アルビノ少女の異世界旅行記 ~私の旅は平穏無事にといかない~   作:影薄燕

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 全て書き直し。


第12話 エルフの薬師

 

 初依頼の翌日、私は無理矢理テンションを上げることにした。

 

「特製サンドはいかがー! 肉もいっぱい入って――」

 

「3つ下さい!」

 

「すごい食べるわねアナタ!?」

 

 美味しいは正義って、昔の偉い人が言っていたらしい。

 実際、美味しい食べものは人を幸福にするそうだ。

 

 

 

「がぶ! むぐっ! 今日こそは上手く依頼をこなしてやる!」

 

 屋台で買った特製サンド――昨日、ギランさんから貰ったものと同じやつを豪快に食べながら目的の場所へと歩いて行く。

 ちょっと行儀が悪いんじゃ?と日本にいた時なら思わなくもないけど、王都では歩き食い程度で目くじらはは立てられないよう。見ればそれなりの人が歩き食いをしているし、文化の違いなんだろう。……女の子でしているのは今のところ私1人だけどな!

 

「薬剤師の手伝いってことだけど、専門知識は本当にいらないんだよな?」

 

 今回受けたのはランクの昇格に必要な雑用依頼の1つだ。

 そもそも雑用依頼って手続きをしてくれたエミリーさん曰く、1日だけか長くても1泊2日の短期アルバイトのようなものらしい。それも、受けてくれる人がいたら御の字程度の。良かったら受けて下さいねーってぐらい軽い気持ちの。

 

 そういった依頼を受けるのは私みたいな新人以外いるのかというと、以外と受ける人はいるそうだ。冒険者ランクとか関係無しに。

 疑問に思ったのが顔に出たんだろう。エミリーさんは理由を説明してくれた。

 

「そりゃ毎回命の掛かった依頼ばかり受けたくないよなー」

 

 冒険者の受ける依頼で最も多いのは魔物の討伐だ。

 採取とかを専門に扱っている人もいるけど、それは極一部。基本的には魔物をばったばった倒して安全の確保や素材の提供をするのがメイン。そんな殺し合いを毎日のようにしたいか? 答えはNo。

 

 ドカンと稼ぐ人は依頼を達成したら数日は体を休めて、遊んだり飲み食いする。その休みの期間に小遣い稼ぎも兼ねて雑用依頼を受けることがあるらしい。逆にひーこら言いながら魔物と戦っている人はストレスを溜め込んだりするので、安全に稼げる依頼をして心をリフレッシュさせるとのこと。

 

 そういった理由で割と受理されるのが雑用依頼。

 学のある人は臨時の家庭教師をするのが人気だし、学の無い人でもできるような……それこそ畑仕事の手伝いまである。

 

 私の受けた依頼は子供でもできるものらしいので大丈夫だと信じたいけど、アルバイトの経験なんて当然無いし緊張するな。

 

「えーっと、場所はここであってるよね?」

 

 事前に渡された簡易の地図と見比べて、場所があっているかどうかを確認。

 うん。『薬屋レーナ』と書いてあるし間違いない。

 

「ごめんくださーい」

 

「は~い~」

 

 コンコンと扉を叩いて出てきたのは――

 

「エルフ!? リアルエルフだと!?」

 

「ん~~~? どうかしたの~?」

 

 金髪で、糸目だから瞳の色は不明だけど耳は長い。

 中から出てきたのは間違いなくエルフと呼ばれる人種だ。

 

 何より驚いたのは……

 

(デッッッカッ!!)

 

 とんでもない胸部装甲を装備していたことだった。

 すげーな。今まで見たことあるどの人よりデカい。圧倒的だ。

 エルフって創作だと貧乳率高めだけど、どうやらこの世界ではエルフにも格差社会が存在するらしい。もうエロフだよこれ。

 

 以上、【思考加速】の初仕事でした。

 胸をガン見してもバレないってすごいと思う。

 

「……どうも。依頼できた冒険者の雪菜です」

 

「これはどうも~。薬師のレーナです~。ささっ、入って入って~」

 

 促され、お店の中に入って最初に感じたのは様々な薬の匂いだった。

 手前の方に商品と思わしき薬品類が陳列され、奥の方に薬品を作るための作業スペースがあった。わー、アレって昔の人が薬の材料すり潰す時に使う道具じゃん。車輪みたいのでゴリゴリするの。実物を見るのは初めてだなー。

 

「いや~助かったよ~。納品とかで最近忙しかったから作業する時間管理ミスっちゃって~。来てくれなかったら徹夜決定だったんだ~」

 

「え~っと、自分、薬のこととか全然分からないんですけど?」

 

「そこは大丈夫~。指定された番号の薬草取ってきてもらったり、お店の対応してもらうぐらいだから~」

 

 前半はともかく後半の内容がハードル高い件。

 接客業とかコミュ障気味にとって下手な山より高い苦難ぞ。

 

「あ~、あとはお昼ごはんも作ってもらえると助かるな~」

 

「そんなことまですんの!?」

 

 確かにちょうどお昼時だけどさ! 時間指定も今だけどさ!

 

「問題ない問題ない。あるもので作って食べられればそれでいいよ~」

 

「……食べられないものってあります?」

 

「基本何でも食べるから好きにしちゃって~」

 

 すげーアバウトな注文だな。それでいいのかエルフ?

 

「はいはい。早速作らせていただきますよ」

 

「片手で食べられるものなら尚良いよ~」

 

 本当に注文の多い依頼人だな!

 これも仕事だと割り切ってやるけどさぁ。

 

 とりあえず、奥の調理スペースで今ある食材の確認をする。

 ――って、肉系多いな! 特にベーコン。エルフは野菜好きというイメージまでもが崩れ去った。この世界のエルフは固定概念の破壊者か。

 

「そうだなー。片手で食べられるのってリクエストだし、キャベツっぽいのとベーコンでサンドイッチでも作るか」

 

 適当に炒めて~、味付けして~、トーストしたパンで挟んだら食べやすくカット。美味さはスキル【鉄人料理人】を信じるしかない。

 

「出来ましたよ」

 

「ん~? ありがと~。そこ置いて~」

 

 ゴリゴリと、乾燥した薬草らしき物体を円形状の部分で細かく挽いているレーナさん。

 ゆっくりした動作だけど、姿勢とかから集中しているのが分かるので余計なことを言わないようお口をチャック。

 指示があるまで大人しくしておく。

 

 

――ゴリゴリ ――ゴリゴリ

 

 

 薬草を挽く音だけが部屋に響く。

 それ以外はレーナさんが食べるお昼ごはんの咀嚼音ぐらいだ。

 何もない時間だけが過ぎていくのって思ったよりキツイ。でも今から慣れておかないと冒険者なんて務まらないだろうし我慢だ我慢。

 

 それから、たまに指示を受けながら数時間を過ごすことになった。

 

「5番の薬草箱取って~」

 

「はいぃ! え、えと、5番……5番はどこじゃ!?」

 

「紅茶おねがい~」

 

「紅茶って……もしかしてこの茶葉? どうやって作るのこれ?」

 

「お客さん来たよ~」

 

「いいいいらっしゃいませっ! これと、これですね。全部でこのお値段に――って、レーナさーん! このレジみたいのどう使うの!?」

 

 そんな感じで過ごした結果……精神的に疲れ果てていた。

 

「疲れた。特に接客業が。私向いてないな」

 

 ちゃんと営業スマイルできてたか?

 やってることは簡単なのに、見ず知らずの人の対応するというだけでここまで疲弊するとは。コミュ障気味にはやっぱ高いハードルだった。

 

「お疲れ様~。依頼は完了だよ~」

 

「どもっす」

 

 レーナさんから依頼完了の印である木札を受け取ったことで本当に仕事が終わったと実感する。そうか、これがバイト初日を経験した陰キャの気持ちか。

 

「でも、その、私必要ありました? 足引っぱってませんでした?」

 

 初めてだからしょうがない、と言えれば簡単だろうけど、初めて尽くしでレーナさんに何度も助けを求めることになってしまった。

 これで依頼料貰っていいの?

 

「気にしないで~。誰でも最初はあんなんだし、がんばってくれたおかげで結果的に徹夜しなくてすみそうだから~。それにサンドイッチすっごく美味しかったから、それだけで依頼して良かったって思うよ~」

 

「そんなもんすか」

 

「そんなものだよ~」

 

 マジメにがんばった甲斐はあったようだ。特に食事。

 これで昨日の失敗分は取り戻せたかな?

 

「実際、手伝いが1人いるだけですごく楽なんだよ~。私、できるだけその場から動きたくないから~」

 

「意外ですね、そんな怠惰な態度」

 

 仕事の時はかなり集中していたのに。

 

「だって~、胸が重すぎて何度も移動すると肩が凝るんだもの~」

 

 

――ビシッ!

 

 

「…………」

 

「薬草を挽く時もすごく邪魔で、やりにくいんだよ~」

 

「依頼は完了しましたので、本日は帰らせていただきます。では」

 

「え? あの、え、え~~~?」

 

 後ろを振り返ることなく冒険者ギルドへと脚を進める。

 

 やはり“貧”に嘆く者と“富”を持つ者とでは価値観が違うという、厳しくて残酷な現実を再確認して少しだけ大人になる私であった。

 

 




~おまけ~

レーナ( 一∀一)「(う~、胸が邪魔で手元が見えにくいよう~。指先から伝わる僅かな感覚を頼りに上手くすり潰さなきゃな~)」

雪菜( ・`ω・´)「(レーナさん、すごい集中している。指先にまで緊張感を意識しているみたいだ。私も不慣れなりにしっかりアシストしないとな)」
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