や樹木が急速に成長してすぐに枯れ果ててしまい、ラクリウムの煙を浴びたポケモンたちがギベオン様たちを襲ってきたのです。ギベオン様たちの相棒である白いジガルデたちは、自分のトレーナーであるギベオン様たちを守るために、ラクリウムの煙を浴びたポケモンたちと必死に戦いました。そのあと、暴走したラクリウムにより、ラクアが崩壊を始めたので、ルシアスと六英雄のポケモンたちは、ジガルデが掘り起こそうとしたラクリウムを破壊しようとしました。しかし、六英雄の力でもラクリウムを破壊することができませんでした。その時、それを見ていたギベオン様のジガルデが、ラクリウムを封印しようと動いたのです」

 

 アメジオ「何故だ?ジガルデはお祖父様のポケモンのはず」

 

 ハンベル「その理由は、ギベオン様にもわからないと。…話を続けます。ギベオン様の相棒である白いジガルデは、自身の体にある《セル》を使い、それでラクリウムの暴走を止めようと考えました」

 

 ジル「セル?」

 

 ハンベル「ジガルデは、脳の役割を担うコアと、セルと呼ばれる細胞から成り立つポケモンなのです」

 

 

 ハンベルはそう言いながら懐に左手を入れると、そこからある物を取り出した。

 

 

 白いジガルデのセル「…」

 

 アメジオ「それは、お祖父様の…」

 

 ハンベル「ええ。ギベオン様の相棒である白いジガルデの、セルの1匹です。妙に懐かれてしまいまして、こうしてギベオン様から預かっているのです」

 

 アメジオ「…ハンベルに対する、お祖父様の信頼の証かもしれないな」

 

 ハンベル「もったいないお言葉です。…話を戻します。白いジガルデは、ラクリウムを封印しようと動いたのですが、それでもラクリウムの暴走は止まらず、ギベオン様が立っている場所の足元に亀裂が入ると、ギベオン様は谷底に落ちてしまわれたのです」

 

 アメジオ「お祖父様にそんなことが…」

 

 ハンベル「ええ。そしてこのあと、ルシアスと六英雄とテラパゴスが力を合わせて、ラクリウムの暴走を止めたと聞いております」

 

 アメジオ「なるほど。お祖父様とルシアスが対立した理由はわかった。だが、話の途中からリュウセイとアリアが出てこなかったが」

 

 シンヤ「リュウセイが出てこなかったのは、ハデスとの戦いで命を落としたからだ」

 

 アメジオ「っ!」

 

 ジル「い、命を落としたって…」

 

 コニア「それに、どうしてハデス様の名が出てくるの?」

 

 シンヤ「リスタルさんに会って聞いたからさ」

 

 ジル「リスタルさんから聞いたって…」

 

 コニア「その人、100年前にいた人間だから、もうこの世にいないはずの人間でしょ?会うことも話すこともできないじゃない」

 

 シンヤ「《キタカミの里》って所に、《てらす池》って大きな池がある。その池の前で亡くなった人に会いたいと願うと、その人に会うことができるんだ」

 

 ハンベル「なるほど。そのてらす池で、あなたたちはリスタルに出会い、ギベオン様とルシアスが対立した理由や、あなたの高祖父であるリュウセイが、ハデスと戦ったあとにどうなったかを聞いたのですね」

 

 シンヤ「ええ。そのあと、俺の高祖母であるアリアがどうなったのかも聞きましたよ」

 

 ハンベル「そうですか」

 

 コニア「ねぇ、あなたの高祖父であるリュウセイに、ハデス様は何をしたの?」

 

 ジル「知ってるなら教えてくれ」

 

 シンヤ「ああ、別にいいけど」

 

 

 さっきシンヤが言った、『ハデスとの戦いでリュウセイが命を落とした』という言葉の意味が気になったコニアとジルが、ハデスとリュウセイとの間に何があったのかを聞いてきたので、シンヤはリスタルから聞いたリュウセイとハデスの出会いから、リュウセイが自らを犠牲にして、ハデスからルシアスたちを守った話をした。

 

 

 ジル「…嘘だろ」

 コニア「そんなことって…」

 アメジオ「…ハンベル、本当なのか?」

 

 ハンベル「ええ、ギベオン様からそう聞いております」

 

 コニア「ぁ、その…」

 ジル「悪い、変なことを聞いた」

 

 シンヤ「俺が生まれるずっと前の話なんだから、別に気にしなくていい」

 

 ジル「けど、それってギベオン様は、自分の仲間の命を奪った男をエクスプローラーズに入れているということにならないか?」

 

 シンヤ「そうなるだろうな。だから俺は、それを知るためにここに来たんだ。それと、どうしてギベオンが100年も生き続けているのか、その理由を聞こうと思ってな」

 

 ハンベル「残念ながら、ギベオン様がハデスをエクスプローラーズに入れている理由は、私にもわからないのです」

 

 シンヤ「そうですか」

 

 

 相棒のジガルデのセルを預けるほどの信頼があるハンベルが、ハデスがエクスプローラーズにいる理由を知らないなら、ギベオンかハデスに会った時に直接聞くしかないだろう。

 

 

 アメジオ「ハンベル、ラクアの崩壊に巻き込まれて谷底に落ちたお祖父様は、そのあとどうなったんだ?」

 

 ハンベル「ラクアの崩壊に巻き込まれたギベオン様は、深い谷底に落ちて重傷を負いました。普通なら、それだけで命に関わり、生きることなどできるはずもありません。しかし、ギベオン様はラクリウムを使うことによって、命を繋ぐことができたのです」

 

 コニア「そのラクリウムって、いったい何なのですか?」

 

 ハンベル「ポケモンの持っている潜在能力を引き出す、不思議な物質ということしかわかっていないのですが、ラクリウムをご自身に使われたギベオン様は、人間がラクリウムを使えば、若いままの肉体を維持することができ、長い年月を生きられることに気づかれました」

 

 アメジオ「それが、お祖父様の長寿の秘密か」

 

 コクッ(ハンベルが頷く)

 

 シンヤ(なるほど。ラクリウムが永遠の命を与える物質だからこそ、ギベオンはラクリウムを永遠のめぐみと名付けたのか)

 

 ハンベル「ラクリウムの力で生き延びたギベオン様は、わずかなラクリウムのサンプルを持って、ラクアを脱出されました。その後、世界中のポケモンたちの未来のために《エクシード社》を建設し、ラクリウムの研究を続けられました。エクスプローラーズという名を1人で背負い、100年という孤独に耐えながら生きて来られたのです」

 

 

 ハンベルのその言葉とともに話が終わると、その場が静まり返った。てらす池から現れたリスタルから、ギベオンがラクアでどうなったか聞いてはいたが、そのあとの続きをハンベルから聞いたことで、エクスプローラーズのボスであるギベオンが、リュウセイやルシアスたちと旅をした本人であることを知ることができた。そして、やはりラクリウムはモリーの言ってた通り、若い肉体をずっと保ち続けることができる不思議な物質だったようだ。これで、ギベオンが100年も生きている理由や、ラクリウムの秘密が少しはわかった。しかし、シンヤには他に気になることがいくつかあった。

 

 

 シンヤ「あの、ハンベルさん。いくつか聞きたいことがあるんですけど…」

 

 ハンベル「なんでしょう?」

 

 シンヤ「1つ目は、ハデスのことなんですけど」

 

 リュウガ「シンヤ、ハデスがエクスプローラーズにいる理由は…」

 

 シンヤ「ハンベルさんが知らないのはわかってるから、それはギベオンかハデスに会った時に直接聞くさ。俺が聞きたいのは、ハデスがギベオンと同じで100年も生きている理由だ」

 

 ジル「ぁっ、そうか。ハデス様はギベオン様と同じで、100年前から生きてる人間だ」

 

 コニア「もしかして、ハデス様もラクリウムを使って…」

 

 ハンベル「いいえ。ハデスは、ラクリウムを体に取り込んでいるギベオン様と違って、ラクリウムを使わずに100年も生き延びています。私がギベオン様と出会った頃には、既にエクスプローラーズの一員でした」

 

 シンヤ「じゃあハデスは、何か他の方法で、ギベオンと同じように100年も生きてるってことですか?」

 

 ハンベル「ええ。奴がどんな手段を使って100年も生きているのかは、私もギベオン様も知りません。ただ、ハデスはリュウセイの命を奪った男ですから、ギベオン様はずっと奴を監視しておりました。奴が何を企んでいるのか、それを調べるために私も調査をしたのですが、なかなか尻尾を掴むことができなかったのです」

 

 シンヤ「そうですか。次の質問をしても?」

 

 ハンベル「どうぞ」

 

 シンヤ「次は、マツブサやアオギリたちのことなんですけど」

 

 ハンベル「あなたたちが壊滅させた、各地方の悪の組織である方たちのことですね?」

 

 シンヤ「ええ。ロイと出会った島でマツブサたちと会った時に、エクスプローラーズが自分たちを脱獄させる手引きを持ちかけたと聞いたんですけど、それは本当なんですか?」

 

 ハンベル「ええ。本当のことです。ただ、彼らを脱獄させようと提案したのは、ハデスなのです」

 

 シンヤ「えっ?」

 リュウガ「ハデスがマツブサたちを?」

 

 ハンベル「ええ。まだペンダントだったテラパゴスが、ルシアスの子孫であるダイアナや、その孫であるリコが持っていることを我々が調べたように、おそらくハデスも、リュウセイの子孫であるあなたの関係者を調べた時に、マツブサ様たちの存在を知り、彼らを脱獄させようと思ったのかと」

 

 シンヤ「じゃあ、ハンベルさんやギベオンが、マツブサたちを脱獄させようと言い出したわけじゃないんですね?」

 

 ハンベル「ええ。最後はギベオン様の決定で、彼らを脱獄させることに決まったのですが、マツブサ様たちを脱獄させようと言い出したのは、ハデスなのです」

 

 シンヤ「そうだったのか。…じゃあ最後の質問なんですけど、どうしてハンベルさんは、エクスプローラーズに入ったんですか?」

 

 ハンベル「それは、恩義と敬意にございます」

 

 ズズズズズッ(ハンベルの近くの足元からヨノワールが出てくる)

 

 ヨノワール「ワーールッ」

 

 リュウガ「ヨノワール!」

 

 シンヤ「サマヨールから進化してたのか!」

 

 ハンベル「ええ。まだヨノワールがサマヨールだった頃、私は冒険者として世界中を旅しておりました。ですが、冒険者として、己がどんな道を行くべきなのか迷っている時期があったのです。そんな時、私を導いてくれたギベオン様に出会いました」

 

 アメジオ「行くべき道、か…」

 

 ハンベル「ポケモンと人。その繁栄を永遠に願う、あのお方のお志に、私は深く感銘を受けたのです。そして私は、ギベオン様に仕えることを決めたのです」

 

 アメジオ「なるほど。それでハンベルは、エクスプローラーズの教育係を担ったということか」

 

 シンヤ「?教育係?」

 

 リュウガ「それって、エクスプローラーズのメンバーを鍛えるってことか?」

 

 ハンベル「ええ。アメジオ様を始めとする、他の幹部であるオニキス様、サンゴ様、アゲート様は、私とヨノワールが鍛え上げたのです」

 

 ヨノワール「ヨォォォノッ」コクッ

 

 シンヤ「なるほど。アメジオたちが強い理由がやっとわかりましたよ。あなたほどのトレーナーがアメジオたちを鍛えれば、アメジオやオニキスたちが強くなるはずだ」

 

 ハンベル「いえ、アメジオ様たちがここまで強くなられたのは、アメジオ様たちが努力を続けたからこそです。…ですが、スピネル様だけは、例外でございます。彼は、元々エクシード社の研究員で、ギベオン様が特別に認められた存在。今お二人は、共に行動をしておられるでしょう」

 

 アメジオ「なるほど。スピネルはラクリウムを独占する為に、お祖父様を利用し、ラクアでラクリウムを奪おうとしているということか」

 

 コクッ(ハンベルが頷く)

 

 ボソッ(小声で呟く)

 

 コニア『なんか、思ってたことより…』

 ジル『ああ。とんでもなく重たい話だったな』

 

 ハンベル「私の話はこれで終わります。あとは、皆さんが自分で決める方がよろしいかと」

 

 

 ハンベルから話を聞いたシンヤたちは、これから自分たち一人一人がどうするべきか、何をするべきなのかを考えた。そしてしばらくすると、急にシンヤが立ち上がった。

 

 

 シンヤ「リュウガ、行くぞ」

 リュウガ「えっ?行くって、どこに?」

 

 シンヤ「リコたちと合流して、ラクアに行く決まってるだろ。ハンベルさん、話を聞かせてくれてありがとうございました。俺たち、もう行きます」

 

 ハンベル「そうですか」

 

 シンヤ「アメジオ」

 アメジオ「なんだ?」

 

 シンヤ「お前の祖父さんが、どうしてラクリウムを欲しがっているのか、その理由はハンベルさんから話を聞いてよくわかった。だけど、お前はナッペ山で見たはずだ。スピネルがラクリウムをブラッキーとサザンドラに使ったとき、ブラッキーとサザンドラに何が起こったのか」

 

 アメジオ「っ!」

 

 シンヤ「あんなことが世界中で起きてみろ。そんなことになったら、世界は暴走したポケモンによって簡単に滅びるぞ」

 

 アメジオ「…」

 

 シンヤ「ギベオンがエクシード社を作った理由をハンベルさんから聞いて、お前の祖父さんがただの悪党じゃないことはよくわかった。人間とポケモンの未来を本気で考えていなければ、あんないい会社は作れないからな。だけど、ラクリウムには手を出すべきではないと、俺はそう思うがな」

 

 アメジオ「……俺も、そう思っている」

 

 ハンベル「ぁっ…」

 シンヤ「アメジオ?」

 

 アメジオ「スピネルがラクリウムを使ったところを見なければ、俺はお祖父様のやってることが正しいと思っていただろう。だが、俺はスピネルがラクリウムを使って何をしたのか、この目ではっきりと見ている。だからお前の言うように、俺もラクリウムには手を出すべきではないと思っている」

 

 シンヤ「…そうか」

 

 アメジオ「…以前、お前がナッペ山で俺に言った、『自分の身の丈に合わない力を手に入れたヤツは、欲に溺れて自分を見失い、最後に後悔ばかりして身を滅ぼしていった』というお前の言葉を聞いた時、俺なりにどうするべきかを考えていた。確かにお前の言う通り、またお祖父様がラクリウムを手に入れようとすれば、暴走したポケモンによって世界は滅びるだろう。だからこそ、俺は間違った道に進んでいるお祖父様を止める」

 

 シンヤ「…フッw、そうか」

 

 リュウガ「シンヤ、お前としてはこれでいいのか?アメジオやこの人たちは、何度もリコを狙ってきたんだろう?お前はそのことを許せるのか?」

 

 シンヤ「確かに、アメジオたちとは今までいろいろあったけど、今は争ってる場合じゃない。それに、ナッペ山に閉じ込められた時、リコとアメジオの3人で話して解決したこともあったら、そのことはもういいんだ。それに、それを言ったらNだってそうだろ?」

 

 リュウガ「まぁ、確かにそうだな。アンタら2人はどうするんだ?」

 

 ジル「決まってるだろ」

 

 コニア「私たちは、アメジオ様についていくだけよ」

 

 シンヤ「いいのか?アメジオについて行くってことは、スピネルやギベオン、それにマツブサやハデスたちと戦うことになるかもしれないってことだぞ?」

 

 ジル「わかってる」

 

 コニア「だけど、私たちはアメジオ様について行くって決めたの」

 

 シンヤ「…そうか。だったら、ラクアでは戦わずに済みそうだな」

 

 アメジオ「ああ。今の俺たちの敵は…」

 シンヤ「ハデスとスピネル、だろ?」

 

 アメジオ「フッw」

 

 ハンベル「皆さん、答えは決まったようですね」

 

 シンヤ「ええ」

 アメジオ「ああ」

 

 ハンベル「かつて、共にラクアを目指したギベオン様たちの孫であるアメジオ様たちが、100年の時を超えて出会うとは、運命の再会とでも申しましょうか」

 

 アメジオ「運命の再会かw、俺はお祖父様の意思を受け継ぐと決めたが、その前に、ラクアでやらなければならないことがある」

 

 ハンベル「では、こちらの動きが気取られぬようにしておきますので、皆さんは、すぐにラクアに向かってください」

 

 シンヤ「リュウガ、そろそろ行こう」

 リュウガ「ああ」

 

 ジル「そういや、お前たちはどうやってここまで来たんだ?」

 

 シンヤ「パルキアの力を使ってここまで来たんだよ」

 

 ハンベル「やはりそうでしたか」

 

 シンヤ「じゃあ、俺たちそろそろ行きます。ハンベルさん、今日は本当にありがとうございました」

 

 ピカチュウ「ピィカッピカッ」

 

 

 シンヤはハンベルにお礼を伝えて肩にピカチュウを乗せると、リュウガと一緒にネギガナイトが門番をしている扉を開けて外に出た。そして、スーパーボールの中に入っているパルキアを出すと、ブレイブアサギ号に繋がる空間を開いてもらい、パルキアをボールに戻すと、リュウガとピカチュウと一緒にその空間を通って船に戻っていった。

 

 

 ジル「本当にパルキアの力を使って、船からパルデアまで来たのか…」

 

 コニア「彼がディアルガとパルキアをゲットしていることは、ハンベル様から聞いてはいたけど…」

 

 ジル「ああ。実際に伝説のポケモンを見ると、アイツがすごいトレーナーだっていうのがよくわかるな」

 

 アメジオ「ジル、コニア、俺たちも行くぞ」

 

 ジル・コニア「「はっ!」」

 

 ハンベル「皆様、お気をつけて」

 

 アメジオ「ハンベル、いつも無茶をしてすまない」

 

 ハンベル「いえ。アメジオ様がここまで成長されて、私は嬉しく思います。以前のアメジオ様なら、祖父であるギベオン様を止めるなどと、絶対に言おうとしなかったでしょう」

 

 アメジオ「そうだな。俺は、お祖父様に見捨てられることが怖かった。だから、お祖父様の期待に応えたいと、ずっとそう思っていた。だが、ナッペ山でシンヤの言葉を聞いたとき、その考えは少しずつ変わっていった。アイツと出会わなければ、お祖父様と向き合うことさえできずに、お祖父様が間違った道に進んでいると気づくことさえなかっただろう」

 

 ハンベル「シンヤ様との出会いは、アメジオ様が変わられる、いいきっかけになったのですね」

 

 アメジオ「ああ」

 

 

 初めて会った時のシンヤとアメジオの関係は、ただの敵同士だったが、それからはライバルになり、今では一緒に戦う仲間のような関係になりつつあった。人と人との出会いには、必ず何か意味があり、出会った人間同士で変化が起こる。それがどういう未来になるのかは誰にもわからないが、少なくとも、シンヤとアメジオの出会いはよかったと言えるものになっているだろう。

 

 

 アメジオ「ジル、コニア、行くぞ」

 

 ジル・コニア「「はい!」」

 

 

 シンヤたちがブレイブアサギ号に戻るところを確認すると、アメジオたちはラクアへと向かった。その頃、ブレイブアサギ号に戻ったシンヤたちは、ハンベルから聞いた話をフリードたちに伝えていた。

 

 

 ブレイブアサギ号・ウイングデッキ

 

 

 フリード「そうだったのか」

 

 オリオ「これで、ギベオンとアメジオの年が離れてる理由がわかったね」

 

 マードック「ああ。さっきモリーの言ってた通りだったな」

 

 モリー「だけど、本当にそんな不思議な物質がこの世に存在するなんてね」

 

 リュウガ「俺たちも聞いた時はびっくりしたよ」

 

 シンヤ「ああ。……あの〜、リコ、そろそろ機嫌を直してくれないか?」

 

 リコ「知らない」プイッ(顔をそらす)

 

 シンヤ「まださっきのことを怒ってるのか?」

 

 リコ「私がどれだけ心配したと思ってるの!」

 

 シンヤ「俺の実力はお前も知ってるだろう?」

 

 ミコ「……そうじゃないのよ」

 シンヤ「えっ?」

 

 ミコ「ほら、アリアもリスタルさんも、悪党に襲われているところをリュウセイとルシアスに助けられて、一緒に冒険するようになったでしょ?」

 

 シンヤ「それがどうしたんだよ?」

 

 ミコ「リコとシンヤの出会いも、一緒に旅をすることになったきっかけも、アリアやリュウセイ、ルシアスやリスタルさんと似てるでしょ?」

 

 シンヤ「?何が言いたいんだよ?」

 

 ミコ「リュウセイとルシアスはアンタに、アリアとリスタルさんはリコに似てるってことよ」

 

 フリード「そういえば…」

 オリオ「シンヤとリコの出会いって…」

 モリー「リスタルさんたちと似てるね」

 

 シンヤ「フリードに出会った日はそうかもしれないけど、俺とリコが出会ったのは、アメジオがセキエイ学園にくるよりずっと前だぞ」

 

 ミコ「確かにそうだけど、アンタたちは恋人同士でしょ?」

 

 シンヤ「あのさ、遠回しに言われてもわからないから、はっきり言ってくれないか」

 

 ミコ「普段は察しがいいくせに、たまに鈍いときがあるわね。私が言いたいのは、リュウセイもルシアスもアリアとリスタルさんの前から消えちゃったから、アンタがいつかそうなるかもって、リコが心配してるってこと」

 

 シンヤ「えっ?」

 

 チラッ(隣にいるリコを見る)

 

 リコ「…」

 

 ミコ「てらす池でリスタルさんと会ったあと、寝る前にリコに相談されたのよ。いつか、突然アンタが自分の前からいなくなちゃうんじゃないかって」

 

 シンヤ「えっ?…リコ、そうなのか?」

 

 リコ「……うん。リスタルさんが私の先祖だってわかったあと、私、すごく驚いたけど、リスタルさんからリュウセイとルシアスがどうなったかを聞いたとき、いつかシンヤがいなくなるんじゃないかって心配になったの」

 

 シンヤ「それで、俺に置いてかれたことを怒ってたのか。……悪い。まさか、お前がそんなふうに考えてたなんて思ってなかったから」

 

 リコ「…シンヤは、いなくなったりしないよね?」

 シンヤ「えっ?……フッw、ああ、当たり前だろ」

 

 リコ「これから先も、ずっと一緒にいてくれる?」

 シンヤ「もちろん!」

 リコ「///」

 

 

 シンヤがそう言うと、リコは頬を赤らめ、目をウルウルさせながらシンヤの方を見た。そんなリコの瞳を見たシンヤはかわいいと思いながら、自分の心臓の鼓動が早くなるのを感じていた。

 

 

 黒いレックウザ『グォォォォォォッ‼︎』

 

 

 シンヤ・リコ「「っ⁉︎」」

 

 

 シンヤとリコが甘いオーラを出しながら2人の世界に入っていると、黒いレックウザが咆哮を上げる声が外から聞こえてきた。すると、シンヤとリコは現実に戻り、リュウガやミコたちにイチャついているところを見られていることに気づいた。

 

 

 シンヤ「ぁっ……そろそろラクアに着く頃だから、準備しないとな」

 

 リコ「そ、そうだね…」

 

 リュウガ「誤魔化すな」

 

 フリード「お前らな、イチャつくなら場所を選んでくれ」

 

 リコ「ご、ごめんなさい…」

 

 フリード「はぁ……よし。じゃあみんな、急いで持ち場についてくれ。シンヤ、リコ、リュウガ、ミコ、ロイ、ドットの6人は、俺と一緒に操舵室に来てくれ」

 

 

 フリードの指示で、オリオたちがそれぞれの仕事場に向かうと、シンヤたちはフリードと一緒に操舵室に向かった。すると前方に、山の頂が雲に隠れている巨大な山があった。

 

 

 ブレイブアサギ号・操舵室

 

 

 シンヤ「あの山がラクアなのか?」

 リュウガ「ん?山の近くに町があるな」

 

 フリード「あそこは《クムリタウン》だ。人とポケモンが一緒に生活をしながら暮らしてて、世界地図にも載ってるぞ」

 

 ドット「ラクアじゃないの?」

 

 フリード「ああ。以前にそう呼ばれてたわけでもないらしい」

 

 リコ「でも、レックウザがここに案内してくれたってことは…」

 

 フリード「ああ。このクムリタウンのどこかに、きっとラクアがあるはずだ」

 

 

 黒いレックウザ『グォォォォォォッ!』

 

 

 ミコ「あっ!」

 ロイ「レックウザが!」

 

 

 レックウザに導かれてシンヤたちがやってきた所は、至る所に虹が架かかっていて、まるでファンタジーに出てくるような世界に見えるクムリタウンだった。そのクムリタウンの近くにブレイブアサギ号が飛んで行くと、黒いレックウザは咆哮を上げて、山の頂が雲に隠れている巨大な山に飛んで行ってしまった。

 

 

 ドット「行っちゃった…」

 リコ「もしかして、あの山の向こうに…」

 

 シンヤ「ああ。きっとラクアがあるんだ!」

 ロイ「フリード!早く追いかけなきゃ!」

 

 フリード「おう。オリオ、全速力で山のてっぺんに向かうぞ!」

 

 キャプテンピカチュウ「ピィィカチュゥゥッ!」

 

 フリード「行くぜ、みんな!」

 

 シンヤ・リコ・リュウガ・ミコ・ロイ・ドット「「「「「「おお〜〜〜!」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オリオ「ダメ!ダメ、ダメェェェェェェェェッ‼︎」

 

 

 フリードの掛け声で盛り上がったシンヤたちが声を出すと、フリードのスマホロトムに映ったオリオがものすごい怒鳴り声で叫んだ。すると、操舵室にキーーンという音が鳴り響き、シンヤたちは両手で耳を閉じた。

 

 

 オリオ「アンタ本当にバカなの⁉︎船が飛べる高度を超えたら、どんな船でも木っ端微塵になるんだからね!」

 

 フリード「ぅぅっ、そうなのか」

 

 シンヤ「じゃ、じゃあさ、クムリタウンの麓に船を着陸させて、そこからあの山に向かえばいいんじゃないか?」

 

 フリード「そうだな。『急がば回れ』というし、まずはクムリタウンの麓に向かうか」

 

 

 To be continued

 

 

 次回予告

 

 

 黒いレックウザに導かれて《クムリタウン》と呼ばれる所にやってきたシンヤたちは、ブレイブアサギ号をクムリタウンから少し離れた麓に着陸させると、船から降りて黒いレックウザが向かった山の頂上に向かった。山の頂上に向かっている途中、クムリタウンへとやってきたシンヤたちは、そこで《ユハ》という少年に出会ったのだが、ユハはシンヤたちが黒いレックウザを連れてきたと知ると、黒いレックウザのことを災いと言い出した。

 

 

 次回「天と地が出会う処、黒いレックウザの伝説」

 

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