アルビノ少女の異世界旅行記 ~私の旅は平穏無事にといかない~   作:影薄燕

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第21話 旅行への道はまだ長い

 

 さわやかな朝。

 窓から入り込む暖かな太陽の光と、昨日少し奮発して買ったばかりのお布団の心地よさが何とも言えない。

 布団の中のぬくもりに再び身を委ねたい……

 

「ユキナお姉~さん! 朝ですよ~!」

 

「うみゅ……あと5分……」

 

「えー、今日は一緒にお出かけする約束だったよね? ……泣くよ?」

 

 リリィよ。そりゃ反則だ。

 幼女の涙と布団のぬくもり、天秤に掛けるまでもない。

 

 ただ……しんどいねん。

 

「あうううぅ。頭痛いぃいいい……」

 

 はい。絶賛二日酔いであります。

 未成年なのに昨日の夜、その場の勢いでお酒飲みました。

 

 

 

 Eランク昇格試験を合格し、マッドバッドを撃退してから3日が過ぎた。

 本当にもう、一言で表せない程いろいろあって……

 

 マッドバッドを倒してすぐ、意識があるギランさんの元へ。

 気を付けながら抱きかかえると、耳からだけじゃなく目からも血が出ていたもんだから、思わず「ギャアアアアア!?」と叫んで、驚いた拍子に頭を抱えていた手を離して地面にゴチンとしてしまった。

 ギランさんマジすみません。

 

 その後ギランさん、クラウドさん、ハルさんとそれぞれの懐にしまってあった回復薬を飲ませることに成功。

 

 3人が動けるようになっから急いで王都へ――と、思ったんだけど……

 マッドバッドとの戦いで想像以上に疲労の色が出たらしく、私ったら眠気とダルさでフラフラ状態。とてもじゃないけど走れなかった。

 魔力切れなのも原因だろうってさ。

 

 どうしようかと思案していたらギランさんが背中におぶってくれるというので、お言葉に甘えることにした。

 

 背中に担がれて移動している最中、眠ってしまう直前に思ったのは“父親の背中ってこんなんなのかなー?”というもの。

 それぐらいギランさんの背は暖かった。

 絶対に本人には内緒だけど。

 

 次に私が目を覚ましたのはギルドの休憩スペース。

 職員の人が毛布を掛けてくれていたというだけでもうれしいのに、隣を見ればスヤスヤと眠るリリィがいた。

 職員曰く、心配で私の目が覚めるまでいると聞かなかったんだって。

 天使かな?

 

 それから少ししてエミリーさんとカイルさんが来て簡単な説明だけしてくれたけど、もう遅いしこのまま泊っていったら?と聞かれてビックリ。

 気付かなかったけど、もう日が完全に落ちて辺りは暗くなっていた。

 どんだけ爆睡してたんだ私!?

 

 結局疲れが抜け切れていないのもあって、その日は泊り。

 夕食も食べずに2度目の睡眠へ。

 

 で、翌日。

 リリィの「ふわぁ。おはようユキナお姉さん♪」という言葉を聞いて覚醒。勢いよく飛び起きた。

 

 ……まさか初めての朝チュンの相手がリリィだなんて。

 

 カイルさんやリサさんに何と説明すれば……!

 とまあ、冗談はここまで。

 別に変なことしたわけちゃうし、そもそも異世界で朝チュンの意味分かる奴いねえだろということで普通に身だしなみを最低限整え、リリィと一緒に部屋を出ることにした。

 私のいた所が2階だったから1階に降りる形だ。

 

 まだ人が少ないギルド1階に到着した私たちは、私が目覚めるのを待っていたギランさん、クラウドさん、ハルさんの3人に揉みくちゃにされた。

 リリィまで巻き込んだのと、せっかく整えた髪をボサボサにされたので男2人に正拳突き! 2人とも膝をつきました。

 

 ハルさん? 女性だから問題ありません。

 だから隣で苦し気にしているクラウドさんを見て、口元引きつらなくても大丈夫ですよ。やってもデコピンぐらいだから。

 

 ギルドの奢りで朝食を頂いたら私の事情説明の時間。

 とは言うものの、前の日に3人がほとんど説明してくれていたんで数分で済んだ。本人への確認が目的のものだったし。

 

 そしてそして! お待ちかねの報酬タ~イム!

 

 1つ目は忘れちゃ困るぜEランクの昇格。

 これで本格的に金を稼げるし、魔物の討伐もし放題だからSPの補充に困らない。

 

 今回の一件で、SPも少し増えた。

 内約としては昇格試験を含めたFランクの依頼全部でようやく1SP。少なすぎて涙が出るぜ……!

 かわりにマッドバッドの討伐が4SPだった。ブラッディベアーの時よりも多いから、魔物の危険度がSPに影響するのは間違いない。

 

 もう1つはそのマッドバッド(+雑魚3匹)の買取とギルド側からの慰謝料的なもので、予想外の収入が得られたこと。

 マッドバッドはかなり危険とのことでブラッディベアー以上の値段で売れた。胴体以外ほとんどキレイなのも高評価。

 翼がレアなマントの素材に最適なんだとか。

 

 慰謝料は私を含めた4人に対して支払われる。

 ギルドからすると、あの森は定期的に見回って危険な魔物がいないことを確認し、その上で新人の昇格試験の場にも使っているのに今回の件。下手をしたら新人の私だけでなく一般冒険者のクラウド&ハルさんや、ベテランであるギランさんまで死んでしまった可能性があるのでケジメを付けなければならない。

 原因の調査のため、早急にベテラン冒険者を集めた調査隊を編成して原因究明に力を入れると説明されたけど……

 

 ブラッディベアーの件といい、本当に偶然か?

 考えすぎかもしれんが、変に人為的な悪意を感じるぞ?

 

 その辺を話したら、どうやら他の人たちも似たような結論になっていた。

 何者かの思惑が絡んでいるのではないかと……

 何かの目的で危険な魔物を持ち込んだのではないかと……

 

 まあ、そこはギルドの方にガンバレ! としか言えないわな。

 

 それより私にはもっと気になることがあったのだ。

 それは更新された冒険者身分証(ギルド・パス)にある。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

◦ユキナ=ナガセ(永瀬雪菜) ◦14歳

◦発行:レーヴァテイン王国  ◦Eランク冒険者

 

〔称号〕異世界転移者・神の加護を持つ者・永遠たる白の少女・幸運が仕事しない者

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 皆さん、お気づきだろうか?

 おかしな称号が増えていることに。

 

 

『〈称号:幸運が仕事しない者〉……【固有スキル:幸運(大)】があるはずなのに、幸運と同時になぜか不運にも見舞われてしまう。世界にすらその理由は分からない。本当に哀れで残念で謝ることしかできない。そういう星の下に生まれたと諦めてください』

 

 

 ヘルプの説明聞いた瞬間、床に冒険者身分証(ギルド・パス)を叩きつけた。

 足で蹴りつけようとしたらハルさんに羽交い絞めをされた。

 

 ハルさん曰く、「何があったか分からないけど、まるで親の仇を前にした人の表情だった」と語る。

 

 もう心の奥底で芽生えたドス黒い感情を当てる矛先が欲しかったので……お酒の力に頼ることにした。

 

 約束通りギランさんの奢りで、その日はクラウドさん・ハルさんも一緒に飲んで食って騒いで泣いて笑った。

 私は見た目も含めて未成年だけど、どうやらこの世界じゃギリでお酒を飲んでも罰則されない年齢だった。基本は自己責任。

 

 これでもかってぐらい飲んだ。果実酒とか意外といけた。おつまみ最高! イエーイ! オマエら乗ってるかーい!?

 そんなテンションでいたら最終的にどうなるか。

 それは今の私が答えになっている。

 

 

 

「私ったら、よく家に帰れたな……」

 

 途中から記憶が曖昧なんだけど?

 ズキズキする頭で考えても分からん。

 

「ユキナお姉さん、準備できた~?」

 

「おー。できたよ今すぐ行くー」

 

 ま、細かいことはいいか。

 

 今日は待ちに待った王都巡り。

 最終的にはこの国以外の国も全部回って美味しいものを食べたり、名所を見て回る壮大な野望。

 ある意味その第一歩だ。

 

 リリィに手を引かれながら、胸を膨らませドアを開く。

 天気は私の心を映したかのような快晴だった。

 




 ここまでが一章の前半となります。
 旅行が目的なのに全然旅立ってないことからも分かるとおり、この小説は特別勢いはありません。主人公である雪菜(アルビノで、コミュ障で、残念)が自分のペースで少しずつ出会いや経験、たまにバトルする物語です。
 後半ではようやく大きな事件や出会いがあるので物語も多少勢いづくでしょう。

 改稿版をここまで読んでくださってありがとうございます。

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 最近ちょいスランプ気味で……
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