アルビノ少女の異世界旅行記 ~私の旅は平穏無事にといかない~   作:影薄燕

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第49話 チャーシューになれ!

 

「ギュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!」

 

 私のツッコミが聞こえたのか、雄叫びを上げる牛豚野郎。

 声は牛っぽいですね! 一応は豚のカテゴリーなのに!

 

 ――っち。さっさと加勢するか。幸いにも私のツッコミは戦っていた人たちにも聞こえたみたいで、一瞬だけ希望に満ちた顔を見せた。

 

「すまん! 冒険者だろうか!? 加勢してくれ!」

 

「頼む! もう戦線を維持できそうにないんだ!」

 

「イエッサー」

 

 その言葉を待ってました。

 

 【アイテムボックス】からマイ武器、“炎獄のハルバード”を出す。

 私の武器が火を噴くぜ! 目標確認! 急接近カウントダウン3! 魔力チャージ完了! 刃の赤熱化を確認! レディ……ゴーーー!

 

 

――ダッッ! ――ザンッ!

 

 

「ブゥ? ブ、ブヒィイイイイイイイイイイ!?」

 

 まずは、今まさにフラフラの人へ棍棒を降ろそうとしたオークの腕を一瞬で距離を詰めて切り飛ばす。腕がいきなり無くなって間抜け面さらしながら絶叫をあげるオークその1。隙だらけの首目掛けてハルバードを横薙ぎに振れば、僅かに肉が焼けるような音と共にポーンッとコミカルな音が聞こえそうなくらいあっけなく胴体と頭がお別れする。

 

 ふう。それにしても私もハルバードの使い方が上手くなったもんだ。手に入れてしばらくは、大きく振ろうものなら体のバランス崩したからな。

 今じゃそこそこ使えるようになったから、その内に戦技系のスキルも覚えられそう。マジで半年間、素人なりにがんばったな私。

 

(あと5体)

 

「ギユゥウウウウウウウウウウウウウウウウッ!!」

 

 部下? を殺されてお怒り気味のオックスオーク。身の丈ほどの金属質な戦槌を構えて向かってくる。……意外と早いな。豚のクセして。あれか? 牛の要素の関係で直線的な突進だけ俊敏なのか? どうでもいいか。

 

 比較的近くにいた4体のオークも私に狙いを定めてきたので――あえて前へと躍り出る。

 ちょっと危険だけど、まだ周りに人がいたからね。これからやることを考えれば近くに人がいない方がやりやすい。

 

「ギュモオオオオオオオオ!」

 

「「「「ブモォ!」」」」

 

 オックスオークが戦槌を振り下ろし、4体のオークがそれぞれ攻撃を放ってくる。棍棒2体、骨の槍1体、丸太1体。

 ……丸太の奴は吸血鬼とでも戦うつもりなのか?

 

 まあ、それはそれとして、

 

(【ヘルプ】。安全地帯への経路数秒分)

 

 とびっきりズルイ戦い方を見せてやる。

 

 

『〈安全地帯〉……すぐに右斜め後ろに3歩分。2秒後に左斜め前5歩分』

 

 

 頭に響いた声に従いすぐ行動。

 

 まずは右斜め後ろに3歩分下がる。

 すると、オーク共の攻撃はそこだけ(・・・・)来なかった。必然として。

 

「「「「「――ッモ!?」」」」」

 

 おーおー驚いてますなー。

 実際に攻撃を見て分かったけど、コイツら連携攻撃の練習絶対にしているわ。偶然で片付けるにはタイミングがかなり良かったもん。

 

(1……2……今!)

 

 驚きながらも攻撃を続行するオーク共。

 だが当然、その攻撃はまた空振りに終わる。

 

「「「「「――ッ!? ――ッッッ!?」」」」」

 

 混乱しているな、おもしろいくらい。

 

 1度連中の包囲網の外側(・・)に出て回避した女が、今度は内側(・・)に入って自分たちの連携攻撃を避けたんだから当たり前か。

 

 私が半年の間で身に付けた【ヘルプ】の新しい使い方。

 元々は“雷の仮面”が使うだろうノータイムの【風系魔法】に対抗するため、冗談抜きに死に物狂いで身に付けた戦法。

 

 

 ――ヘルプ式未来予測回避。

 

 

 【ヘルプ】は自分の質問に基本何でも答えてくれるチートスキルだ。

 普段はネットで調べればすぐ分かるぐらいのことにしか使わないようにしているけど、緊急時となれば別。

 もっと戦闘中に使えないかと頭を悩ませ――閃いた。

 

 

 ――あれ? もしかして、少しだけなら未来の行動分かるんじゃね?

 

 

 検証の結果、数秒以内に起こる2手の行動だけなら疑似的な未来予測が可能と判明。

 数分後の行動とか、数秒以内でも3手以上先の行動となると、【ヘルプ】による音声がバグでも起こしたかのようにメチャクチャになる。

 どうやら本当の意味での未来予測はできないし、不確定要素が多くなるとスキルとしての効果を十全に発揮できないようだ。

 

 でも、それで十分だった。

 

 【ヘルプ】に質問してから行動に移すまでをスキルの効果で実践できる。

 これにより、戦略の幅が大きく広がった。まさに私にしかできない戦法。身に付けるまでに何度魔物からの攻撃を喰らい続けたことか……

 

 

 話を戻して、周りのオーク共5体の攻撃を余裕で躱した私。

 ここまで混乱していると相手は冷静さを失う訳で、

 

「『サンド・ストーム』」

 

 さらに追い打ちで混乱してもらおう。

 

「ギュ、ギュウウウウウウ~~~!?」

 

「「「「ブヒィイイイイイイン!?」」」」

 

 突如巻き上がる局所的砂嵐。

 「本日の天気は晴れのち砂嵐です♪」ってお天気のお姉さんが言ったら耳を疑うけど、魔法がある世界なら別におかしくない。

 魔法系スキルを使えばできないこともないのは私が証明している。

 

 ちなみに、この『サンド・ストーム』は【風系魔法】と【土系魔法】の複合魔法だったりする。

 上級者向けだけど、宮廷魔法使いであるニコラさんから丁寧に教えてもらったことで身に着いた。複合魔法ってきちんと5:5の割合で2つの魔法系スキルを合わせないとすぐ失敗するんで、最初は大変だったんだよなぁ。なっつかし~。

 

 『サンド・ストーム』は直径10メートル以上の砂嵐を創り出す魔法だ。正確には“砂を多分に含んだ竜巻”を発生させる魔法となる。

 つまり台風の目のごとく中心部は安全地帯になっている。

 はい。私のいる所です。1人だけ安全圏です。

 

「とうっ!」

 

 遥か高くにジャンプ。すかさず魔法発動。

 

「『フレイム・ランス』×6」

 

 私の周囲に生み出された高温の炎の槍。その数6本。

 同時に『サンド・ストーム』解除。オークの姿を視認。

 

「チャーシューと化せ! 発射!」

 

 

――ドジュウウウウウウウウッ!!

 

 

 射出された6本の『フレイム・ランス』は寸分たがわずオーク共の頭部に命中。何が起こったのか考える暇もなく奴らは絶命した。

 香ばしい臭いが鼻を突き抜ける。焼豚の完成だ。

 

 ただし……1匹を除いて。

 

「ギュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!」

 

 驚いたことにオックスオークだけは生きていた。

 

 自慢の牛角は折れたり溶けたりしてるけど、致命傷になっていない。

 【ヘルプ】の説明で分かってはいたけど、想像以上の頑丈さだ。

 

(仕方ない。さっさと終わらせるために後回しにしていたスキルを取るか。……必要SPは2SPね。安い買い物だな)

 

 パパっと取得。今じゃ手で操作しなくても、自分の意思でスキルの取得ができるようになった。これも半年の成果ってやつだ。

 

「チャージ!」

 

 炎獄のハルバードに魔力をさっき以上溜める。刃が赤熱化し、ハルバードに収まり切れない余剰分の炎が轟々と本体を包む。

 【風系魔法】の応用で空中に足場を作り、オックスオーク目掛けて飛び出す。

 

「ギュギュギュギュウウウウウウウ!!」

 

 戦槌を構えて迎え撃とうとしているけど……遅い。

 

 

 直後、何かが爆発するかのような音と焼けるような臭い。

 

 

「ギュ……モ」

 

 勝負は一瞬で決まった。オックスオーク自慢の戦槌は砕け散り、筋肉の鎧も抉れている。意識があったのも数秒だけ。大きな音と共に倒れる巨体。

 

「……消費魔力も思ったほどじゃないし、良いスキルだな」

 

 ハルバードを肩に担いで、今さっき取得したスキルを確認する。

 

 

『〈防御貫通〉……物理攻撃専用。魔力を消費して、対象の防御力に左右されないようにする。ただし、限度あり。消費魔力は対象により変動』

 

 

 硬い魔物相手なら中々役に立つ。私は基本、魔法使いタイプだけど接近戦も得意になってきたし、これから使う機会も多くなりそうだ。

 

「に、しても……」

 

 改めてオックスオークの死体を見る。

 そして、周囲に漂う焼き肉の臭いを嗅いでみる。

 

「マジで豚肉というより牛肉が焼けたような臭いだな。これってチャーシューになったのか? それともただの焼いた牛肉になったのか?」

 

 “焼豚”は良く聞くけど、“焼牛”なんて聞かないしなぁ……

 死んだあとまで牛なのか豚なのか判断に迷う魔物だ。

 




・【スキル:防御貫通】取得  消費SP2
・魔物討伐  2SP取得

現在〈所持SP:73〉
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