アルビノ少女の異世界旅行記 ~私の旅は平穏無事にといかない~   作:影薄燕

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第88話 幹部の力

 

「そいやっ!」

 

 【アイテムボックス】から取り出した本物の(・・・)砲弾を投げつけた。大砲で撃つための玉が野球ボール並の速度で迫る!

 必殺『リアル砲丸投げ』!!

 

「は? はぁああああああああああああああっ!?」

 

 さすがにこの攻撃は予想外過ぎたのか、“狩人の仮面”とやらはさっきまでの冷静なボス感をかなぐり捨てて必死な動きで全力回避した。無表情だった部下っぽいの5人もそれは一緒。

 

 全員が避けたために砲弾は後ろの木に当たり――

 

 

――ドガアアアアアアアアアアアアンッ!!

 

 

 大 爆 発 ☆

 

 かなりの威力だったんで、当たった木を中心に広がった爆風がこっちにまで届く。頬を撫でる風は正直熱い。

 

「………………ユキナ、何、アレ?」

 

 絶句した様子のリルが目を点にしたまま聞いてきた。

 

 気持ちは分かる。何せ砲弾の直撃を逃れたはずの魔王教団共が爆風で吹き飛んだからね。ぶっちゃけ私も想定以上の威力で引いてる。

 ちなみに、普通なら私とリルもバランス崩して転んでしまいそうな爆風が来ているけど、事前に【土系魔法】で足を固定したから大丈夫。髪がバサバサいっておでこ丸出しだが気にしない。

 

「ん~? 除霊大戦で使われる予定だったマジもんの砲弾」

 

 覚えているだろうか? 聖国にいた頃、時期の問題から参加して意外とアッサリ終わった、聖職者を名乗る戦闘狂たちのオフ会みたいな大戦を? 出落ち感半端ないエルダーリッチさんが一撃で退場したあの大戦を!?

 

 戦いのあと、みんなが勝利に活気づいて「今日は何飲む~?」みたいな会話をしている中で、ステラと合流しようとした私の目に飛び込んできたのは未使用の砲弾。戦線が崩れそうになったら、味方を戻らせて周囲の砦から撃ち込む予定だった大砲の砲弾だった。

 

 

 なので、報酬代わりに1個くすねた。

 

 

 事後承諾だけど教皇にはちゃんと報告したぞ? 何というか諦めた顔で「使い方だけは注意してください」って言われたけど。

 

「まぁ結果オーライで上手く幹部と部下を分散できた。リルは部下の方で私は幹部の方! 生きて倒すぞ!」

 

「――っ!? おーーー!!」

 

 元気でよろしい! 戦闘再開じゃー!

 

 私は爆風で吹き飛んだ幹部の方へダッシュ。リルも反対方向へ猛ダッシュ。

 木々の間をぬって走れば、ちょうど幹部が空中で姿勢を直して着地する寸前だったんで……着地場所を無くす。

 

「『アースホール』!」

 

 直後、幹部の真下の地面にそこそこ大きな穴が。

 そのまま芸人みたいにおもしろい落ち方しちまえ!

 

「――っ!?」

 

 と、そこで幹部――もう弓のオッサンでいいや――は右腕から何かを射出した。それは近くにあった木に巻き付くと、キュルキュル巻き取る音を出しながら弓のオッサンを引っ張り上げた。

 

「すっげ! マジでスパイ映画の道具じゃん!?」

 

 落とし穴の直行コースを回避されたことよりビックリ!

 

(もしかして、まだまだスパイグッズ持ってる?)

 

 今度こそ華麗な着地を決めた弓のオッサンは「クックック」と、心底おもしろい気持ちが出たような笑いをする。

 

「はぁ……いいな。これまで相手にした獲物と違う。根本から戦い方がズレている。白い女、ハンティングする前に名を聞いておきたい。オレは魔王教団の幹部、“狩人の――」

 

 

「身ぐるみ置いてけええええええええええっ!!」

 

 

「――かめ……うおうっ!?」

 

 ハルバートで首を狙ったけど避けられたクッソ!

 向こうが混乱している隙に追撃! 追撃! 追撃!

 

「おい女! 空気を読まずに攻撃するとは何事だ!?」

 

「このことだ!」

 

「ああ、そうだろうな! お互い殺し合うのはいい。だが、オレたちが何者なのかも聞かんのか! 普通は気になるだろう!?」

 

「明日の天気の方が気になる!」

 

「オレたちの存在が明日の天気以下なのは百歩譲って良しとしよう! だが、先程の『身ぐるみ置いてけ』とは何だ!? キサマはそのなりで盗賊なのか! 古今東西、魔王教団の幹部にそのようなことを言った者など聞いたことがない!」

 

「前例が無いなら、私が前例なってやらぁ! 『戦技・旋風斬』!」

 

 回転するようにハルバートを振り回し、周りの木々ごと弓のオッサンを攻撃する。……やっぱ戦う時に少し邪魔なんだよね。

 

「……装填」

 

 だが、弓のオッサンも中々やる。

 懐から出した筒みたいなものを魔道具の弓にセットしたかと思えば、弦を引き、地面に向かって打ち出した。ちょうど私と弓のオッサンの間の位置だ。

 

 矢が地面に突き刺さる。瞬間、空気の爆発が起きた。

 

「ぐわっ!?」

 

 その場に踏ん張ることもできずに体がゴロゴロ転がっていく。威力はないけど、風圧がすごい!

 

「装填」

 

 体勢を整えようとハルバートを地面に突き立てれば、今度は『危機察知』が働く。攻撃は見えない。けど、弓のオッサンは弦を引き終わっていた(・・・・・・・・)。つまり、矢は打ち出されている。

 

 高速化している思考の中で直感的に出した答えは左右に避けることでも、上へ飛び上がることでもなく、

 

「『アースホール』&『幻影創造』」

 

 下に落ちることだ。

 

 私が自分の背丈と同じぐらいの穴に落ちたその時、さっきまでいた場所を複数の矢が通過する音が聞こえた。

 

(あっぶな! 見えない矢かよ!)

 

 そして落ちる直前、私と重ねるように出した幻影の“デコイユキナちゃん”は上へと飛び上がらせた。

 私の勘が正しければ……

 

「『戦技・滅亡之流星』」

 

 

――ズォオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!

 

 

 ……うん。正しかった。

 

 幻影の“デコイユキナちゃん”が光の中に消えていった。

 何なのアレ? ポ〇モンの破壊光線? 弓から出される威力じゃなかったぞ。SF映画に出てくる宇宙船の主砲かよおい。

 

(っと、関心している暇なんてねえ!)

 

 1秒だって無駄にできない。すぐさま特大の魔法を撃つ準備に入る。

 

「『探知』……なるほど穴の中か。――装填」

 

「――っ!? ちくしょう!」

 

 向こうも『探知』持ちか! 穴から出る時間すらおしい! 何かされる前にやってやる!

 『探知』で弓のオッサンのいる場所を確認。魔法準備完了!

 

「『ジャッジメント・レイ』!」

 

「――疾っ!」

 

 空から【光系魔法】の最上級攻撃である、さっきの近未来顔負けビームに勝るとも劣らない裁きの光が“狩人の仮面”を飲み込んだ――ところまで知覚して……

 

 直前に“狩人の仮面”から放たれた矢が当たった地面、そこから穴の中にいる私に向かって凄まじい勢いで土石流に変わったソレが襲い掛かってきた! 生き埋めにする気かあの野郎!

 

「『跳躍』!」

 

 完全に飲み込まれる前に速度を最大限活かして大ジャンプ。直後、さっきまでいた穴が土石流に飲まれるのを見て冷や汗をかきながら着地。マジで生きた心地しねえわ……

 

 さあって、裁きの光に呑まれた“狩人の仮面”はどうなったかね? 

 普通に考えれば耐性でもないと即死だろうけど……

 

 

「ほんっっっとに、しつこいオッサンだなー」

 

 

「……これだけの攻防をして、出てきた言葉がそれか」

 

 

 疲れた様子なだけで生きていた。

 

 周囲に見たこともない丸っこい魔道具がいくつも浮いている。アレで防いだのか? まあ、プスプス煙を出しながらゆっくりと地面に落ちてってるところを見ると、再使用はできなさそうだ。

 

 戦いの第2ラウンドが終わり、様子見状態に移行したこの状況で次にどうすべきか考えるけど、中々いい案が浮かばない。魔物じゃなく、自分と同レベルの人間との殺し合いがこんなに面倒とは……。

 やっぱり、複数の魔道具の有無は大きいな。何が出るか分からんから、こっちの手札をどこまで場に出すべきか判断が難しい。

 

「……惜しいな」

 

「あぁん?」

 

「キサマが見た目通りの年齢だとすれば、あと数年を待たずに冒険者で言えばSランク、我々で言えば幹部クラスに十分なり得た。それだけの実力がある。だからこそ……惜しい」

 

「本題言わないと、また空気読まずに攻撃すんぞ?」

 

「キサマの戦いはちぐはぐだ。異端と言っていい。まるで違う常識の中で生まれ育った者を見ているような気分だ」

 

 地球の日本生まれっすからねー。

 

「だからこそ…………ここで終わらせるのが申し訳なく思う」

 

「何を――ぅ?」

 

 

――グラァ

 

 

 突然だった。急な目眩に体がフラつく。

 

「っあ、ぐっ……。う、おえ……」

 

 頭痛が酷い。吐き気がする。

 

「気付いていたかどうかは知らんが、この戦いが始まってからすぐにオレは周囲に様々な毒を散布し続けた。貴重な素材を使って作られたモノだ。目に見える類いではないし、臭いも無臭に近い。だが、キサマはどれも効いている様子がなかった。だからオレは自分と同じ毒耐性スキルの類いを持っていると仮定した」

 

 そうだ。ステラのユニークスキル『慈愛の加護』の効果が続いているはずだから、この場にいないリルも含めて状態異常にはならない。私に至っては初期から持っている『状態異常完全耐性』がある。

 

「なの、に……何で……!」

 

 体が変だ。ユニークスキルが無かったら、真っ先に毒を疑うくらい気持ち悪い。

 

「人は生きるため、行動するため、必ず呼吸を行う」

 

 自分がちゃんと思考できてるか怪しくなってきた。

 

「単に空気を吸って吐くだけの問題ではない。専門外の知識だが、オレたちが何気なく吸う空気にも種類と比率があるらしい。その比率が変動するだけで環境にも、生物にも、大きな影響が出るそうだ」

 

「――っ! まさ、か……!」

 

「もう分かるだろう? オレのユニークスキルはな、空気中に含まれる数種類の空気比率を徐々に変化させるものだ。どんな生物でも、これらを僅かでも弄られると途端に人体に悪影響が出る」

 

 中学校で、理科の授業で、受けた記憶がある……!

 

 

『〈ユニークスキル:大気濃度変化〉……空気中に存在する成分濃度を徐々に変化させる。効果範囲・増減比率・変動時間は使用者に依存。使用者の周囲は影響なし』

 

 

 【ヘルプ】の説明で確信する。酷い目眩・頭痛・吐き気、この症状は空気中の酸素が不足することで起こる体調不良だ。

 

「このユニークスキルによる効果はあくまで空気中の濃度を変えることであって、状態異常を起こすためのものではないのがポイントだ。毒や薬物による“状態異常”には当てはまらない」

 

(今、まさにそれを実感してるよ!)

 

 マズいマズいマズい!!

 もう意地だけで立っている。視界もボヤけてきた。頭が痛すぎて難しいことが考えられない。気持ち悪くて胃の中をリバースしそう。

 

「装填――『戦技・防御貫通矢』」

 

 弓のオッサンが弦を強く引く。

 アレ(・・)を喰らうとヤバいと『直感』が、『危機察知』が、私の第六感が激しく警報を鳴らしている。

 

「さらばだ。オレの“飢え”を満たしたことに感謝を」

 

 矢が放たれた。

 死が、目の前に迫る。

 

 避けろ避けろ動け動け!

 

 一瞬の交差――矢は通り過ぎる。

 

 必死の思いが伝わったのか、胴体を狙っていた矢をギリギリで避けることができた。ただし、右側二の腕がちょっと抉れた。激しい痛みで目がチカチカするけど風穴を開けられるよりかはマシだ。

 

 もう1度、どうするべきか考えようとして、

 

「言い忘れていた。その矢は1度だけ逆方向に戻ってくる」

 

 

 後ろに『危機察知』が反応した。

 

 

 狙いは……私の心臓だ。

 

(あ、ヤバ……)

 

 世界が遅く見えて、聞こえてきたのはリルの声。

 

「ユキナ! 危ない!!」

 

 直後、体に衝撃が走る。

 戻ってきた矢は私を貫いた。

 

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