アルビノ少女の異世界旅行記 ~私の旅は平穏無事にといかない~   作:影薄燕

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SS エルフのレーナ

 

 エルフ。

 長い耳以外は人族とほとんど変わらない見た目でありながら、繁殖力が弱く、かわりに非常に長い寿命を持つ亜人種の一種。

 

 彼らは強化系や戦技などの身体能力に関わるスキルを苦手とするが、魔法系スキルは非常に優秀であり、寿命が長いこともあって熟練の腕を持つ者が多いことで知られている。

 

 そんなエルフは容姿が優れていることでも有名だ。

 しかも人生の大半が若い姿で寿命が近くなってから老けていく。

 そのため大昔はエルフにとって暗黒時代とも呼べる時期があったそうだが、長い年月の中でその風潮は無くなっていった。

 

 しかし、そんな時代があったためか元々繁殖力が弱いエルフの数は目に見えて減り、公式で認められている種族の中では異世界で最も少ない種族となる。

 

 最近では人との間に生まれるハーフや、長い年月の中でたまたま会った夫や妻とは別の異性のエルフと意気投合して勢いから子供を作ったケースまである。

 意見が分かれるところだが、徐々にエルフの人口も増えてきているのだ。

 

 では種族全体で比べると少数のエルフは、故郷以外だとどんな生活をするか?

 最も多いのは昔から続く知識を使い生活に生かすことである。

 

 

 

 

――ゴリゴリ ――ゴリゴリ

 

 

 その部屋は薬草や薬が放つ独特の臭いを放っていた。

 換気がしっかりされているため部屋に充満することはないが、慣れていなければ気になってしまうだろう。

 逆に慣れれば、元々が不快な類の臭いではないので気にすることもなくなる。

 

 薬師であるレーナはいつものようにゆっくりのんびりと、しかし効果が出るよう効率のいい方法で乾燥させた薬草をすり潰していた。

 

 ……胸が大きすぎるため、手元が本当に見えているのか怪しいが。

 

「う~~~ん……これが終わったら一旦休憩にしようかな~?」

 

 確か数日前に王都を旅立った友人が差し入れにくれたクッキーがあったはずだと、それが入っている戸棚を見ながら考えるレーナ。

 

 故郷を旅立ちここに居つくようになってから数年は経つが、友人にも恵まれ、仕事も上手くいき、来てよかったと改めて思った。

 

「……エルフの人生は長いからな~。私もユキナみたいにどこかの国に旅行に行って楽しむのもありかな~? 行くんだったらどこにしよ~? ユキナが向かった聖国? それとも魔法関係でエンディミオン? いっそ、別の大陸も手だな~」

 

 1度雪菜が戻ってきたら旅行の感想を聞くのもいいかもしれない。そう今後のことを考えていると、いつの間にか作業は終わっていた。

 レーナぐらいになれば、薬草のすり潰しなど無意識でも完璧にできる。故郷には寝ながらやったエルフもいると聞く。

 

「それじゃ休憩~。お茶は何にしようか――ん~?」

 

 その時、外から自分の住まいに近づいてくる物音が聞こえた。

 エルフの特徴である長い耳をピクピクさせればドタドタとこちらに近づく音が……非常に良く知る足音だ。

 

 席を立ち、ドアの前までやって来たレーナ。

 それからすぐにドアを開けて入って来たのは――

 

「レ゛ェ~~ナぁ~ち゛ゃ~~~ん」

 

「………………ユフィ?」

 

 王都の冒険者ギルドのギルドマスター、ユフィであった。

 ……ガチ泣きの。

 

 純粋なエルフとハーフエルフの違いこそあるが、エルフなのには違いないので2人とも王都で知り合ってから、そこそこ仲はいい。

 ユフィとレーナ。どちらも20代に見えることから基本名前は呼び捨てである。

 実を言えば、エルフの寿命は長いのでハッキリと年齢差が分かる者以外、同い年の者同士の接し方をするのが暗黙の了解になっている。

 

 ……エルフにとって100歳と200歳の年齢違いに大した差は無いも同然なのだ。

 多種族が驚くエルフあるあるの1つである。

 

 さて、そんな20代の見た目な2人(どちらも年齢不詳)は片方は泣きながら豊満すぎる胸元に顔を埋没させ、もう片方は何とか落着かせようとあやしながらお茶を出す準備をした。

 

 それから数分後。

 出したお茶をまるでビールジョッキのごとく、一気にグビグビと飲み干すユフィに呆れながら話を聞くことにしたレーナ。

 口から出かかった「そのお茶、良い薬草も入れた高めのものだから味わってほしかったのに~」という言葉は飲み込む。

 

「え~~~と……どしたの?」

 

「ぐすっ。ウチの冒険者のアホどもがねー、いっっっくら私が注意してもお酒に釣られて守秘義務を喋りそうになっててねー? 毎日毎日、毎夜毎夜、バーとか居酒屋を回ってはバカたれどもを注意してんのよ゛ぉおおおおお~~~! 口酸っぱくして“ダメだ”って言ってんのに~~~! 『おだてられて、つい……』じゃないんだからねー! しかも、しかも! こうなった元凶はもう王都にいないし、だけど結果的に助かったのも事実だから変なこと言えないし、今日になってもう胃が痛いのよ~~~! お酒のせいもあるけど、飲まないとやってらんないのよ~~~! お願いレーナちゃん!! 個人的に持っている高ランク素材渡すから、効果の高い胃薬づぐっでぇぇええええええええ~~~~~!!」

 

「あ、はい。分かりました。とりあえず、一旦落ち着こ?」

 

 いつもの口調を忘れて素で答えるレーナ。

 口調を伸ばさず喋るとはいつぶりだったか?

 

 おかわりを渡して(今度はゆっくり飲むよう言った)事情を聞いてみると、詳しいことは言えないがここ最近起こった“守秘義務”に関係したことで雪菜が関わっているらしく、王族からの命令もあって事情を知る冒険者に口を閉ざすよう通告したのだが……お酒を飲んだらまあ口が軽くなる連中ばかりで嫌気が差したそう。

 

「精霊から危なそうって報告ある度に全速力で駆けつけてを繰り返して、昨日はついにブチ切れてBランクの子を殴っちゃった……」

 

「ふ~ん。けど冒険者って髙ランクなら口は堅いイメージだけど~?」

 

「普通はねー。これが雪菜ちゃんの命に関わるとかの重要なことなら口も堅くなるけど、どうでもよさそうに見える情報はどうしても……実際、本当にダメなことだけは言ってないの。時間稼ぎにしかならなくても“雪菜ちゃんが関わった”事実さえ口をつぐんでくれればいいのに」

 

 レーナは知ることのできない情報だが、ユフィは王国では数少ないあの夜の出来事――雪菜ちゃん、うっかり魔王教団幹部その他爆☆殺事件――の真実を教えられた1人なのだ。

 知った時は思わず王様に「ウソでしょおい」と聞き返してしまったほど。

 ギルマスと言えど不敬なのだが、王様も気持ちは痛いほど分かるので不問に。

 

 そして話し合いの結果、ひとまずあの時集められた冒険者たちの中に雪菜はいなかったことにするのが決定する。いつかはバレるかもしれないが、雪菜個人が魔王教団に狙われることがないよう情報を規制しようと。

 

 ――あの場にはユキナ=ナガセなんて冒険者はいなかった。

 

 ただそれだけで良いのに……

 

「ユキナちゃんのイスから転げ落ちた時の声がおもしろすぎたとか、そのあとのヘンテコなパントマイムが受けたとか、変顔連発したとか印象に残ったことばっか滑らせそうになってええええええええ! あの場にいなかったことにしろって言ってるでしょおおおおおおお! 具体的にどんな集まりだったとか依頼主は誰とかは絶対に言わないくせして、ユキナちゃんのおもしろ話は語りたくなるってなんなのもーーー! そんなおもしろい話“どこで”! “いつ”! 起きたのか感づかれたらどうすんのおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

 再び泣き崩れてしまったユフィ。

 レーナはレーナで、詳細は不明だけど聞いちゃまずい情報を聞いてしまったのではと心配半分、どれだけ雪菜の奇行がおもしろかったのかと興味半分になってしまう。

 そうとうおもしろく見えたに違いない。

 お酒の席で話したくなるのだろう。

 

(それはそれとして、この子どうしようかな~?)

 

 ギルドマスターの威厳など微塵も感じさせないほど泣いている目の前の女性に、どのような反応を示すのか考えてみて……

 

「え~っと~、クッキーあるけど食べる~?」

 

「……たべりゅ」

 

 餌付けで涙が引っ込むユフィ。

 なんてチョロいのだろうか!

 

 

 

 その後、2人でお茶を飲み、美味しいクッキーを食べながら最近のことを話していたのだが、クッキーを作って持って来たのが雪菜だと知った途端、ユフィの表情が何とも言えないものに変わったのは別の話。

 

 

 




 あの夜の雪菜は、爆発音でおもしろい声を上げながら転げ落ち、【ヘルプ】からもたらされた情報を上手く整理できずあたふたし、さらに【ヘルプ】から聞き出した詳細でアンニュイな表情となってました(笑)。


~あとがき劇場~

ユフィ(ノД`)・゜・。「レ゛ェ~~ナぁ~ち゛ゃ~~~ん」
 ↓
ユフィ( ;∀;)「……たべりゅ」
 ↓
ユフィ(*´▽`*)「ふわぁ美味しいぃぃぃ~~~♪ こういうの食べると幸せになるよねー。こんな美味しいクッキーどこで買ったの?」

レーナ( 一∀一)「ユキナの手作りだよ~」

ユフィ(´・ω・)「――――――」
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