アルビノ少女の異世界旅行記 ~私の旅は平穏無事にといかない~   作:影薄燕

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第5話 設定は適当でも意外となんとかなるもん

 

「へえ~、じゃあユキナお姉さんって遠い国から来たんだ」

 

「まあ、突然ではあったけどね。」

 

 現在私は偶然助けた家族3人と、村までの道のりを歩いていた。

 

 道中、妙に懐いたリリィと話をしている――というか、させられてる。

 さすが子供。こっちの気も知らずグイグイ聞いてくるわ。

 

 堪忍してえな、リリィちゃん。

 私ったら君ぐらいの年の子とまともに話をするなんて初めてだから、見た目以上に疲れてるのよ。正直なところ今すぐベッドで寝たい。

 

 さすがに異世界から神様に選ばれて今日、転移されたんだ! なんて言っても、話がややこしくなるから適当な設定でしのいでいる。

 ちょっと怪しまれたけど、喰い気味に押し通した。

 何事も押し通した者勝ちだと少し賢くなった。

 頭の中オーバーヒート寸前だけどな! コミュ症気味な人間が初対面の人でも納得するウソを速攻考えるとか難易度高すぎぃ!

 

 よこしまな心を持った人が純粋な子供の前に、なすすべもなく精神的な敗北をするしかない時の気持ちがちょっと分かったよ。

 

 ……アレ? そうなると私ってば、よこしまな心を持った人間ってことに……? いや違う! 私はただ子供との会話が慣れてないだけだ。

 話を打ち切る勇気がないヘタレじゃない!

 

「……お姉さん?」

 

「へ? ああ、何でもないよ。何でも」

 

 いけね。ちょいトリップしてた。ごめんな、リリィ。

 

「あ、ほら! あれが私たちの泊まっている村だよ!」

 

「このあとはオレの友人の家に行きます、友人には私たちから説明をしますので、ユキナさんはお金の心配をすることはありませんよ。リリィも気に入っていますし、ゆっくりしてください」

 

 日が傾き始めた頃ようやく第一の村に到着。

 

 ……思ったよりでかい村だな。それにキレイ。魔物対策なのか、頑丈そうな囲いがあるし見張りもいる。2階建ての建物もいくつか。

 もしかして、この国って当たりの部類か? 国の名前知らんけど。

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 夜。私に休息の時は無い。

 

ガハハハッ! そうかそうか! それは災難だったな! オレの親友を助けてくれたんだ。聞きたいことがあれば遠慮なく聞くがいいさ!」

 

「ど、どうもっす」

 

 声でけーよ、この筋肉ムキムキのオッサン!

 すぐ隣にいる私の耳がダメージ受けてんぞ!

 

 数刻前、ついに村へ入ることができた私。

 事情説明で地味に時間取られた。やっぱりあのブラッディベアーがこの付近に現れたのは大問題だったらしく、人があちこち行き来している。

 

 【アイテムボックス】から死骸を見せて時間短縮してもこれだ。もう役目は果たしたと混乱の中そそくさ移動。リリィたちが泊っているという家へお邪魔した。

 

 そんで出迎えてくれたのがテッドとかいうオッサン。

 筋肉量ヤベーっすわ。あれ地球だったら世界狙えるぞ。ただ無駄にあるだけのボディービルダーと違って、闘うための筋肉って感じだもん。

 

 リリィすごいよね。あの筋肉の塊みたいな人に「テッドおじさーん!」ってタックルするように飛びつけるんだから。

 

 最初は私に驚いていたテッドさん。でもカイルさん&リサさん夫妻から事情を聞いたら、どこぞの「心の友よ!」って言うガキ大将みたいな馴れ馴れしさになった。友人の命の恩人とはいえ、女の子に対して馴れ馴れしすぎだと思うけどな!

 

 しかし、ちょうどいい機会だと基本的な情報を教えてもらうことに。

 

 まず、私がいるのはレーヴァテイン王国の王都の近くにあるエクル村。近くと言っても王都から馬車で2日掛かるらしいけど。

 

 レーヴァテイン王国はアホみたいにでかい大陸、その丁度中心にある国らしく、他の5つの国全部と隣接しているとのこと。

 その隣接する5つの国と交易も盛んで、王族も人格者ばかりだから大陸で1番栄えていると言っていい国なんだと。

 マジで当たりの部類じゃん。私ってばラッキー♪

 

 話を続けると、リリィたち家族は王都に住んでいることが判明。

 そういや、泊ってるって話だもんね。自分の家ちゃうか。

 

 テッドさんが近々結婚するという衝撃的事実に驚くこととなったけど、その後の話し合いでしばらくはリリィの家に厄介になることが決定。

 

 申し訳なさがあったけど、私ってば本当にこの世界のこと何も知らないから、金だけポンと渡されても途方に暮れそうなんだよね。

 

 不幸中の幸いと言うべきか、ブラッディベアー丸々1頭分の素材があるから、それを売って金にすることはできる。

 衣食住の代金はそこから差し引いてもらおう。

 

 予定としては冒険者登録をギルドで行って、身分証を発行。冒険者としての実績を上げて、1人でも生きられるぐらいになる。

 そして折を見て、旅行開始! 観光名所が私を待っている!

 ここまでが大まかな流れかな?

 

 レーヴァテイン王国では護衛付きの馬車が王都と村々を行き来しているらしく(村の様子と道に魔物がいないかの確認を兼ねている。あとは商人の守護と案内)、次の王都行きの馬車は明後日に村へ来るということで、私とリリィたちはそれに乗ることになった。

 

 なんにせよ、今日はイベントありすぎて疲れた。

 話し足りないリリィには悪いけど、もう寝させてもらう。

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 早いもので2日後。

 ついにやってきましたバス停! じゃなかった馬車停!

 馬車は結構大きいし、他の団体さんの姿もある。

 

 昨日は村中をリリィに案内してもらった。

 すごいよね、この村。ラノベに出て来るような村と雲泥の差だわ。

 

 まず肥料の概念があるらしく、作物の育ちがいい。着ている服だって、日本と比べたらダメだけど清潔感がある。しかも簡単な文字の読み書き計算も親から教えてもらえる。

 さすがに本は高いらしく、木の板に専用のナイフで文字を書いていた。大事な情報なんかを書いて、村長の家で保管しているんだと。

 

 …………うん。昨日来た時点で何となく分かっていたけど、この国すごい発展している。知識チートの入り込む余地ないがな。

 マヨネーズ? 普通にありましたが?

 

 村でこれだもん。王都とか行くの逆に怖いぞ。

 おいおい神様、この世界って剣と魔法のファンタジーちゃうんかい。王都とやらでSF要素見かけたら毎日呪いの言葉をプレゼントしてやる。

 

 おっかしーな? 私って確か世界中旅行して観光名所や美味しいもん巡りするためにこの世界に来たっていうのに、どんどん不安が……

 ま、いっか。気にしてもどうにもなんねーし。

 

「ユキナお姉さん! ユキナお姉さん! すごいでしょ、この馬車! 普通の馬車よりすごい所がいーっぱいなんだよ!」

 

「ホント、スゴイナー。トリアエズ、オチツコ?」

 

 リリィったら、見た目通りの子供らしさでこの馬車のすごさを説明してくれてんよ。頼んでないのにわざわざありがとね。

 

 でもなリリィ? さっきから私と君、手繋いでいるんだよ? リリィが興奮して腕を大きく動かすたびに私の腕もブンブン言っとるんだ。

 そろそろマジやめて。筋が地味に痛くなってる。

 

「本当に申し訳ないユキナさん……。村の人たちも悪気は無いのですが、昨日は不快でしたでしょう。他の方に代わって謝罪します」

 

「あー、いーっすよカイルさん。慣れてますから」

 

 実を言うと、昨日はリリィに村を案内してもらった。

 

 やっぱ建物の雰囲気は中世のヨーロッパみたいだけど、素人目でも高い建築技術で建てられているのが分かる。

 中世のヨーロッパなんざイメージでしか知らないけど。

 

 1番驚いたのが共同のシャワールームがある建物があったことだ! 魔道具(?)で出来ているらしく、温かいお湯が出る仕様。

 初日は疲れて爆睡してたから知らなかったけど、ちゃんと男女別で村の人ならリーズナブルな料金で使えるとのこと。外部の人――つまり私とかは割増料金だったけど、いい加減体の汚れを落としたいんでリサさんに立て替えてもらった。

 

 日本人としては風呂に入りたいところなんだけど、さすがに個人の風呂ともなると金持ちしか持ってないらしい。

 

 ただし、ここで1つ問題が発覚。

 恥ずかしいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!!

 

 ヤベーよ。裸見られるのマジでヤベーよ。今思い出しただけでも茹でダコになっちまう! 同性の2人に見られてこれなんだから、万が一にでも男に見られたらブラッディベアーぶっ殺した魔法を脊髄反射レベルで発動しそう。

 ラブコメの裸見られちゃう系ヒロイン、よく主人公のこと殺さないよな……

 

 そんなこんなで村の隅から隅まで案内してもらい、時々説明なんかをリリィに聞いたりしたわけだけど……

 やっぱ私の容姿って、異世界でも目立つんだよね……

 

 出会う人みんな私に注目するんだもん。気分は動物園のパンダ。

 ぶしつけに見てきたり、ヒソヒソ話する質の悪い輩なんかはリリィが怒ったりしたけど、逆に悪いなーって思う。

 

「……本当にすまない」

 

 心底申し訳なさそうな表情のカイルさん。

 この人、最初から私のこと変な風に見ないし、マジもんの善人だわ。いい人でも初っ端は大抵驚かれる容姿なんだけどね。

 

「あなた? 馬車の手続き終わったわよ」

 

「ああ、ありがとうリサ」

 

 おっと、リサさんも戻って来た。

 そろそろ馬車旅の時間だな。日本じゃバスや電車には乗っても、馬車に乗る機会なんてまず無いからなー。地味に楽しみだ。

 

「ユキナお姉さん! 早速行こうよ!」

 

「ほぐっ!? ……ウン。ソウダネー」

 

 リリィよ。待ちきれないのは分かるけどさ、2度目だけど私ら手繋いでんだよ? 急に変な向きに走り出されると関節に鈍い痛みが走るんだわ。

 おっかしーなー? 私ってば【防御力上昇(極大)】のスキルあるはずなのに、今日はやけに痛みを感じるぞ? もしかして関節技系は別だったりする?

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 馬車にはサスペンションが絶対に必要だと、この2日で感じた。

 

 馬車での旅が楽しみだと言った奴出てこい! ケツの痛みこそ回避できたけど乗り物酔いが酷すぎんだよ! 馬車旅が半日過ぎた辺りでリバースするハメになったわ! 馬車の中という狭い空間の中で珍獣見る目で見られたり、優しそうな婆ちゃんがめっちゃ話しかけてきたり、護衛の冒険者がナンパしてきたりとイベント多すぎだっつーの!

 

 もう一回言うぞ! 馬車の旅って興味あるわ~楽しみだわ~って言った奴出てこい! ……私のことだよ、こんちくしょおおおおおおおおっ!!

 

 ちなみにエチケット袋は常備されてた。

 乙女としての最後の一線だけは何とか死守できました。

 

 

『まもなくレーヴァテイン王国・王都でございます。お忘れ物の無いようご注意ください。本日はご利用ありがとうございました』

 

 

 電車か!? と思いたくなるようなアナウンスが聞こえる。これも魔道具だってんだから、ホンマ魔改造馬車だな。

 

「あ! ユキナお姉さん、王都が見えてきたよ! あそこが私たちの住んでいる所なんだ! ここからだと大きいな~」

 

「おー。予想以上にでかいなー。高い場所にある1番大きなのが話に聞いてた王城か。いいね~。これぞ異世界って感じだ……」

 

「? いせかい……?」

 

「気にしないでいいよ」

 

 馬車の窓から少しだけ顔を出せば、巨大な壁と門に囲まれた王都が見えてくる。そして、どこぞのテーマパークのような城の姿も。

 

「思う存分、異世界を満喫してやるぞ」

 

 そのためには馬車酔いを克服するのが先決だけどな。

 

 




 ようやく王都に到着。
 雪菜は馬車の旅で2回、エチケット袋のお世話に。
 ナンパした人も幻滅の残念さ。
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