アルビノ少女の異世界旅行記 ~私の旅は平穏無事にといかない~   作:影薄燕

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SS その頃の神界

 

 その世界は白かった。

 仄かに光って見える白の空間がどこまでも広がっていた。

 

 人によっては「何も無くてつまらない」「広すぎて落ち着かない」と言う者もいるだろう。逆に「神聖だ」「いつまでも居たい」という意見もあるだろう。

 

 しかし、永遠とも思えるような白の空間に本当に何も無いわけではない。

 そこ(・・)には人影と物があった。

 

 

 白い空間の良さを台無しにするものが……

 

 

「んん~~~、やっぱりブルーハワイは最高だNE。色も綺麗だし、完全な天然ものじゃないのが本当におしいYO」

 

 そこを見た者の大半は思うだろう。

 ――これでもかってぐらいアロハスタイルだな、と。

 

 何せ空間を無視した形でヤシの木が生え、砂浜と海があり、輝く太陽が頭上にあるのだから。

 そこにいる人物もそれなりに年を取っていると思われる容姿でありながら、衰えなど微塵も感じさせない格好だ。

 前がはだけたアロハシャツと海パン姿にサングラス。南国風のイスに背を預けながら、時折テーブルの上の飲み物に手を伸ばしている。

 

 周りの景色を知らなければ、バカンスを楽しむ初老の男性にしか見えないはずだ。狙いすぎの格好のせいで他の選択肢を探すなど不可能だろう。

 

 一体どこから持って来たのか、それとも最初からこの空間内にいるのか、ヤドカリが我が物顔でテーブルの上にまで登って、飲み物と一緒に置かれているこれまた南国風な料理を拝借していた。

 

 さすが雑食のヤドカリである。野菜や魚どころか肉類にまで手を(ハサミを)出しては口に運び、ソムリエのように味を評価している。

 ヤドカリのくせに。

 

 ずっと美味しいものばかり食べているせいで舌(?)が肥え、グルメになっているので料理の評価も毎回辛口だ。

 ヤドカリのくせに。

 

「……相変わらずキミは自由だね」

 

 そこに足音を立てながら現れたのは、永瀬雪菜を異世界に転移させた張本人。メガネを掛けた男性の神だった。

 

「およ? 久しぶりだNE。いつ以来だっけ?」

 

「キミが異世界の人間を地球に転生させると言い出した時以来だ。私も転移者という形で少女を異世界に送ったからね。せっかくだし、お互いの異世界転移者・異世界転生者の情報交換でもしようかと」

 

「それはいいじゃない! とりあえずこれでも食べなYO。ロコモコ。慣れると病みつきになっちゃうZE?」

 

 テーブルの上に置かれたロコモコの皿を掲げて、友人でもある神へ勧める。

 その際、ちょうどロコモコを狙っていたヤドカリが「あぁあああ!? 何をするだー!」と言わんばかりに、抗議のつもりなのかハサミを振り回す――が、当然のように無視されてしまった。

 所詮はヤドカリなので。

 

「悪いが好みではないんでね。遠慮しておく。地球の食べ物で私の好みに合うのはフレンチなどの洋食だからね」

 

「残念。それで、えーと、お互いの情報交換だったNE。ボクの方は順調。3年で記憶を取り戻してからは中々おもしろいことになっているYO。誰が転生するかは運次第だったけど、ありゃ当たりだ。定期的に観察しているけど、できるなら毎日だって覗き見たい程SA」

 

「……あまり感心しないな。具体的にどんな者を転生させたのか知らないが、前に聞いた限りでは特別な力はほぼ与えていないんだろう? それも本人の意思を無視する転生で。転生者にもプライベートがあるのだし、覗くにしたって頻度を考えろ。転生・転移が我々の都合だということを忘れていないか?」

 

「そんなことないよー。今も元気に成長中だZE?」

 

「どうだか」

 

「そんなことより、そっちは? どんな子なの?」

 

「キミの言葉を借りるわけじゃないが、当たりというやつだ。まだ少女だからね。私にできる範囲の特別な力は過分なほど与えたから、ちょっとやそっとじゃ危険な目に合わないはずだ。アレでどうにもならないなら誰だってどうすることもできん。時期的に転移させた国の王都についていてもおかしくないが、今はどこで何をしているのだろうね? 旅行がしたいと言っていたから、やはり冒険者になってお金を稼いでいるのか」

 

「え? もしかして転移させてから1度も確認していないNO?」

 

「当然だ。女性の私生活を覗き見るなどできるものか。まあ、全く知らないというのも問題だから、折を見て確認するつもりだが……人間の感覚でいったらまだまだ先の話になるな」

 

 ストーカーまがいの定期的に転生者の私生活を覗き見る神と、十分な力を与えたからと過度に干渉しない放任主義の神。

 一体どちらの方が質悪いのだろう? そんなことをヤドカリは思っていたが、ヤドカリ如きの考えなどさすがの神でも分からない。

 

「ところで話は変わるが、随分と家具の類が無造作に置かれているのだが……これはどうしたんだ?」

 

「ん~? 今度プライベートルームを新たに創ってみようと思ってNE。いろんな所から引っ張り出してきたんだYO。目ぼしいのはもう選んだあとだし、気に入ったのがあれば貰っていいYO。というか、片づけ代わりに貰って」

 

「……貰うにしても、なぜタンスばかりなんだ?」

 

「ボクの着替え入れるのに必要だから」

 

「キミの服装などアロハシャツと海パン以外、見た記憶が……あったか? 最後にまともな服装を見たのはいつだったか?」

 

 思い出せないほど、過去のことらしい。

 

「それにしたってタンスの種類が多すぎるだろう。デザインどころか時代すら違う物まであるぞ。それに置き方と言うものが――っ!!」

 

 

――ガンッ!!

 

 

「あれ? どしたの?」

 

「~~~!? ――! ――!」

 

「マジでどしたのSA? ねえ、ねえってば」

 

 声にならない悲鳴を上げる神と珍しく怪訝な表情になる神。

 

 この時、ヤドカリだけはしっかりと見ていた。

 複数のタンスが無造作に置かれているせいでメガネを掛けた神――その足の小指部分がタンスの角に直撃したところを!

 

(ま、まさか私がこんなベタなやらかしをするとは!? 普段だったら考えられないのに、なぜ? ぐっ、靴越しでも痛みが……!)

 

 まさか思ってもみないだろう。

 ちょうどこの時、自分が異世界に転移させた少女が溜まりに溜まった恨みから、自分に呪いの言葉を数分に渡って口にしていたなど。いくつもの偶然が重なり、本当に呪いとして自身の身に降りかかったなど。これからも幾度となくタンスの角に小指をぶつけるハメになるなど。

 




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