アルビノ少女の異世界旅行記 ~私の旅は平穏無事にといかない~   作:影薄燕

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閑話 期待の新人

 

 オレはギラン。Cランクの冒険者だ。

 今年で年齢は40になる。

 

 オレの伸びしろは数年前に止まった。

 Cランクでも上の方の実力と言えば聞こえが良いが、ギリギリでBランクに届かなかったってだけだ。まだまだ現役ではあるが、やっぱし若い頃に比べると思い通りに体が動かないことが多くなってきた。Cランク冒険者になれたのも地道に時間を掛けて努力してきたからだが、ここらで打ち止めなのは自分で分かっている。

 

 ガキの頃は「Sランクになるんだ!」って夢見てたっけな。

 まあ実質ギルドの最高ランクだからな。

 Sランクは「化け物」「英雄」「ていうか、あのオッサン生身で弓矢を弾き返したんですけど!?」なんて呼ばれるような奴らだ。それにどいつもこいつもクセが強いからギルドでも行動を制限できないってんで、問題行動を起こさない限り半ば放置されている。

 

 そしてここ数十年は1番そのSランクが多いらしい。

 この国出身のSランク冒険者は2人。

 1人は王城で最低限の仕事をこなしながら趣味に没頭し、もう1人は大陸の外に足を運んで10年以上経過している戦闘狂って話だ。

 

 オレは1度だけSランクの戦いを見たことがあるが……半端じゃなかった。あれはもう蹂躙だ、

 

 とにかくCランクで打ち止めってんで逆に心に余裕ができたからか、最近じゃ新人冒険者におせっかいを焼いたり、ちょっとしたことがあれば飯を奢ったりするのが密かな楽しみとなった。もちろん老後のことも考えて、貯金はしている。

 

 仲間も今じゃ2人だけだ。しかも同じぐらいの年の野郎。

 若い頃にパーティーを組んでいた奴もいたが、途中で結婚や怪我を機に抜けたか、依頼の最中に死んじまったかで今どこで何しているのかを知っているのは半分。残りは完全に縁が切れて見当もつかねえ。

 ……寂しいもんだぜ。

 

 その仲間2人も今は別行動をしている。

 

 王都冒険者ギルド:ギルドマスターの護衛だ。

 

 あの人、人気だからなー。

 自分自身も強いからって下手すると1人で勝手に行っちまうから、周りの奴ら(ギルドの職員)が視察の話が出た途端に依頼を大至急で出すしな。

 

 オレも誘われたが今回は遠慮した。

 というのも、ちょっとした好奇心で王都でも有名な占い師に今後のことを占ってもらったんだが、その時言われたのが、

 

 

「しばらくは王都にいなさい。依頼も日帰りできるようなものにして。そうすれば近いうちにおもしろい新人冒険者と縁を結ぶことができるでしょう」

 

 

 てな、ことだった。

 

 おもしろい新人。

 どこまで当たるかは分からないが興味を持った。

 だからしばらくは王都にいるようにして、時間のほとんどをギルドの1階で過ごした。占いが外れたらそれまで。そんな軽い気持ちで。

 

 だが……いい意味で裏切ってくれたぜ。

 なんせオレの目の前には……

 

「もっと美味しい酒持ってこんかーい!」

 

「アハハハ! ユキナちゃん良い飲みっぷり~!」

 

「お酒初めてなんじゃ……大丈夫かな?」

 

 酒の入った器を片手に顔を赤らめて店員に催促する真っ白な嬢ちゃん――オレやクラウド・ハルの命の恩人であるユキナって名前の子が。

 

 肌まで真っ白だから赤くほてってるのがよく分かる。

 ありゃあ、完全に酔っぱらってるな。

 今日のこと、明日どのくらい覚えていられるか……

 それも含めて嬢ちゃんにはいい経験になるか。酒飲んで急に性格が変わるタイプじゃなきゃ問題ねえだろ。

 

 隣の2人も――いや、正確にはハルの奴か。アイツも出来上がってるな。

 けど仕方ねえ。Bランクの魔物に遭遇してまともにやり合うこともできず倒されたっていうのに、嬢ちゃんのおかげで助かったんだからな。

 落ち着いたからこそ、飲んで騒いで、自分の中にある恐怖心を少しでも消したいんだろう。それでいい。クラウドも何だかんだでいつもより飲んでいるからか、一見普通にしてるが口数が多い。

 

 

 

 最初に嬢ちゃんが冒険者ギルドに来た時はオレ以外の奴らも少しざわついていたのを覚えている。

 なんせ髪や眉だけじゃなく肌まで白く、赤い目をした人族なんて初めて見たからな。それも若い女の子だ。注目される。

 

 嬢ちゃんが冒険者登録をしようとした時は少し発破を掛けてみたが、見た目と違って中身は根性があったのに驚いたもんだ。

 その目を見れば本気と分かる。

 本当にどこから来たんだろうな?

 

 ギルド職員の命の恩人ってのも最初は分からなかったんだが……すぐに答えは出た。それも予想外の形で。

 

 ブラッディベアー。

 強さ的にはCランクだが、その危険度からBランクになっている魔物だ。オレも仲間と共に狩ったことがあるから間違いねえ。

 それが真っ二つの状態で嬢ちゃんの、おそらくは【アイテムボックス】から出てきたんだ。驚きなんてものじゃない。

 

 その後、本当に嬢ちゃんが1人で、しかも一撃で倒したことが分かり、ギルドにいた冒険者仲間はみんな興味を持った。

 オレもその1人だ。

 

 ありゃあ、高威力の【炎系魔法】によってなされた傷だ。ブラッディベアーを一撃ともなればスキルのレベルは最低でも4はあるはず。

 嬢ちゃんがユニークスキル持ちで、それの効果もあるってんなら違ってくるかもしれんが、必要以上に相手の手札を聞き出そうとする行為はギルドで禁止されている。だから、あくまでも予想するぐらいしかできない。

 ま、その予想を楽しむ奴もいるけどな。

 

 もしかすると、占い師の言っていた新人てのは嬢ちゃんかもしれねえと、オレは胸を期待で膨らませた。

 

 次に会ったのはその翌日。

 時々買う屋台の食い物を食べ始めた時、嬢ちゃんの後ろ姿が見えたんで声を掛けてみた。せっかくだから世間話でもしようと思ったんだ。

 

 ……まさか、オレのことハゲ扱いしていたとは。

 オレの頭はハゲじゃねえ。スキンヘッドだ。

 

 その辺りのことを会話の流れから説明しようとしたら、食いかけの食べ物を見てよだれが出そうになっている嬢ちゃん。

 食べかけだが~と事前に言って渡して――ちょい後悔した。

 

 

「アンタ、神様か!?」

 

 

 突然オレのこと神様扱いしてきたんだぞ!

 ビックリなんてもんじゃねえ!

 

 しまいにゃあ拝み始めるから、周りの奴らに注目された。

 やっとのことで嬢ちゃんを落ち着かせた時には変に体力を使っちまったからな。たまにはいいかと、その日は何もせずダラダラ過ごすことにした。

 

 それからの数日間、嬢ちゃんがEランクに上がるため努力している話を顔見知り連中から聞くことができた。

 エルフ、ドワーフ、獣人、魔族と依頼で出会い、疲れながらも学んでいっているらしい。……風に流されて空を漂ってたという噂は意味不明だったが。どういうことかさっぱり分からんぞ?

 

 何はともあれ元気ならそれでいい。

 新人の内は多少でも経験が無いとすぐに疲れが出るからな。1日おきに話題に上がるってことは、それだけ体力がある証だ。

 冒険者は体力のある身体が資本だからな。

 その辺は心配の必要はなさそうだぜ。

 

 そんな風に考えてたら、ちょうどいいタイミングで新人のランクアップ試験の監督役を募集しているのを発見。

 すでに募集していた2人も知り合いだし、タイミング的に嬢ちゃんの試験なのは間違いなさそうだと、最後の1人にオレを組み込んでもらった。

 

 たぶん大丈夫だとは思うが、あの嬢ちゃんはおもしろいからな。何か突拍子もない事態を巻き起こすかもしれん。

 そんな時にオレみたいなベテラン冒険者がいれば心配することなんざ1つもないってアピールにもなると思ってたんだ。ついでに嬢ちゃんの中のオレの評価も上げとこうとも考えた。……ハゲだったり神だったり安定しないしな。

 

 本当に軽い気持ちだったのに、命の危機を感じる程の事態が起きるなんて、この時のオレは思ってもみなかったんだ。

 

 

 

「まさかマッドバッドが出るなんて予想できねえよ」

 

 Bランクの魔物だぞ?

 それも、からめ手を使ったりするような魔物で、オレと相性は最悪に近いような魔物で、絶対にあんな場所にいないはずの魔物。

 

 複数の魔法使いで編成したチームでなけりゃ、普通の奴じゃ傷を負わせるのも難しいのがマッドバッドだ。

 オレ自身、超音波攻撃をモロに喰らって死にかけたからな。

 オレの持つ【スキル:気絶無効】があったから意識を失わずに済んだが、意思に反して体は動かねえ。耳がいかれちまったのが分かる。嬢ちゃんはまだ戦ってるんだ。助けるために早く動け! 死んでも嬢ちゃんは守れ!

 

 そんな風にしてどれくらい経ってからだ?

 突然抱きかかえられた。

 その嬢ちゃんに。

 

 懐にしまっていた回復薬を飲ませてもらって状況を確認すれば、何と嬢ちゃん1人でマッドバッドを倒していた。そう、たった1人で!

 

 ブラッディベアーとは訳が違う。アレは本能のままに突っ込んでくるタイプだからな。単純に強い奴なら対処できなくもない。

 だがマッドバッドは知能が高い魔物だ。

 オレたち冒険者のように考えて戦う。人の持つ知恵で並ばれちまうんだ。しかも遠距離攻撃が主体だから余計質が悪い。

 

 そんな魔物に勝った嬢ちゃんの実力は本物だ。

 本人から言わせたら、行き当たりばったりで粗削りにも程がある作戦がうまくハマったから勝てた。偶然持っていた新スキルが無かったら負けていた。今回の戦いでこれから伸ばすべきものが多く見つかって困っている、という話だ。

 

 だが、それを含めて嬢ちゃんの実力だと言ってやった。

 

 キョトンとした顔をしていたもんだから、どういうことか教えてやろうとも考えたが……やめた。

 よくよく考えてみれば、経験に基づく感覚的なモノだしな。

 こればかりは嬢ちゃんが自分で分かるようならなきゃいけねえ。

 

 これから伸びるだろう、おもしろい新人冒険者ユキナ。

 もしかすると、未来のSランクだったりしてな。

 ……まさか、な。

 

「お~い、ギランさ~ん? 飲んでるか~い?」

 

「嬢ちゃんよりは飲めるよ!」

 

 何年酒を飲んでると思ってる?

 今日初めて飲んだ嬢ちゃんには負けねえぜ!

 

 こうしてオレの奢りなのをいいことに嬢ちゃんとの酒飲み対決が始まった。それは夜遅くまで続き……

 

 

 ――そして、

 

 

「あ、頭痛えぇ……」

 

 勝負に負けた。散財だ。

 ダウンして吐きかけてる中、嬢ちゃんだけは上機嫌に手を振りながら帰っていった。

 

 あの嬢ちゃん、酒神の化身か何かか?

 




 雪菜は酒を飲んで酔っ払ってくると、☆を撮ったマ〇オみたく無敵状態になったり。ただし、酔いが覚めると一気に二日酔いに襲われる。酔ってる時の記憶はほとんど無い。
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