アルビノ少女の異世界旅行記 ~私の旅は平穏無事にといかない~   作:影薄燕

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第48話 生物学的にそれでいいのか?

 

 その後、昼食休憩を終えて再出発。

 馬車の上で今後の予定を整理する。

 

 このまま順調に進めば今日の夜にはレーヴァテイン王国最後の村で宿泊となる。その村はトリストエリア聖国の国境に1番近い村でもあるので、王国の人だけでなく聖国の人も同じぐらい滞在しているそうだ。

 翌日の朝には村を出て、お昼過ぎに国境へ。夕方には聖国側の村について寝泊まりし、8日かけて王都の聖国バージョン、聖都に着く流れとなる。

 

「そういやユキナちゃんって、聖国は初めてだっけ?」

 

「そうですね。一応成り立ちなんかは聞いていますけど、実際に訪れるのは今回が初めてってことになります。あ、果物が美味しいんですよね?」

 

 聖国での楽しみの1つだ。

 

「おうよ。気候の関係で果物なんかが育ちやすいからな。今はまだ少し肌寒いぐらいだが、聖国に入ると一気に暖かくなるぞ。ユキナちゃんはそのローブ以外にも服は持っているか?」

 

「もちろんっす。このローブを手に入れる前に付けていた冒険者用の装備もありますし、事前に聖国のことは調べていましたから普段着用の夏服も買ってあります。もちろん冬服も」

 

 日本にいた頃じゃ容姿のコンプレックスが多少なりあったから、オシャレになんて興味の欠片も無かった。

 だけど、クラリスから「勿体ない」と毎回言われましてね……

 相変わらず似合う服は少ないけど、何とか取り揃えたのだ。

 

「それなら安心だな。……ねえ、聖国に着いたら一緒に買い物でもしない? そして、ゆくゆくは――」

 

「“――うちのパーティーにどう?”……ですか?」

 

「アハハハ……ダメ、かな? 正直男だけのパーティーだし、紅一点がいてくれると嬉しいんだよな」

 

「いつまでも男同士の友情を育んでください」

 

「遠回しなお断りをありがとう」

 

 BL展開だけは気を付けてね!

 

 しかし、冒険者のソロ活動ってやってみて分かったけど、ふとした瞬間に寂しくなるんだよな。

 ……やっぱり、王国でたくさんの人と触れ合って、私の中の何か(・・)が変わってきてるのかもしれない。

 でも複数人で普通の冒険者業するのも何か違うような?

 

 う~~~ん……いくら考えても分かんねえな。

 

(あ、そだ。そろそろ【探知】で周辺確認しよ)

 

 さあ魔物よ、どこに隠れても無駄だぜ――

 

 

「………………あ」

 

 

 見つけた。進路方向に複数いる。

 しかも、これって……

 

「どうしたユキナちゃん?」

 

 さっきまで話をしていた冒険者が、雰囲気の変わった私に聞いてくる。

 

「……【探知】に魔物が引っ掛かりました」

 

 そう言った瞬間、男性冒険者は指を口に当てて『ピュー!』と吹く。

 これは事前に決めていたことで“緊急。止まれ”という合図だ。馬車が停車して他の人も集まる。

 

「……どこだ?」

 

「【探知】で確認できるギリギリ。進路方向約1キロ先。確認できているだけで7体の中型魔物が道を塞ぐようにしている。それに……」

 

「それに?」

 

「すぐ近くに馬車と人の反応がある。たぶん戦闘中」

 

 【探知】の使い方にも最初の頃よりずっと慣れたから、気になった場所をズーム機能みたいにして細かく確認できるまでになった。

 それで魔物と人の動きを見ると微妙に動いているのが分かる。

 十中八九襲われて戦闘に突入したんだろう。

 

 それから商人も含んで10秒以内の話し合いに。

 

 結果――

 

「行ってきます」

 

「もしもの時はプランBで」

 

 私と斥候役の人が先行して状況確認をすることに。

 

 これで到着した時に戦闘が終わっているなら、確認だけ。戦闘中で、加勢を求められてどうにかできそうなら加勢。もしも加勢してもどうにもできないようなイレギュラーなら……状況次第としか言えないけど、引き返して護衛依頼を出した商人の安全を最優先する。

 

 一部の人間は「薄情じゃないか」などと言うかも知れないけど、依頼主を優先すんのが依頼を受けた冒険者の務めだ。

 その場の判断ミスで全員を危険に晒すことだけは絶対にあってはならない。一時の感情を優先するなら尚更。

 

 私なんか最初からチート貰っているから、余程のことがない限り早々危険な目に合わないし、Bランクの魔物までならどうにでもなる。

 だけど、全ての冒険者が私に付いていけるほど強いわけでもない。

 

 上から目線みたいな言い方になっちゃうけど、他の冒険者と一緒に行動する時に必要なことの1つに“自分と相手の強さの可能な限り正確な把握”が上げられる。そして今回一緒に依頼を受けたこの人たちは、腕こそ経つけど複数体の魔物を圧倒できる程でもない。

 もし私が勝手に無茶な行動をしたせいで、自分なら大丈夫だと思ったせいで、着いていけなくなった相手が重傷を負ったら……後悔するどころじゃない。下手をしなくても冒険者としての今後にも影響する。

 

 簡単に言えば“自分の意地を押し通したいなら、他人に迷惑掛けるな。押し通すなら強くなれ”と、そういうこと。

 

 私は基本自分の意地を押し通したい。助けられる可能性があるなら助けたい。背を向けたくない。だから、どこまでも強くなり続ける。

 強くなれば、それだけ選択肢が広がるから。

 

 ……こうして改めて思うと、冒険者として活動してきたからか私も随分プライドが高くなったな。半分戦闘民族っぽい思考になったとも言うけど。

 先輩の女性冒険者が姉御肌系多めなのも納得だわ。

 自然と精神面で鍛えられるんだな冒険者業って。

 

 さて、誰だか知らないけど持ってくれよ?

 無茶しすぎない程度に無茶してでも助けるからさ。

 

 で、駆けることしばらく――

 

「間に合った!」

 

 斥候の人に合わせて走ったから少し遅れたけど、まだ誰も死んでいない。

 

 馬車の方は無傷。半透明の障壁みたいのが張られていた。魔物も攻撃したりしているけど、辛うじて持ちこたえている。

 戦闘をしているのは5人だ。移動しながら【探知】で確認したから知っているけど、魔物は1体が死亡で残り6体。冒険者は死人こそ出ていないけど疲弊気味。加勢しないとヤバそう。

 

 そしてお相手の魔物は、

 

「ブウウウウウウウウウウウウウウウ!!」

 

「ブモオオオオオオオオオッ!!」

 

 ファンタジーでお馴染み、体長2~3メートルの巨体で厚い脂肪と筋肉の鎧を身に纏った二足歩行の豚……オークである。

 

 ゴブリンと同じく醜い姿をしているけどコイツら、家畜の豚よりも肉が美味しいんだ。魔物だから入ってくるのはちゃんとした店でもないと不定期だけど、高級豚肉って感じで長年愛されております。

 

 ……悔しいけど美味しかった。

 

 自分でも買ってトンカツにしたよ。せっかくだからと思ってカツ丼にしてみたよ。涙出るくらい美味かったよ。

 

 さて、そんなオーク。ゴブリンなんかに比べればずっと強いけど、基本が物理で殴るかたまたま手に入れた武器で攻撃するかなんで、落ち着いて対処すれば普通に倒せる。スキルもそれなりに持っている護衛依頼を受けるような冒険者なら尚更。

 

 だけど今回はちょい運が悪かったらしい。

 

「どうしてオーク相手に疲弊しているんだアイツら?」

 

 一緒に来た斥候役の疑問は最も。

 私は到着してすぐ気付いたから、【ヘルプ】に確認を取った。

 

「奥の方に亜種がいるんですよ。二回り強い個体が」

 

 他のオークの影に隠れて見えづらいけど、明らかに強そうな個体がいる。

 ただし、ツッコミどころの塊みたいなふざけた存在だけど。

 

 

『〈オックスオーク〉……オークの亜種。突然変異で偶然生まれた個体であり、牛のような角を持ち、脂肪よりも筋肉の方が発達した強靱な体が特徴。時間を掛けて手にした武器を戦槌にする特殊能力を持つ。肉は豚と言っていいのか、牛と言っていいのか非常に判断に迷う味と触感である』

 

 

「豚なのか牛なのかハッキリせいや!!」

 

 




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