謎の不審死を調べると、被害者は全員がとあるサイトを閲覧していたことが判明した。
そのサイトは。
国税庁インボイス制度適格請求書発行事業者公表サイト。
探索者は税務関係を仕事にしています。
中小企業診断士等の資格を保有しており、コンサルタント業をしています。
そんなあなたはある日、街を歩いていたところ謎の男に呼び止められました。
「最近、唐突に発狂して死亡するという奇怪な事件が流行っていることは知っているか?」
「ニュースで見ましたよ」
「犠牲者たちの行動を調べたところ、あるひとつの共通点が浮かび上がった」
「その共通点とは……?」
「全員が死の直前に国税庁インボイス制度適格請求書発行事業者公表サイトを閲覧している」
……うん?
「犠牲者たちはインボイス制度適格請求書発行事業者公表サイト*1で神話生物や神々の名前を見てしまったため、発狂して死亡したようだ」
そんなアホな。
2023年10月1日から始まったインボイス制度。その発行事業者公表サイトで検索した際にクトゥルフ神話の神々の名前を見てしまった。
その結果、発狂の末に死亡してしまった。
「というわけで君はクトゥルフ神話の神々から公表事項の公表変更申出書を書いてもらい、サイト上では彼らの本名ではなく屋号で掲載されるようにしてきてほしい」
はい。
ということでクトゥルフ神話の神々に適格請求書発行事業者の公表事項の公表変更申出書を提出してもらうRTA、はーじまーるよー。
レギュレーションはAny%、バグ、グリッチなし。タイマーストップは公表変更申出書を提出する瞬間です。
それではタイマースタート。
今回挑戦していくのはニャルラトホテプの屋号取得になります。
移動についてはさくっと割愛します*2。
さて、ナイアルラトホテップの仕事場へ到着しました。
「どうもー。こんにちは! ナイアルラトホテップさんのお仕事場でしょうかー?」
第一印象はとても大切です。爽やかな挨拶を心がけましょう。その後の会話においてスムーズな応答が望めます。
一見、ロスに見えますが結果的にはこちらの方がタイムがいいです。理由は後述します。
「最近、お仕事の方はどうですか?」
「そうだなぁ。やっぱりコロナ禍でTRPGをやる人が増えた気がするよ。昔と違って対面じゃなくてもDiscordとか使えば遊べるし、ネットにツールも増えたからね」
「ああ、たしかに。ダイスロールとかキャラシ作成とかいろいろありますよね」
「なによりシナリオを個人で作ってる人もいるくらいだからね。大忙しだよ」
事業主の皆さんは自分の仕事に誇りを持っている方が多いです。なのでお仕事のことについて話を振れば、結構いろいろと教えてくれるケースもあります。
オタクが自分の好きなものを語る時に早口になるのと似ていますね。
タイムには影響しますが、ここでナイアルラトホテップさんのご機嫌を損ねてしまうと発狂してしまい、大幅にタイムロスします。さらに悪いと死亡してしまい、リセットとなる場合すらあります。
なので、先ほど爽やかに挨拶する必要があったんですね。
「今はなにを作られているんですか?」
「そうだね、ずばり狂気かな」
「狂気ですか?」
「やっぱり僕といったら狂気、みたいなとこあるからね」
「なるほど。たしかにそうですね」
だから公表サイトを見た人間が軒並み発狂して死亡しているのですが。しかしこれを指摘してしまうと機嫌を損ねてしまい、リセット案件になりかねないので口を閉じておきましょう。
話を進めていきましょう。いろいろお仕事の話をしてくれるのは機嫌のいい証拠です。この初期機嫌についてはランダムですが、開始時点の乱数調整により67。ほどほどのご機嫌ぷりです。なぜ初期機嫌をMAXにしておかないかですが、後ほど解説します。
ともかく、機嫌がいいうちにここで用件を切り出しておきましょう。
「狂気って一口に言ってもたくさんあってね。お客さんが求めている二―ズに応えられるような狂気を作らないといけないんだ。激しく燃えるような狂気もあれば、静かに沼へ沈むような狂気。それぞれ製造過程が違うんだよ」
お仕事についていろいろ話してくれるのはありがたいのですが、ナイアルラトホテップさんはおしゃべりなので、ほどほどのところで切り上げておかないと終わらなくなってしまいます。初期機嫌の数値がMAXの100になっていた場合、下手に遮ると一気に機嫌の数値が下降してしまい、今後の会話においてランダムイベントで狂気を押し付けられてしまう可能性があがります。
だから、最初の段階で初期機嫌の数値を中途半端な数字にしておく必要があったんですね。
「ところでナイアルラトホテップさんはインボイス、取られたそうじゃないですか」
「うん? ああ、インボイスね。個人のTRPGプレイヤーに狂気を売ることもあるけど、企業相手の取引もあるし、大きいところもあるからね」
「やっぱりインボイス番号を取ってくれ、って言われました?」
「まあ、そうだね。でもどこも価格交渉の席、という形で話したよ」
「そりゃあ、当然ですよ」
どうやらしっかりしている企業が取引先のようです。
取引後、一方的に消費税額分を支払わなかったりすると下請け法違反になります。*3きちんと価格交渉の席を設けて、インボイスを取るかどうか訊ねたあたり、とても良心的ですね。
「どうですか。インボイス制度が始まってからひと月ほどですけど」
「やっぱりインボイスの請求書を求められるかな。今まで発行していた様式から少し変えなきゃいけなかったよ*4」
「やっぱり対応は大変でしたか?」
「うちはPCから請求書を打ち出してるから様式をいじるだけでよかったかな。他の事業者はどうしてるの?」
「そうですね。手書きで請求書を発行している方だと、ゴム印を作ってインボイス登録番号の記載をされてる方がいますよ*5」
「なるほど、ゴム印か。そういうやり方もあるんだね」
ふぅ、とひと息つきながらナイアルラトホテップさんは立ち上がります。先ほどから作業されていたようですが、ひと段落ついたみたいですね。
「お忙しそうですね」
「さっきも言ったけど、個人だけじゃなくて企業もあるからね。TRPGの市場は広がっているし、それに従って狂気の需要もうなぎ上りさ」
「なるほど。そうなるとですね。屋号、お持ちじゃないですか?」
「屋号? まあ、あるにはあるよ」
「実はですね、一般の方からだと企業名で認知されていて代表者名で認識していないっていう場合は以外と多いんですよ。実際、有名企業の名前は知っていても代表者の名前は出てこないってよくあるでしょう?」
ううむ、と唸るナイアルラトホテップさん。ここでそのまま畳みかけてしまいましょう。
「でも個人事業主がインボイスを取得した場合、掲載サイトでは個人名で掲載されてしまって屋号が出ないんですよ。これだと、わからないって人も出てくるんですね」
「……でも仕方ないんじゃないか。個人事業主だと商標登記しない人も多い」
「ですねぇ。しかぁし! 実はこの『適格請求書発行事業者の公表事項の公表(変更)申出書』を提出すれば、個人名ではなく屋号で掲載することができるんですよ!」
さあ、ここで取り出しますのは『適格請求書発行事業者の公表事項の公表(変更)申出書』。国税庁からダウンロード*6して印刷しておいたもの。
PCで請求書を打ち出しているらしいので、様式をダウンロードして印刷するくらいは簡単でしょう。しかし、事前に印刷しておくことで検索して印刷してもらう手間をスキップできます。
もしPCを立ち上げていなかった場合、大幅なロスになってしまうので準備はマストですね。
「でも僕はインボイス申請の時に出していないよ?」
「ご心配なく。こちら、後から出しても大丈夫なんですよ」
「提出は郵送かな?」
「いえいえ。今、ここでお出ししていただければ、私の方で提出しておきますよ」
「おや、そこまでやってくれるんだ。じゃあ、今から書くよ」
「すみません、ありがとうございます!」
公表変更申出書に記載するものは多くありません。納税地、氏名、登録番号。以上を記入して、最後に個人事業主の欄にある主たる屋号にチェックを入れてフリガナと共に記入するだけ。
ナイアルラトホテップさんは「ナイアルラトダイカスト」と屋号に記入しました。
「ダイカストってことは鋳造ですよね。狂気って鋳造なんですか」
「狂気は熱くなると人の理性を溶かし、冷えれば何物をも拒絶する壁になる。そういうことだね」
「へぇー、なるほど」
さて、こうして公表変更申出書を受け取ったところでそろそろお暇しましょう。今回はAny%のため、公表変更申出書を回収して国税庁へ提出すればOKです。
もし100%のレギュレーションの場合だと、二割特例*7の説明、簡易課税を選択するべきか本則課税を選択するべきなのか、仮にインボイスの登録を取り下げる場合の対応なども含めて説明する必要があり、内部データに存在しているナイアルラトホテップさんの好感度と貢献度を共に最大まであげなくてはいけません。
このルートの場合、簡易課税*8等の解説が必要となり、その際のナイアルラトホテップさんに理解してもらうための説得ロールがゲーム内で振られるため乱数調整を要求されます。
なので今回はここで帰ります。
「お忙しいところ失礼しました!」
「はいはい、ご苦労さま」
あとは帰って提出すればOKです。納税地の税務署長に提出するか、E-taxによって申請をする、もしくは各国税局のインボイス登録センターに郵送しましょう。
提出が完了しました。これにてタイマーストップです。
完走した感想ですが、今回は乱数調整の成功により、ナイアルラトホテップさんの機嫌の数値を調整できたため比較的スムーズでした。ロスとしてはダイカスト業についての説明が入ってしまったところですね。次回以降はここをショートカットする必要がありそうです。
それでは、お疲れ様でした。
「無事に公表事項の公表変更申出書は提出しました。3月も終わりになって私を呼び立てるなんて何事ですか」
あなたは無事にナイアルラトホテップから公表変更申出書を書いてもらい、提出に成功しました。それからしばらく、余暇を満喫していたところで再び呼び出されてしまいます。
「いやぁ、それがね。ある税務署の職員が一斉に発狂する事件が起こったんだよ」
「ナイアルラトダイカストに屋号は変更してもらいました。これ以上になにが?」
「それが、ねぇ。ほら、3月15日って何の日がわかるだろ?」
「……所得税の申告期限*9ですね」
「ナイアルラトホテップさんだけどね、e-Taxで申告されたんだよ。もちろん、振替納税手続きはされてるからいいんだけど」
「立派じゃないですか。ちゃんと期限を守っているんだから」
ちなみに消費税の申告は3月31日。e-Taxでうっかり申告漏れをしてしまった場合は、紙での申告も受け付けてくれるのできちんと申告しような!
「ほら、氏名の記入欄があるだろ?」
「あっ(察し)」
「チェックのために見た職員が発狂。異変を感じた職員が該当データを閲覧して発狂。まあ、あとはそれが連鎖したってことなんだけど……」
ええ、ええ。そうでしょうね。そりゃあ、口振の手続きのためには所得税の納税額の確認はしないといけないでしょうし、ざっとくらいはチェックするでしょうよ。脱税する不埒者がこの世の中、いるわけだし。なにより意図せずとも申告をミスっている人というのもいるのだから。
「……それを私に伝えてどうしろと?」
「なんとかしてくれない?」
「ふざけんな!」
――――END――――
唆されて悪ふざけで書きました。基本、間違いはないと思いますが間違いがあったらスミマセン。