アルビノ少女の異世界旅行記 ~私の旅は平穏無事にといかない~   作:影薄燕

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第33話 Sランク

 

「へ? 宮廷魔法使いさん?」

 

「はい。ようやく自力で歩けるまでに回復したので会っていただきたいと」

 

 

 

 城生活も早いもので2日目。

 1日目は特に何も、な~~~んにもなく終わった。

 しいて言えばお風呂が信じられないぐらい広かったことと、メイドさんたちに体を隅々まで洗われて恥ずかしくて死にそうだったことぐらいだ。

 

 そんなこんなでの昼食後。

 調査報告なんかもちょい聞いたけど、半分以上何のことか分からなかった。

 分かったのは城の中の安全は保障されたらしいことだけ。

 

 そこでもう1つ話題に上がったのがクラリスの護衛の1人であり、“雷の仮面”に瞬殺されてしまった宮廷魔法使いさんだ。

 重体だったものの、エリザさんの処置のおかげで命を繋ぎ、昨日目を覚ましたと。で、例によって私にお礼を言いたいと。

 

「別にいいのに……」

 

「フランクな方ですよ? わたくしの魔法の先生でもあります」

 

 宮廷魔法使いってアレでしょ? 国に認められて城で働くエリート。

 それが一昨日のエリザさんと同じように私に感謝するのかよ……

 

 私が宮廷魔法使いさんの対応を考えていると、本人が着いたらしくドアがバーンッ!と開いた。何事!?

 

「クラちゃん! ユキナって人がいるのはここ!?」

 

 入ってきたのは水色の髪をした魔法使いらしい格好の女性だった。

 年齢は――たぶん20代だよな。思ってたより若い。

 ところでクラちゃんって、クラリスのこと?

 

「わ、私が雪菜ですけど……」

 

「――! アナタが……っ!」

 

 フラフラと、まだ危なっかしい足取りで近づく宮廷魔法使いさん。

 

「ほっんっとーーーに、ありがとう!!」

 

 そしていきなりの土下座!

 ちょっ、おでこ「ガンッ!」って音するぐらい勢いよく下げたんだけど!? やめて! アンタ病み上がりなんでしょ!

 

「ニコラ、ユキナが困ってますよ?」

 

「……これぐらいしないと私が納得できないんだよ。護衛で、先生なのに、クラちゃんのこと護れなかった、時間稼ぎすらできなかった」

 

 あー、この人もクラリスと特別仲良くて必要以上に責任感じているのか。状況的に仕方ないって言えればいいけど、何の慰めにもならんからな。ここはエリザさんの時と同じく素直に礼を受け取ろう。

 

「気持ちはよく分かりました。改めて、雪菜って言います」

 

「宮廷魔法使いニコラ=サザーランドよ。得意なのは【水系魔法】。クラちゃん――クラリス王女に魔法を教えているのも私。今回の件、心から感謝します。エリザも言ってたらしいけど、私にできることなら何でも言ってちょうだい」

 

 ほほう? 何でもと言ったな?

 

「なら……私に魔法のイロハを教えてください」

 

「魔法を?」

 

 前々から思ってたけど、この世界の魔法は【ヘルプ】の説明ほど簡単じゃない。口で説明してもらったからって、すぐに100%その通りに出来ないのと一緒だ。どんなもんでもそうだけど、結局は経験を積んで感覚でも覚えなきゃいけない。

 なら、そういったことを教えてくれる先生が必要だ。

 先日までは「でも魔法を教えてくれそうな人とか心当たりねぇー」と諦めていたが、宮廷魔法使いが教えてくれるならこれ以上はない。

 

「うーん……そっかー」

 

「え? もしかしてダメな感じですか?」

 

「いやいや、そうじゃなくって。私もエリザみたいに『くっ、殺せ!』って言わされると思っていたから、一応練習してきたんだけど……」

 

「あ、そこは解釈違いっす」

 

 あくまでもアレは女騎士がするから意味があるんだよ!

 

 

 

 無事に魔法の修行に付き合ってくれることをニコラさんが確約し、それで終わりかと思いきやもう1人会ってほしい人物がいるという。

 

「Sランク冒険者!?」

 

 それはこの城にいるトップクラスの実力者との顔見せだ。

 王国にいるとは聞いたことあったけど、まさかの城勤め!?

 

「Sランク冒険者って、世界に10人もいないあの?」

 

「元々その方は研究者気質だったのですが、Sランクになってやりたいことも粗方やり終わったので趣味の研究に没頭したいと。それを聞いた父と城で仕える者たちで話し合った結果、有事の際に動いてくれることを条件に研究室や一部の資金を提供して城に住まわせることにしたのです」

 

「……実力は確かなの?」

 

「それはもう。わたくしは直接見たことないのですが、騎士団の者たちから聞いたところ、撃退した魔物の方がかわいそうになってくるとか」

 

 魔物の方がかわいそうになってくるって……

 え? そんなんが城で研究者してんの? うそん。

 

「逆に心配になって来たんだけど」

 

 もしもの時にリリィ連れて逃げられるかな? マッドサイエンティストの臭いがプンプンしてくるんですけど。

 

「心配しないでください。幼い頃から何度も会っておりますが、少し変わっているだけで良い人ですよ? 先日の事件の際も研究を途中でやめて、魔王教団の者たちの居場所が分かり次第、真っ先に突入する役目を担って待機していたのですから」

 

 それなら安心か? ちょっと偏見を持つのはダメだな。

 

「今更だけど、魔王教団の幹部とSランクの人が戦ったらどっちが強いの?」

 

 あの蛇のオッサンを実際に近くで見た私の勘だけど、間違いなくAランクの冒険者クラス以上の強さはあるはず。

 問題はSランクと幹部連中とで実力差がどれくらいなのか。

 場合によってはこれから会うSランクの人に恩を売ることも考えている。何かあった時に保険があると無いとじゃ安心感が違う。

 

「基本はSランク冒険者の方が強いと思われます。あとは相性次第でしょうか? 魔王教団の幹部も全員が判明しているわけではないので……」

 

 そういや判明している幹部は一部だけだったな。

 ほとんどの物語でそうだけど、後半になるといきなり強い奴が現れることもあるだろうし、最低でも1人はSランクの冒険者と同じ強さの幹部が控えていると思った方がよさそう。

 

 幹部全員がユニークスキルを持っていると仮定すれば、さらに厄介だな。まあこの世界、1段強い人は大抵特殊なスキル持っているみたいだけど。

 

 そうそう、話は変わるけど昨日の夜になって自分のスキルや称号を確認したら、知らない内に2つも増えていたんだよね。

 

 まずはスキルから。何とユニークでした。

 

 

『〈ユニークスキル:ハラスメント・カース〉……対象に確率で地味に嫌な呪いを掛ける。雑念なく熱心に呪いを掛けようとすると成功率が上昇』

 

 

 ツッコミどころ多すぎて、逆にツッコみたくないな……

 【ハラスメント・カース】って、直訳したら“嫌がらせの呪い”だし。英語にすれば格好いいから許されるとでも思ってるのか?

 異世界言語を地球風に訳した結果なんだろうが釈然としねぇ……

 呪えたら儲けものぐらいで考えよう。

 

 お次は称号。これが1番謎だったりする。

 

 

『〈称号:聖女〉……才能があり、一切の雑念がない状態で神に自身の思いを伝えようとする女性に贈られる称号。光系魔法及び耐性スキル・防御スキル全般の熟練度に補正。神への思いを届けやすくする効果あり』

 

 

 私ったら聖女ってキャラじゃないですよイヤだー(棒)。

 ツッコみどころ多すぎて――以下略。

 

 呪いのスキルと【聖女】なんて称号が同時に出るとはこれ如何に?

 

 私は何も見なかった。見てないと言ったら見てない!

 厄介ごとが舞い込んできそうな臭いが半端ないんだって!

 

 

 閑話休題。

 

 

「……じゃ、会おうか。そのSランク冒険者に」

 

「はい。研究室はゴチャゴチャしてるのでそこだけ注意を」

 

「そういえば、一体何の研究しているの?」

 

「……血、です」

 

 あらやだ。会うの怖くなってきた。

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

「はーっ、お城の地下って雰囲気あるよなー」

 

 私、リリィ、クラリス、メイドのフィオラさん、護衛のニコラさんの5人は現在、件のSランク冒険者にして研究者でもある人の元へ向かっていた。

 場所はまさかの地下室。

 

 ニコラさんは万全の状態じゃないので休んで欲しかったけど、Sランク冒険者の人を良く知っているからと一緒に来た。

 魔王教団を探し回ってここにいないエリザさんの代わりも兼ねていると。

 

 珍しい地下室を見てる内に、研究室のある部屋の前に到達。

 この扉だけ他のデザイン違うな。周りと比べるとすごい浮いている。たぶん部屋の中にいるSランクの人が特注で作らせたんだろうけど……

 

「ユキナお姉さん。この赤黒いの……」

 

「リリィ、子供は見ちゃいけません」

 

 何でその扉に手の形した血の跡がついてんねん?

 

「ねえクラリス、帰っていい? フィオラさんも、Uターンしようぜ」

 

「だ、大丈夫……ですよ? たまたまでしょう。……たぶん」

 

「あの方は……本当にもう……」

 

 2人とも口元が引きつってるぞ。こうなったら仕方ない。護衛のニコラさんに期待の眼差しを向けてみる。ちらっ。

 

「ニコラさん、もしもの時は頼りにしています」

 

「私、何だかんだであの人苦手なんだよね……」

 

 良く知っているんとちゃうんかい! 知っていることと仲が良いことは別問題ってか!? 意味ねえ!

 

 結局、意を決したような表情のクラリスが扉をノックする。

 子供の頃からの知り合いじゃないの? 何でボス部屋に挑む直前風?

 

「ウェルナー様、クラリスです。入ってもよろしいでしょうか?」

 

 

――シ~~~ン……

 

 

「……返事がありませんね。今日の午後に来ることは使いの者を通して連絡していたのですが。徹夜明けで寝ているのでしょうか?」

 

 それから何度扉をノックして声を掛けても返事はない。鍵が掛かっているみたいで、こちらから扉を開くこともできず。

 う~ん、ラチが明かないな。しゃーね。せっかくここまできたのに何もせず帰るとか嫌だし。女は度胸だ。私が強制的に開けてやる。

 

「クラリスどいて。私が開ける」

 

「え? でも扉には鍵が――」

 

「問題ない。私にはクラリスを脱出させたアレがある……!」

 

 扉の取っ手に手を掛け、【アンロック】を発動。……地味に消費魔力が多いな。予想より頑丈な鍵が掛かっていたみたい。しかし今の私には無駄無駄~!

 

 ガチャッと音がしたので、さっそく扉を開ける。

 さあ、鬼が出るか蛇が出るか!?

 

「Sランク冒険者の人ってえのは、どこに――」

 

 

「フフフ、ああぁ成功だ。いい血だなぁ。魔王教団の奴らめ、クラリスくんに酷い目に合わせた分キッチリ仕返ししないとなぁ。この血を体内に流し込めば、とんでもない激痛と共に……ん? 誰だい?」

 

 

 白衣を着た縮れ毛な紫髪の男が、所々に血(?)を付けた状態で笑っていた。目の前の培養器っぽいものには得体の知れないR15風のものが……

 

「ほんぎゃああああああああああああああああああああああっ!! 本物のマッドサイエンティストだぁあああああああああああああああああああああああああ!?」

 

 ポリスメーーーン! ヤバい人がいますぅううううううううううう! 今すぐ捕まえてえええええええ! 誰かー! お助けぇえええええ!!

 




 熱心に、雑念無く、神様に祈って(呪って)ましたWWW
 実際に会ったことがあるので想いを届けやすかったり。
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