アルビノ少女の異世界旅行記 ~私の旅は平穏無事にといかない~   作:影薄燕

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第2章:トリストエリア聖国
第46話 胃袋掴めばこっちのもの


 

 拝啓、リリィ。

 

 リリィは元気にしている? カイルさんやリサさんの言うこと、ちゃんと聞いている? 風邪ひかないように身体には気を付けてる?

 私? 私はから元気さ! え? 元気の意味が違う? 細かいことはいいんだよ。どっちも何やかんやで元気なのが重要なんだから。

 さて、私がトリストエリア聖国に来てからそこそこ経ちました。

 こっちは1年を通して暖かいので寒さとは無縁です。

 一応季節で言えば冬に突入したから、丁度いい気温で過ごせています。

 

 

「国民の皆さん、よくぞ集まってくれました! これより聖女様のお披露目となります! 盛大な拍手と共に出迎えてください!」

 

 

――ワァアアアアアアアアアアアアアア!!

 

 

 ………………訂正。

 今だけは夏かと思うぐらい暑いっす。

 んんっ! 話を戻して。

 こっちでは暖かい気候の影響で南国風の美味しい果物の栽培が盛んらしく、私もお店を巡っては新たな味との出会いを求めています。

 アイテムボックスにかなりの数を買い込んではしまったので、王国に帰ったらリリィやみんなにも食べさせることができるよ。

 私の一押しは甘い果物をワイルドに潰して飲み物にしたモノ! 100%フルーツジュースはキンキンに冷やすともう最高!

 屋台によって取り扱っている果物や味が変わったりするから、フルーツジュースを片手に聖国を見て回るのが日課になっている。

 

 

「ユキナ様。紅茶は1度お下げしますね。戻って参りましたら、ヴィオレセンという村でのみ栽培されている茶葉を使った紅茶をお入れします」

 

「ありがと“ステラ”。けど、やっぱ緊張するな」

 

「……ユキナ様! 国民の皆様のことは野菜だと思えばいいのです! そうすれば自然と笑顔になるでしょう! 楽しみですね。ここ十数年、どうにも聖女の称号を持つものがいなかった所に現れたユキナ様。これもきっと神の――」

 

「オチツケッテ」

 

 

 ………………2度目の訂正。

 日課になっていた(・・)だ。

 ここ数日、まともに外も出歩けねえ……

 ねえ、リリィ? ちょっと聞いてい~い?

 私が何したっていうのさ? こっちに来てから普通に観光していたはずなのに、あれよあれよという間に気付けばこんな状況。

 外への出口が太陽の光で輝いているのに、地獄の門に見えるのは私だけ? ローブと杖がいつもより重く感じるのも気のせい? 周りの神官たちが期待の目を向けているのは幻覚だよね?

 

 

 ああぁ、そしてついに……外へ出た。

 

 照りつける太陽。

 

 大きな広場にいる、何千人いるかも分からん国民たち。

 

 白亜の神殿――その上部から姿を現した、笑顔だけど腐った魚の目をしているだろう私こと、永瀬雪菜・14歳(たぶん15歳くらい)。

 

「このお方こそ! ついに現れました、教会が正式に“聖女”と認めたお方!! その名も――ユキナ様ぁあああああああああああああ!!」

 

 

「「「「「ワァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」」」」」

 

 

 教皇さんの宣言で沸き立つ国民たち。

 

 後ろで眩しそうに私を見るステラ。

 

 千人越えの注目の的になって、心が死んでいく私。

 

 

「…………どうしてこうなった?」

 

 

 おい、大雑把な距離で100メートル以上離れている奴ら。オマエら絶対私の顔見えていないだろ? 広場の1番端っこにいる人たちなんて、位置や角度から考えると私の全体像すら見えていないのだっているだろ? なのに何で「お美しい……」とか「神々しいお姿です」とか言ってんの? スキルの効果でちょこっとだけ聞こえてくるけど、端っこの人たち【スキル:遠見】を全員が持ってんじゃないなら何で断言できんの?

 

「いや、本当にどうしてこうなったのさ?」

 

 原因は分かっているんだ。

 

 隣にいる、いい年した教皇の見事なまでの土下座&懇願に負けたこと。

 何よりも後ろにいるあの子――年下で妙に私に懐く金髪碧眼の少女、ステラと出会ったことが全ての始まりだったと。

 

 思い出すのは、聖国に入国する少し前の出来事だった。

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

――ガタゴト ――ガタゴト

 

 

 景色が後ろに下がる。

 のどかな草原。踏み固められた道。漂う雲。

 その全てが後ろに流れていく。

 

「ユキナちゃーん。探知で近くに魔物は引っ掛かってるかー?」

 

 やや下側(・・・・)から声を掛けられる。

 この依頼を一緒に受けた冒険者の1人だ。

 

「ん~……問題ありませーん。周囲に魔物は無し。遠くに小型の魔物の反応はありますが、こっちに気付いた様子もありませーん」

 

「よーし、見晴らしも時間もいいから、ここいらで休憩するよう旦那に言うわ。ユキナちゃんは引き続き無理の無い範囲で警戒を頼む」

 

「分かりましたー」

 

 やや下で聞こえていた足音が遠ざかる。

 今回の依頼を出した商人の旦那さんと一部の従業員に休憩を提案するため、小走りで相談に向かったんだろ。

 

「ふあ~~~ぁ……アタッ」

 

 ゴンッと頭を少し打つ。

 私が乗っている馬車が小石にでも乗り上げたかな。頭に衝撃が来て、眠気が覚めてしまった。

 まあ、どのみち昼飯の準備するから起きるけどね。

 

「ベストポジションにいると、眠気がすごいなー……」

 

 現在私がいるのは馬車の中――ではなく、その上だったりする。

 馬車の屋根部分の形によっては座りにくかったりするんだけど、晴れの日の馬車移動は大体この位置に陣取っている。

 

 もちろん仕事はしているよ?

 【探知】で周りに危険な魔物がいないか定期的に確認しているし、少し遠くにいるこちらに気付いた小型の魔物は魔法による遠距離攻撃で対処している。

 王都を出てから何日も移動をしているけど、大抵の場合私が先に対処しちゃうんで護衛仲間の冒険者たちは本当にすぐ近くを目視で確認するか、商人たちや私の様子を聞くぐらいしか仕事がない。

 

 え? 襲撃イベントとか無いのかって?

 残念ながら、魔物でも盗賊でも滅多に無いんだなこれが。

 

 商人や定期馬車の移動に使われる道ってのは、移動に支障が出ないよう定期的に巡回と管理が行われているんだよ……国によって。

 言わば、ちょっとした国の事業になるわけだ。道ができて物流が活発になれば、それだけ国が豊かになる。他国と貿易を行っているなら尚更。

 

 そんな所で金目の物欲しさに商人などを襲ったら?

 間接的に国が敵になります。はい人生終了。

 

 魔物はそんなことお構いなしに襲う可能性があるけど、それだって低確率だしほとんど問題にならない。

 

 小型の魔物は自分の縄張りを持つことは、ほとんど無いに等しい。縄張りを持つのは大型の危険な魔物ばかりだ。

 なので、大型の魔物は縄張りもクソもないような整備された道など興味がない。縄張りの移動が起こるのはその範囲で食べることができる生物や植物が極端に減った時。そういう場合は移動のために整備された道で出会う可能性もある。ただし、そんな事態になる時は大体前触れのようなものがあるから国から注意喚起が為され、すぐに調査が入る。

 

 結果、危険な魔物に遭遇することは運が悪くなければ無いと言っていい。

 そして小型の魔物であれば護衛たちで対処ができる。

 

 もちろん例外はあるけど……冒険者なら対処するのが仕事だ。

 以前私が倒した凶悪な魔物だって、無理矢理住処から連れ出されたのがエンカウントの原因だし。そう何度もあってたまるか。

 

 てなわけで、王都を出てから何度目かになる食事休憩。

 私の担当は――なぜか料理人っす。

 

 

 

「かぁーうんめー! ユキナちゃんがこの依頼一緒に受けてくれてよかったぜ! 冒険者にとっちゃ、美味いメシが食えるってだけでやる気でるからな!」

 

「そうだな。個人的に持ち寄った食材だけではなく、商人から提供されたものも、ユキナさんが大量に持っていたものもありますからな。昔の冒険者はマズい携帯食ばかり食べていたそうだから不憫に思えてくる」

 

「国が豊かになって、ボクたち冒険者たちの懐も温かくなった証拠ですよ。……あの、すみません。スープのおかわりを……」

 

「てか、マジで美味しいなこれ」

 

「ごめんね。初日から料理担当にしちゃって……」

 

「いえいえ、こっちも手間賃は貰っていますし、私の好きで馬車の上にいさせてもらっていますから、これぐらいはさせてください」

 

 

――作戦名“胃袋掴めばこっちのもの”!

 

 

 【スキル:鉄人料理人】の効果をフル活用して、謙遜しながらもちゃっかり料理を作ってあげる。そして気が付いた時には奴らは料理の虜! 

 多少のことでは私に目くじらを立てることもない。

 

 大して親しくない人たちと一緒に依頼を受ける時は、この作戦が思いのほか効く。王国にいた半年の間に覚えたことだ。

 

 単純なスキル以外にも家にいる時、リリィの満足した笑顔を見るために料理本まで買い、レパートリーを増やし、腕を磨いた。

 もうスキル頼りのエセ料理人ではないわ!

 異世界の食材を知り尽くした私に死角など無い!

 

 ただし、美味しいものばかり食べてリリィの舌が少々肥えてしまったのは誤算だ。10歳で味の分かるグルメさんに変身。

 おかげでリサさんが大変そうだったな。ちょびっとだけ恨めしそうに私を見る目が忘れられません。本当にごめんリサさん! 許して!

 

 




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