アルビノ少女の異世界旅行記 ~私の旅は平穏無事にといかない~   作:影薄燕

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第73話 『幼女が落ち込んでる。声を掛けますか? はい/YES』

 

「あ、あの、ユキナ様?」

 

「気になるんでしょ? じゃあ声掛けよ」

 

「……いいのですか?」

 

「逆に聞くけどさ、落ち込んでる子供がいて、親友が気になってて、私も気付いて……それで声掛けない理由があるの?」

 

 ステラはちょっと遠慮しがちだからな。

 これが自分1人だったら普通に声掛けてそうだけど、隣にいる私のこと変に気にしてるんだろ。

 何も悩む必要なんかないのにな。

 

「困ってる子がいたら放っておけないんでしょ? 私だってそうさ。ギルドなんざ後回しでいいの」

 

 施設は逃げんが、子供はいなくなるかもだし。

 

「ステラは考えすぎ。もっと私に迷惑掛けていいの。親友っしょ?」

 

「……なんでユキナ様は女性だったのでしょうか」

 

「おい、それどういう意味だ?」

 

 母ちゃんの腹の中で、二分の一の確率で女になっただけだよ。

 それ以上の理由なんてない。

 

「ユキナ様と親友になれて幸せだということです」

 

「よせやい。照れる」

 

 百合しい雰囲気再び。周りに百合の花が咲く(錯覚)。

 んんっ! ちょい変な気分になった。恐るべし百合しい雰囲気。気をつけないと流されて飲み込まれるかも。

 それもこれも、ステラがいい子過ぎるのが悪い。私悪くない。

 

 仲間が他にいれば、こうはならないと思うんだけど難しいな。

 間に入って雰囲気ぶち壊してくれる子とか落ちてないだろうか? 落ちてるわけねーか。というか落ちてるってなんやねん。捨て猫じゃないのに。

 

 

 閑話休題。

 

 

「どしたの暗い顔して? カワイイ顔が台無しだぞ」

 

 件の女の子の側まで来たので少しだけ離れた所から話しかける。その時膝を折って目線を合わせることも忘れない。王国や聖国の孤児と接するうちに自然と覚えたけど、初対面の子は目線の高さを合わせるだけで随分と警戒心や怯えが薄くなる。

 小さい子と接する機会がある人は覚えていた方がいいぞ! 誰に対して言ってるんだ?って話だけど。

 

「………………同情ならどっか行って」

 

 おーっと? 思った以上に重くて暗い話かな?

 だがここで諦めないのがユキナクオリティ。例え目の前の子が不審者を見るような目で見てきても引くもんか。

 

「ドウジョウジャナイヨ~ オハナシシヨ~」

 

「……ここまでうさん臭いの初めて」

 

 やめて! 自覚あるんだから!

 

 気を取り直してTake2!

 

「……やあ彼女! お茶でもしない!」

 

「ティーパックあげるから帰ってよ」

 

 ぐふっ。この子、ちょいちょい言葉のフックでボディを叩くな。

 

 だが諦めないぞ私は! 援軍ユニット起動!! ……へーいっ! ステラも話に加わってよー! この子の攻略難易度、地味に高めだからさー!

 結局ステラ頼みかよって? 悪いかこらぁっ!

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 援軍ユニットの協力によって、ようやく聞き出せたことは地味に厳しいモノだった。主に日にちというか、時間的な問題で。

 

 女の子はベルちゃん。先月8歳の誕生日を迎えた子。

 この街で特に問題もなく暮らしていたらしい――数日前まで。

 

 しばらく前から母親の体調が悪くなった。

 最初は疲れが溜まっているのかと思ってたがどうも違う。具合の悪くなった母を医者に診て貰うと珍しい病気であることが判明。幸いにも進行は遅く、悪化する前にお高いながらも平民が手を出せる薬を服用すればすぐに治るので、最初は「懐が痛いけどしかたない」ぐらいだったそうだ。

 

 ただし、その薬が問題。

 

 それなりに高価なモノとはいえ大店に行き、契約書にサインすれば買えるはずのその薬がまさかの品切れ。

 商人に話を聞くと、ここ1年は母親と同じ病になる人が例年より多く、需要に対して供給がギリギリだったみたい。さらに材料となる素材を持っている生物の生息範囲が変わったせいで、余計にいつもの年よりも数が揃えにくいんだそうだ。

 

 早く動かないと手遅れになるかもしれない。

 父の行動は早かった。まずは母を連れて聖都に行き、薬が無いか確認し――結果、聖国には見習い聖女たちや教皇など替えの効かない人たちが必要となった時用の売却不可の物しか無く、近く入荷の予定もないと言われてしまったそうだ。

 

 それでも諦めずに今度は王国へ探しに。どれくらいで帰るか分からないのでベルちゃんは親戚に預けられる。そして最初は楽観視していただけに「間に合わないんじゃ……」と、数日ずっと不安になる(今ここ)。

 

 

「よし分かった!」

 

「何が?」

 

 

 

「病気のお母さん本人もおらず、いつ帰ってくるかも分からないこの状況で私たちができることは……ほっとんどないな!!」

 

 

 

「もう少し言葉を選んでくださいユキナ様!」

 

「一周回って清々しい回答ね」

 

 しゃーないやん。病気のご本人がいれば私の回復魔法で治せるだろうけど、治す対象がいない状況じゃ意味ない。しかも王国に行ったの数日前でしょ? 本格的に探そうとするだろうし、一ヶ月は確実に帰らないんじゃない

 

「お願いですから自信満々なお顔でそういうことを言わないでください。こう、何というか……あるでしょう、何か……?」

 

 

「そんな言葉、我が辞書に無い!!」

 

 

「本当に清々しいまでに唯我独尊を行くわね」

 

「あぁそうです。ユキナ様はこんな人でした……」

 

 ベルちゃんから四字熟語いただきました。

 いや、この世界に四字熟語はないから似たような言葉が私の耳に四字熟語として聞えてくるんだろうけど。

 

「それで? お姉さんたちは私の話を聞いてどうするの? 何かしてくれるの? それとも……また(・・)何もしてくれないの?」

 

 そう聞いてくるベルちゃんの目は……冷たかった。

 

(なるほど。そういうことか)

 

 話を聞くに何日も前から暗い顔でいたんだろう。その度に親切な人が聞いてきたんだろう。そして……何もできずに立ち去ったんだろう。

 

 仕方ない、と言えばそれまでかもしれない。

 ベルちゃんの問題は、少しお金と時間を掛けるだけで解決するようなものじゃないんだから。いくら優しい人だからって見ず知らずの、大して親しいわけでもない人のためにできる事なんざ限られる。

 だから今まで声を掛けた人たちに対して思うこともありはしない。

 

 

 なので……

 

 

「保険だけはあげるよ」

 

「は?」

 

 【アイテムボックス】からお手紙セットを取り出して、内容さらさら~っと。最後に印鑑もポンッと。名前も書いて……よし、こんなもんだろ。

 

「これあげる」

 

 見ただけでもお高いのが分かる封筒を渡されてベルちゃんが固まる。

 

「何、これ……?」

 

「両親が帰っても事態が解決しないようだったら、親子で聖都に行ってお偉いさんに渡しな。無下にはされないはずだから。というか無下にしたら、ずぅぇっっってぇぇ教皇の髭を毟ってやんよ。残り少ない髪も」

 

 綺麗に剃ってやんない。無理矢理引っこ抜いてやる。

 

「じゃ、そゆことで」

 

 クルリと反転して歩き出す。何もなかったかのように。

 

「え? ええ? ええぇ……?」

 

「ユ、ユキナ様お待ちをー!」

 

 こりゃステラ早よ来い。置いて行ってまうぞ?

 

「あの、先程のは……」

 

「教皇さん宛ての手紙。私名義で必要な薬1つぐらい融通しろって」

 

 借しはいっぱいあるし、ここらで少し返してもらおう。

 

「……先程はできることはないって」

 

ほとんど(・・・・)だよ。逆に言えば残りはやる」

 

「ユキナ様は……私よりずっと優しいですよ」

 

「んなことねぇわ。それに保険って言ったでしょ」

 

 残りの中にその保険は入ってないんだよ。

 

「それじゃ、今日のうち準備整えて明日に行ったりしますか」

 

「え……どこにですか?」

 

 【ヘルプ】には確認済みだ。

 街で手に入るもの以外は明日向かう場所にある。

 

 

 

「んー? ………………聖獣の森」

 

 

 

「はい!?」

 




~おまけ~

ベル「何だったの、あのお姉さんたち。それにこの封筒も何g――え? 教皇様宛て? え? 見習い聖女ステラ様!? そういえば、あの金髪の人見たことある! 何でそんな人が!? ……え、ええええええええええええええええええっ!? こ、こここここ今代聖女ユキナって、あの人が!? え、は、え、あの、えぇぇエエエええええええええええええええーーーーーっ!!?」


 この日、一生分の「え」を言った気がした(by.ベル)
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