アルビノ少女の異世界旅行記 ~私の旅は平穏無事にといかない~   作:影薄燕

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第26話 テンプレすぎて逆に廃れた系の組織

 

「え~~~~~と……ドッキリ?」

 

「はい?」

 

 コテリ、と首を傾げる少女。

 変なとこでカワイイなぁもう。

 

 ――って違う!

 あ、ありのまま起こったことを確認すんぞ。

 私たちは謎の組織の幹部っぽい蛇のオッサンに連れてこられた牢に入ったら、先に入ってたのがこの国の王女様だった!

 何言ってんのか自分でも分からないし頭がどうかしそうだよ。

 コスプレとかそんなチャチなものじゃねえ、本物のオーラ纏ってやがる!

 

 以上、ジョ〇ョのネタ終わり。

 死ぬ前に1度は使ってみたかったんだよな。

 

(え~、マジでどうしよ? 予想外過ぎるよ)

 

 だって王女だよ? この国の王族だよ? 何でそんな「お忍びです♪」みたいな格好で、犯罪組織に捕らわれてるのさ? もしかしなくても誘拐?

 

「今の忘れて。――で、クラリス……さん? 様? 本当の本当に王女様? 随分と普通な感じの服装ですが……」

 

「いえ! これは……その、王都の民を密かに視察する際のモノです」

 

「視察?」

 

「話すと長くなるのですが……」

 

 それから王女の語った話を要約するとこういうことらしい。

 

 まず基本的な話として、現在の王族は6名。

 父親である王様、母親である王妃様、次期国王(予定)のお兄さん、来年他国に嫁ぐお姉さん、クラリス本人、10歳になる弟、この6人。

 

 クラリスは今年で14歳。

 そろそろ結婚するかどうかなど具体的な将来を決める時期が来た。

 本人としては自分が生まれ育った国が好きなので、王になる予定の兄の手伝いをしたいと願っている。

 

 ならばどんな手伝いをするべきか?

 悩んだ結果、最終的に普段接点の少ない国民と王族・貴族の間を取り持つ機関で腕を振るうことにした。

 元々人数が足りない機関だったのでちょうど良かったと。

 

 しかし、「あいや待たれよ!」と王様ストップ。

 

 父親である王様曰く、王女であるクラリスは民のことを真に理解できていると言えるのか? 民との架け橋になりたいのなら民のことをもっと知るべきだと課題(?)を言い渡されたそう。

 

「変装したとしても王族である以上1人にはできないと、2人の護衛と共に平民の方々が住まう街中へ足を踏み入れました」

 

 護衛2人は冒険者の格好をさせ、フランクな感じで接するようにさせた。そりゃ、普段通りの態度だったら速攻でバレるもんな。

 護衛役の人は何とも言えない気持ちだったろう。

 

 ちなみに、偽名として自分のことは『クティ』と呼ばせてたらしい。

 他国から来た商人の娘で、初めての王都に興奮しながら店で雇った冒険者と暇を見つけては歩き回っている、という設定。

 

「父の言った通りでした。他の方から伝え聞いただけなのと、実際に自分の目で見たものとでは感じることにも大きな違いがありました」

 

 屋台で串焼きを買って食べた時など驚きの連続だったと。頭の中でイメトレしていたのに、財布からお金を出す時にあたふたしてしまったのは今でも恥ずかしいらしく、夕食の席での報告会で兄が腹を抱えて笑いをこらえていたとか。

 

「他にもいろいろとありましたが、とても全部は話しきれませんわね」

 

 これまでの視察を思い出しているのか、さっきまでよりも明るい雰囲気になっていた。うん。いい傾向だ。こんな牢屋にいつまでもいたら気がめいるし楽しいことを考えなきゃ。

 

「今回は3度目の視察で、遠くから冒険者ギルドやそこで依頼を受ける冒険者の様子を見ることにしたのです」

 

「え? 王女様、お父さんに会ったの?」

 

「い、いえ……」

 

 本当ならギルドの中に入ってみたいけど、これといったギルドに対しての用事も無く、さらに言えば冒険者に成り済ましている護衛2人の正体を勘繰られるとややこしくなるので、泣く泣く諦めたもよう。

 

 しかし、問題は帰りに起こったようで……

 

「わたくしが視察に訪れていることは貴族の間でも秘密でした。その関係で平民の方が暮らしている所と貴族の方が暮らしている所の間辺りにある場所で、着替えをしてから王城に向かうようにしていました」

 

 貴族も千差万別。というかそれが普通。王女がお忍びすることに余り良い顔しない人もいるので、見られても問題ない細工をいくつも施したり、時間をずらしたりと対策は練っていたらしい。

 

「いつものようにワタクシと着替えの手伝いをしてくれる護衛の1人が別室に移動した時でした……突如襲撃されたのです」

 

 護衛以外にも周囲の安全を確認している人がいたはずなのに、それを掻い潜って窓に現れた不審者。

 

「一瞬の出来事でした。仮面の男が現れたと認識した時には、護衛が即座にやられてしまったのです。動揺しつつもドアに駆けだそうとしましたがあっけなく捕まり、意識を奪われて……このざまです」

 

 参ってしまいましたね、と悲痛さを感じる笑顔で答えるクラリス。

 てか、仮面の男って……

 

「それって、仲間内から“蛇様”って呼ばれていたの?」

 

「いいえ。わたくしを攫った者は“雷様”と呼ばれていました。わたくしの知っている通りの者なら、手も足も出ないはずです」

 

 “雷様”? 何その、おへそを取られそうな名前? もしかして蛇のオッサンが言っていた、もう1人の幹部のことか? 

 いやそもそもだけど――

 

「もしかして、この犯罪組織のこと知っていたりする?」

 

「それはもう、世界中で暗躍する大組織ですので。存在自体は何十年も前からあるようですが、ここ10年は特に活動的で各国を悩ましているんです。恐らく、国の重要人物たちとの繋がりができたことや複数の強者を組織に取り込んだことで、本格的に動き出したのではと考えられています」

 

「……国の重要人物との繋がり?」

 

「数年前、他国で未然に防ぐことが出来た事件がありました。調査の結果、組織の協力者に当時の国の重鎮が関わっていたと。目的はお金だったそうですが、押収した資料から察するに随分前から接触があったそうで……」

 

 なるほど。その時は各国が大慌てだったろうね。

 何せ、安全だと思っていた自分たちの懐に犯罪組織の手が回っている可能性が出てきたんだから。

 どんなに頑丈な金庫を用意しても、開けるための鍵を内部の人間が持ち出せたら簡単に開けられてしまうもんね。金庫の前に番犬置かなきゃ。

 

「強者っていうと、“蛇様”や“雷様”とか言われている連中?」

 

「はい。どちらも存在が知られている幹部で、厄介な人物です。幹部は顔の見えない仮面を付けており、それぞれの呼び名を表した模様がその仮面に付けられています。我々が“蛇の仮面”と呼ぶ人物は直接手を汚すことを嫌い、いつも裏方に回っています。地味な役目に思えるかもしれませんが、直接動く仲間のサポートを徹底して行うので、どうしても後手に回ってしまうのです」

 

 あの蛇のオッサン、そんな役目担ってたんだ。

 私が知っているのは魔法1つだけど他にも当然あるだろうし、裏でコソコソしているから鬱陶しいだろうな。

 

「わたくしを攫った“雷の仮面”は逆に表立って活動しているので、良く知られています。……知っているからと言って、対処が難しいのが問題なのですがね。組織の中で実行部隊を率いている実力者です」

 

「知っていても対処できない?」

 

「はい。これは幹部のほとんどがそうらしいのですが、それぞれの二つ名にも関係するユニークスキルが厄介なのです」

 

 ユニークスキルっていうと、私の【闇系魔法無効】や【防御力上昇(極大)】みたいのを幹部連中は所持しているのか。

 

「“雷の仮面”が持つのは【ユニークスキル:ストック】。本人も高位の【風系魔法】の使い手ですが、上位の雷魔法を得意としております。雷魔法は瞬間的な高速移動から強力な電撃による素早い制圧ができるモノがあり、【ストック】は短時間スキルや魔法の効果を溜めておくことが出来るのです。発動に時間が掛かる魔法もこのユニークスキルを使いこなせば、実質ノータイムで発動が可能となります」

 

「そりゃまた厄介な」

 

 ようはそれ遅延魔法ってやつじゃん。

 後手に回ったら一瞬で勝負がついてもおかしくない。

 

「ところで……結局私たちを攫って閉じ込めた犯罪組織って何なん? 一体何が目的で王女の誘拐なんか……」

 

「詳細はまだ謎が多くハッキリしていませんが、組織全体の目的は“とある存在の完全復活”だと判明しております」

 

「とある存在? 王女様、それって人なの?」

 

 私が聞く前、リリィの疑問に王女は答える。

 正直、テンプレすぎて予想の斜め上だった。

 

「かつて、この世界を混沌に陥れた謎多き人物……魔王です。彼らはその復活を目論む魔王教団『終末の闇』なのです」

 

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