アルビノ少女の異世界旅行記 ~私の旅は平穏無事にといかない~   作:影薄燕

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第86話 悪質? 褒め言葉っすね!

 

『ユキナ、こっち、5人シんだぞ』

 

「了解。次の団体さんがすぐ引っかかりそうなんで、爺さん迎えに寄越すから“ルート5”の方を頼む」

 

『うん。次、アッチか』

 

「じゃ、また。……爺さん、リルの迎えよろ」

 

「全く、人使いが荒いのぅ。もう何度目じゃ」

 

「アンタ龍だろが! てか、自分の森のことだろうが! 時間との勝負なんだからさっさと行け!」

 

「分かった分かった! ……『転移』」

 

 私に急かされた爺さんの足下が光り、その姿が消える。

 もう何度目か分からない連続の転移で爺さんもしんどいだろうが、私もリルもしんどいのは一緒。

 

「ふぅ……ステラ」

 

「はいユキナ様。魔力回復薬です」

 

 ステラから渡された魔力回復薬を一気に飲み干す。

 どうでもいいけど、異世界の回復薬系ってエナジードリ〇ク的な味なんだよな。飲みやすいからいいけど。

 

 にしても、魔力の消費が激しい。新スキルには絶賛助けられているけど、やっぱり長距離使用は負担だな。

 

 

『〈テレパシー〉……自分と対象に設定した者の考え・言葉を離れた状態で伝え合うことが可能になる。対象人数はスキル使用者に依存。対象との距離が離れているほど消費魔力が増大』

 

 

 この日のために2SPを消費して取った『テレパシー』。

 リルを対象にすることで、お互いに連絡をしあっている。

 

 今回考えた作戦は全員の協力が必要だった。

 視野の共有で鳥型の聖獣による空からの監視が可能かつ、『転移』によって瞬時に目的地への移動ができる龍の爺さん。

 ここ数日の訓練によってより速く・長く行動できるようになり、戦技も習得した機動力に長けたリル。

 距離が離れた対象にも効果が持続的に及ぶユニークスキルで補助し、ケガをすれば治療を施すステラ。

 そして、数々の魔力に頼らないピタゴラ〇イッチ的な罠と嫌がらせでリルが強襲しやすい舞台を整え、『テレパシー』による瞬時の情報伝達が可能な私。

 4人が揃って初めて実行できるものだった。

 

「ステラも魔力がキツくなったらすぐ言うんだよ」

 

「はい。でも、まだまだがんばれます!」

 

 ステラの役目も地味に重要だ。

 リルと、場合によっては私も対象とする新しいスキル。

 

 

『〈ユニークスキル:慈愛の加護〉……対象に対する状態異常・精神への干渉・魂への干渉を無効化し、安定させる。対象に指定できる人数は使用者に依存』

 

 

『〈ユニークスキル:リジェネ〉……対象に対し、一定時間ごとに体力とキズの回復効果を付与させる。対象に指定できる人数・回復量・付与時間は使用者に依存』

 

 

 例のエンジェルオーク戦後にステラが得たいくつものユニークスキル、そのうちの2つ。

 

 さっきのどっかで見た覚えのある部隊を相手にした時は無傷で勝利したけど、それまでの部隊の戦いでは毒の散布による状態異常や、手練れによる反撃での切り傷なんかもあった。

 リルは強いけど、それは向こうも同じだから。

 

 だからこそ、『慈愛の加護』と『リジェネ』が活躍する。

 

 私たちがいるのは世界樹のある誰も辿り着けない(らしい)聖獣の森の中央地帯。そこにいるステラを何とかしなきゃリルは常時体力・ケガが回復、状態異常を無効にするんだ。

 まだステラも使い慣れていないから負担になっているけど、この2つのユニークスキルだけで十分チートだと思う。

 成長したらどうなるのか……ステラ、恐ろしい子!

 

『ユキナ、こっちも終わった』

 

「早っ!? あー、じゃあ、いったん戻っておいで」

 

 リルからの声が頭に直接聞こえたんで、帰還の催促をする。

 すると、数秒後には転移の光と共にリルと爺さんが姿を現す。

 

「ただいまー」

 

「おかえりー。てか、本当に早かったな? 連絡もなかったじゃん?」

 

「今回は警戒する必要すらなかったからじゃ。あ奴ら、半死半生じゃったからリルがトドメを刺すだけで終わったぞ?」

 

 あーそういえば、森の中に仕掛けた罠ごとに区分けしたエリアの1つ“ルート5”って、対幹部用の本命罠『あまのじゃくは言った。「頭上注意!」と』がある場所だったな。

 

 罠のキーに掛かると背後で大きな音がして、何事かと振り向きながら飛び退くと粘着液ゾーンへ。で、身動きが取りづらくなったところに頭上の木々に隠れてた大量の丸太が落下してくる――と見せかけて、その丸太に付けられた紐と連動して地面に埋められた爆弾が爆発するのが本命。しかも大量に埋めてあるから一気に連鎖爆発するんだよ、上に注意を払っている連中の真下で。

 さらに念のため、そこに到達するまでの道中には何個も頭上から何かが落ちてくる系の簡単なイタズラレベルの罠を仕掛けておいて、無意識の内に頭上に注意を払うようにさせた。

 

「しかし、よくもまあ、こんな罠を思いついたのう」

 

「うん。ユキナ、スゴイ奴!」

 

「魔道具を使わない罠を、それも複雑な工程を必要とするものを考えて、実際に成果を出しているのですから本当ですよねぇ」

 

「……ウン、ガンバッタ。死ヌ気デ準備シタ」

 

 間に合ったのは運が良かったからとしか言い様がない。

 こちらが想定してた以上に、警備隊が警戒を解くまでの日数が伸びたから間に合った。ぶっちゃけ、超ギリギリだった!

 『テレパシー』とは別にスキルを取ってなきゃ無理だったよ。

 

 

『〈罠作成〉……罠の作成がしやすくなる』

 

 

 お値段たったの1SP。効果もシンプル。

 だけど“罠の作成がしやすくなる”ってのが私にとって重要となる。

 

 考えてみろ? いくら日本のサブカルチャーを理解し、3チャンネルで割と好きだったピタゴラ〇イッチの知識があるとはいえ、それを実際に実用レベルで作れるかっていったらほぼ不可能だ。んでもって、私の頭脳は一般ピーポーのそれである。はい、ど~う考えたって無理ゲーっすね!

 

 だからこそ、スキルの力に頼る。

 睡眠時間を削って森中に罠を作りまくった。『演算処理』が無かったら知恵熱を出したかもしれんし、『根性』が無かったら途中で精魂つきたかもしれない。

 

 

 だが私はやりきったぞ!!

 

 

 もしものためにと王国にいた頃買いあさった道具類(魔力のない爆弾とか、粘着液とか、大量の胡椒とか)と爺さん許可のもと提供された木材を使って罠を作りまくった。

 異世界だと昔から魔道具の技術はそこそこ発展してるみたいで、罠も大がかりな魔道具を使ったモノが主流であるとステラ談。なので、逆に古典的な罠の方がいいんじゃないかと考えたわけだ。

 

 結果は大成功。ピ〇ゴラスイッチは偉大だった!

 

 おかげで半年以上掛けて買いあさった道具類もろもろと、一部香辛料の類いが【アイテムボックス】の中から消えちまった……しくしく(涙)。

 

 で、当然ながら全てを出し切った私は某ボクサーのように真っ白に燃え尽きましたとさ。目が覚めたの今日の夕方だった。起きてすぐリルからごはんねだられたよ。泣きながらBBQの準備したさ……えんえん(涙)。

 

(まあでも、想像以上に上手くいったな。アイツら、思ってたよりも体力がないのか? やけに打たれ弱かったような……)

 

 どの罠もほとんどはリルが戦いやすいよう、隙を作り出すようにしているだけだったのに、定番罠『届けこの重い(丸太の直撃)』を含めた直接攻撃罠をくららった人間が予想を超えたダメージを受けているみたいだった。

 魔王教団の各部隊を見たリルに思い当たる節がないか聞いても「分かんない。ハジめから、疲れがヌけキれていない、感じだった」とのことなので、敵さん全員の体力が落ちてるのが原因らしい。

 

 何があったのかは謎のままだが、運はこっちに味方したようだ。

 

 

 だが、

 

 

「……雪菜よ」

 

「どしたの?」

 

「罠エリアの1つが突破された。魔法か、戦技か、とにかく森を直線上に破壊された……一撃での」

 

 どうやら最後の部隊――幹部が直接率いている部隊を見つけた聖獣が空から監視している最中、突然の衝撃で遠くまで吹き飛んだらしい。視界を共有してた爺さんは聖獣が吹き飛ぶ直前、数十メートルに渡って直線上に抉れた森を見たそう。

 

「さすがに幹部相手じゃピタゴラ〇イッチも無理か」

 

 予想はしていたさ。

 時には強引な力押しで罠をぜ~んぶ壊した方が早いからって、すぐに実行する奴が出ることぐらい。

 同じ状況なら私だってする。だって手っ取り早いから。

 

(ついにこの時が来たか~。うっわ、心臓バクバクいっちょる)

 

 今までにないくらい心臓の鼓動が早くなるのを感じながら、両方のほっぺを手で叩いて気合いを入れ直す。

 

(怯えるなよ永瀬雪菜。王国で“雷の仮面”と戦い合おうとした時点で覚悟しただろうが。女の意地見せろ!)

 

 避けて通れない戦いが目前に迫っていた。

 

 

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