アルビノ少女の異世界旅行記 ~私の旅は平穏無事にといかない~   作:影薄燕

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第15話 流れる風を感じたり風に流されてみたり

 

 “私は今、風になっている”って表現あるよね?

 まあ本当に風になっているんじゃなくて、自分自身がすごい速さで走っていることの表現の1つとしての言葉だけど。

 

 初めて聞いた時は当然「なんじゃそりゃ」と思ったけど……

 

「うっひょおおおおおおおおおおおおお! 私は風だぞぉおおおおおおおおおおおおっ! うははははははー!!」

 

 実際に自分がそうなるとテンション上がるな!

 

 

 

 どうもー。現場の永瀬雪菜14歳でーす。

 

 今日は冒険者としての仕事を休んで、王都から近い何もない平原に来ている。

 というのも、明日には冒険者のランクを上げるための魔物討伐試験を受ける予約をギルドでしたから、休みもかねて何もない所で魔法系スキルの検証・練習をするため平原まで足を運んだのだ。

 

 今日までに私が使った魔法スキルは【炎系魔法】だけ。

 初日の大暴発で反省したけど、基本的に森の中で火は使っちゃダメ。殺傷能力は高いだろうけど、周りに燃え移るから使える技がかなり限定される。

 ……もう森林破壊はこりごりだよ。

 

 だからこそ、使える魔法スキルを検証・練習する。

 ここなら誰にも迷惑かけないし、試すのにもってこいだからね。

 

 でだ。せっかくだから魔法スキルを試す前に、通常スキルの【速度上昇LV.4】によって最高でどれくらいの速さで走れるかを試した。

 

 最初は小走りで、そこから段々速く。

 頭の中で“もっと速く”って思うと、それに合わせて走る速さが増していった。

 ものの数秒でオリンピック選手が目を点にするようなスピードが出て怖くなってきたけど、ここは何もない平原。何かにぶつかる心配をする必要がないと分かれば恐怖も消えていく。恐怖が消えれば余裕が出てくる。

 

 そして私は風になった。

 

 今の私はレーシングカー並みに速いと思う。

 客観的に見ることができないから、あくまでも実際に自分の足で走って感じた限りでの話になるけど。

 

 で、テンション爆上げ状態だ。

 

「楽しいぞぉおおおおおおおおおおおおおっ!」

 

 ホント楽しい。

 日本にいた頃じゃ考えられないぐらい自由に走り回っている。景色がどんどん後ろに流れていくのも楽しさを加速させている。

 

 ……だがしかし、考えてみてくれ?

 

 古今東西、調子に乗った者の末路を。

 純粋な良い子なら笑顔のまま終わっていただろう。

 ……しかし、しかしだ!

 そんなのは私に当てはまるわけがない! 当てはまるなら異世界転移した初っ端で山賊に追いかけられたり、自分の魔法で吹っ飛び死にかけたりなんかしない! 悲しいが、私は自分のこと純粋な良い子だなんて思ったことは1度たりとてない! 自分の性格が残念なことなんて自分が1番自覚している!

 

 ここまで引っ張っといて言うことは1つ。

 “調子に乗るな”。ただそれだけだ。

 

「うはははははは――……あ

 

 調子に乗るから平原なのに突き出た石に引っ掛かる。

 今の私は車より速く走っていた。そんな状態で躓いたらどうなるか。

 ――答えは一瞬あとに体験する羽目になっちまったぜ♪

 

ぶっ! ぶべべべべべべぇええええええええええ!?

 

 うん。走ってた勢いはそのまま、地面に顔面を強打して10メートル以上滑ることになった。

 私ってば異世界に来てからこんなんばかりだな……

 

 

 

「失敗は誰にでもある。気を取り直していこう」

 

 普通だったら大怪我するはずのドジ――というかもう事故と言ってもいいような目にあっても、相変わらずの防御力で無傷の私。

 こっちの世界に来てヘルプと同じくらい役に立っているよな【防御力上昇(極大)】。敬わなきゃいかんレベルになってきた。

 

「最初は水を出してみるか」

 

 【水系魔法LV.2】で出来ることは少ない。

 他の魔法より優先度が低かったからSPを余計に消費したくなかったのも理由だけど、水を使った攻撃って非殺傷のイメージが強いから後回しでいいかなと。

 

 とりあえずは飲み水を確保できて、体を洗うのに困らないようになれば旅の時も困らなくて済むためLV.2を取得した。

 

「え~と、宙から水が流れ出るイメージ……でいいんだよな」

 

 お手洗いの水みたい手を洗う分がジャーって出るイメージをする。

 魔法名は確か『ウォーター』だっけ。

 

 今更だけど、この世界の魔法はイメージによってやれることが大きく変わる。

 山賊を()っちゃった時やブラッディベアーと対峙した時は無我夢中だったけど、リリィたちを助けた翌日、落ち着いた頃にヘルプに魔法の扱いについての基本的なことを教わった。

 

 

『〈魔法〉……身体の中にある魔力を一定量消費することで発動させることが可能な力。魔力は誰でも持っているが、魔法を使えるかはその人の才能次第。魔法はイメージによって様々な現象を起こすことができ、その人のイメージの強さや魔法現象に対する理解度によって魔法の威力も上昇する。ただしイメージが具体的で強くても、スキルのレベルが足りなければその魔法の発動は不可能。いくつかの魔法についてはすでに名称が決まっている。また、急激に魔力を消費すると体調にも影響が出るため注意』

 

 

 これがこの世界の魔法のルールってわけだ。

 

 山賊共やブラッディベアーの時は、無我夢中+【生存本能】のおかげでどうにかなった面が強い。毎回行き当たりばったりで成功するとは思えないし、今のうちに魔法を使う感覚を身に付けなきゃ。

 図書館で最低限の魔法とその使用法についても学んだしいけるはず。

 

 焦るなよ私。

 明日の試験、最悪魔法なしでも倒せる魔物しか出ないはずだ。

 

 マオさんの言葉を思い出すんだ。私はちゃんと成長している。自分のペースで前に進め。本番になって覚悟が決まらないのが1番ダサいぞ。

 

「異世界に転移すると分かった時点で覚悟は多少なりともできたんだ。気をしっかり持て私。堂々と生きるためにこの世界で――ん?」

 

 ふと気付いた。宙から水がジャーっと出てることに。

 

 らしくもなくマジメに考えていたから全然気付かなかったな。足元が水浸しになりかけてる。下がたくさん草の生えている所だから良かったけど、普通の地面だったらズボンとか泥が飛び散ってそう。

 

 私らしい結果に苦笑いしつつ、今の感覚を忘れないうちに次を試す。

 

「次は風魔法だな。森の中だとこれがメインになるかも」

 

 【風系魔法LV.3】は一人前と呼ばれるようなレベル。

 大抵のことはできるはずだから一通り試してみる。

 

 近くに生えている草に狙いを付け――

 

「……『ウィンドカッター』」

 

 スパッ!という音が聞こえそうなくらい草がキレイに切れた。

 

 最初だから威力は最小限にしてみたけど、これじゃ魔物は倒せないよな。

 今度はもうちょい本気で。

 

「『ウィンドカッター』!」

 

 語尾を強めて言った魔法名によって放たれた風の刃は、数メートルの範囲にあった草をまとめて刈り取った。

 効果音もスパッ!じゃなくて、ズパンッ!って感じだ。

 

「これなら魔物も倒せるか?」

 

 さすがに平原の草と魔物が同じ防御力のはずがない。

 これに関しては実戦で検証するしかないな。

 余裕があれば、どの魔物にはどれくらいの魔法の威力なら倒せるかを覚えておきたい。最初に放った風の刃の方があとに放ったモノよりも消費した魔力はずっと少なく感じた。1滴の水か一口の水かの違いくらいか?

 

「最後に【土系魔法】を試したら帰るか」

 

 【土系魔法LV.4】では土に関係する魔法以外にも、重力に関係する魔法も使えるようになる。

 重力魔法……中二病が好きそうだな。

 かくいう私も興味津々だけど。だからレベルも4まで上げた。

 

「土を盛り上がらせるってこうか? 『アースウォール』」

 

 自分なりのイメージで土の壁を作ってみた。

 けど、出来上がるまでに意外と時間が掛かる。

 これはスキルレベルの問題じゃなくて、私のイメージの問題。

 

「……よくよく考えると、土砂崩れや地震なら簡単にイメージできるけど、それ以外となるとラノベでも描写が少ないせいでイメージしにくいな」

 

 他の魔法に比べて地味な印象が強いせいか、ラノベやマンガに登場するようなキャラが使う魔法の中じゃ使われる機会が少ない。

 そのせいで他と比べてイメージしにくい。

 

 地震大国日本に住んでいた私なら周囲に大地震を起こすイメージぐらいわけない。他は砂嵐ぐらいか? イメージがハッキリできるの。

 

「これは簡易の家を作る道のりはかなり遠いな」

 

 旅行人生の修正をしなきゃ。

 魔法で最低限の拠点を作れるようになることが今後の課題として私の前に立ち塞がる。見上げるような大きな壁を乗り越えるために、少しずつ大きな壁を作り上げて階段のように繋げる地道な修行の予定を組み込まねば。

 

 目指せ、いかにもな土の家!

 時間ならバカみたいにあるんだ! 目標は大きく持とう!

 

 最後は土系魔法の第2段階、【重力魔法】。

 イメージはバッチリだ。最近の作品じゃ、主人公よりも敵さんが使ってくるパターンも多いから余裕余裕。

 

 とは言え、重力を掛ける対象が平原にはいないんだよな。

 ――私自身を除いて。

 

「……試しに重くしてみるか」

 

 女性の体重を重くするとか鬼畜とも取れかねない行為だ。

 地球で体重測定の時やったら半殺しにされるな。

 

「よし! 私に『グラビティ』!」

 

 私を対象に重力増化フィールドが球状に展開されるイメージをしてみる。この中だけ重力の影響を受けるように。

 

 踏ん張って耐える姿勢になる。

 が、全然変わった気がしない。いや、腕や足を動かすといつもより重みがあるように感じているから効果はあるだろうけど……

 スキルとかで体が強化されているからか?

 

「もうちょっと重力増してみ――うぐっ!?」

 

 

――ミシッ!

 

 

 ぐぅおおおおおおお! ヤバッ、重くし過ぎた!

 強制的に四つん這いの姿勢に!

 手をついた箇所がちょい(へこ)んでる!

 

「軽く! もっと軽くせな!」

 

 再び重力魔法! 今度は私に掛かる重力を可能な限り軽くする。

 

「ぜぇー、ぜぇー。ふう、焦った」

 

 ようやく四つん這い状態から解放。心なしか体が軽くなった気分に。

 手足を動かすと重みを感じなさ過ぎて逆に違和感があるな……

 足の踏ん張りも効いていないような?

 

「あ、そっか。無重力ではないけど、体重が軽すぎて動かしにくくなっているのか。今度は周りの重力を軽くしすぎちゃったか」

 

 今の私ってば下手したらタンポポの種ぐらい軽いんじゃね?

 今この瞬間に強風でも吹いたら飛ばされちゃったりして。

 

「なーんてね。さすがに都合よく強風が吹くわけ――」

 

 

――ビュオウッ

 

 

「あ? ……あああああぁぁぁぁ~~~」

 

 強風が吹きました。

 普通であれば何ともないはずの私、現在の体重が軽すぎて飛ばされます。

 

 …………空飛ぶの、異世界転移初日以降2度目だな。

 

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