アルビノ少女の異世界旅行記 ~私の旅は平穏無事にといかない~   作:影薄燕

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第18話 危機

 

 それにしても試験受かって良かったわ。

 

 今回は自分の実力でクリアしたかったから【探知(大)】は使っていない。

 アレ使ったらどこに何がいるのか大まかに分かるから、試験の意味が薄れる。こういうのってスキルに依存しすぎると、あとになって苦労するっていうのが物語の定番だし。余裕がある内に慣れないとね。

 

 今の私はちょっと人より成長しやすい小娘でしかない。

 ぶっちゃけ、世界を見て回るには経験が足りなさすぎる。

 

 さらに言うと、信用できる人物がまだいないのも理由だ。

 【探知(大)】を使えば迷いなく魔物のいる場所に向かうことができるけど、そんなの監督役の3人からしたら不自然だ。「この年で上位の【探知】スキル持ってるんじゃ?」と疑われる可能性大。

 ギランさんですら会ったのは3回だけ。クラウドさん、ハルさんに関しては今回が初対面。自分の手札を公開するにはまだ信用が足りない。

 

 これも異世界モノで良くあるパターンだけど、必要以上に情報が流布された結果、面倒な出来事に巻き込まれるなんて普通に嫌だ。

 この世界に個人情報の重要性が周知されているのか不明だし。

 

 リリィにだって秘密にしてるもん。

 秘密や手札を打ち明けるなら最初はあの子にするって決めている。

 

 試験結果に安堵してれば、ようやく監督役3人が動き出した。

 

「じゃ、じゃあ試験も無事終わったことだし、さっそく帰りましょうか! クラウド、魔石と耳の回収はお願いね」

 

「これをボクが!?」

 

「こんぐらいのグロさ、男なら慣れろ!」

 

 ハルさんが無理に話題を変えたような言い方でクラウドさんに指示を出す。

 ギランさんも拒否しないよう追い打ち。

 

 ご愁傷様です。

 クラウドさん、苦労人の気質だなあ。

 

 このゴブリン(細切れ死体)とさっき倒した2匹の体内には魔石がある。本当に小さいクズ魔石とか呼ばれるものだけど。

 ブラッディベアーの魔石が大人の拳大だったのを考えれば、本当に使い道があるのか疑問に思うレベルだ。魔物によってどこに魔石があるかは決まっているらしく(大抵の場合心臓付近)、探すのは苦労しないとのこと。

 

 ちなみにゴブリンの討伐証明は右耳。さっきハルさんが言っていたのがこれだ。ギルドの資料庫で見た本によると魔石以外にもそれぞれ魔物を討伐した証となる部位があり、それを持って行っても討伐証明になる。

 魔石だけでも十分だけど、何の魔物を討伐したのかすぐ分かって受付時間が早くなるメリットや、何らかの理由で魔石ごと(・・・・)魔物の体が消滅した際に必要となると書いてあった。

 

 ララビットとガルウルフはお肉が食べられるから、死体を持って行けばそこそこの値段で売れるので、血抜き後に全部私の【アイテムボックス(大)】に収納している。小金ゲットだぜ! これに関してはギルドでブラッディベアーの死体を取り出した時に見られているから今更だしね。

 

「ユキナさん……」

 

 振り返ればものすごく嫌そな顔のクラウドさん。

 手にはゴブリンの魔石と右耳が。まだ血がベッタリついちょる……。

 えんがちょ。さっさと収納っと。

 

「……もうこれで終わりなんですよね?」

 

「ああそうだぜ。安心しな。安くて美味い店ならいくつも知っている。嬢ちゃんの分はオレが払ってやるぜ!」

 

 そいつは安心だな! いよっ太っ腹!

 さすがっすわギランの兄貴! ヒューヒュー!

 

 

 そんな時だった。

 クラウドさんが焦った声を上げたのは。

 

 

「――っ!? みんな警戒して!」

 

「へ?」

 

 え? 何? どしたの急に?

 

「! 嬢ちゃんを囲むようにしろ! 戦闘態勢!」

 

 ギランさんの声で3人とも私を護るような配置に付く。

 ギランさんは戦槌を、クラウドさんは短剣を、そしてハルさんはどこから取り出したのか弓と矢筒を、それぞれ構えた。

 

 いや本当にどうしたのさ、皆さん!?

 

「あの~ハルさん? これは……?」

 

「クラウドは【危機察知】っていうスキルを持っているの。自分やその周りに危険が迫った時、それが分かるスキルが」

 

 ……それ、SPに余裕が出てきたら真っ先に取ろうと思ってたやつじゃん。

 そういやクラウドさん斥候だったけ?

 

「こんな場所でこれ程スキルが強く反応なんて本来ないはずだ。魔物か、それ以外か。とにかく危険の正体が分からない以上、下手に動くのは逆に危ない。ユキナさん、場合によっては全力で走ってもらうことになりま――ガッ!?」

 

 それは……突然だった。

 

 クラウドさんの耳から血が噴き出し、地面に倒れる。

 

「ク、クラウドっ!? ――うっ!」

 

 ハルさんが咄嗟にクラウドさんの元に駆け寄ろうとするけど――またもや突然だ。その耳から血が出て倒れたのは。

 

「クラウドさん、ハルさ――ぐえっ!?」

 

 あまりにも突然の事態の連続に混乱していたら、急に後ろに引っ張られる。

 

 今、首がガクンッてなったぞ!?

 誰やねん!と振り返れば……そこにいたのはギランさん。

 見たことない表情だったから一瞬分からなかったぞ。というかさっきまでいた場所から何メートルも離れてる。あの瞬間だけでここまで離れたってことか? ――って今はそうじゃない!

 

「あ、あの、ギランさん! 2人が!」

 

「分かってる! 突然耳から血が出てまさかとは思ったが……最悪だ。すまねえ嬢ちゃん。食事の約束、守れねえかもしれねえ……」

 

「それって……どういう?」

 

「ほれ。こんなことした奴のご登場だ」

 

 憎々し気に睨むギランさんの視線の先。

 ガサガサと木々が揺れ、出て来たのは巨大な黒い影。

 胴体は2メートル程だけど、バサバサと羽ばたいている広がった翼まで含めたらかなりの威圧感になる。大きめの鼻と鋭いキバをもったソレは――

 

 

「キイ、キイ、キイィイイイイイイイイイイイ!!」

 

 

「な、なんじゃあのバカでかい蝙蝠(こうもり)は!?」

 

「オレも資料でしか見たことねぇが、間違いねえ。Bランクの魔物マッドバッド! 遠くから超音波を聞いた獲物を仕留めるとんでもねえ奴だ。獰猛性と残虐性からCランクの強さなのにBランク指定を受けているブラッディベアーとは違う、単純な強さでBランクの魔物! 正真正銘の化け物がどうしてこんな場所に!?」

 

 超音波!?

 あ! だから2人とも耳から血を!

 

 【ヘルプ】! ちょっと詳細プリーズ!

 

 

『〈マッドバッド〉……推定危険度Bの魔物。遠距離からの超音波で獲物を弱らせ、生き血をすする。超音波の威力と射程は個体によって違う。翼から風の刃を飛ばすことも可能。知能が高く、自分から相手に近づくことがほとんどないため近接武器の使い手は苦戦を強いられる。そのため、魔法使いが超音波を使うヒマを与えずに遠距離から魔法で攻撃するのが基本討伐方法となるが、動きが素早いので魔法を当てるのは難しい』

 

 

「――っ、それって!?」

 

 戦槌が主要武器らしいギランさんが圧倒的に不利じゃん!

 私は魔法使いタイプだけど、空飛ぶ素早い魔物と1度も戦ったことない! 

 

 あれ? もしかしてこれ、久々のピンチ?

 

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