アルビノ少女の異世界旅行記 ~私の旅は平穏無事にといかない~   作:影薄燕

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第53話 オークと聖女と地雷と

 

 

――ワイワイガヤガヤ

 

 

 お昼の時間。私はとあるオープンカフェで食事をとっていた。

 メニューはペペロンチーノとフルーツたっぷりヨーグルト。

 

 ニンニクの風味を生かしつつ、適度な辛みによって次の一口を早くさせる定番パスタの1つでもあるペペロンチーノ。少し塩気のあるベーコンの絶妙な援護によって、口の中を幸せいっぱいにする。暑い日だからこそ辛いもの食べたくなる時ってあるよね? 今日はそんな日でした。

 

 フルーツたっぷりヨーグルトはオシャレなガラス製の器によそられていて、見た目で美味しさへの期待を上げてくれる。

 一見主役はヨーグルトに思えるかもしれないが実は違う。

 ヨーグルトの方はほとんど味が無い。代わりに入っているフルーツが酸味と甘みを兼ね備えている。そう、あくまで主役はフルーツの方であり、ヨーグルトは舞台で言うエキストラ。主役の引き立て役なのだ。憎い演出だぜ……!

 

「……私も心の中の食レポ上手くなったなー」

 

 あくまで心の中に留めているのは、おひとり様だから。

 ふとした瞬間、隣にリリィがいないか確認してまう……

 食後のお茶を飲みながらボ~っとしていれば、外から聞こえる話声が聞こえてくるので暇つぶしに耳を傾ける。

 

 

「西の端にある村で珍しい薬草が――」

 

「さあさあ! キンキンに冷えたフルーツスティックはいかが!」

 

「最近よお、オークが妙に多いと思わねえか?」

 

「そういえば、数日前に亜種が倒されたって報告を――」

 

「見習い聖女の中で誰が一番好みなんだよ?」

 

「ヴィ、ヴィヴィアンちゃんかな……?」

 

「今期の除霊大戦は大丈夫なのか?」

 

「最近、帝国がきな臭いんだと」

 

「にしても、聖女様がいない時期なんて珍しいよなー」

 

「ああ、()聖女はみんな結婚しちまったから称号も変わったそうだし、先代が行方をくらましてから10年以上聖女が誕生しないなんて。他国の連中、一部じゃ“見習い聖女たちの信仰心に問題があるんじゃ?”とか言ってきているらしいぜ?」

 

「聖国に住む民をバカにしているのかしら?」

 

 

 どうやら最近の聖国では噂が多いみたい。

 中にはあり得ないモノまである。

 

(ステラの信仰心が低いぃ? んなバカなことあるかってんだ)

 

 

 噂話の中で特に多いのは2つ。

 1つ、オークの目撃情報が多数。

 1つ、ここ十数年聖女が生まれていない。

 

 

 オークの話は別に珍しくない。

 王都にいる時に図書館でも見たけど、自然発生型の魔物にはその年によって通常よりも多くなる時があるという。

 

 ゴブリンが多い年があれば、ウルフ系が多い年もある。今年はたまたまオーク系の年だったんだろう。数が多くなれば、その分亜種も生まれやすい。運がいいのか悪いのか、私はその亜種と敵対したわけだ。

 法則性らしきものも発見されておらず、モンスターハザードレベルでの大量発生でも無いから、特殊な魔物を除いて心配する必要はないそう。

 

 歴史書の内容を思い出してみると、オークが多くなる年は確か100年ぶりぐらいだったはずだ。

 その年ではオークをより狩れるよう冒険者関連での若干の優遇措置があったり(回復薬や武器のメンテナンスの割引など)、オーク肉の供給が増したことによる一時的な値下げ処置があったりしたと書いてあった。

 

 それが本当なら豚肉料理のレパートリー増やそう。

 

 

 聖女の話は少しややこしい。

 この数日、聖都で暮らして分かったことを考える。

 

 聖女とは、聖国にとって象徴のような存在らしい。

 

 聖国には王様に当たる人物はおらず、教会の上層部でもさらに上のクラス(教皇とか枢機卿とか)と聖女たちが政治を担当する仕組みになっている。

 もちろん王族のような本当のトップがいないことによるデメリットもあるという話だが、国の運営にそこまで大きな問題はないという。

 

 そんな中で聖女の存在は結構デカい。

 

 余程熱心に政治のことを勉強した聖女でもない限り、基本は聞き手に回ることとなる。しかし、聖女には聖女としての役割も多々あり、そっち方面での意見は無視できない大きさとなる。意見が割れた会議を鶴の一声よろしく一発で解決した例もあるとか。

 

 想像してみる。

 日本の国会のヤジが飛んでいる会場で、大人ステラが言った一言が切っ掛けとなり鎮静化する光景を。

 

 うおぅ。国民からしたら憧れの存在だろな。

 しかも若い女性がほとんどのはずだ。そりゃ人気でる。

 

 前に【ヘルプ】で確認したように、【称号:見習い聖女】は【称号:聖女】の前段階。信仰心や回復魔法の腕が確かならいつかはなるそうだ。

 だから可能性の話としてならそう遠くない内にステラが聖女になって、私が想像したような光景を繰り広げる未来だってあった。

 もちろん、会ったことないステラ以外の見習い聖女だって。

 

 実際、今まで|は(・)そうだった。

 

 ちなみに、この【称号:聖女】。称号を持っている女性が子供を産むと【称号:聖母】に変わるとか。変化すると効果も変わる。確か……生涯病気に掛からなくなり、生まれてくる子が女の子なら聖女としての才能を持つ、だったかな?

 

 つまり、聖女とはイコールで男性経験の無い乙女にしか与えられない称号ということだ! そして、下手したら適齢期過ぎても男性とお付き合いすることすらできない! 万一男性が見習い聖女や聖女を口説いたりすれば、目を血走らせた信者連中によってOHANASIされる!

 あ、ちなみにこれ実話だってさ。

 相当なイケメンが口説いたらしいけど、翌日には塔のてっぺんで半裸亀甲縛り落書き付きで吊るされていた、と。

 

 怖えな聖国!? やっぱ国である以上は闇もあるっすな……

 

 ふう。話し戻すけど、問題はその聖女の席が現在空席だということだ。

 

 先代の聖女で、歴代でもかなり力の強い女性は後任が育つ前になぜか失踪。それ以外の同年代だった聖女たちも早くに結婚してしまっていた。

 しかたなく聖国の上層部は、見習い聖女の中から少しでも早く次代の聖女が誕生することを祈った。遅くとも数年で現れるだろうと。

 

 しかし、それから十数年。未だ聖女の称号を持つ女性は現れない。当時見習い聖女だった少女たちも、一向に成果が出ないことから自信を無くし、周りの反対を押し切って教会を退職。他国に移り住んだり、聖都以外の村や街で結婚した。

 

 ステラを含めた今の見習い聖女たちは、失踪した先代聖女世代の元聖女の娘がほとんどという話だった。

 ここ数年、聖女がいないことによって他国への発言力の低下が目に見える形になってきた聖国にとっては、最後の望みを掛けた希望の星。付き人の女性がいたのも、身の回りの世話をしてもらう代わりに神への祈りによる信仰心の向上に集中してほしいという思いもある。

 

 他国への熱心な布教も、裏で聖国以外の聖女となり得る人物がいないか探し出す目的もあるみたい。見つけたら好待遇での勧誘をするようにしていると。

 

 ……結果は芳しくないみたいだけどね。

 

 さてここで問題です。

 オープンカフェで昼食を終えたアルビノ少女、雪菜ちゃんは称号にバッチリ“聖女”を持ってまーす♪

 聖国にバレたらどうなっちゃうでしょー♪

 

 ……クソめんどくさいこと確定ですありがとうございます。

 バレた時のこと考えただけで頭が痛くなるわ。

 




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