アルビノ少女の異世界旅行記 ~私の旅は平穏無事にといかない~   作:影薄燕

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第35話 バレた!?

 

 城生活も早いもので3日目。つまり最終日。

 夕方辺りにはカイルさん夫婦の元に帰れることに。

 

「ねえねえ、今日には帰ることできるんだよね?」

 

「予定ではね。念のためにしばらくは城の兵士が王都中を巡回するって話だし、ひとまず大きな問題は片付いたんだろうから」

 

「私ね! お父さんやお母さんにい~~~っぱいお城でのこと話すんだ。王様さんたちのことやー、Sランク冒険者さんのことー」

 

 おっふ。娘から目上どころじゃない人の話を延々と聞かされる両親とか……。クラリスに頼んで胃薬をいくつか譲ってもらおう。

 私みたいに内臓や精神の耐性スキルがあればいいんだけど……

 

「そういや、クラリスはどうしてるんだろ?」

 

 昨日、Sランク冒険者であるマッドサイエンティストことウェルナーさんと魔王の話題になってから、どうにも心ここにあらずな状態だったんだよな。

 しばらくしたら、やけに真剣な顔つきで――

 

 ――明日の昼食時、大事な話があります。

 

 と、言ってくるんだもん。

 

 一体何の話なのか聞いてもはぐらかされるし、憂鬱だ。

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 そして、やって来ました昼食タイム。

 ここ2日間、全然見かけなかったキングファミリー勢ぞろい。

 一目で分かったのは王様と第1王子様が寝不足なのか目の下にクマができていること、全員が私に興味深い視線を送っていることだ。

 

 やめて! こっち見ないで!

 

(これから大事な話が始まるのかな?)

 

 予定では今日までに裏切り者のこととか調べて家に帰すって話だったけど、まさか城生活延長か?

 先にこっちから聞いちゃう? 私、嫌いな食べ物は先に食べてしまう派だから。不安要素はさっさと消化しておきたい。

 

「あ、あの、大事な話って――」

 

「積もる話もあるが、今回の話は長引きそうなのでな。昼食を食べながらそれぞれの報告を聞きたい」

 

 王様の割り込み攻撃! けっこう強引に食い込んできましたね!

 普通なら失礼な奴ってなるんだろうけど、割り込んだ時の私を見た王様の目からは「その話は後にしてくれ」という無言のメッセージを秘めていた。

 

(何でだ? すぐに言えない? 今すぐはダメな理由? ……もしかして給仕や護衛の人たちに聞かせたくない内容?)

 

 当然のことだけど、食事の準備などをする給仕やメイド、護衛として壁側で控えている騎士とそれなりの人数がこの部屋にいる。

 初めて王族と顔合わせした時と同じぐらいの人数。その時に裏切り者の話を含めた重要な情報を喋っていたから、部屋の中にいる人たちは“絶対に情報を漏らさない信頼できる人”となる。今も同じはず。

 

(信頼している部下の前でも言えないってこと? つまり本番は食事が終わってからか。人払いしたうえでの大事な話、異世界に来てから急激に磨きが掛かっている私の勘が予想外の波乱が起きると言ってる……)

 

 マジめんどくせーと、心の中で愚痴っていたらいつの間にか昼食がスタート。

 はぁ~魚介系の料理美味ぇ~。

 

(そういえば……)

 

 前に見た大陸の地図だと、この国は完全に大陸中央にあるから海の幸なんて新鮮なものは食べれそうにないな、と思っていた。せっかくだから最初の会話の糸口探しもかねて話を振ってみると、答えてくれたのはクラリスのお姉さんである第1王女様。

 今度隣国に嫁ぐという話は初日に聞いたけど、その国――アリステル共和国は海流の関係から海で取れるものはほとんど揃う国で、レーヴァテイン王国を含む3つの隣接する国々に海産物を届けることで利益を上げているとか。

 

 ちなみに、アリステル共和国と隣接する残り2つの国は、旅行で回る予定の国の中でも興味があるものだ。

 

 1つ目は魔法使いたちが建国したエンディミオン。

 魔法に関することではこの世界でもっとも進んでいて、1年に何度かある論文発表会は他の国からも魔法の研究者が集まり、議論や野次が飛び交う。ついでに攻撃魔法もいっぱい飛び交う(!?)。

 魔法学園なんてものもあるそうだ。王都にあるような教育機関ではなく、魔法の才能が高い子供たちのみが通っている学園で、戦争も無くなったここ100年では他国からの留学生も受け入れているらしい。

 

 2つ目はこの世界に実在する神たちを熱心に信仰してきた人たちが、長い時間を掛けて自然と集まってできたトリストエリア聖国。

 元々首都がある土地はこの世界で最も高い山があるだけで見どころもなかったそうだが、その山のてっぺんで祈りを捧げれば神に届くみたいなジンクスができたら人が集まった。で、神に祈りを捧げる熱心な信者がずっといるもんだから、「もう村作っちまおうぜ」となり、村が。人数が増えてきたら「村じゃ収まりきれねえよ。街作ろ街」となって、街が。最終的に元々その土地を管理していた国が戦争で無くなったのをいいことに「ドサクサに紛れてオレらの国にしてしまおうぜ!」となってできたのが今や世界中の信者が集まるようになった聖国というわけ。

 

(せっかくだから、3つの国の内から最初の旅行先を決めるか)

 

 まだ先のこととはいえ、最初に訪れる予定の国を決めておくのは悪いことじゃない。う~ん……どこにしようかな?

 

「さて、食事も少し進んだところで本題に入ろう」

 

 おっと、ついに王様からの報告来たか。

 

「結論から言えば、裏切り者は分からなかったが最低限の安全は確保された。よってユキナ殿とリリィ殿の両名は本日をもって自宅に帰っても問題ないと判断した。……城での生活は緊張したろう。予定通り夕刻には家に着けるよう馬車を手配する。定期的に冒険者に扮した騎士を派遣して、身の回りにおかしな所がないかの確認もさせよう」

 

「何から何まで……ありがとうございます」

 

「お世話になりましたー!」

 

 あー良かった。ようやく帰れるんだ。

 カイルさん・リサさん夫婦だけじゃなく、ギルドの知り合いにも心配させないように明日は顔を見せなきゃな。

 

「しかし、裏切り者が分からなかったのは残念ですね。クラリスも王都の視察とかしばらくできないんじゃ……」

 

「はい。最低限の条件として“雷の仮面”が他国で出没したといった情報が出ない限り、気軽に出歩くこともできません」

 

 酷く悲しそうなクラリス。だけど大丈夫。

 

「安心しろって。さすがに毎日は無理だけど、城への通行が許可されたら遊びに来るから。リリィもクラリスに会いたいよね?」

 

「うん! またいっぱいお話ししよ」

 

「ユキナ……リリィ様……ありがとうございます」

 

 悲しそうな表情から一転、花が咲いたような笑顔になったクラリス。

 私としても魔王教団の連中による脅威が取り除かれていないと、とてもじゃないけど王都を離れて旅行を楽しむことできないしな。

 やっぱ旅行は自分が楽しめないと。

 

 そこからは、またもや私にはチンプンカンプンな報告だった。

 やれ王都中の裏路地のどこどこに痕跡があったとか、どこどこを強制捜査したけど直接繋がるものは何も見つからなかったとか。

 どうも魔王教団の奴ら、そこら中にダミー情報を置いて調査隊の目を逃れているみたいで尻尾を掴ませないでいるようだ。

 その努力を別のことに使えばいいのに……

 

「さて……ここからが別の意味で重要な話となる」

 

 王様のさっきまでとは違う、重みのある言葉で部屋の空気が変わる。眼光も鋭くなる。しかも目線の先にいたのは――私。

 

 Oh……。なんてこった。外れてほしかった予想が当たっちまった。

 そうか。これが肉食動物のターゲットにされた草食動物の気持ちか……

 

 落ち着け~。落ち着くんだ私。こういう時は素数を数えて――私、素数が何なのか知らねえや。とにかく落ち着け! 今この場面を乗り切れ!

 

「王として命じる。今、この食事の席に座っている者以外は部屋の外に出るよう。許可するまで部屋に入ることも禁ずる。よいな?」

 

「「「「「な!?」」」」」

 

 王様の発言に部屋中の人が驚く。

 そりゃそうだ。給仕どころか護衛の人まで追い出すんだから。

 

「王よ。それは余りにも危険でございます。この場で何かあれば国の一大事。どうかお考えを改めて――」

 

「私は、王として、命じたのだ。異論は認めん」

 

「………………分かりました。扉で待機します」

 

 非常にしぶしぶといった具合で引き下がる騎士。

 エリザさんも何か言いたそうにしていたが、クラリスと視線を合わせただけで何かを感じ取ったのか、他の人たちと一緒に扉の外に出た。

 

 最後の1人が出ていき、重そうな両開きの扉が音を立てて閉まる。

 これで部屋にいるのは王族、私、リリィだけとなった。

 一体、何が始まるんだ……!?

 

「ふう……んんっん! ……すまないな。今から話すことになる内容は一部例外を除いて、王族以外には秘密となっておるのだ」

 

「えーと……本当ならばもっと早くにユキナにも話したかったのですが、内容が内容ですから。申し訳ありません」

 

 ――? 王様とクラリスが謝罪してきた時、おかしな間があったような? それに微かに違和感があるような……

 

「あーいえ、そんな畏まらないでください。王族なら秘密の1つや2つあるのは理解しているんで。クラリスも謝らなくていいよ」

 

 むしろ部外者である私たち2人が聞いてもいいのかが気になる。リリィなんてまだ10歳だから、ふとした拍子に喋ってしまわないか心配だ。

 

 

 

 だけど、そんな心配なんてする必要なかった。

 

 

 

「……ねえ、ユキナお姉さん」

 

「どうしたリリィ?」

 

「王様や王女様、さっきから何を喋っているの? 急に聞いたことがない言葉で喋っていたけど、ユキナお姉さんは分かるの?」

 

「………………はい?」

 

 リリィったら急にどうしたの? 普通に喋っていたじゃん?

 

「やはり、か」

 

 何が「やはり、か」なのさ王様? おーい、他の王族も何で神妙な顔つきで頷いてんの。誰か説明してよ。

 

「ユキナ、単刀直入に聞きます」

 

 はいはい、何でしょかクラリスや。

 

「アナタは……異世界の、日本という国から来た方ですね?」

 

「………………何言ってるかさっぱり分からないです」

 




 学園編もすぐ書いてみたいですが、物語の進行上しばらく後ですね。
 信者たちの国……最近”聖女”なんて称号を手に入れた方がいましたが……
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